東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2013年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2013年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 有限体上の2次一般線形群
標数 の落とし穴
複素数上なら 乗して1になる固有値は 個あるが, 上では が重根 になる。この一点で,対象は 「半単純な巡回行列」ではなく「単位行列に冪零行列を足したもの」に変わる。
数え上げ
2次では非零冪零行列のJordan型は一種類だけである。したがって,共役類の大きさを 中心化群で割って数えるのが最短である。最後に を忘れると で止まってしまう。
2013年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
(1)
とする。代数閉包上で の固有値を とすれば である。標数 では なので,固有値は重複度も込めてすべて である。
(2)
従って と書け, は2次の冪零行列である。逆に,任意の 冪零行列 について であるから が成り立つ。よって個数は,2次正方行列の冪零行列の個数に等しい。
非零冪零行列はすべて に共役である。 における の中心化群は で,その位数は である。一方 だから,非零冪零行列は 個である。零行列も加えると,条件を満たす は 個である。
最終答
固有値はすべて 。また となる元の個数は である。
第2問 — 3本の直線の有限被覆
幾何で見る
環 は3本の座標軸を原点で貼り合わせたものの座標環である。 は各枝でその枝の座標になる。一般点 では3枝が分離し, それが という分解である。
商の次元
は「原点で3つの値が等しい」という1条件ではなく, 3つの値を1つにそろえる条件である。したがって自由な3次元の値から対角1次元を 残すので,ずれの自由度は2次元である。
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(1)
の元を,3本の座標軸上の関数の組として見る。すなわち である。この表示では は各成分で座標関数として作用する。 また と書ける。
任意の元は と一意に表せる。実際,第3成分から が決まり,第1,第2成分から が決まる。従って は階数3の自由 -加群である。
(2)
上に移すと となる。ここで は互いに直交する原始冪等元で, である。よって冪等元は の8個である。
(3)
これらの冪等元を に付け加えて生成される部分環は である。上の組表示では したがって は での3成分から対角成分を割ったものだから
(4)
最後に単元群を比べる。 は連結な3本のアフィン直線の座標環なので である。一方 包含写像は対角埋め込みに対応するため,同型ではない。
最終答
第3問 — Nakayamaの補題と単項曲線
前半の要点
が で非零因子であることを使う場所は, から を出す一箇所である。その後は有限生成性を使ってNakayamaの補題を 適用する。
二項式の見つけ方
単項曲線の核では,同じ -次数をもつ単項式の差が関係式になる。 ここでは から上の3本が自然に出る。生成性は「どの単項式も有限個の代表に落とせる」ことを 確認するのが実戦的である。
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(1)
とおく。自然写像 の核を調べる。 が で0に写るとすると,ある により と書ける。このとき であり, は の非零元を殺さないから である。 従って ,すなわち である。よって単射である。
(2)
次に が同型とする。単射性から なので,Nakayamaの補題により である。さらに余核 について となるので,再び Nakayamaの補題から である。従って は同型である。
(3)
最後に を考える。次の3つの二項式は明らかに核に入る。 これらが生成するイデアルを とおく。
商環では により の次数を高々1にでき,さらに により高い冪を落とせる。したがって任意の単項式は, -加群として の線形結合に整理できる。-進値を見ると,これらの値はそれぞれ を代表し,半群 の剰余類を尽くす。この正規形の像が0なら 各係数が0になるので,核は に一致する。
最終答
である。
第4問 — 3次Heisenberg型の不変体
軌道と最小多項式
固定体の問題では,まず作用群を明確にする。 は単に に動くだけでなく,同時スカラー倍も受けるため,軌道の大きさは3ではなく 9になる。
中間体の数え方
中間体の共役類は部分群の共役類で数える。ここで現れる群は3次のHeisenberg群で, 中心を除いた位数3部分群は,商 の直線に従って4種類に分かれる。
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(1)
を で定まる自己同型とする。計算すると であり, は中心的である。従って が生成する群 は 位数 の非可換な3群であり, である。
の -軌道は である。よって の 上の最小多項式は であり,次数は9である。したがって
(2)
群 は に忠実に作用する有限群なので (3)
可換な最大商は である。ここで交換子群は中心 で,位数3である。従って, 上アーベルとなる最大中間体 の次数は
(4)
最後に となる中間体は, の位数3の部分群に対応する。中心 は1つの共役類を与える。非中心的な位数3部分群は の1次元部分空間ごとに1つの共役類に まとまる。1次元部分空間は 個であるから,共役類の総数は である。
最終答
である。
第5問 — 外微分と楕円体上の積分
向きの決め方
閉曲面の積分では,まず内部領域を決め,その境界として外向きに向きを入れるのが 最も安全である。この向きなら と符号を 迷わず使える。
体積に落とす
この設問の核心は,微分形式そのものを曲面上で直接積分しないことにある。 が標準体積形式になるよう を選ぶため,曲面積分は楕円体の体積に 変換される。
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(1)
とおく。外微分を計算すると 従って となる条件は である。 性と から が得られる。
(2)
曲面 は で与えられる楕円体である。内部を とし, には外向き法線で向きを入れる。この向きでStokesの定理を 用いると
二次形式の行列は で, である。したがって
最終答
である。ただし は楕円体内部の境界として外向きに向きを入れる。
第6問 — 回転面の測地線とClairaut関係
保存量の由来
回転面では角度 が循環座標である。従って が保存される。これを幾何的な量に直すと になり,これはClairautの関係と呼ばれる。
指数型回転面での判定
では回転半径 が とともに単調に小さくなる。 Clairaut定数が正なら はその定数より小さくなれないため,下方へ無限には 進めない。下に抜けられるのは定数が0,すなわち純粋な子午線方向だけである。
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(1)
回転面を でパラメータ表示する。このとき第一基本形式は である。
まず が定数の曲線を考える。この曲線の速度は 方向であり, 加速度の接成分は,曲線を弧長で取り直したとき消える。これは子午線が回転面の 反射対称面との交わりであり,その対称性から測地線になる,と言ってもよい。
(2)
次に一般の測地線を弧長 で表す。Lagrangian は を含まないので,共役運動量 は一定である。速度ベクトルと子午線方向のなす角を とすると,回転方向成分の 大きさは である。弧長パラメータでは だから は一定である。
(3)
特に とする。Clairaut定数を と書く。もし なら でなければならないから であり, 座標は下に有界である。従って 座標が下に有界でない測地線では である。このとき なので,測地線は子午線方向に進み, パラメータの取り替えを除いて 一定の形である。
最終答
子午線は測地線であり,任意の測地線について が成り立つ。 の場合, 座標が下に有界でない測地線は, パラメータの取り替えを除き子午線またはその一部に限られる。
第7問 — 5平面配置のホモロジー
包含排除がそのまま効く
平面,交線,三重点はいずれも可縮で,4重交点がないため,オイラー標数は 交わりの個数だけで計算できる。
神経の見方
この配置は「5頂点のうち3頂点までの交わりはあるが,4頂点の交わりはない」 という構造を持つ。したがって神経は4単体の2骨格であり,2次元の穴が4個残る。
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(1)
5個の平面を とする。各 は可縮で,2平面の交わりは 直線,3平面の交わりは1点,4平面の交わりは空である。包含排除で
(2)
単連結性は,平面を順に貼り合わせて示す。既に貼った和集合に新しい平面を加える とき,共通部分はその平面内の有限本の直線の和であり,連結である。平面自身は単連結 であり,共通部分も連結なので,van Kampenの定理により基本群は増えない。最初の 平面から始めて帰納的に が従う。
(3)
またこの配置の良い近傍被覆を取ると,神経は5頂点の単体の2骨格になる。したがって は2次元CW複体と同じホモトピー型を持つ。よって は で成り立ち,単連結性から である。 従って ゆえに
最終答
また整数係数ホモロジー群は
第8問 — 随伴軌道と不変な複素構造
不変性の使いどころ
存在しないことを示すには,全点を調べる必要はない。1点 の安定化群に 注目し,その線形作用と可換な があり得るかだけを見れば十分である。
対角作用との可換性
安定化群は接空間の2方向を異なる重みで伸縮する。このような作用と可換な写像は 2方向を混ぜられないため,複素構造に必要な90度回転型の写像を作れない。
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(1)
跡0の行列を と書くと 従って である。関数 の勾配はこの集合上で消えないので, は の部分多様体である。
(2)
に対して は跡と行列式を保つ。 逆写像は なので,これは から への微分同相写像で ある。
(3)
最後に,条件を満たす が存在すると仮定して矛盾を導く。 とする。接空間は である。ただし を固定する対角行列 の作用は である。条件(III)から はこの対角作用と可換でなければならない。 となる を取ると,可換な線形写像は 方向を別々に保つ 対角型に限られる。しかし実2次元空間上の対角型線形写像の二乗が になることは ない。これは条件(II)に反する。
最終答
は2次元部分多様体であり, の共役作用は の微分同相を定める。ただし条件(I)--(III)をすべて満たす は存在しない。
第9問 — 単射正則関数と長さの単調性
平方根を作る理由
長さには が現れる。 と書けると になり, 円周平均をParsevalの等式で係数表示できる。
等号成立条件
平均値公式と三角不等式の等号条件を見るのが最短である。等号が成り立つなら, 円周上の値が同じ向きにそろう。正則関数が開写像であることと両立するのは定数の場合 だけである。
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(1)
単射正則関数では は円板内で零点を持たない。単位円板は単連結なので, 正則関数 が存在する。従って とおけば である。
(2)
と書く。曲線 の速度は なので (3)
Parsevalの等式から は零でないので少なくとも1つの は非零であり,右辺は で狭義単調増加である。
(4)
最後に,正則関数 について である。仮定はこの平均の三角不等式で等号が成立していることを意味する。 従って各 について,ほとんどすべての で は同じ偏角を持つ。連続性から円周上で の値は同一直線上に 入り,開写像定理により は で定数である。恒等定理より 円板全体で定数である。
最終答
であり,これは の狭義単調増加関数である。また仮定を満たす正則関数 は である。
第10問 — 変分法とカテナリー
境界条件の使い方
なので である。第一変分の を含む項は部分積分で の係数に移せる。
候補の見つけ方
この汎関数は回転面の面積に対応し,停留曲線はカテナリーになる。 と与えられているため, が端点条件を ぴったり満たす。
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(1)
とおく。 に対して微分すると 従って求める極限は上の式で与えられる。
(2)
が 級で,任意の に対して第一変分が0になるとする。 端点で なので部分積分により よってEuler方程式は
(3)
であることに注意する。 とおけば であり,, である。 したがって となり,Euler方程式を満たす。
最終答
第一変分は である。停留関数は を満たす。例として が取れる。
第11問 — 長方形のDirichlet固有値
無理性の役割
が無理数であるため,異なる が同じ固有値を与えることがない。 固有関数の形そのものは通常の長方形のDirichlet問題と同じである。
漸近の見方
固有値の数え上げは楕円内の格子点数に帰着する。主項は境界ではなく面積で決まるので, 第1象限の楕円面積だけを計算すればよい。
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(1)
変数分離 を代入すると である。境界条件から なので が得られる。対応する固有値は である。
(2)
一般の固有関数 は, 方向の正弦級数で と展開できる。方程式に代入すると各 は を満たす。従って非零成分は上の に限られる。 が無理数なので の重複も起きず,固有関数はこれらで尽くされる。
(3)
数え上げ関数は である。これは第1象限内の楕円 の格子点数であり,面積近似から
最終答
で尽くされる。また である。
第12問 — 重み付き2乗可積分条件の閉性
有界閉球ではない点
ノルムだけでなく, の ノルムも制御している。 しかし 収束から部分列のほとんど至る所収束を取り,重み付きの非負関数に Fatouを使えば,下半連続性がそのまま得られる。
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を とする。, in と仮定する。 部分列を取れば がほとんど至る所で成り立つ。
非負関数 にFatouの補題を適用すると 従って である。
最終答
第13問 — 感染症型常微分方程式
の意味
は,感染成分 の線形化で増殖が減衰に勝つかを表す量である。 なら正の平衡点が現れ, なら病気のない平衡点だけが残る。
消滅証明の重み
と をそのまま足すと の項が消えにくい。係数 を選ぶと の正項を相殺でき, という単純な評価になる。
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(1)
の各境界でベクトル場の向きを調べる。 では では , では である。また であり, から の面では内向きである。 さらに では 従って は正に不変である。
(2)
平衡点を求める。 なら を得る。内部平衡点では から , から とおけば となる条件は すなわち である。従って なら内部平衡点はただ1つである。
(3)
では内部平衡点はなく,境界平衡点は のみである。 -成分に関する での線形化は この行列の行列式は で,跡は負である。従って は局所漸近安定である。
(4)
最後に大域的な消滅を示す。 なので とおくと よって は減少し, である。 方程式から は有界なので 。さらに より である。
最終答
は正に不変である。 では内部平衡点 がただ1つ存在する。 では境界平衡点 のみが存在し,これは局所漸近安定で,さらに である。
第14問 — 有限遷移系の到達性
AFの読み替え
有限遷移系では「どの無限経路もいつか に入る」は「 を避け続ける 有向閉路がない」と同じである。この読み替えをすると,問題は有向閉路を壊す頂点集合 の問題になる。
下界と構成
の下界は4本の行閉路で出る。上界は対角的に4点を取って,残りに明示的な トポロジカル順序を与えればよい。第2問は最大値そのものではなく 以上を示せば 十分なので,8点の具体例を作るのが速い。
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(1)
まず となることは, の中だけを通る無限遷移列が 存在しないことと同値である。有限グラフでは,これは が有向閉路を 含まないことと同値である。
固定した に対し,4点 は有向閉路を作る。4つの行は互いに交わらないので,すべての有向閉路を壊すには 少なくとも4点を に入れる必要がある。
一方 とおくと, は次の順序で並べられる。 この順序で各遷移は右へ進むか,または に入る。従って には有向閉路がない。よって
(2)
次に を取る。このとき であり, 内の遷移は およびこれらから外へ出るものだけで,有向閉路を持たない。従って この は8点からなるので
最終答
である。
第15問 — 有限離散測度の直交多項式
行列式表示の意味
この はGram--Schmidtで作った直交多項式を,正規化せず行列式で書いたもの である。最後の列を と内積に入れると,同じ列が2本できるため直交性が出る。
有限台の影響
台が 点しかないので,次数 以上では通常の無限直交多項式列とは 違う挙動をする。 は台の全点で消える多項式で,それより先は行列式が 恒等的に消える。
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(1)
とする。 行列式で定義された の最後の列を と内積に入れると, では最後の列が既存のモーメント列と一致する。従って行列式が0になり, である。
(2)
は のGram行列式である。Gram--Schmidtの標準公式 から, の最高次係数は であり, となる。また では である。
(3)
は次数 なので,直交性により と書ける。最高次係数を比べると さらに と内積を取ると 従って
(4)
最後に,測度は の 点だけに台を持つ。したがって は全ての多項式と内積0である。 はこの多項式の非零定数倍であるため, その零点は である。さらに ではGram行列の階数が足りず, は零多項式になる。
最終答
また の零点は であり, では は零多項式である。
第16問 — ランダムな添字付き和の極限定理
非零になる添字の組
は平均0で独立なので,積の期待値が残るには各添字が少なくとも2回現れる 必要がある。 では,対応する2通りの入れ替わりだけが寄与する。
2つの極限の違い
ではほとんど全ての参照先が0に集中し,共通因子 が残る。 一方 では参照先が遠方に逃げ,しかも衝突しないため,通常の 独立和の中心極限定理に戻る。
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(1)
とする。 の値で条件付けると が非零になり得るのは,添字が となる場合だけである。従って
(2)
とする。このとき である確率が1に近づくので は確率収束で0に近づく。中心極限定理より かつ は と独立に取れる。よって
(3)
次に とする。 だから,和集合評価により
(4)
この場合,高確率で全ての は より大きい。さらに なので, の衝突確率の総和は で0に収束する。 従って高確率で は互いに独立で,同分布,平均0,分散 の変数として扱える。中心極限定理から
最終答
である。
第17問 — 対称化された有理式の双対性
対称化の係数
分割 を固定すると, の中の並べ替えが 通り, の中の 並べ替えが 通りある。これが係数 の由来である。
基本恒等式から全体へ
この種の問題は,まず最小の非自明な交換 を直接確認し, それを大きな対称化和の中に埋め込んで使う。全体の双対性は,多数の変数を一度に 動かすのではなく,1個ずつブロックの反対側へ移すことで得られる。
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(1)
定義から 順列 が,前半 個の添字集合 と後半 個の添字集合 を定めると,同じ分割 は 回現れる。従って
(2)
次に を使って と を共通分母で比較する。差の分子は を因子に持つ交代式である。一方,差全体は対称式であるから,この交代因子を持つ 対称式は零でなければならない。従って である。
(3)
この基本恒等式を3変数ずつに適用すると,1個の変数を右側から左側へ移す操作が 可能になる。具体的には,対称化の和を,選んだ3変数と残りの変数に分け, 選んだ3変数に を適用する。これにより が従う。
(4)
一般の については,隣り合うブロックサイズの交換を繰り返す。上の 対 の交換を対称化の中で適用すれば 型の移動ができるので,これを有限回繰り返して を得る。
最終答
分割表示は である。また が成り立つ。
第18問 — 半線形熱方程式の陽的差分法
安定性の入口
により,線形熱方程式部分は隣接点の凸結合になる。 そのため最大ノルムで増幅しない。この安定性に非線形項と打ち切り誤差を足して 評価する。
非線形項の扱い
と分解し, を使うと が出る。あとは離散不等式を常微分方程式で上から比較すれば, 収束は から従う。
2013年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
(1)
厳密解を格子点でTaylor展開する。時間方向と空間方向の打ち切り誤差は,定義された により と評価できる。
差分解との差を取ると となる。ただし である。 なので線形部分は 凸結合であり, である。従って
(2)
常微分方程式 を考える。 の範囲では 比較から であり,仮定 の下で少なくとも では爆発せず, 一意解を持つ。
(3)
関数 は増加関数である。 であり,前段の 不等式はEuler型の上方比較になっているので,帰納的に が得られる。
(4)
最後に とすると,右辺の常微分方程式の解は一様に0へ収束する。 実際, で となる定数 が取れる。従って
最終答
誤差は を満たす。比較方程式 は仮定の下で に一意解を持ち, である。従って が成り立つ。