神戸大学 院試 過去問 解答例
神戸大 理学研究科 数学専攻 数学 2022年度 院試 解答例・解説
神戸大学 理学研究科 数学専攻 数学 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 二次形式と全射性
方針
二次形式の値域は,対応する実対称行列の符号で決まる。固有値を求めた後は,「正定値・半正定値・不定値」のどれかを判定すればよい。
全射性の検算
のときは固有値に正と負が混在するため,二次形式は不定値である。正の値と負の値を別々の固有方向で作れるので,中間値定理を使わなくても値域が 全体だと分かる。
典型ミス
は の各成分について二次式であり,行列 が線形であることとは別問題である。線形性を否定するときは, ではなく を見るだけでも十分である。
第2問 — 巡回群の判定
方針
の部分群では最小正元を取る。実数の加法部分群で二つの生成元からなる場合は,生成元の比が有理数かどうかを見ると巡回性を素早く判定できる。
実数部分群の注意
が一つの元 で生成されるなら, となるので である。したがって比が無理数なら巡回群ではない。
直積群の検算
は,成分の位数が互いに素なので巡回群になる。ここで と混同すると,誤って非巡回と判定しやすい。
第3問 — 上限・数列・積分最大値
方針
前半二つは実数の基本性質を丁寧に使う問題である。上限では「上界であること」と「それより小さい数は上界でないこと」を分けて示す。数列では単調性が部分列の情報を全体へ伝える。
積分の見方
被積分関数は だけに依存する。したがって を固定して断面の長さを数えると,二重積分が一変数積分になる。断面の長さが であることを書き落とすと係数を間違えやすい。
最大値の検算
で, では である。したがって内部の臨界点で正の最大値を取るという結論は自然である。
第4問 — 部分空間・連続全単射・コンパクト性
方針
ハウスドルフ性は開近傍を部分空間に制限するだけでよい。連続全単射の例では,コンパクト性を欠く空間からハウスドルフ空間への写像を使うと逆写像が壊れやすい。
逆写像が連続でない理由
円周上では角度 の点は に近づく。しかし区間 では対応する角度は に近づかない。この「端点の貼り合わせ」が逆写像の不連続性である。
コンパクト性の注意
射影の議論では と言うために が必要であり, と言うために が必要である。空空間を許す定義では,この非空性を明記するのが安全である。
第5問 — 4次拡大と巡回性
方針
から,まず の根の形を全部把握する。分解体を調べるときは,残りの根 が に入るかどうかを見るのが要点である。
巡回性の見方
では と動く自己同型があり,これが位数 を持つ。次数も なので,ガロア群は巡回群 である。
典型ミス
が を含むことだけで,すぐに と等しいとは限らない。ただし「もし 次巡回拡大なら等しくなる」と仮定すれば,双二次拡大のガロア群が であることと矛盾する。
第6問 — 剰余環と整域性
方針
を含むイデアルで割る問題は,まず係数を に落とす。同型定理を使うと,剰余環の形が一気に見える。
整域判定
では が一次式の積に分解する。既約多項式で割ったときだけ体になるので,ここでは零因子が現れる。
同型でないことの示し方
二次整域の同型を否定したいときは,分数体を見るのが速い。環同型があれば分数体同型も誘導されるため,判別式の平方因子を除いた部分が異なれば同型ではない。
第7問 — 回転図形とホモロジー
方針
3次元の図形を直接見るよりも,回転対称性を使って半平面の断面を見る。断面が同じ抽象的な木であれば,それを回転して得られる図形も同相になる。
ホモトピー型
は3つの区間状の円柱片を持ち,各円柱片に上下の円板を付けると球面になる。隣り合う球面は円板を共有するが,円板は可縮なので,ホモトピー論では共有部分を1点に潰してよい。
典型ミス
円柱の側面だけを見ると の基本群が残るように見える。しかし各高さの円板が円周を埋めているため,1次元のループは消える。残るのは2次元球面3個分の である。
第8問 — 主曲率座標と平行曲面
方針
第一基本形式と第二基本形式がともに対角であるので,座標曲線方向が主方向になっている。したがってワインガルテン写像を成分ごとに読むだけでよい。
符号の確認
この問題では第二基本形式を で定義している。したがって となる。ここで符号を逆にすると,平行曲面の平均曲率の符号も誤る。
典型ミス
の法線が自動的に になるわけではない。まず を確認し,さらに がはめこみで接平面が2次元であることを使う必要がある。