東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2018年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)
全6問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・フーリエ変換・分配関数)。2017年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・フーリエ変換。
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- 解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき6問)
- 問題本文
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東大 専門科目(物理学) 2018年度 院試 過去問の出題内容(全6問)
この6問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。
2018年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| フーリエ変換 | 第6問 | 14大学・91問 | |
| 分配関数 | 第2問 | 16大学・88問 | |
| 結晶構造 | 第5問 | 9大学・44問 | |
| X線回折 | 第5問 | 3大学・9問 |
前年度(2017年度)との違い
- 大問数
- 2017年度 6問 → 2018年度 6問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・フーリエ変換
第1問 — 量子力学:2準位系と断熱遷移
反交差の見方
対角項だけなら で準位が交差するが,非対角項 があると固有値は平方根 で分裂し,最小ギャップ を持つ。これが反交差である。
断熱条件の大きさ
が変わるのは の狭い領域だけである。この領域を通過する時間が ,最小ギャップが 程度なので,動的位相の回転回数はおおよそ である。この数が十分大きいほど非断熱遷移は平均化される。
解答
基底を とし,まず を扱う。
- なので よって また であるから
- 固有方程式は である。したがって 固有状態を とおくと, より
- は実対称行列であり,異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する。実際, , から なので である。
次に を考える。この形は,対角項が で交差する2準位問題の標準形である。
- 固有値は したがってエネルギー間隔は 非対角項 により,もとの交差は最小間隔 の反交差に置き換わる。
- 下側固有状態を 直交する上側固有状態を と書く。時間依存 のもとで と展開する。実基底を選べば これをシュレーディンガー方程式へ代入して ただし である。 力学位相を取り除くため を導入すると
- 反交差近傍で が大きく変化する幅は であり,その時間幅は である。一方,この領域でも固有値間隔は である。非断熱遷移振幅は概略 の形を持つ。位相は時間スケール で速く回り,振幅因子 は でゆっくり変わる。条件 のもとでは,指数因子の振動により積分が相殺され,非断熱成分は小さい。 したがって初期に下側断熱状態にあった系は, でもほぼ同じ断熱枝に残る。
最終答
2準位の固有値は で,係数比は 反交差模型 では間隔が となり,断熱基底では非断熱結合は で決まる。条件 なら位相振動で遷移振幅が相殺され,初期の断熱状態にほぼ留まる。
第2問 — 統計力学:古典理想気体と低温量子気体
古典と量子の違い
古典気体では運動量が連続なので,低温にしても「温度を半分にしたときの相対的な状態数変化」が有限に残る。量子箱では準位間隔が有限で,十分低温では励起状態が凍結される。この差がエントロピー差の非零・零を分ける。
第一励起の選び方
箱の辺長が なので,長い 方向の量子化エネルギーが最も細かい。したがって第一励起は ではなく を から に上げる状態である。
第3問 — 電磁気:振動双極子と2波源干渉
放射場で残す項
遠方放射では や の近接場より, の項が最もゆっくり減衰する。ベクトルポテンシャルの空間微分では,振幅 の微分より位相 の微分が主要項になる。
2波源は経路差と位相差
強度分布は「幾何学的な経路差 」と「人工的に与える位相差」の和で決まる。位相制御で最大方向を動かす式は,この和を の整数倍にするだけで得られる。
第4問 — 素粒子・原子核:負ミューオンビームと捕獲反応
同じ運動量でも速度は違う
速度選別器を使う理由は,ローレンツ力の打ち消し条件が速度だけで決まるためである。同じ なら電子はほぼ光速,ミューオンはそれより遅く,パイ中間子はさらに別の速度になる。
寿命から捕獲率を出す
物質中で観測される寿命が短いのは,自然崩壊に加えて原子核捕獲という消失経路が増えるからである。割合は率で計算するのが安全だが,最終的には に簡約される。
第5問 — X線回折:格子和と構造因子
格子因子と構造因子を分ける
多数の単位格子が作る鋭いピーク位置は格子因子が決める。一方,各単位格子内で原子がどこにあるかは構造因子に入り,ピークの消滅や強度比を決める。体心格子で奇数次が消えるのは,単位格子内の2つの散乱波が逆位相になるためである。
変位測定の考え方
完全な体心配置なら奇数次ピークはゼロである。小さな変位があるとゼロだった量が に比例して現れるため,弱い奇数次ピークは変位に敏感な観測量になる。
第6問 — 宇宙物理:制動放射と熱的プラズマスペクトル
制動放射の周波数依存
1回の散乱だけを見ると,衝突時間より長い時間スケールの放射は速度変化の総量だけで決まる。高い周波数では衝突中の細部を見ようとするため,位相が打ち消し合って放射が弱くなる。
天体スペクトルから何を読むか
熱的制動放射の指数カットオフは温度計になる。密度は強度の絶対値に入り,水素プラズマでは電子密度と陽子密度がほぼ同じなので,体積が分かれば総質量へ換算できる。
東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度
量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法
量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開
量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波
量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰
2018年度(このページ・全6問)
量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉
量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随
2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散
2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト