東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2026年度 院試 解答例・解説
東京大学 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ
方針
この問題は,周期ポテンシャル中の1次元電子を扱う標準的なクローニッヒ・ペニー模型である。 前半では並進対称性からブロッホ波数 が出ることを確認し,後半ではデルタ関数ポテンシャルの接続条件から分散式を作る。
並進演算子の見方
は,波動関数を だけ平行移動する演算子である。 演算子としては を満たすため,ポテンシャルが ならハミルトニアンと可換になる。 この可換性が「エネルギー固有状態を同時にブロッホ状態として選べる」ことの本質である。
デルタ関数の接続条件
デルタ関数ポテンシャルでは,波動関数そのものは連続で,導関数だけが不連続になる。 式 を微小区間で積分すると が得られる。この符号を間違えると,分散式の の符号が逆になり,ギャップの位置も誤る。
バンドギャップの意味
の自由粒子では,ブリルアンゾーン端 で右向き波と左向き波が縮退する。 周期ポテンシャルを入れると,この2つの波がブラッグ反射で混ざり,縮退が解ける。 ここで得た は,弱いデルタ列ポテンシャルによるゾーン端ギャップの一次近似である。
第2問 — 統計力学:1次元高分子とイジング模型
方針
前半は理想鎖のエントロピー弾性,後半は隣接相互作用を入れた1次元イジング模型である。 端点間距離 を直接固定する代わりに,外場 を入れて分配関数を計算し,最後にルジャンドル変換で固定伸長の自由エネルギーへ戻す。
符号の確認
は右向き成分が多く,鎖が右へ伸びている状態である。 このときエントロピーは より小さいため,エントロピー由来の力は原点へ戻す向きになる。 したがって の符号は負でなければならない。
転送行列で端点補正が必要な理由
転送行列 では,各結合の両端に場の寄与を半分ずつ割り当てている。 積 を作ると内部スピンは左右の結合から半分ずつ受け取って1個分になるが,両端だけは半分しか数えられない。 その不足分が問4の指数因子である。
相互作用 の物理的意味
エネルギー なので, は同じ向きを好む強磁性的相互作用である。 鎖は向きを保ちやすくなり,同じ まで伸ばすために必要なエントロピー的コストは小さくなる。 式ではばね定数が 倍になり,実効長 が長くなることとして現れている。
第3問 — 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
方針
前半は回転座標系での力のつり合い,後半は小角近似での初期運動の次数を追う問題である。 細かい符号よりも,どの力が管方向に効くかを先に整理すると計算が安定する。
磁場の力の向き
荷電質点は管とともに回転しているので,水平面内の速度は接線方向である。 磁場は鉛直下向きだから,ローレンツ力 は半径方向,すなわち管方向に働く。 このため問1から問3では,磁場は有効的に回転による遠心力を弱める向きに入る。
単振動条件
平衡点のまわりで の形になる。単振動になるには が必要十分である。 ここを単に「復元力がある」と書くより, を明示して と判定する方が確実である。
最後の次数評価
問7は係数を求める問題ではなく,時間依存の次数を問うている。 傾きは重力トルクで ,管内のすべりは なので となる。 磁場が水平面内の回転を生む力は に比例するため,角加速度は に比例し,最終的に となる。
第4問 — 線形代数と偏微分方程式
方針
第1部は nilpotent 行列の基本性質,第2部は1階準線形偏微分方程式の特性曲線法である。 どちらも「反復するとどこで止まるか」を見ると見通しがよい。
nilpotent 行列の見方
この は成分を1つ下に送るシフト行列である。 したがって は 個下の対角成分だけを持ち, で必ず零行列になる。 逆行列 が有限和で終わるのはこのためであり,無限級数を収束性で議論する必要はない。
対角化不能の理由
零でない nilpotent 行列は対角化できない。 理由は単純で,固有値がすべて だからである。 対角化可能なら対角行列は零行列になり,元の行列も零行列でなければならない。 今回 なので,これは矛盾する。
特性曲線法の意味
偏微分方程式 は,曲面 の接平面がベクトル を含む,という幾何的条件である。 したがって,このベクトル場に沿って曲線を伸ばすと,その曲線は解曲面の上を走る。 これが特性曲線法の幾何的な意味である。
発散の機構
最後の小問では,解そのもの は特性曲線上で一定である。 しかし写像 のヤコビアン が0になると,異なる特性曲線が交差し,単一値の滑らかな解として表せなくなる。 その破綻が の発散として現れる。