東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2018年度 院試 解答例・解説
東京大学 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2018年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 量子力学:2準位系と断熱遷移
反交差の見方
対角項だけなら で準位が交差するが,非対角項 があると固有値は平方根 で分裂し,最小ギャップ を持つ。これが反交差である。
断熱条件の大きさ
が変わるのは の狭い領域だけである。この領域を通過する時間が ,最小ギャップが 程度なので,動的位相の回転回数はおおよそ である。この数が十分大きいほど非断熱遷移は平均化される。
第2問 — 統計力学:古典理想気体と低温量子気体
古典と量子の違い
古典気体では運動量が連続なので,低温にしても「温度を半分にしたときの相対的な状態数変化」が有限に残る。量子箱では準位間隔が有限で,十分低温では励起状態が凍結される。この差がエントロピー差の非零・零を分ける。
第一励起の選び方
箱の辺長が なので,長い 方向の量子化エネルギーが最も細かい。したがって第一励起は ではなく を から に上げる状態である。
第3問 — 電磁気:振動双極子と2波源干渉
放射場で残す項
遠方放射では や の近接場より, の項が最もゆっくり減衰する。ベクトルポテンシャルの空間微分では,振幅 の微分より位相 の微分が主要項になる。
2波源は経路差と位相差
強度分布は「幾何学的な経路差 」と「人工的に与える位相差」の和で決まる。位相制御で最大方向を動かす式は,この和を の整数倍にするだけで得られる。
第4問 — 素粒子・原子核:負ミューオンビームと捕獲反応
同じ運動量でも速度は違う
速度選別器を使う理由は,ローレンツ力の打ち消し条件が速度だけで決まるためである。同じ なら電子はほぼ光速,ミューオンはそれより遅く,パイ中間子はさらに別の速度になる。
寿命から捕獲率を出す
物質中で観測される寿命が短いのは,自然崩壊に加えて原子核捕獲という消失経路が増えるからである。割合は率で計算するのが安全だが,最終的には に簡約される。
第5問 — X線回折:格子和と構造因子
格子因子と構造因子を分ける
多数の単位格子が作る鋭いピーク位置は格子因子が決める。一方,各単位格子内で原子がどこにあるかは構造因子に入り,ピークの消滅や強度比を決める。体心格子で奇数次が消えるのは,単位格子内の2つの散乱波が逆位相になるためである。
変位測定の考え方
完全な体心配置なら奇数次ピークはゼロである。小さな変位があるとゼロだった量が に比例して現れるため,弱い奇数次ピークは変位に敏感な観測量になる。
第6問 — 宇宙物理:制動放射と熱的プラズマスペクトル
制動放射の周波数依存
1回の散乱だけを見ると,衝突時間より長い時間スケールの放射は速度変化の総量だけで決まる。高い周波数では衝突中の細部を見ようとするため,位相が打ち消し合って放射が弱くなる。
天体スペクトルから何を読むか
熱的制動放射の指数カットオフは温度計になる。密度は強度の絶対値に入り,水素プラズマでは電子密度と陽子密度がほぼ同じなので,体積が分かれば総質量へ換算できる。