神戸大学 院試 過去問 解答例
神戸大 理学研究科 数学専攻 数学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。数学8問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・正定値行列)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。
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- 解説8問と大問1問の途中式・最終答(全8問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき8問)
- 問題本文
- 非収録
神戸大 数学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は数学8問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 数学 | 線形代数 | 固有ベクトル条件の確認 / 対角化後の多項式 | あり |
| 第2問 | 数学 | 群と剰余群 | 正規性 / 直積が巡回になる条件 | あり |
| 第3問 | 数学 | 解析 | 極値判定の注意 / 対数積分の特異性 | あり |
| 第4問 | 数学 | 集合と位相 | 全射性が必要な場所 / コンパクト性の証明の流れ | あり |
| 第5問 | 数学 | 体の拡大 | 双二次拡大の Galois 群 / 3乗根の場合の落とし穴 | あり |
| 第6問 | 数学 | 多項式環 | 商環による素イデアル判定 / R と の違い | あり |
| 第7問 | 数学 | 基本群とホモロジー | 円柱座標での見え方 / Y を除いた場合 | あり |
| 第8問 | 数学 | 曲面論 | 第一基本形式が に依存しない理由 / 正則性の確認 | あり |
この年度の解説には検算1件が付いています。
2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1問 | 25大学・544問 | |
| 重積分と極座標 | 第3問 | 23大学・142問 | |
| 正定値行列 | 第3問 | 17大学・70問 | |
| 群論・環論 | 第2問 | 13大学・60問 |
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 8問 → 2025年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・重積分と極座標
第1問 — 数学I 問題1:線形代数
方針
前半は「指定されたベクトルが固有ベクトルである」という条件を,行列を掛けた後の 2 成分が同じ比になることとして読む。後半は対角化できる行列に多項式を代入すると, 固有値にも同じ多項式を代入すればよい,という基本事実を使う。
固有ベクトル条件の確認
に行列を掛けると,得られるベクトルの成分は各行の和である。 固有ベクトルになるにはこの結果が の形でなければならない。 ここで固有値そのものを未知数として置くより,2 成分を等置する方が計算が短い。
対角化後の多項式
なら である。固有値の順序を入れ替えて列ベクトルを並べれば, の順序も入れ替わる。 問題は一組を求めるだけなので,どちらの順序でも正しい。
Cayley--Hamilton の使い方
固有多項式が なので, である。 が対角化可能かどうかを調べる必要はない。高冪を求める問題では, 固有値分解よりも最小多項式または Cayley--Hamilton で冪を落とす方が安全なことが多い。
検算
から は のスカラー倍になる。 実際に得られた の第2列は零であり,最終行は上2行の2倍である。 この形が最後まで保たれていることは,計算ミスを見つける簡単な確認になる。
解答
(1) 固有ベクトルが であるためには,2 つの成分の和が一致すればよい。 したがって より である。このとき であるから,固有値は である。固有ベクトルとして を取れる。よって とすると したがって ゆえに一例は
(2) とする。 かつ であり, 両者は等しいので である。 より ,また は一次独立だから である。 したがって は一次独立である。 は 次元なので,3 個の一次独立なベクトル は の基底である。
(3) 固有多項式を とする。直接計算により Cayley--Hamilton の定理より である。したがって に対して帰納的に が成り立つ。実際 であるから
最終答
,例えば ,。 また , 。
第2問 — 数学I 問題2:群と剰余群
方針
この問題では「同型なら保存される量」を意識する。 有限アーベル群では,元の位数,巡回性,商群の大きさが特に使いやすい不変量である。
正規性
アーベル群ではすべての部分群が正規部分群である。 答案では を一行書けば十分であり,正規部分群の定義を満たしていることが明確になる。
直積が巡回になる条件
が巡回群になるのは が互いに素のときである。ここでは なので,条件は単に が奇数であることになる。 偶数 の場合,どの元の位数も まで到達しないため, と同型にはなれない。
明示的な同型の作り方
中国剰余定理の写像は,普通は と書く。 今回は逆向きの同型を与えたいので,「法 では ,法 では になる数」を作る。 はその条件を同時に満たすため,そのまま使える。
拡大の情報だけでは群は決まらない
(4) は短完全列の両端が同じでも中央が一意には決まらない,という典型例である。 と はどちらも を で拡大した群だが, 片方は位数 の元を持ち,もう片方は持たない。
第3問 — 数学I 問題3:解析
方針
(1) は臨界点を求め,ヘッセ行列で判定する標準問題である。 (2) は積分領域を左右に分け, または を使って一次元積分に落とす。 (3) は が十分大きくなることだけを使う比較判定である。
極値判定の注意
臨界点が2つ出るが,両方が極値とは限らない。 ではヘッセ行列の行列式が負になるので鞍点である。 値 を取るからといって極大または極小と判断しないことが大切である。
