東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問。数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
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- 解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき4問)
- 問題本文
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東大 専門科目(物理学) 2023年度 院試 過去問の出題内容(全4問)
この4問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第2・4問 | 25大学・544問 | |
| 留数定理 | 第4問 | 18大学・126問 | |
| 調和振動子 | 第1問 | 16大学・110問 | |
| ハミルトン形式 | 第1問 | 15大学・72問 | |
| スピン | 第2問 | 11大学・17問 |
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 4問 → 2023年度 4問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
第1問 — 量子力学:2次元調和振動子と角運動量
交換関係から全体を作る
この問題では波動関数を直接解く必要はない。 消滅・生成演算子を導入した時点で,ハミルトニアン,エネルギー間隔,縮退度は数演算子の問題になる。 2次元であるため零点エネルギーが の2個分になり, 基底エネルギーが になる点を落としやすい。
角運動量の対角化
は直交座標方向の励起を作る演算子である。 一方,角運動量を対角化するには,回転に対して位相だけを受ける円偏光型の組合せ を使うのが自然である。 この変換により,エネルギーは励起数 だけで決まり,角運動量は 右回りと左回りの励起数の差で決まる。
状態の並び
低いエネルギー準位を図示すると,横方向には角運動量が等間隔に並ぶ。
同じ の中で と2刻みになるのは, が , が を加えるからである。
解答
消滅・生成演算子を用いる。座標と運動量は を満たす。
- 定義から である。したがって また である。
- 各方向について なので 数演算子 を用いれば となる。
- 真空状態を で定めると, よって基底エネルギーは である。
- 全量子数を とおくと, を固定したとき と選べるので,縮退度は である。低い順には となる。
- 角運動量は と書ける。これは の間で量子数を移すだけで,総量子数 は変えない。実際, である。
- まず が成り立つ。したがって と選べば よって , であり,確かに である。
- , とする。 交換関係から また である。したがって も同時固有状態である。
- 真空は を満たすので に対して である。 では, は である。
最終答
第2問 — 統計力学:ワイル型分散と低温比熱
状態密度の考え方
この問題の中心は,線形分散 から3次元の状態密度 が出ることである。 通常の自由電子のような 分散ではなく,-空間の球の体積を エネルギーに変換するだけでよい。
負のエネルギー枝の扱い
では正負の枝が対称に現れる。 そのため には が入る。 第1項だけにすると,正のエネルギー枝だけを数えたことになり,内部エネルギーの 基準エネルギーと温度依存性を正しく得られない。
低温比熱の意味
得られた 則は,フォノンのデバイ比熱と同じ温度依存をもつ。 ただし起源は格子振動ではなく,点状のフェルミ面のまわりで電子の状態密度が に比例して小さくなることにある。 低温でどの程度の状態が熱励起に参加できるかを考えると,通常金属との違いが見えやすい。
第3問 — 電磁気学:多重極展開
多重極展開の順序
遠方場では,電荷の総和,双極子モーメント,四重極子モーメントの順に 最初にゼロでない量が支配的になる。 双極子ではポテンシャルが ,電場が で減衰する。 今回の四重極子では なので,次の のポテンシャルが主役になる。
符号の確認
双極子モーメントは負電荷から正電荷へ向かう向きに取る。 図の双極子では である。 この符号を逆にすると,ポテンシャル,電場,エネルギー最小の角度がすべて反転する。 最終的に 上では原点の双極子が 方向の電場を作るので, 上側の双極子も 方向を向くとエネルギーが最小になる。
四重極子間相互作用
四重極子同士のエネルギーでは,電場そのものではなく電場勾配が効く。 テンソルの主軸方向を取り違えると係数だけでなく符号も変わる。 軸向き四重極子では であり, 軸向きに回すと になる。この入れ替えにより,最後のエネルギー比較で 軸向き配置の方が安定になる。
第4問 — 数学:複素積分と行列指数
単位円への変換
と置く問題では, を必ず同時に使う。 の を落とすと,極の次数と留数がずれてしまう。 積分経路は単位円を反時計回りに回るため,留数定理の符号は通常通り である。
どの極が内側にあるか
2次式の根はどちらも負の実数である。 そのうち だけが単位円の内側に入る。 さらに から が出るため, の極も忘れてはいけない。
行列指数の見方
行列 は第1・第4成分の2次元ブロックと,第2成分,第3成分に分解して見ればよい。 第1・第4成分のブロックは実回転行列 である。 ただし求めるのは なので,通常の三角関数だけでなく双曲線関数が現れる。 固有値が複素数であることを反映している。
東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度
量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法
量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
2023年度(このページ・全4問)
量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開
量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波
量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰
量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉
量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随
2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散
2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト