東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問。数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子。
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収録15年度分の解答PDF:東京大学 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学)(¥3,200・紙面見本あり)
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- 解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき4問)
- 問題本文
- 非収録
東大 専門科目(物理学) 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)
この4問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。
2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に8テーマが出ています。
前年度(2023年度)との違い
- 大問数
- 2023年度 4問 → 2024年度 4問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子・ハミルトン形式
第1問 — 量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態
方針
反転調和振動子では,通常の調和振動子と違って片方の線形結合が指数的に増大し,もう片方が指数的に減衰する。 量子論ではこの伸長・圧縮がスクイーズド状態として現れる。
古典極限との対応
座標表示の波動関数が の形を持つとき,位相 は古典作用に対応する。 ここでは長時間後に実幅が消え,位相だけが へ近づく。これは古典軌道が に近づくことと同じ内容である。
スクイーズド状態の読み方
はスクイーズの強さ, はスクイーズされる方向を指定する。 今回の時間発展では と増大し, に固定される。 その結果,位相空間で片方向に伸び,直交方向に縮むガウス状態が得られる。
解答
- 古典ハミルトニアンを と書くと,ハミルトン方程式は である。したがって よって の初期値がゼロでなければ,十分時間が経った後には の成分が支配的になり, に沿って運動する。
- 作用関数は である。十分時間が経った後には なので, に漸近する。
- とおくと,
- 逆に である。これを代入すると
- 真空の時間発展は 一方, では よって となる。したがって
- スクイーズド状態を とする。 与えられた公式の逆変換より したがって を で書くと よって
- , とする。このとき 座標表示で を用いると よって,規格化定数を除いて
- では したがって波動関数の位相は に近づく。これは問2で得た古典作用 と一致する。スクイーズド状態は,古典的に不安定な方向へ広がり,安定な方向へ圧縮される状態であり,長時間後には古典軌道 に対応する位相を持つ。
最終答
第2問 — 統計力学:理想気体と吸着
方針
前半は単原子理想気体の標準計算で,後半は1サイトに高々1個だけ吸着するラングミュア吸着である。 同じ化学ポテンシャル を気体側と吸着サイト側で共有することが,両者をつなぐ要点である。
示量性と
分子の非識別性による を入れないと,自由エネルギーに 型の不自然な項が残り,示量性が崩れる。 ここで が成り立つことは,熱力学量として正しい形になっている確認である。
吸着率の形
は,低圧では と圧力に比例し,高圧では と飽和する。 吸着サイト数が有限で,各サイトに1個しか入れないという仮定が,この飽和を生む。
第3問 — 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
方針
前半は束縛電荷の強制振動によるレイリー散乱,後半は電場勾配による誘起双極子の力である。 どちらも,電場が粒子に双極子振動を作るという同じ出発点から理解できる。
レイリー散乱の色依存性
では,変位振幅はほぼ一定で,加速度だけが に比例する。 放射強度は加速度の二乗に比例するため,散乱は に比例する。 このため短波長の青い光は,長波長の赤い光より強く散乱される。
光ピンセットの力
誘起双極子では であり,力はおおまかに で決まる。 つまり電場そのものではなく,強度の勾配が粒子を動かす。 ガウス型ビームでは強度が中心で最大なので,粒子は中心へ引き込まれる。
第4問 — 数学:フーリエ変換と行列の固有値
方針
前半はコーシー分布型関数のフーリエ変換,後半は だけで決まる3次行列の固有値問題である。 フーリエ変換では,極の位置と半円を閉じる向きが最重要である。
フーリエ変換の規約
ここでは という規約なので,逆変換には が入る。 この規約では となる。最後に から と戻すところで,規約を混同しないことが重要である。
行列問題の見通し
特性多項式が に因数分解するため,固有値の議論はほぼ の性質に帰着する。 重複が起きても固有ベクトルが十分あるとは限らない。 今回の では重複固有値の固有空間が1次元しかなく,対角化できない。
東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度
量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法
2024年度(このページ・全4問)
量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開
量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波
量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰
量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉
量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随
2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散
2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト