東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2017年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2017年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 部分格子と有限アーベル群
見るべき商
が2次元の [数式]-ベクトル空間になるので, は の余次元2部分空間ではなく,1次元部分空間として扱うのが最短である。
典型ミス
の指数は , の位数は なので, である。候補の不変因子の積が になっているかを 最後に検算すると,Smith標準形の取り違えを防げる。
第2問 — 2重可移作用
鋭い2重可移
等号の場合は,順序付き相異2点への作用が自由かつ推移的である。この「鋭さ」により 1点安定化群の大きさがちょうど になり,[数式] と一致する。
採点上の注意
例を挙げるだけで終わらず,等号の場合に Sylow -部分群が正規になることを 書くのが分類部分の要点である。
第3問 — 二次超曲面の特異点
核は1本で決まる
像の次元は2で,[数式] の次元は3である。非零の既約関係式が1本見つかれば, 高さの比較で核全体が決まる。
2元生成と正則性
2次元局所環で極大イデアルが2元生成されることは,この状況では正則性と同じである。 従って偏微分がすべて消える点を探せばよい。
第4問 — 二変数有理関数体のGalois群
群の形
をそれぞれ 乗根で動かす と,2変数を交換する の半直積である。最初にこの群を明示すると,残りは固定部分群の 計算になる。
斉次対称式の絞り込み
Galois 性は固定部分群の正規性として使う。対称式であるため交換 は必ず 固定するので,その正規閉包が強い制約を与える。
第5問 — 球面計量と円板面積
球面の立体射影計量
この計量は半径1の球面の立体射影で現れる標準形である。ただし,その事実を使わなくても 極座標で長さと面積を直接積分すれば完結する。
極限の検算
では であり,面積は原点近くの小円板の 面積に近い。計量係数は原点で4なので,ユークリッド半径 の 面積 と一致する。
第6問 — リーマン球面の不変微分作用素
候補は2つ
外微分 は任意の滑らかな写像に対して自然である。さらに2次元の向き付き 共形構造では も自然なので, と の実線型結合が候補になる。
高階項が消える理由
安定化群に拡大 が含まれることが強力である。微分の階数ごとに スケールの次数が異なるため,出力1形式と同じ変換をする1階部分だけが残る。
第7問 — 固体トーラス内の管状近傍
形を先に見る
本質は「固体トーラスから,芯が 回経線方向に進む小さい固体トーラスを抜く」 という補空間である。したがって 自体のホモロジーは2境界トーラスをもつ 標準的な補空間のものになる。
境界の包含が計算の中心
貼り合わせ写像そのものは選んだ境界基底では単純である。難しいのは,その基底が の中でどの元になるかであり,この段階で が現れる。
第8問 — 有理数の一点コンパクト化
コンパクト集合の性質
[数式] の相対位相では,無理数へ近づく有理数列がすぐに作れる。内点を持つ集合は そのような列を含んでしまうため,コンパクトになれない。
一点コンパクト化の注意
通常の局所コンパクト Hausdorff 空間の一点コンパクト化とは違い,ここでは 第二可算性が壊れる。 の近傍をコンパクト集合の補集合で見るのが要点である。
第9問 — Lp有界列の弱収束
分割の意味
では を で支配できるので収束定理を使う。 補集合では逆に が より小さいため, 有界性で抑える。
弱収束の基本形
これは「点ごとに0へ収束し, で有界なら,任意の 関数との積分は 0へ収束する」という事実の標準的な証明である。
第10問 — 有理関数の周期性
極があると無限に増える
周期性は正則点だけで述べられているが,極の1つ手前が正則だと矛盾するため, 極も整数平行移動で無限に並ぶ。これは有理関数では不可能である。
対数の枝は問題にならない
結局 が定数なので,対数の枝を変えても は変わらない。解析接続も 定数関数として直ちに得られる。
第11問 — 共役作用素と平行移動
全射でない理由
の全射性を直接否定するより,随伴作用素の全射性と元の作用素の下からの 評価を使う方が簡潔である。近い2つの区間の差が小さくなることが決定的である。
平行移動不変性
長さ1の有理区間をすべて消す汎関数は,有理端点区間の平行移動差も消す。稠密性で 一般の 関数へ広げる。
第12問 — 円板の調和関数
Fourier モードで作る
円板の調和関数では,境界の に対して を対応させる。ここでは と だけで 済む。
穿孔円板で増える自由度
原点を除くと が許される。境界では0なので,同じ境界値を保ったまま 別解を作れる。
第13問 — ランダムな標本平均と指数分布の尤度
同じ を何度も使う
では各ブロックごとに新しい標本を使うのではなく,同じ列 を先頭から使う。そのため極限は定数 ではなく,重み付き和 になる。
ランダム添字の扱い
は と独立性により,通常の大数の法則と中心極限定理を ランダムな添字に沿って読むだけでよい。
第14問 — 合流型超幾何関数とLaguerre多項式
係数漸化式で十分
特別関数名を知らなくても,べき級数を代入すれば整関数解は一意に決まる。 多項式になる条件も,漸化式の分子が止まるかどうかだけで判定できる。
正体は
標準形 と比べると,ここではパラメータが の Laguerre 多項式である。
第15問 — 台形法の存在一意性と誤差
陰的な式は縮小写像
台形法は が両辺に現れるが, なら右辺は縮小写像になる。 これが存在一意性の本質である。
誤差は局所 ,大域
1ステップの欠陥は である。これを 回足すため, 全体では になる。
第16問 — 四次ポテンシャルの周期
周期積分
1次元保存系では,周期は常に 型になる。 端点で平方根特異性を持つが,通常の折り返し点では可積分である。
分離点で遅くなる
2つの井戸がつながるエネルギーでは,粒子が不安定平衡点の近くに長く滞在する。 このため周期が対数的に無限大へ発散する。
第17問 — 二成分常微分方程式
比率の方程式に落とす
総量 と比率 に分けると,移行項の複雑さが消える。 特に は1変数の自律方程式を満たす。
長期成長率
総量の瞬間成長率は である。従って最後は の安定平衡点を見るだけでよい。
第18問 — 有限有向グラフの不可避集合
[数式] は閉路除去
有限グラフで「どの無限パスもいつか に入る」という条件は,補集合に有向閉路が ないことと同じである。したがって問題は有向閉路を壊す頂点数の計算になる。
[数式] は内部閉路への到達
[数式] は, の中だけを通って無限に進める頂点である。有限グラフでは, 内の有向閉路へ到達できる頂点全体と言い換えられる。