対数積分の特異性
領域には に近づく部分があり, は に発散する。 しかし なので,この対数特異性は可積分である。 また,問題で除かれている の部分は測度零であり,重積分の値には影響しない。
積分値の検算
被積分関数はこの領域で を満たすため, であり,対数は非正である。 したがって最終結果が負になることは自然である。 という符号はこの観察と整合している。
級数の比較
単調増加性は,この解法では から十分後で となることを保証する補助条件として働く。 初項の有限個は収束性に影響しないので,尾部だけを比較すればよい。
第4問 — 数学I 問題4:集合と位相
方針
集合の問題では,等号を示すときに両包含を分ける。 位相の問題では,コンパクト性の定義を開被覆で書き,連続性で逆像の開被覆に移す。
全射性が必要な場所
はどんな写像でも成り立つ。 逆包含 で初めて全射性を使う。 反例を作るときは, に の像に入っていない点を含めればよい。
コンパクト性の証明の流れ
の開被覆を直接有限化するのは難しいので,逆像を取って の開被覆にする。 のコンパクト性で有限部分被覆を得て,最後に全射性で へ戻す。 連続性と全射性は使う場所が異なるため,答案では両方を明記する必要がある。
試験での書き方
定義問題では,閉集合による同値な定義ではなく,指定がなければ開集合・開被覆による標準的な定義を書くのが安全である。 特にコンパクト性は「任意の開被覆が有限部分被覆をもつ」という形で書くと,後の証明にそのまま接続できる。
第5問 — 数学II 問題1:体の拡大
方針
平方根を含む体では,生成元から個々の平方根を取り出せるかを調べる。 取り出せれば双二次拡大になり,符号を独立に変える自己同型から Galois 群が分かる。 3乗根を含む体では,非実な 3 乗根の共役を含むかどうかが正規性の判定点になる。
双二次拡大の Galois 群
で が平方数でない場合, 拡大次数は であり, と の符号を独立に変える4つの自己同型を持つ。 したがって Galois 群は Klein の四元群である。
3乗根の場合の落とし穴
実数の生成元だけで作った体は実数体に含まれる。 しかし 3 次方程式の根には,通常 を掛けた非実根がある。 Galois 拡大なら共役根をすべて含む必要があるため,実体であることと非実共役の存在が矛盾する。
代数的数の和
代数的数全体が体をなすことを知っていれば即答できる。 答案としては, が有限次拡大であることを示し, その中の元はすべて 上代数的である,と書くのが最も簡潔で確実である。
第6問 — 数学II 問題2:多項式環
方針
この環は単項式の指数集合で管理する。 条件 は,積を取ると左右の指数が足し算されるため保たれる。 イデアルの問題では,商環を見ると判定が速い。
商環による素イデアル判定
可換環では,イデアル が素イデアルであることと 商環 が整域であることは同値である。 では と置くと が残るので,整域性がすぐ分かる。
と の違い
は「 で の倍数であり,かつ に属するもの」全体である。 一方 は「 の元に を掛けて得られるもの」だけである。 この2つは一致しない。例えば だが, である。
反例の選び方
は に入るが, で割ると になり, は に入らない。 ところが は と書け, である。 この微妙な差が, が素イデアルでないことを示す決定的な点である。
第7問 — 数学II 問題3:基本群とホモロジー
方針
軸 がある場合は円柱座標が最も自然である。 角度 が 成分を作り,残りの 平面の形を読むことでホモトピー型が分かる。 だけを除く場合は,平面内の円周が標準的な自明結び目であることを使う。
円柱座標での見え方
を除くと が使えなくなるため,角度 が消えずに残る。 の領域は可縮なので,補空間の本質的なループは軸の周りを1周するループだけである。
を除いた場合
は円柱座標では半円板内の1点 として見える。 半円板から1点を除いた空間は円周と同じホモトピー型を持つ。 これに角度方向の が掛かるので,トーラス が現れる。
ホモロジーの読み取り
のホモロジーは がそれぞれ ,それ以外が である。 では,2つの独立な1次サイクルにより , 基本類により となる。
試験での注意
補空間の問題では,どの部分が可縮で,どの方向のループが残るかを言葉で説明することが重要である。 単に基本群だけを書くと,ホモトピー同値の説明が不足しやすい。
第8問 — 数学II 問題4:曲面論
方針
曲面の標準計算である。 まず から第一基本形式を出し,外積で正則性を確認する。 その後,単位法線と二階微分から第二基本形式を求め,公式に代入する。
第一基本形式が に依存しない理由
と は個別には に依存するが,内積を取ると により消える。 曲面がらせん状の対称性を持っていることが,計量係数に反映されている。
正則性の確認
の単射性は,パラメータ曲面では と同値である。 外積の第3成分だけを見ると の可能性が残るが, ノルム平方 を計算すれば全点で非零であることが一度に分かる。
平均曲率の符号
ガウス曲率は法線の向きに依存しないが,平均曲率は法線を反対に取ると符号が変わる。 したがって答案では,どの単位法線を選んだかを明記しておくと採点上安全である。
臍点判定
臍点では2つの主曲率が一致し,第二基本形式が第一基本形式に比例する。 ここでは から比例定数が に限られるのに,混合係数 が常に非零である。 この一行で臍点が存在しないことを確実に示せる。
神戸大 数学 院試 過去問の収録6年度
数学I 問題1:固有値と対角化 / 数学I 問題2:整数行列と商群 / 数学I 問題3:重積分と近似評価
2025年度(このページ・全8問)
数学I 問題1:線形代数 / 数学I 問題2:群と剰余群 / 数学I 問題3:解析
数学I:線形代数 / 数学I:群と有限体 / 数学I:解析
線形写像と固有分解 / 群準同型とグラフ部分群 / 多変数微分と積分
二次形式と全射性 / 巡回群の判定 / 上限・数列・積分最大値
微分作用素と不変部分空間 / 共役類と有限群 / 積分と極値