院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)

全18問。微分積分・解析3問・位相・幾何1問・線形代数1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・留数定理・フーリエ変換)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・ヒルベルト空間・最尤推定。

最終更新:

このページで公開
解説18問/全18問(2,177字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき18問)
問題本文
非収録

東大 専門科目B 2026年度 院試 過去問の出題内容(全18問)

この18問の分野は微分積分・解析3問・位相・幾何1問・線形代数1問・代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
1線形代数整行列の部分環と格子加群行列単位で分解する / 有限性の本質あり
2Kummer拡大と四元数群最大アーベル部分拡大は交換子群で読むあり
3上三角群と双対数環上の持ち上げ双対数環の核あり
4代数単項イデアルの局所飽和あり
5微分積分・解析球面直積上の内積関数固定した片方を見るあり
6二つの球面を二点で貼った空間写像トーラスはWang列あり
7四点を除いた球面上の閉1形式周期で判定するあり
8位相・幾何コンパクト距離空間の非拡大全射最大点を1回写すだけでは足りないあり
9測度の有限性とタイト性核関数は近似単位として使うあり
10微分積分・解析曲線上のCauchy型積分境界値の跳びを見るあり
11実Hilbert空間の弱混合的等長作用素稠密部分空間から全体へあり
12Bessel型核の畳み込みフーリエ変換で半群性を見るあり
13一様分布と指数分布の最大値尾部定数がシフトを決めるあり
14正規線形模型の推定量重み付き正規模型として見るあり
15差分方程式の最大原理と安定性符号は負の最小点で見るあり
16中心力場の保存量とKepler軌道有効ポテンシャルへ落とすあり
17微分積分・解析反復積分で定まる多重対数関数Legendreではなく多重対数あり
18同値関係だけの一階理論完全性を同型一意性から出すあり

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は7問に8テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 18問 → 2026年度 18
2025年度のページを見る

1 — 整行列の部分環と格子加群

行列単位で分解する

この環は e21e_{21} そのものを含まないが,ne21ne_{21} を含む。したがって上下二つの格子の間に 「片方は通常の写像,反対向きは nn 倍を含む写像」が走る,という格子問題へ落ちる。

有限性の本質

連続的なパラメータは出ない。間に入る格子は商 Zm/nZm\mathbb Z^m/n\mathbb Z^m の部分群で決まり,これは有限集合である。

整行列の部分環と格子加群の途中式・最終答をPDFで見る

2 — Kummer拡大と四元数群

もう一方の4乗根は u/au/a

1+v1+v1v1-v の積は X2=u4X^2=u^4 である。したがって a4=1+va^4=1+v と置いたとき,もう一方の4乗根は u/au/a であり,ここで X\sqrt X が必ず現れる。

最大アーベル部分拡大は交換子群で読む

L/KL/K の群は位数16で,交換子群は σ2\langle\sigma^2\rangle である。従って固定体に a2a^2 まで入る点を落とすと,最大アーベル拡大を一段小さく見誤る。

Kummer拡大と四元数群の途中式・最終答をPDFで見る

3 — 上三角群と双対数環上の持ち上げ

双対数環の核

Fp[X]/(X2)\mathbb F_p[X]/(X^2) への持ち上げでは,核 1+XM21+XM_2 が加法群 M2M_2 と同じように振る舞う。最大アーベル部分群は,像をスカラーにして核を丸ごと使うのが最も大きい。

上三角群と双対数環上の持ち上げの途中式・最終答をPDFで見る

4 — 単項イデアルの局所飽和

RR では関係式 ab=c3ab=c^3 を使う

RJR_J では bb が単元になるため,aac3c^3 は同じ生成能力を持つ。これを見落とすと,σR(J3)\sigma_R(J^3) に必要な aa3c23c^2 が抜ける。

単項イデアルの局所飽和の途中式・最終答をPDFで見る

5 — 球面直積上の内積関数

固定した片方を見る

一方の球面上の点 uu を固定すると,もう一方は uu との内積を指定された単位ベクトル全体になる。これは直交補空間内の球面である。

球面直積上の内積関数の途中式・最終答をPDFで見る

6 — 二つの球面を二点で貼った空間

写像トーラスはWang列

貼り合わせ空間のホモロジーを先に求め,その後に f1f_*-1 の核と余核を見る。特に H1H_1 の符号反転が Z/2\mathbb Z/2 を生む点を落とさない。

二つの球面を二点で貼った空間の途中式・最終答をPDFで見る

7 — 四点を除いた球面上の閉1形式

周期で判定する

閉1形式の等式は,完全形式を除けば穿孔の周りの周期で判定できる。どの二点を同じ開球面に残すかで許される周期ベクトルの形が決まる。

四点を除いた球面上の閉1形式の途中式・最終答をPDFで見る

8 — コンパクト距離空間の非拡大全射

最大点を1回写すだけでは足りない

最大点 xx に対して E(fx)E(x)E(fx)\le E(x) は言えるが,fxfx が最大点とは限らない。反復列を取り,距離和の極限点で等号を作るのが抜けを防ぐ方法である。

コンパクト距離空間の非拡大全射の途中式・最終答をPDFで見る

9 — 測度の有限性とタイト性

核関数は近似単位として使う

p0p\downarrow0 で1に近づき,無限遠では小さい関数を積分している。これは測度の総質量と遠方への逃げを同時に検出するための標準的な道具である。

測度の有限性とタイト性の途中式・最終答をPDFで見る

10 — 曲線上のCauchy型積分

境界値の跳びを見る

Cauchy積分の解析接続可能性は,曲線を挟む二つの正則枝の境界値が一致するかで決まる。非零密度は跳びを作るため,線分を消せない特異集合にする。

曲線上のCauchy型積分の途中式・最終答をPDFで見る

11 — 実Hilbert空間の弱混合的等長作用素

稠密部分空間から全体へ

作用素が等長なら近似誤差が増えない。このため,稠密集合上の弱収束条件は全空間へ延長できる。

実Hilbert空間の弱混合的等長作用素の途中式・最終答をPDFで見る

12 — Bessel型核の畳み込み

フーリエ変換で半群性を見る

畳み込みを直接積分で処理すると重い。Bessel核はフーリエ側で (1+ξ2)α/2(1+|\xi|^2)^{-\alpha/2} になるため,畳み込み公式は指数の加法に帰着する。

Bessel型核の畳み込みの途中式・最終答をPDFで見る

13 — 一様分布と指数分布の最大値

尾部定数がシフトを決める

最大値の極限で重要なのは尾確率の先頭定数である。X+YX+Y の尾は (e1)et(e-1)e^{-t} なので,指数分布最大値に log(e1)\log(e-1) だけ平行移動が入る。

一様分布と指数分布の最大値の途中式・最終答をPDFで見る

14 — 正規線形模型の推定量

重み付き正規模型として見る

各観測の分散は si2σ2s_i^2\sigma^2,平均は xiθx_i\theta である。したがって情報量は xi2/si2\sum x_i^2/s_i^2 になり,単純な標本平均ではなく重み付き平均が最尤推定量になる。

正規線形模型の推定量の途中式・最終答をPDFで見る

15 — 差分方程式の最大原理と安定性

符号は負の最小点で見る

この差分作用素では,右辺が非負なら内部の負の最小値が禁止される。安定性は Lhg1L_hg\simeq1 となる正の障壁関数を作り,最大原理で挟む。

差分方程式の最大原理と安定性の途中式・最終答をPDFで見る

16 — 中心力場の保存量とKepler軌道

有効ポテンシャルへ落とす

角運動量保存で角速度を消去すると,動径方向の1次元運動になる。Kepler軌道は 1/r1/r を未知関数にした Binet 方程式が最短である。

中心力場の保存量とKepler軌道の途中式・最終答をPDFで見る

17 — 反復積分で定まる多重対数関数

Legendreではなく多重対数

反復積分の中身は log(1z)-\log(1-z) から始まるため,LnL_nLin+1\operatorname{Li}_{n+1} である。級数表示に直すと,偶奇分解も Bose 型積分も一行で処理できる。

反復積分で定まる多重対数関数の途中式・最終答をPDFで見る

18 — 同値関係だけの一階理論

完全性を同型一意性から出す

この理論では有限サイズの同値類が全て一つずつ固定され,残りは無限類だけである。可算リッチにすると余った自由度も消えるため,Vaught判定に近い形で完全性が従う。

同値関係だけの一階理論の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目B 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年度(このページ・全18問)

    整行列の部分環と格子加群 / Kummer拡大と四元数群 / 上三角群と双対数環上の持ち上げ

  • 2025年度(全18問)

    有限推移群の derangement / 三次商環の単元群 / 自己テンソルで消える加群

  • 2024年度(全18問)

    冪零行列のSL共役類 / 曲線特異点とHom加群 / 切断された次数付き加群

  • 2022年度(全18問)

    行列成分の軌道 / 平方零イデアルによる拡大 / 多項式環の自由性

  • 2020年度(全18問)

    Galois閉包と中間体 / 二変数多項式環の極大イデアル / 特異点の随伴次数環

  • 2019年度(全18問)

    余次元1の部分環 / 三項式の既約性 / 対称関数体と中間体

  • 2018年度(全18問)

    位数pの持ち上げ / 交叉曲線の正則性 / 尖点環上の二次曲面

  • 2017年度(全18問)

    部分格子と有限アーベル群 / 2重可移作用 / 二次超曲面の特異点

  • 2016年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    巡回商をもつ群拡大 / 三直線の座標環と巡回作用 / 有理関数体のガロア閉包

  • 2015年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    有限p群の共役類と既約表現 / 数値半群環の conductor / BGG 型複体

  • 2014年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    Artin--Schreier拡大 / 実代数曲線の極大イデアル / ファイバーと接空間次元

  • 2013年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    有限体上の2次一般線形群 / 3本の直線の有限被覆 / Nakayamaの補題と単項曲線

  • 2012年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有理関数体の不変体

  • 2011年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限可換群と巡回因子

  • 2010年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限環の分解と単数群

  • 2007年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    半直積の正規部分群

  • 2006年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    分解体と中間体

  • 2005年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    行列の位数

  • 2004年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    線形写像の階数