東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2023年度 院試 解答例・解説
東京大学 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 量子力学:2次元調和振動子と角運動量
交換関係から全体を作る
この問題では波動関数を直接解く必要はない。 消滅・生成演算子を導入した時点で,ハミルトニアン,エネルギー間隔,縮退度は数演算子の問題になる。 2次元であるため零点エネルギーが の2個分になり, 基底エネルギーが になる点を落としやすい。
角運動量の対角化
は直交座標方向の励起を作る演算子である。 一方,角運動量を対角化するには,回転に対して位相だけを受ける円偏光型の組合せ を使うのが自然である。 この変換により,エネルギーは励起数 だけで決まり,角運動量は 右回りと左回りの励起数の差で決まる。
状態の並び
低いエネルギー準位を図示すると,横方向には角運動量が等間隔に並ぶ。
同じ の中で と2刻みになるのは, が , が を加えるからである。
第2問 — 統計力学:ワイル型分散と低温比熱
状態密度の考え方
この問題の中心は,線形分散 から3次元の状態密度 が出ることである。 通常の自由電子のような 分散ではなく,-空間の球の体積を エネルギーに変換するだけでよい。
負のエネルギー枝の扱い
では正負の枝が対称に現れる。 そのため には が入る。 第1項だけにすると,正のエネルギー枝だけを数えたことになり,内部エネルギーの 基準エネルギーと温度依存性を正しく得られない。
低温比熱の意味
得られた 則は,フォノンのデバイ比熱と同じ温度依存をもつ。 ただし起源は格子振動ではなく,点状のフェルミ面のまわりで電子の状態密度が に比例して小さくなることにある。 低温でどの程度の状態が熱励起に参加できるかを考えると,通常金属との違いが見えやすい。
第3問 — 電磁気学:多重極展開
多重極展開の順序
遠方場では,電荷の総和,双極子モーメント,四重極子モーメントの順に 最初にゼロでない量が支配的になる。 双極子ではポテンシャルが ,電場が で減衰する。 今回の四重極子では なので,次の のポテンシャルが主役になる。
符号の確認
双極子モーメントは負電荷から正電荷へ向かう向きに取る。 図の双極子では である。 この符号を逆にすると,ポテンシャル,電場,エネルギー最小の角度がすべて反転する。 最終的に 上では原点の双極子が 方向の電場を作るので, 上側の双極子も 方向を向くとエネルギーが最小になる。
四重極子間相互作用
四重極子同士のエネルギーでは,電場そのものではなく電場勾配が効く。 テンソルの主軸方向を取り違えると係数だけでなく符号も変わる。 軸向き四重極子では であり, 軸向きに回すと になる。この入れ替えにより,最後のエネルギー比較で 軸向き配置の方が安定になる。
第4問 — 数学:複素積分と行列指数
単位円への変換
と置く問題では, を必ず同時に使う。 の を落とすと,極の次数と留数がずれてしまう。 積分経路は単位円を反時計回りに回るため,留数定理の符号は通常通り である。
どの極が内側にあるか
2次式の根はどちらも負の実数である。 そのうち だけが単位円の内側に入る。 さらに から が出るため, の極も忘れてはいけない。
行列指数の見方
行列 は第1・第4成分の2次元ブロックと,第2成分,第3成分に分解して見ればよい。 第1・第4成分のブロックは実回転行列 である。 ただし求めるのは なので,通常の三角関数だけでなく双曲線関数が現れる。 固有値が複素数であることを反映している。