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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・調和振動子)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・剛体の回転運動。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
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東大 専門科目(物理学) 2026年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問量子力学周期ポテンシャルとバンドギャップ並進演算子の見方 / デルタ関数の接続条件あり
第2問熱・統計力学1次元高分子とイジング模型符号の確認 / 転送行列で端点補正が必要な理由あり
第3問電磁気学・回路回転管内の荷電質点系磁場の力の向き / 単振動条件あり
第4問—線形代数と偏微分方程式nilpotent 行列の見方 / 対角化不能の理由あり

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に7テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
2026年度で新しく出たテーマ
重積分と極座標・テイラー展開
2025年度のページを見る

第1問 — 量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ

方針

この問題は,周期ポテンシャル中の1次元電子を扱う標準的なクローニッヒ・ペニー模型である。 前半では並進対称性からブロッホ波数 kk が出ることを確認し,後半ではデルタ関数ポテンシャルの接続条件から分散式を作る。

並進演算子の見方

T=exp⁡(−iap/ℏ)T=\exp(-iap/\hbar) は,波動関数を aa だけ平行移動する演算子である。 演算子としては TxT−1=x−a TxT^{-1}=x-a を満たすため,ポテンシャルが V(x−a)=V(x)V(x-a)=V(x) ならハミルトニアンと可換になる。 この可換性が「エネルギー固有状態を同時にブロッホ状態として選べる」ことの本質である。

デルタ関数の接続条件

デルタ関数ポテンシャルでは,波動関数そのものは連続で,導関数だけが不連続になる。 式 −ϕ′′+vδ(y)ϕ=α2ϕ -\phi''+v\delta(y)\phi=\alpha^2\phi を微小区間で積分すると ϕ′(0+)−ϕ′(0−)=vϕ(0) \phi'(0^+)-\phi'(0^-)=v\phi(0) が得られる。この符号を間違えると,分散式の v2αsin⁡α\frac{v}{2\alpha}\sin\alpha の符号が逆になり,ギャップの位置も誤る。

バンドギャップの意味

v=0v=0 の自由粒子では,ブリルアンゾーン端 k=πk=\pi で右向き波と左向き波が縮退する。 周期ポテンシャルを入れると,この2つの波がブラッグ反射で混ざり,縮退が解ける。 ここで得た ΔE=ℏ2vma2 \Delta E=\frac{\hbar^2 v}{ma^2} は,弱いデルタ列ポテンシャルによるゾーン端ギャップの一次近似である。

解答

以下では,[X,Y]=XY−YX[X,Y]=XY-YX とし,位置・運動量演算子を x,px,p と書く。

  1. f(λ)=eλYXe−λY f(\lambda)=e^{\lambda Y}Xe^{-\lambda Y} とおくと, dfdλ=eλY[Y,X]e−λY \frac{df}{d\lambda} = e^{\lambda Y}[Y,X]e^{-\lambda Y} である。同じ計算を右辺に繰り返し用いると, dnfdλn∣λ=0=[Y,[Y,⋯[Y,X]⋯ ]]⏟n 個の Y \left.\frac{d^n f}{d\lambda^n}\right|_{\lambda=0} = \underbrace{[Y,[Y,\cdots [Y,X]\cdots]]}_{n\text{ 個の }Y} となる。したがって f(λ)f(\lambda) のテイラー展開から eYXe−Y=X+[Y,X]+12![Y,[Y,X]]+13![Y,[Y,[Y,X]]]+⋯ e^YXe^{-Y} = X+[Y,X]+\frac{1}{2!}[Y,[Y,X]] +\frac{1}{3!}[Y,[Y,[Y,X]]]+\cdots が従う。
  2. T=exp⁡(−iap/ℏ)T=\exp(-iap/\hbar) とおく。前問の公式で Y=−iap/ℏY=-iap/\hbar, X=xX=x とすると, [Y,x]=−iaℏ[p,x]=−iaℏ(−iℏ)=−a [Y,x] = -\frac{ia}{\hbar}[p,x] = -\frac{ia}{\hbar}(-i\hbar) = -a であり,これ以上の交換子は消える。よって TxT−1=x−a. TxT^{-1}=x-a. また [Y,p]=0[Y,p]=0 なので TpT−1=p TpT^{-1}=p である。
  3. V(x)V(x) は周期 aa をもつので, TV(x)T−1=V(x−a)=V(x) TV(x)T^{-1}=V(x-a)=V(x) である。さらに TpT−1=pTpT^{-1}=p より, THT−1=p22m+V(x)=H THT^{-1} = \frac{p^2}{2m}+V(x) = H となる。したがって [T,H]=0[T,H]=0 であり,TT と HH は同時対角化できる。 系の長さは NaNa で,周期境界条件を課しているため,aa だけの並進を NN 回行うと恒等変換になる。よって TT の固有値を λ\lambda とすれば λN=1. \lambda^N=1. したがって λ=e−ik,k=2πjN(j∈Z) \lambda=e^{-ik},\qquad k=\frac{2\pi j}{N}\quad (j\in \mathbb Z) と書ける。
  4. ϕ(y)=ψ(ay)\phi(y)=\psi(ay) とおくと ddx=1addy,δ(x−na)=1aδ(y−n) \frac{d}{dx}=\frac{1}{a}\frac{d}{dy}, \qquad \delta(x-na)=\frac{1}{a}\delta(y-n) である。シュレーディンガー方程式を −ℏ22md2ψdx2+V0∑n=0N−1δ(x−na)ψ=Eψ -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2\psi}{dx^2} + V_0\sum_{n=0}^{N-1}\delta(x-na)\psi = E\psi と書き,両辺に 2ma2/ℏ22ma^2/\hbar^2 をかけると −d2ϕdy2+v∑n=0N−1δ(y−n)ϕ(y)=α2ϕ(y) -\frac{d^2\phi}{dy^2} + v\sum_{n=0}^{N-1}\delta(y-n)\phi(y) = \alpha^2\phi(y) を得る。ただし v=2maV0ℏ2,α2=2mEa2ℏ2. v=\frac{2maV_0}{\hbar^2},\qquad \alpha^2=\frac{2mEa^2}{\hbar^2}.
  5. 0<y<10<y<1 ではポテンシャルがないので, ϕ(y)=Aeiαy+Be−iαy \phi(y)=Ae^{i\alpha y}+Be^{-i\alpha y} と書ける。TT の固有値を e−ike^{-ik} としたので,左側の極限値は ϕ(0−)=e−ikϕ(1−),ϕ′(0−)=e−ikϕ′(1−) \phi(0^-)=e^{-ik}\phi(1^-),\qquad \phi'(0^-)=e^{-ik}\phi'(1^-) である。連続条件から A+B=e−ik(Aeiα+Be−iα). A+B = e^{-ik}\left(Ae^{i\alpha}+Be^{-i\alpha}\right). また式を y=0y=0 の前後で積分すると ϕ′(0+)−ϕ′(0−)=vϕ(0) \phi'(0^+)-\phi'(0^-)=v\phi(0) である。したがって A−B=e−ik(Aeiα−Be−iα)+viα(A+B). A-B = e^{-ik}\left(Ae^{i\alpha}-Be^{-i\alpha}\right) + \frac{v}{i\alpha}(A+B). よって空欄は (a)=Aeiα+Be−iα,(b)=Aeiα−Be−iα,(c)=A+Biα (a)=Ae^{i\alpha}+Be^{-i\alpha},\qquad (b)=Ae^{i\alpha}-Be^{-i\alpha},\qquad (c)=\frac{A+B}{i\alpha} である。
  6. 前問の2式を A,BA,B に関する同次連立方程式とみなし,非自明解の条件を課す。 整理すると ∣1−e−ikeiα1−e−ike−iα1−e−ikeiα−v/(iα)−1+e−ike−iα−v/(iα)∣=0. \begin{vmatrix} 1-e^{-ik}e^{i\alpha} & 1-e^{-ik}e^{-i\alpha}\\ 1-e^{-ik}e^{i\alpha}-v/(i\alpha) & -1+e^{-ik}e^{-i\alpha}-v/(i\alpha) \end{vmatrix} =0. この式を展開して三角関数で整理すれば cos⁡k=cos⁡α+v2αsin⁡α \cos k = \cos\alpha+\frac{v}{2\alpha}\sin\alpha を得る。
  7. v=0v=0 では α=k+2πl \alpha=k+2\pi l が許される。特に k=πk=\pi では α0=π(2l+1) \alpha_0=\pi(2l+1) が境界点になる。小さい vv に対し α=α0+δ \alpha=\alpha_0+\delta とおく。与えられた近似を用いると,分散式は −1=−1+δ22−v2α0δ -1 = -1+\frac{\delta^2}{2} - \frac{v}{2\alpha_0}\delta となる。したがって δ=0,δ=vα0 \delta=0,\qquad \delta=\frac{v}{\alpha_0} の2つの解が現れる。エネルギーは E=ℏ2α22ma2 E=\frac{\hbar^2\alpha^2}{2ma^2} なので,2つの枝の間のエネルギー差は一次の vv までで ΔE=ℏ22ma2 2α0vα0=ℏ2vma2. \Delta E = \frac{\hbar^2}{2ma^2}\,2\alpha_0\frac{v}{\alpha_0} = \frac{\hbar^2 v}{ma^2}. すなわち,周期ポテンシャルを入れると k=πk=\pi の縮退が解け,バンドギャップが開く。

最終答

THT−1=H,T の固有値=e−ik,k=2πjN. THT^{-1}=H,\qquad T\text{ の固有値}=e^{-ik},\quad k=\frac{2\pi j}{N}. −ϕ′′(y)+v∑nδ(y−n)ϕ(y)=α2ϕ(y),cos⁡k=cos⁡α+v2αsin⁡α. -\phi''(y)+v\sum_n\delta(y-n)\phi(y)=\alpha^2\phi(y), \qquad \cos k=\cos\alpha+\frac{v}{2\alpha}\sin\alpha. k=π 近傍のギャップはΔE=ℏ2vma2. k=\pi\text{ 近傍のギャップは}\qquad \Delta E=\frac{\hbar^2 v}{ma^2}.

第2問 — 統計力学:1次元高分子とイジング模型

方針

前半は理想鎖のエントロピー弾性,後半は隣接相互作用を入れた1次元イジング模型である。 端点間距離 RR を直接固定する代わりに,外場 hh を入れて分配関数を計算し,最後にルジャンドル変換で固定伸長の自由エネルギーへ戻す。

符号の確認

r>0r>0 は右向き成分が多く,鎖が右へ伸びている状態である。 このときエントロピーは r=0r=0 より小さいため,エントロピー由来の力は原点へ戻す向きになる。 したがって FS≃−kBTar F_S\simeq-\frac{k_{\mathrm B}T}{a}r の符号は負でなければならない。

転送行列で端点補正が必要な理由

転送行列 Mσi,σi+1=exp⁡[βuσiσi+1+βha2(σi+σi+1)] M_{\sigma_i,\sigma_{i+1}} = \exp\left[ \beta u\sigma_i\sigma_{i+1} + \frac{\beta ha}{2}(\sigma_i+\sigma_{i+1}) \right] では,各結合の両端に場の寄与を半分ずつ割り当てている。 積 MN−1M^{N-1} を作ると内部スピンは左右の結合から半分ずつ受け取って1個分になるが,両端だけは半分しか数えられない。 その不足分が問4の指数因子である。

相互作用 uu の物理的意味

エネルギー −uσiσi+1-u\sigma_i\sigma_{i+1} なので,u>0u>0 は同じ向きを好む強磁性的相互作用である。 鎖は向きを保ちやすくなり,同じ RR まで伸ばすために必要なエントロピー的コストは小さくなる。 式ではばね定数が e−2βue^{-2\beta u} 倍になり,実効長 aˉ=aeβu\bar a=ae^{\beta u} が長くなることとして現れている。

統計力学:1次元高分子とイジング模型の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系

方針

前半は回転座標系での力のつり合い,後半は小角近似での初期運動の次数を追う問題である。 細かい符号よりも,どの力が管方向に効くかを先に整理すると計算が安定する。

磁場の力の向き

荷電質点は管とともに回転しているので,水平面内の速度は接線方向である。 磁場は鉛直下向きだから,ローレンツ力 Qv×BQ\mathbf v\times\mathbf B は半径方向,すなわち管方向に働く。 このため問1から問3では,磁場は有効的に回転による遠心力を弱める向きに入る。

単振動条件

平衡点のまわりで (m+M)x¨=Cx+定数 (m+M)\ddot x=Cx+\text{定数} の形になる。単振動になるには C<0C<0 が必要十分である。 ここを単に「復元力がある」と書くより, C=(m+M)ω2−QBω C=(m+M)\omega^2-QB\omega を明示して C<0C<0 と判定する方が確実である。

最後の次数評価

問7は係数を求める問題ではなく,時間依存の次数を問うている。 傾きは重力トルクで θ∝t2\theta\propto t^2,管内のすべりは x¨∝θ\ddot x\propto\theta なので x∝t4x\propto t^4 となる。 磁場が水平面内の回転を生む力は x˙\dot x に比例するため,角加速度は t3t^3 に比例し,最終的に ϕ∝t5\phi\propto t^5 となる。

力学・電磁気:回転管内の荷電質点系の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 線形代数と偏微分方程式

方針

第1部は nilpotent 行列の基本性質,第2部は1階準線形偏微分方程式の特性曲線法である。 どちらも「反復するとどこで止まるか」を見ると見通しがよい。

nilpotent 行列の見方

この AA は成分を1つ下に送るシフト行列である。 したがって AkA^k は kk 個下の対角成分だけを持ち,k=Nk=N で必ず零行列になる。 逆行列 (I−A)−1(I-A)^{-1} が有限和で終わるのはこのためであり,無限級数を収束性で議論する必要はない。

対角化不能の理由

零でない nilpotent 行列は対角化できない。 理由は単純で,固有値がすべて 00 だからである。 対角化可能なら対角行列は零行列になり,元の行列も零行列でなければならない。 今回 a≠0a\ne0 なので,これは矛盾する。

特性曲線法の意味

偏微分方程式 aux+buy=c au_x+bu_y=c は,曲面 u=u(x,y)u=u(x,y) の接平面がベクトル (a,b,c)(a,b,c) を含む,という幾何的条件である。 したがって,このベクトル場に沿って曲線を伸ばすと,その曲線は解曲面の上を走る。 これが特性曲線法の幾何的な意味である。

発散の機構

最後の小問では,解そのもの u=h(ξ)u=h(\xi) は特性曲線上で一定である。 しかし写像 ξ↦x=ξ+yh(ξ) \xi\mapsto x=\xi+yh(\xi) のヤコビアン 1+yh′(ξ)1+yh'(\xi) が0になると,異なる特性曲線が交差し,単一値の滑らかな解として表せなくなる。 その破綻が uxu_x の発散として現れる。

線形代数と偏微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度

  • 2026年度(このページ・全4問)

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  • 2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散

  • 2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト