東京大学 院試 過去問 解答例
東大 理学系研究科 物理学専攻 専門科目(物理学) 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問。数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・フェルミ・ボース統計)。2020年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・フェルミ・ボース統計。
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- 解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき4問)
- 問題本文
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東大 専門科目(物理学) 2022年度 院試 過去問の出題内容(全4問)
この4問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。
2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に2テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1・4問 | 25大学・544問 | |
| フェルミ・ボース統計 | 第2問 | 13大学・27問 |
前年度(2020年度)との違い
- 大問数
- 2020年度 6問 → 2022年度 4問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・フェルミ・ボース統計
第1問 — 量子力学:不確定性関係と最小不確定波束
ガウス波束が基準になる理由
位置幅を広げると運動量幅が狭くなり,位置幅を狭めると運動量幅が広がる。 この関係を最も効率よく満たすのがガウス関数である。 今回の波動関数は を直接満たしており,最小不確定波束の典型例になっている。
不等式の証明の核
は,ノルムの非負性そのものである。 ここで と置くと,任意の に対して非負な2次式が現れる。 判別式を使うだけで不確定性関係が出るため,証明の流れを暗記するより, 「非負なノルムから2次式を作る」と理解しておくと応用しやすい。
等号成立条件
等号が成立するのは となる状態である。 これは1階微分方程式なので,解は必ずガウス関数になる。 平均位置 と平均運動量 は不確定性積を変えず,波束の中心と位相勾配を動かすだけである。
解答
- 与えられた波動関数は実偶関数であるから である。また なので 運動量については より したがって このガウス波束は不確定性関係の等号を満たす。
- 任意の状態 に対して である。
- とおくと なので が任意の実数 で成り立つ。この2次式が常に非負であるためには判別式が 非正でなければならないから よって が得られる。
- が固有値0を持つには,規格化可能な解 が存在すればよい。, と書くと したがって である。規格化可能であるためには が必要である。この状態では となるため,設問3で得た2次式の最小値が0になり, 不確定性関係の等号が成立する。
- とおくと,規格化された最小不確定状態は である。ここで は任意の実数であり,それぞれ波束中心と平均運動量を表す。
最終答
第2問 — 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮
凝縮の判定
ボース分布では,化学ポテンシャルは最低一粒子エネルギーを超えられない。 スピンなし・基底エネルギー0なら であり, のとき励起状態が収容できる粒子数が最大になる。 この最大値より粒子数が多いと,余りが基底状態に入る。
状態密度の温度依存
3次元自由粒子では である。 そのため励起粒子数は ,内部エネルギーは に比例する。 凝縮相の比熱指数 はこの状態密度の指数から来ている。
スピンと磁場
外部磁場がないスピン自由度は,単に状態数を 倍にする。 状態数が増えると同じ粒子数をより低温でも励起状態に入れられるため,転移温度は下がる。 磁場をかけると縮退が解け,強磁場では最低スピン状態だけが有効になるため,転移温度はスピンなしの場合へ戻る。
第3問 — 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
境界条件の使い分け
この問題では電場と磁束密度の接線成分をそろえるのが最短である。 透磁率が等しいため, の接線成分をそのまま連続として使える。 反射波では進行方向が反転するので, の符号が変わる点に注意する。
斜入射で保存される量
境界面上で位相が一致し続ける必要があるため,境界面に平行な波数成分は反射・透過で同じになる。 ここでは 方向成分が保存され,透過側の速さが変わることで 方向成分だけが変わる。
全反射と浸透波
最後の設定では,透過側で実数の を取れない。 これは進行波が存在しないという意味であり,境界近くには で減衰するエバネッセント波が残る。 電場は完全にゼロになるのではなく,距離とともに指数関数的に小さくなる。
第4問 — 数学:上半平面の複素解析と実行列の固有値
小半円の符号
上半平面で正則な関数に対して,実軸上の極を上から避けるか下から避けるかで の符号が変わる。 では主値積分に が加わり,全体が0になる。 この結果から主値積分が だと分かり,実部と虚部を比べると ヒルベルト変換型の関係式が得られる。
ランク1摂動として見る
は,単位ベクトル 方向だけ固有値を から に変える行列である。 その直交補空間では何も起きない。 したがって行列式や符号の変化は,ほぼ1次元の問題として扱える。
微分方程式の安定性
では, に負の固有値があると対応する成分は で増大する。 逆に全ての固有値を正にできれば,全成分が指数減衰する。 最後の設問は, の負方向を の負の固有方向に合わせて符号を打ち消す,という発想で解ける。
東大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録15年度
量子力学:周期ポテンシャルとバンドギャップ / 統計力学:1次元高分子とイジング模型 / 力学・電磁気:回転管内の荷電質点系
量子力学:振動摂動と和則 / 統計力学:調和トラップ中のボース気体 / 電磁気学:ポアソン方程式と鏡像法
量子力学:反転調和振動子とスクイーズド状態 / 統計力学:理想気体と吸着 / 電磁気:レイリー散乱と光ピンセット
量子力学:2次元調和振動子と角運動量 / 統計力学:ワイル型分散と低温比熱 / 電磁気学:多重極展開
2022年度(このページ・全4問)
量子力学:不確定性関係と最小不確定波束 / 統計力学:理想ボース気体とボース・アインシュタイン凝縮 / 電磁気学:平面電磁波の反射と透過
二状態系と相関 / 理想気体とフェルミ気体 / 同軸ケーブルのTEM波
量子力学:調和振動子と4次摂動 / 統計力学:2状態スピン鎖と転送行列 / 力学・重力:2体問題と重力波による軌道減衰
量子力学:2準位系と断熱遷移 / 統計力学:古典理想気体と低温量子気体 / 電磁気:振動双極子と2波源干渉
量子力学:2粒子振動子と急変 / 統計力学:反強磁性イジング模型の平均場 / 力学:二重振り子の固有振動と断熱追随
2016年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:局在磁束とゼロモード / 統計力学:調和振動子の古典極限と量子補正 / 力学:ロケット方程式と一定固有加速度
2015年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:円周上のデルタ関数ポテンシャル / 統計力学:高分子鎖の配位数と揺らぎ応答 / 電磁気学:運動する電荷列と場のローレンツ変換
2014年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:クーロン束縛状態と一様磁場中の荷電粒子 / 統計力学:二次元フェルミ粒子とギャップをもつ二帯模型 / 電磁気学:誘電体と良導体の境界における平面波
2013年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:調和振動子とコヒーレント状態 / 統計力学:理想ボース気体と断熱磁化 / 電磁気学:ポテンシャル、ゲージ変換、荷電粒子の束縛運動
2012年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:スピンと回転磁場 / 統計力学:剛体回転子とオルト・パラ水素 / 電磁気学:ローレンツ振動子と屈折率分散
2011年度(全6問)解答・最終答まで全文公開
量子力学:分離型ポテンシャルの束縛状態 / 統計力学:三角形上のスピン / 電磁気学:荷電粒子のドリフト