神戸大学 院試 過去問 解答例
神戸大 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度 院試 解答例・解説
神戸大学 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 数学I:線形代数
方針
前半は「3 本のうち 2 本が独立である」ことを先に押さえ、第 2 ベクトルが残り 2 本の張る平面に入るかだけを判定する。後半は実対称行列なので、固有空間ごとに正規直交基底を選べば直交対角化がそのまま得られる。
次元判定の注意
4 次元空間内の 3 本のベクトルなので、次元は最大でも である。したがって、ある一つの 次小行列式だけで判定しようとすると、消えた場合に本当にランクが かどうかを別に確認する必要がある。ここでは一次結合の係数を直接決めるので、その確認を同時に済ませている。
直交対角化の確認
固有値 は重複しているため、固有空間内で直交する 2 本を選ぶ必要がある。上で取った はどちらも を満たし、内積も である。また はこの平面に直交するので、3 本全体が正規直交系になる。実対称行列では異なる固有値の固有空間が直交するため、この手順が最も安全である。
第2問 — 数学I:群と有限体
方針
共役部分群は「掛け算の前後に同じ を挿入しているだけ」と見る。有限体上の行列群は、行列の形を と略記して積の規則を先に書くと計算が短くなる。
計算規則
この群の積は である。特に第 1 成分は乗法群 の積、第 2 成分は一次変換の平行移動部分として動く。位数 の部分群を探すときは、位数 の元を 1 つ見つけ、その巡回部分群を書くのが最も速い。
答案上の注意
では数値はすべて で割った余りとして計算する。たとえば の第 2 成分は であり、ここを整数計算のままにしないことが重要である。
第3問 — 数学I:解析
方針
極値問題は勾配を消してからヘッセ行列で分類する。数列は指数関数と多項式の大小比較、積分は分母が なので極座標変換が自然である。
数列の判定
の指数増大は より強い。厳密には、 とすれば十分大きい で となり、 と示せる。試験では「指数は多項式より速い」とだけ書くより、どの極限を使っているかを一行添えると安全である。
積分領域の確認
極座標では が になる。ここで常に としてしまうと、 が大きい部分で単位円の条件 を超えてしまう。、すなわち で上限が切り替わる点がこの問題の落とし穴である。
第4問 — 数学I:位相空間
方針
この問題は定義を正確に書けるかと、定義を使って閉集合性を証明できるかを問うている。特に (4) では「各点ごとの分離」を「コンパクト性による有限化」で一つの近傍にまとめるのが核心である。
コンパクト集合が閉になる理由
点 と各 は別々に分離できる。しかし が無限にあると、対応する 側の近傍をすべて交差させても開とは限らない。そこで 側の近傍たちが開被覆になることを使い、有限個だけに減らしてから 側を有限交叉する。この有限性が証明の要点である。
等化集合の別証
積位相を知っていれば、対角集合 がハウスドルフ性により閉集合であり、写像 が連続なので は閉集合、と一行でまとめられる。ただし答案では積位相や対角集合の閉性を説明する必要があるため、上のように補集合が開であることを直接示す方法が堅い。
第5問 — 数学II A:体の拡大
方針
ガロア拡大は「正規かつ分離」で判断する。標数 では分離性は自動なので、主に正規性、つまり最小多項式の根がすべて入っているかを見る。
反例の見方
は 2 次拡大なので、根が の両方とも入っている。この段階では正規である。しかし まで下げると の複素根が足りない。ガロア性は中間段階を二つつないでも自動的には伝わらない、という典型例である。
関数体の確認
では、自己同型 が 個見える。拡大次数も であることを示せば、それらがすべての自己同型であり、分解体になっていることも分かる。次数の確認を省くと「自己同型がいくつかある」だけで終わってしまうので、答案では必ず を明記する。
第6問 — 数学II B:多項式関数
方針
写像全体の環 では、等式はすべて「各 で評価して確認する」。有限体の場合は、多項式そのものと多項式関数が一致しない点が核心である。
実数と有限体の違い
上では非零多項式が無限個の根を持つことはないので、多項式関数への対応は単射である。一方、 上では入力が 個しかないため、異なる多項式が同じ関数を定めることがある。その最小の典型例が である。
核の証明の要点
が核に含まれることを示すだけでは不十分である。任意の核の元を で割り、余りの次数を 未満に落とすことで、有限体の 個すべての元を根にもつ低次数多項式は零多項式しかない、という形に帰着している。
第7問 — 数学II C:曲面の位相
方針
辺の同一視から、まず閉曲面として何になるかを読む。 はトーラスに穴を開けたもの、 はクラインの壺に穴を開けたものである。境界をもつ種数 1 のトーラス、境界をもつ非向き付け可能種数 2 の曲面は、どちらも 2 本のループのくさび和まで潰せる。
穴を開ける効果
閉トーラスなら をもつが、開円板を除くと境界ができるため 2 次元の基本類は消える。閉クラインの壺も穴を開けると 2 次元セルによる関係が消え、基本群は自由群になる。この「関係式が消える」点を押さえると、 と の計算が速い。
貼り合わせ後の確認
境界円周で貼り合わせる操作は連結和である。オイラー標数は で計算でき、, だから となる。閉じた非向き付け可能種数 の曲面では なので と分かる。
第8問 — 数学II D:曲面論
方針
回転面なので、半径関数 と高さ関数 に分けると計算が整理される。直交座標になっているため、第 1 基本量の交差項 は最初から になる。
曲率計算の要点
を何度も使う。特に となるため、後の式が大きく簡単になる。ここを展開したまま進めると計算ミスが起こりやすい。
平均曲率の符号
ガウス曲率は法線の向きによらないが、平均曲率は法線を反転すると符号が変わる。この解答では を採用した。答案では法線の選び方を明記してから を書けば、符号の曖昧さを避けられる。
曲率線の確認
座標曲線が曲率線であることは、単に だけでは足りない。第 2 基本量の混合項 も であり、形作用素が座標方向に関して対角化されていることを述べる必要がある。