神戸大学 院試 過去問 解答例
神戸大 理学研究科 数学専攻 数学 2026年度 院試 解答例・解説
神戸大学 理学研究科 数学専攻 数学 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 数学I 問題1:固有値と対角化
方針
特性多項式を因数分解して固有値を出し,重複が起こる場合だけ固有空間の次元を確認する。 最後のべき等式は,対角化後に固有値ごとの等式へ落とすのが最も短い。
重複固有値の扱い
三つの固有値が相異なる場合,対角化可能性は自動的に従う。ここで見落としやすいのは の場合である。このとき固有値 が二重になるので, 「固有値がある」だけでは不十分であり, を確認する必要がある。
べき等式の判定
と対角化できるなら, は と同値である。よって各対角成分 について がすべての で必要十分となる。 この条件を満たす実数は だけである。
検算
では固有値は であるから,確かに各固有値は を満たす。 では固有値に が含まれるため, 対角化可能ではあるが最後の条件は満たさない。
第2問 — 数学I 問題2:整数行列と商群
方針
整数行列による写像は, の加法と行列積の分配法則から準同型になる。 後半は「一次結合 がどの整数全体を動くか」を最大公約数で表す問題である。
逆行列が整数行列になる理由
実数ベクトル空間上なら で逆行列が存在するが, の群同型では逆写像も整数値を保たなければならない。 ここでは なので余因子行列そのものが逆行列になり,分母が出ない。
像の生成元
の全体が になることはベズーの等式の標準的な使い方である。 とすれば はともに の倍数なので は の倍数であり, 逆に となる整数 が存在するから, 自身も像に現れる。
商群の確認
商を直接見るよりも, という全射を作って核を読む方が安全である。 核がちょうど であることを書けば,第一同型定理で結論が出る。
第3問 — 数学I 問題3:重積分と近似評価
方針
重積分は領域が円 から原点を除いた部分なので,極座標にすると と簡単になる。近似評価は一次近似との差を二次の剰余で挟む。
積分の別解
領域 は 軸対称であり,被積分関数は について奇関数である。 したがって対称性だけでも積分値は と分かる。答案では,原点を除く条件は一点の除去なので 積分値に影響しないことも意識しておくとよい。
不等式の符号
は で上に凸ではなく下に曲がる,すなわち である。 そのため一次近似 はグラフの接線として関数値より上にあり,右側の不等式が得られる。
評価幅の作り方
左側の不等式では,剰余項を粗く見積もりすぎると に届かない。 ここでは と指数を に丸めることで,計算が にまとまり,十分な評価になる。
第4問 — 数学I 問題4:ハウスドルフ性とコンパクト性
方針
前半は「直積の点が違うなら,どちらか一方の座標が違う」という事実を使う。 後半は各点 と を分離し,コンパクト性で有限個に落としてから 側の開集合を有限交叉する。
直積位相の基底
逆向きの証明では, の開集合そのものを扱うのではなく, その中に含まれる基底開集合 を取ることが重要である。 これにより,積空間での分離を各因子の分離へ戻せる。
空集合への注意
片方の空間が空の場合, は空になり自動的にハウスドルフである。 一方,空でない片方の点を固定する議論は使えない。答案では「空の場合は自明」と一言添えると 論理の穴を避けられる。
コンパクト性の使い所
点 と各 の分離は無限個得られるが, 側の開集合を無限交叉すると 開集合とは限らない。そこで 側の開集合が開被覆になっていることを見て, 有限部分被覆を取り出す。この有限性が最後の を開集合に保つ核心である。
第5問 — 数学II 問題1:代数拡大とガロア閉包
方針
は平方根を二段含む元なので,まず を使って四次方程式を作る。 その後, との合成では次数 と が互いに素であることを使い, 共通部分が であることを押さえる。
平方でないことの確認
が の平方なら, を加える前にすでに平方根が入っていることになる。 ここを確認しないと とは言えない。 の平方とおく計算は短く,答案で最も確実である。
ガロア性の判定
標数 では分離性は自動的に成り立つので,問題は正規性である。 は実数体の部分体である一方, は純虚数である。 この「実体である」という観察により,分解体になっていないことがすぐ分かる。
検算
で,ガロア閉包ではさらに虚二次的な元 を加えるだけなので となる。もしここで などが出た場合は,すでに に が入っていることを見落としている。
第6問 — 数学II 問題2:UFD の判定
方針
UFD である例は標準定理で処理し,UFD でない例は一意分解を壊す具体的な等式を示す。 ただし,単に等式を書くのではなく,現れる因子が既約で同伴でないことを確認する必要がある。
の典型例
は非一意分解の代表例である。 ノルム を使うと,ノルム の元がないことがすぐ分かり,既約性の確認が短い。
局所化は UFD を保つ
では, の素因子だけが単元化される。 UFD の元の一意分解から,単元化された素因子を無視すれば残りの素因子分解は依然として一意である。 したがって UFD 性は保たれる。
最後の環の見方
は二次単項式で生成される部分環であり, という関係を持つ。これは という二次錐の座標環の標準的な非 UFD 例である。
第7問 — 数学II 問題3:トーラスと貼り合わせ
方針
を標準トーラスと認識し, と がそれぞれどの基本ループを円板で埋めるかを見る。 はメリディアンを殺し, はロンジチュードを殺す。
図形の把握
の境界を 軸の周りに回すと,円が軸に交わらないため自己交差のないトーラスになる。 大半径は ,小半径は である。 の境界は半径 の円で,トーラスの内側の赤道に当たる。
の意味
トーラスにメリディアン円板を貼ると,トーラスの一方の穴がつぶれる。 ただし全体が単に球面になるのではなく,もう一方の周回方向が円として残る。 その円と球面が一点で接した形が である。
ホモロジーの検算
では二つの円板を貼ることでトーラスの二つの一次生成元が消える。 一方,二次元の球面的な成分は残るので である。 オイラー標数も となり,球面型の結果と整合する。
第8問 — 数学II 問題4:曲面の曲率と弧長
方針
曲面の曲率は第一基本量 と第二基本量 を機械的に計算する。 平面曲線では,まず速度を出し,単位接ベクトルを左に回転して指定された向きの単位法線を得る。
平均曲率の符号
平均曲率は法線の取り方で符号が変わる。本解答では を採用した。 反対向きの法線を採用する流儀では, の符号だけが反転する。
計算の検算
は必ず と一致する。 ここが一致しない場合,内積または外積の計算に誤りがある。 今回の計算では となり,外積のノルム平方と一致する。
弧長条件
を使うと速度は になる。 が仮定されているので絶対値は不要である。 弧長条件は に変形でき,積分してただちに が得られる。