院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2019年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。電磁気学・回路1問・量子力学1問・力学1問。テーマタグは10件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・フーリエ変換)。2018年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・フーリエ変換・分配関数。

最終更新:

このページで公開
解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東大 専門科目(物理学) 2019年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は電磁気学・回路1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問量子力学調和振動子と4次摂動なぜ整数固有値になるかあり
第2問—統計力学:2状態スピン鎖と転送行列この系は何に等価か / 熱力学極限の見通しあり
第3問力学2体問題と重力波による軌道減衰符号の落とし穴 / 減衰式の作り方あり
第4問マイケルソン干渉計とスペクトルの再構成干渉計がフーリエ変換になる理由 / ナイキスト周波数の直感あり
第5問ビーム減衰・中性パイ中間子崩壊・曲率測定減衰式は指数関数 / 不変量で質量を出すあり
第6問電磁気学・回路同軸ケーブルの伝送線路方程式と表皮効果伝送線路の最短手順 / 反射係数は覚えてよいあり

2019年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に10テーマが出ています。

前年度(2018年度)との違い

大問数
2018年度 6問 → 2019年度 6問
2018年度のページを見る

第1問 — 量子力学:調和振動子と4次摂動

なぜ整数固有値になるか

[N,a]=−a[N,a]=-a は「固有値が 1 下がる」ことを意味する。非負性(∥a∣n⟩∥2≥0\|a\ket{n}\|^2\ge0)により下方へ無限に続けられず,最下位 ∣0⟩\ket0 が存在して a∣0⟩=0a\ket0=0 となる。この構造が整数列を強制する。

x4x^4 の行列要素の取り方

摂動 2次では [数式] が必要だが,(a+a†)4∣0⟩(a+a^\dagger)^4\ket0 を ∣0⟩,∣2⟩,∣4⟩\ket0,\ket2,\ket4 の線形結合として作れば,必要な係数だけを抜き出せる。偶奇対称性で奇数 kk が消えることも計算量を大きく減らす。

量子力学:調和振動子と4次摂動の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列

この系は何に等価か

Si⋅Si+1∈{0,1}\mathbf S_i\cdot\mathbf S_{i+1}\in\{0,1\} なので「隣接が一致すると −J-J 得をする」2状態モデルであり,1次元Potts模型(q=2q=2)と同型である。転送行列で全てが一気に片づく。

熱力学極限の見通し

ZLZ_L が λ+L−1\lambda_+^{L-1} で支配されるため,1スピン当たりの自由エネルギーや内部エネルギーは log⁡λ+\log\lambda_+ のみで決まる。一方,相関は (λ−/λ+)L−1(\lambda_-/\lambda_+)^{L-1} で減衰し,相関長 ξ−1=−log⁡∣λ−/λ+∣\xi^{-1}=-\log|\lambda_-/\lambda_+| が自然に出てくる。

統計力学:2状態スピン鎖と転送行列の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰

符号の落とし穴

L=T−U\mathcal L=T-U で U=−GμM/rU=-G\mu M/r のため L\mathcal L に  +GμM/r\,+G\mu M/r が現れる。ここで ∂r(1/r)=−1/r2\partial_r(1/r)=-1/r^2 なので,運動方程式の右辺が −GM/r2-GM/r^2 になる点に注意する。

減衰式の作り方

与えられた E(a)E(a) と LGW(a)L_{\mathrm{GW}}(a) をそのまま E˙=(dE/da)a˙\dot E=(dE/da)\dot a に代入すればよい。最後に aa を PP へ変換するのはケプラー則だけで,微分方程式の形(べき指数)はほぼ自動的に決まる。

解答

2質点(質量 m1,m2m_1,m_2)の相対運動を平面極座標 (r,φ)(r,\varphi) で表し,縮約質量 μ=m1m2m1+m2\mu=\frac{m_1m_2}{m_1+m_2},全質量 M=m1+m2M=m_1+m_2 を用いる。ラグランジアンを L=12μr˙ 2+12μr2φ˙ 2+GμMr(U=−GμM/r) \mathcal L=\frac12\mu\dot r^{\,2}+\frac12\mu r^2\dot\varphi^{\,2}+\frac{G\mu M}{r} \qquad (U=-G\mu M/r) とする。

  1. Euler--Lagrange 方程式より ddt∂L∂r˙−∂L∂r=0⇒μr¨−μrφ˙ 2=−GμMr2. \frac{d}{dt}\frac{\partial\mathcal L}{\partial\dot r}-\frac{\partial\mathcal L}{\partial r}=0 \quad\Rightarrow\quad \mu\ddot r-\mu r\dot\varphi^{\,2}=-\frac{G\mu M}{r^2}. また φ\varphi は循環座標なので ddt∂L∂φ˙=0⇒μr2φ˙=J=const. \frac{d}{dt}\frac{\partial\mathcal L}{\partial\dot\varphi}=0 \quad\Rightarrow\quad \mu r^2\dot\varphi=J=\text{const.}
  2. エネルギーは E=r˙∂L∂r˙+φ˙∂L∂φ˙−L=12μr˙ 2+12μr2φ˙ 2−GμMr. E=\dot r\frac{\partial\mathcal L}{\partial\dot r}+\dot\varphi\frac{\partial\mathcal L}{\partial\dot\varphi}-\mathcal L =\frac12\mu\dot r^{\,2}+\frac12\mu r^2\dot\varphi^{\,2}-\frac{G\mu M}{r}. 角運動量は上式の通り J=μr2φ˙J=\mu r^2\dot\varphi。
  3. 角運動量保存は循環座標から直ちに従う(前問)。 エネルギー保存は ∂L/∂t=0\partial\mathcal L/\partial t=0 から一般論として従うが,直接確かめるなら dEdt=μr˙r¨+μrr˙φ˙ 2+μr2φ˙φ¨+GμMr2r˙ \frac{dE}{dt} =\mu\dot r\ddot r+\mu r\dot r\dot\varphi^{\,2}+\mu r^2\dot\varphi\ddot\varphi+\frac{G\mu M}{r^2}\dot r に運動方程式 μ(r¨−rφ˙ 2)=−GμM/r2\mu(\ddot r-r\dot\varphi^{\,2})=-G\mu M/r^2 と ddt(μr2φ˙)=0⇒μr2φ¨+2μrr˙φ˙=0\frac{d}{dt}(\mu r^2\dot\varphi)=0\Rightarrow \mu r^2\ddot\varphi+2\mu r\dot r\dot\varphi=0 を代入すれば dE/dt=0dE/dt=0 が得られる。
  4. 重力波放射を近似的に取り入れ,円軌道半径 a(t)a(t) で近似できるとする。 エネルギーが E(t)=−GμM2a(t) E(t)=-\frac{G\mu M}{2a(t)} で与えられ,重力波による放射パワー(単位時間あたりの放射エネルギー)が LGW=32G45c5μ2M3a5 L_{\mathrm{GW}}=\frac{32G^4}{5c^5}\frac{\mu^2M^3}{a^5} と与えられるとき, dEdt=−LGW \frac{dE}{dt}=-L_{\mathrm{GW}} である。左辺は dEdt=−GμM2ddt(1a)=GμM2a2dadt \frac{dE}{dt} =-\frac{G\mu M}{2}\frac{d}{dt}\left(\frac1a\right) =\frac{G\mu M}{2a^2}\frac{da}{dt} なので dadt=−645G3c5μM2a3. \frac{da}{dt} =-\frac{64}{5}\frac{G^3}{c^5}\frac{\mu M^2}{a^3}.
  5. 円軌道のケプラー則 Ω2=GMa3,P=2πΩ \Omega^2=\frac{GM}{a^3},\qquad P=\frac{2\pi}{\Omega} より a=(GM)1/3(P/2π)2/3a=(GM)^{1/3}(P/2\pi)^{2/3}。 これを用いて aa 微分方程式を PP に書き換えると dPdt=−A(PcP)5/3 \frac{dP}{dt}=-A\left(\frac{P_c}{P}\right)^{5/3} 型にまとめられる(A,PcA,P_c は問題文の定義に従う定数)。
  6. P˙=−A(Pc/P)5/3\dot P=-A(P_c/P)^{5/3} を解く。両辺に P5/3P^{5/3} を掛けると P5/3dPdt=−APc5/3. P^{5/3}\frac{dP}{dt}=-A P_c^{5/3}. 左辺は ddt(38P8/3)\frac{d}{dt}\bigl(\frac{3}{8}P^{8/3}\bigr) なので ddt(38P8/3)=−APc5/3. \frac{d}{dt}\left(\frac{3}{8}P^{8/3}\right)=-AP_c^{5/3}. 初期条件 P(0)=P0P(0)=P_0 で積分して P(t)8/3=P08/3−83APc5/3t. P(t)^{8/3}=P_0^{8/3}-\frac{8}{3}AP_c^{5/3}t. 合体(P→0P\to0)までの時間は tGW=38P08/3APc5/3. t_{\mathrm{GW}}=\frac{3}{8}\frac{P_0^{8/3}}{A P_c^{5/3}}.

最終答

μ(r¨−rφ˙2)=−GμM/r2\mu(\ddot r-r\dot\varphi^2)=-G\mu M/r^2,ddt(μr2φ˙)=0⇒J=μr2φ˙\frac{d}{dt}(\mu r^2\dot\varphi)=0\Rightarrow J=\mu r^2\dot\varphi.E=12μ(r˙2+r2φ˙2)−GμM/rE=\frac12\mu(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2)-G\mu M/r は保存.円軌道近似で E=−GμM/(2a)E=-G\mu M/(2a),E˙=−LGW\dot E=-L_{\mathrm{GW}} から a˙=−(64/5)G3μM2/(c5a3)\dot a=-(64/5)G^3\mu M^2/(c^5a^3).ケプラー則で P˙=−A(Pc/P)5/3\dot P=-A(P_c/P)^{5/3} と書け,解は P(t)8/3=P08/3−(8/3)APc5/3tP(t)^{8/3}=P_0^{8/3}-(8/3)AP_c^{5/3}t,合体時刻 tGW=38P08/3APc5/3t_{\mathrm{GW}}=\frac{3}{8}\frac{P_0^{8/3}}{AP_c^{5/3}}.

第4問 — 光学:マイケルソン干渉計とスペクトルの再構成

干渉計がフーリエ変換になる理由

出力強度は周波数ごとの干渉縞 cos⁡(8πνl/c)\cos(8\pi\nu l/c) を重ね合わせたものになる。従って ll を掃引して得た信号はスペクトル密度の cos⁡\cos 変換になり,逆変換でスペクトルを引き戻せる。

ナイキスト周波数の直感

ll を刻み幅 Δl/4\Delta l/4 で離散化すると,位相因子 ei2πνkΔl/ce^{i2\pi\nu k\Delta l/c} の「周波数」は νΔl/c\nu\Delta l/c で決まる。これが 2π2\pi 周期で同一視されるため,ν\nu は c/Δlc/\Delta l ごとに折り返して見える。

光学:マイケルソン干渉計とスペクトルの再構成の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 素粒子・原子核:ビーム減衰・中性パイ中間子崩壊・曲率測定

減衰式は指数関数

ΔI∝−IΔx\Delta I\propto -I\Delta x 型は常に I(x)=I0e−(定数)xI(x)=I_0e^{-\text{(定数)}x} になる。対数を取れば断面積 σ\sigma が直接出るので,最後は ln⁡(I0/I1)\ln(I_0/I_1) を忘れない。

不変量で質量を出す

π0\pi^0 の質量は実験室系での運動状態に依らない不変量 m2c4=(p1+p2)2m^2c^4=(p_1+p_2)^2 で求めるのが最短で,光子の p2=0p^2=0 が計算を劇的に簡単にする。

素粒子・原子核:ビーム減衰・中性パイ中間子崩壊・曲率測定の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 電磁気:同軸ケーブルの伝送線路方程式と表皮効果

伝送線路の最短手順

2本の一次偏微分方程式は,相互に xx 微分・代入するだけで波動方程式になる。波速 vv は常に 1/LC1/\sqrt{LC} で,幾何依存は L,CL,C に押し込められる。

反射係数は覚えてよい

終端での「電圧の反射係数」Γ=(r−Z0)/(r+Z0)\Gamma=(r-Z_0)/(r+Z_0) は伝送線路の基本公式で,パルスでも正弦波でも同じ。整合(r=Z0r=Z_0)なら Γ=0\Gamma=0 で反射が消える。

電磁気:同軸ケーブルの伝送線路方程式と表皮効果の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度

  • 2026年度(全4問)

    量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系

  • 2025年度(全4問)

    量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法

  • 2024年度(全4問)

    量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット

  • 2023年度(全4問)

    量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開

  • 2022年度(全4問)

    量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過

  • 2020年度(全6問)

    二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波

  • 2019年度(このページ・全6問)

    量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰

  • 2018年度(全6問)

    量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉

  • 2017年度(全6問)

    量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随

  • 2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度

  • 2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換

  • 2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波

  • 2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動

  • 2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散

  • 2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開

    量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト