東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)
全6問。電磁気学・回路1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・分配関数・静電場)。2019年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・分配関数・マクスウェル方程式。
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- 解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
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- 途中式と最終答(最終答つき6問)
- 問題本文
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東大 専門科目(物理学) 2020年度 院試 過去問の出題内容(全6問)
この6問の分野は電磁気学・回路1問です。
2020年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に8テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 分配関数 | 第2問 | 16大学・88問 | |
| 静電場 | 第3問 | 16大学・81問 | |
| RC回路の過渡応答 | 第4問 | 12大学・44問 | |
| フェルミ・ボース統計 | 第2問 | 13大学・27問 | |
| オペアンプ回路 | 第5問 | 8大学・26問 | |
| マクスウェル方程式 | 第3問 | 8大学・26問 | |
| RLC回路 | 第5問 | 7大学・13問 |
前年度(2019年度)との違い
- 大問数
- 2019年度 6問 → 2020年度 6問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・分配関数・マクスウェル方程式
- 2020年度で新しく出たテーマ
- 静電場・RC回路の過渡応答・フェルミ・ボース統計・オペアンプ回路・RLC回路
第1問 — 二状態系と相関
一重項の使い方
この問題の中心は,一重項状態では同じ方向の測定結果が必ず反対になることにある。 方向で書かれた状態だけを見ると 方向専用の性質に見えるが,一重項は回転に対して形を保つため, 方向や任意の角度 でも同じ反相関が成り立つ。
同時確率の作り方
相関だけでなく可能な結果も問われる場合は,周辺分布が であることを書くと安全である。 二つの符号 の同時確率は と置ける。ここで である。本問では なので, 解答中の式が得られる。
Mermin型の矛盾
決定論的な仮定では,実際に測っていない角度の値まで各試行で決まっていると考える。 このとき同じ角度での反相関から, 側の三つの値は 側の三つの値の反符号でなければならない。 すると平均は という形になり, になれない。この「負にしかならない」という点が, 量子力学的平均 との決定的な違いである。
解答
設問1。 の固有値は であり, は固有値 の固有状態である。したがって である。
設問2。 の固有値も である。 に対して なので,期待値は である。実際, の固有状態を と書くと,どちらも確率 で得られる。
設問3。 は を満たすので,測定値は である。また となる。よって各結果の確率は である。
以後,二体系の状態を とする。
設問4。 の同時測定であり,可能な組は で,それぞれ確率は である。したがって
設問5。上の状態は 方向でも反相関をもつ。実際, と書けるため, がそれぞれ確率 で得られ,
設問6。同じ角度 の測定では一重項の反相関により である。各組の確率は ずつであり,積の期待値は である。
設問7。角度が と異なるときは である。周辺分布はどちらも なので,同時確率は と書ける。
設問8。 をそれぞれ から等確率で選ぶ。 同じ角度の組は3通りで,それぞれ積の期待値は である。異なる角度の組は6通りで, だから積の期待値は である。よって全体平均は
設問9。決定論的に があらかじめ決まっているとする。角度は独立に等確率で選ばれるので したがって 一般に の8通りでは であり,二乗は必ず正である。 よって決定論的仮説の予言は常に負である。一方,設問8の量子力学的結果は なので,両者は矛盾する。
最終答
決定論的な事前値の仮定では となるため,量子力学の結果と両立しない。
第2問 — 理想気体とフェルミ気体
古典気体で落としやすい点
は単なる係数ではなく,熱力学極限で自由エネルギーを示量的にするために必要である。 この因子を落とすと,圧力のような一部の式は正しく見えても,エントロピーや混合の議論で矛盾が出る。
高温フェルミ気体は古典気体へ戻る
非縮退条件は と同値である。この条件下ではフェルミ分布の分母の が無視でき, Maxwell--Boltzmann 分布に戻る。設問7の積分は,状態密度を使っても直接 空間で積分しても同じ結果になる。
低温のグラフの意味
フェルミ気体は でも粒子がフェルミ面まで詰まっているが,エントロピーは状態数の不確定性を表す量なので ゼロから始まる。低温で熱的に励起できるのはフェルミ面近くの幅 の粒子だけであり, そのため ,したがって になる。
第3問 — 同軸ケーブルのTEM波
TEMモードの構造
同軸ケーブルのTEM波は,静電場・静磁場の断面分布をそのまま進行波にした形になる。 そのため電場は半径方向に ,磁場は方位角方向に で減衰する。この は Maxwell方程式の発散条件から直接出る。
特性インピーダンス
は電圧と電流の比であり,場の大きさ や位置 には依存しない。 同軸ケーブルでは幾何因子 と媒質因子 だけで決まる。
パルスが崩れない条件
波束が崩れないのは, を波束の幅の範囲で一次関数とみなせるときである。 二次以上の項が効くと, ごとに群速度が異なり,包絡線が広がる。この問題では一次近似を明示しているので, 包絡線は によって平行移動するだけである。
第4問 — 熱容量測定
熱回路として見る
この問題は電気回路の一次RC応答と完全に対応している。温度差 が電圧,熱容量 が容量, 熱抵抗 が抵抗に対応する。時定数が になるのはこの対応からすぐに読める。
図から読む量
パルス法では,飽和温度上昇から ,立ち上がりまたは減衰の時定数から を読む。 本問の図は1桁精度でよいので,細かな読み取りよりも「温度上昇量」と「半減時間」を押さえることが重要である。
交流法の利点
交流法では,定常的な温度揺らぎの振幅と位相を見る。直流ドリフトや環境温度のゆっくりした変動を避けやすく, 小さい熱容量を測るときに有利である。ただし入力が電圧で与えられるため,熱入力の振動周波数は電圧の2倍になる。
第5問 — 熱雑音と光検出回路
雑音も増幅される
OPアンプの利得 は信号にも抵抗雑音にも同じように掛かる。そのため,この単純なモデルでは 出力で信号雑音比を作ると は消える。利得を上げれば信号電圧は大きくなるが,抵抗由来の雑音も同じ比率で大きくなる。
並列共振回路の役割
共振時には と の虚数アドミタンスが打ち消し合い,回路のインピーダンスは最大値 になる。 光電流の変調成分を電圧に変換するには が効くので,検出したい角周波数を に合わせると感度が高くなる。
二乗平均と振幅の区別
最後の設問は「振幅 」を問う一方で,信号と雑音の比較は二乗平均で行う。 正弦波の二乗平均には が入るため,ここを落とすと答えが だけずれる。
第6問 — 相対論的運動学と粒子識別
しきい値計算の鉄則
しきい値では,重心系で最終粒子の相対運動が消える。固定標的問題では実験室系で考えると複雑だが, 不変量 を使えば一行で重心系の条件に移せる。
保存則の見方
起こらない反応の判定では,エネルギー以前に電荷,バリオン数,レプトン数などの保存則を確認する。 本問の a) は電荷,b) はバリオン数を見れば直ちに排除できる。
粒子識別で重要な時間スケール
同じ運動量でも重い粒子ほど速度が小さいため,飛行時間差が生じる。ただし本問の差は約 と短い。 したがって信号幅が数十 ns 以上ある検出器では分離が難しく,速い応答をもつ検出器を選ぶ必要がある。
東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度
量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法
量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開
量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
2020年度(このページ・全6問)
二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波
量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰
量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉
量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随
2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散
2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト