熊本大学 院試 過去問 解答例
熊本大 自然科学教育部 理学専攻 数学コース 数学 2026年度第1期 専門 院試 解答例・解説
熊本大学 自然科学教育部 理学専攻 数学コース 数学 2026年度第1期 専門の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 対称群の中心化群
方針
中心化群の問題では,共役が巡回置換の文字を置き換える操作であることを使う。今回の は3本の互換の積なので,中心化群は「各組の中を入れ替える操作」と「3つの組そのものを入れ替える操作」からなる。
位数の検算
中心化群は構造的には と見られる。したがって位数は となり,共役類サイズから得た値と一致する。
シロー部分群の見つけ方
3の部分は,3つの組を巡回させる操作から出る。組の中の入れ替えだけでは2べき位数しか作れないため, のように,組 を保ちながら回す元を探すとよい。
正規性の書き方
正規性は「生成元が共役で生成元集合の中に戻る」と示すのが最短である。各互換がどれか別の互換へ移ることを書けば,生成された部分群全体が共役で保たれることが従う。 ただし,正規性を示す相手は 全体ではなく である。中心化群の元だけが3つの組を組として保存するので,この限定を答案で落とさないようにする。
第2問 — トーラスの基本群と被覆空間
方針
トーラスは の直積なので,基本群も被覆空間も直積で考えるのが自然である。普遍被覆は円周の普遍被覆 を2本並べたものになる。
被覆空間の作り方
トーラスの被覆空間は,普遍被覆 を の部分群で割ると作れる。今回の は, を片方の整数平行移動だけで割ったものと見てもよい。
部分群との対応
連結被覆は,基点を固定すれば の部分群と対応する。基本群が になる例を作りたいなら,部分群 または に対応する被覆を考えるのが自然である。
答案上の注意
「 からトーラスへ指数写像で写す」とだけ書くと,被覆性と単連結性の確認が抜けやすい。局所的に小さい弧の積へ同相に写ること,そして が単連結であることを明記する。 第3問では「基本群が の空間」を答えるだけでは不十分で,それがトーラスへの被覆写像を持つことまで具体式で示す必要がある。
第3問 — ルーシェの定理と留数計算
方針
分母の零点を調べてから留数を計算する。単位円上では を主項として,残りをルーシェの定理で評価するのが定石である。
ルーシェの使いどころ
評価で必要なのは という厳密な不等式である。与えられた の評価により が出るため,境界上に余分な零点がないことも同時に保証される。
零点の個数の読み方
ルーシェの定理で数える零点は重複度込みである。 は原点に2位の零点を持つので, も単位円内に合計2個の零点を持つ。問1で原点がすでに2位と分かっているため,これだけで他の零点が排除できる。
留数の検算
分母は2位の零点,分子は1位の零点を持つので, は単純極を持つ。主部の先頭だけ見れば であり,留数 はこの形からすぐ検算できる。 積分路の向きが反時計回りなので係数は である。向きの確認を落とすと符号だけを誤る典型的な失点になる。
第4問 — 可測性と優収束定理
方針
可測性,ほとんど至る所収束,積分極限の3段階を順に確認する問題である。最後の積分極限は,有限測度集合上で有界関数に支配されるため,優収束定理を使う。
可測性の確認
合成関数の可測性は「開集合の逆像」を分解して示す。連続写像の逆像で開集合が開集合になり,可測関数の逆像でボレル集合が可測集合になる,という2段階である。
有限測度の役割
有界性だけでは, 全体で支配関数 は可積分とは限らない。ここで があるため, が可積分になり,優収束定理を適用できる。
よくある誤り
が一様連続である必要はない。各点ごとの収束を の連続性で移すだけなので,点wiseな連続性で十分である。一方,積分極限では点wise収束だけでは不足し,有限測度集合上での有界支配を明記する必要がある。