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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学) 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問。微分積分・解析2問・確率・統計1問・線形代数1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・群論・環論・ソートアルゴリズム)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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収録5年度分の解答PDF:東京科学大学 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学)(¥2,880・紙面見本あり)

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解説12問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき12問)
問題本文
非収録

東京科学大 専門科目(数理・計算科学) 2026年度 院試 過去問の出題内容(全12問)

この12問の分野は微分積分・解析2問・確率・統計1問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数対称行列のべき対称行列は固有値で考えるあり
第2問微分積分・解析級数と積分判定積分判定の向き / n) は境界例あり
第3問—ソートの実行追跡表示は処理前に起こる / quick sort2 の欠陥あり
第4問—群と剰余類指数2は必ず正規 / 指数3では正規とは限らないあり
第5問—位相の反例と定理有限と無限の違い / ハウスドルフ性の使いどころあり
第6問微分積分・解析優収束定理指数関数を多項式で押さえる / 支配関数の可積分性あり
第7問—線形計画と双対性双対の形 / 相補性による判定あり
第8問確率・統計確率母関数確率母関数の端点 / 平均が1以下か超えるかあり
第9問—正規母集団の検定標準誤差 / P値の分布あり
第10問—正規言語とポンピング一文字アルファベットのDFA / 互いに素条件は正規でないあり
第11問—繰り返し二乗法奇数と偶数の分岐 / 計算量の見積もりあり
第12問—浮動小数点表現指数部は2の補数 / ゼロ方向丸めあり

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 12問 → 2026年度 12問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2026年度で新しく出たテーマ
群論・環論・ソートアルゴリズム・直交対角化
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第1問 — 対称行列のべき

対称行列は固有値で考える

実対称行列は直交対角化できるので、べき乗や二乗の条件は固有値ごとの条件に分解できる。 この性質を使うと、抽象的な nn 次行列の設問も一変数の数列の問題になる。

−1-1 の扱い

μ=−1\mu=-1 では (−1)k(-1)^k が収束しない。絶対値が 11 以下という条件だけにすると −1-1 を誤って含めるので注意する。

解答

行列 A=(10−4010−401) A=\begin{pmatrix}1&0&-4\\0&1&0\\-4&0&1\end{pmatrix} は実対称行列である。第2成分方向 (0,1,0)T(0,1,0)^T は固有値 11 の固有ベクトルである。 また、(x,z)(x,z) 成分の部分は (1−4−41) \begin{pmatrix}1&-4\\-4&1\end{pmatrix} であり、(1,−1)T(1,-1)^T に対して固有値 55、(1,1)T(1,1)^T に対して固有値 −3-3 を持つ。 したがって AA の固有値は 5,1,−3 5,\quad 1,\quad -3 である。

AkA^k は同じ固有ベクトルで対角化して求められる。x,zx,z 成分の 2×22\times2 ブロックを (akbkbkak) \begin{pmatrix}a_k&b_k\\b_k&a_k\end{pmatrix} と書くと ak−bk=5k,ak+bk=(−3)k a_k-b_k=5^k,\qquad a_k+b_k=(-3)^k である。よって ak=5k+(−3)k2,bk=(−3)k−5k2. a_k=\frac{5^k+(-3)^k}{2},\qquad b_k=\frac{(-3)^k-5^k}{2}. 第2成分方向の固有値は 11 なので Ak=(5k+(−3)k20(−3)k−5k2010(−3)k−5k205k+(−3)k2). A^k= \begin{pmatrix} \dfrac{5^k+(-3)^k}{2}&0&\dfrac{(-3)^k-5^k}{2}\\ 0&1&0\\ \dfrac{(-3)^k-5^k}{2}&0&\dfrac{5^k+(-3)^k}{2} \end{pmatrix}.

一般に実対称行列 XX は直交行列 QQ によって X=Qdiag⁡(λ1,…,λn)QT X=Q\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)Q^T と対角化できる。したがって X2=Qdiag⁡(λ12,…,λn2)QT X^2=Q\operatorname{diag}(\lambda_1^2,\ldots,\lambda_n^2)Q^T である。X2=IX^2=I であるための必要十分条件は λi2=1(i=1,…,n), \lambda_i^2=1\quad(i=1,\ldots,n), すなわち全ての固有値が ±1\pm1 であることである。

同様に Yk=Qdiag⁡(μ1k,…,μnk)QT Y^k=Q\operatorname{diag}(\mu_1^k,\ldots,\mu_n^k)Q^T である。実数列 μk\mu^k が収束するのは −1<μ≤1 -1<\mu\le1 のときに限られる。実際、∣μ∣<1|\mu|<1 なら 00 に収束し、μ=1\mu=1 なら常に 11 である。 μ=−1\mu=-1 は振動し、∣μ∣>1|\mu|>1 は発散する。よって lim⁡k→∞Yk\lim_{k\to\infty}Y^k が収束するための 必要十分条件は μi∈(−1,1](i=1,…,n) \mu_i\in(-1,1]\qquad(i=1,\ldots,n) である。

最終答

Spec⁡(A)={5,1,−3}, \operatorname{Spec}(A)=\{5,1,-3\}, Ak=(5k+(−3)k20(−3)k−5k2010(−3)k−5k205k+(−3)k2). A^k= \begin{pmatrix} \frac{5^k+(-3)^k}{2}&0&\frac{(-3)^k-5^k}{2}\\ 0&1&0\\ \frac{(-3)^k-5^k}{2}&0&\frac{5^k+(-3)^k}{2} \end{pmatrix}. 実対称行列 XX について X2=IX^2=I となる条件は全固有値が ±1\pm1 であること。 YkY^k が収束する条件は全固有値が (−1,1](-1,1] に属することである。

第2問 — 級数と積分判定

積分判定の向き

非増加関数では、区間 [n,n+1][n,n+1] 上の関数値は左端 f(n)f(n) 以下である。 この向きを間違えると、級数から積分を押さえる証明にならない。

1/(nlog⁡n)1/(n\log n) は境界例

1/ns1/n^s は s>1s>1 で収束するが、1/(nlog⁡n)1/(n\log n) はまだ発散する。 log⁡log⁡x\log\log x が無限大に発散することを明示すると判定が確実である。

級数と積分判定の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — ソートの実行追跡

表示は処理前に起こる

どちらのソートも、分割や終了判定の前に print(data)\texttt{print(data)} が実行される。 長さ0や1のリストも呼び出されれば表示されるため、空リストの行を落とさないようにする。

quick sort2 の欠陥

通常のクイックソートはピボットを分割対象から除く。改造版は平均値を基準にするだけで、 どの要素も必ず除外されるとは限らない。そのため部分問題が小さくならず、停止しない場合がある。

ソートの実行追跡の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 群と剰余類

指数2は必ず正規

指数2の場合、部分群以外の剰余類は集合として補集合 G∖HG\setminus H しかない。 左剰余類と右剰余類の候補が同じ二つに限られるため、正規性が自動的に従う。

指数3では正規とは限らない

S3S_3 の2元部分群は、互換の共役で別の互換に移るため正規でない。指数が小さいことだけでは 正規性は保証されない、という対比がこの設問の狙いである。

群と剰余類の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 位相の反例と定理

有限と無限の違い

閉集合の有限和は閉であるが、無限和では成り立たない。開集合については任意和が開であるため、 閉集合でも同じだと誤解しやすい。

ハウスドルフ性の使いどころ

コンパクト集合が閉であることは任意の位相空間では成り立たない。点とコンパクト集合を開集合で分離するために ハウスドルフ性と有限部分被覆を組み合わせる。

位相の反例と定理の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 優収束定理

指数関数を多項式で押さえる

評価の中心は、e−te^{-t} が t−3/2t^{-3/2} より十分速く減衰することにある。 t3/2e−tt^{3/2}e^{-t} が有界である、と書くと簡潔に処理できる。

支配関数の可積分性

原点近くでは x−3/4x^{-3/4}、無限遠では x−5/4x^{-5/4} と見ればよい。 どちらも該当範囲で可積分なので、優収束定理を適用できる。

優収束定理の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 線形計画と双対性

双対の形

最小化問題で制約が ≥\ge、変数が非負なら、双対は最大化で双対変数は非負、双対制約は ≤\le になる。符号を反対にしないように注意する。

相補性による判定

y1∗>0y_1^*>0, y3∗>0y_3^*>0 なので主問題の第1・第3制約は等式になる。 y2∗=0y_2^*=0 からは第2制約が等式かどうかは分からないため、実際の最適解で確認する。

最後の不等式系

これは双対問題が改善方向を持つかどうかを問う形になっている。最適解が存在することと矛盾する、 という見方でもよいが、上のように最適主解を掛けると直接矛盾が出る。

線形計画と双対性の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 確率母関数

確率母関数の端点

g(0)=P(X=0)g(0)=P(X=0)、g(1)=1g(1)=1、g′(1)=E[X]g'(1)=E[X] が基本情報である。 固定点 s=g(s)s=g(s) は、グラフ y=g(s)y=g(s) と直線 y=sy=s の交点として読む。

平均が1以下か超えるか

s=1s=1 での傾きが 11 以下なら、凸性により左側で直線を下から横切らない。 傾きが 11 を超えると、s=1s=1 のすぐ左で g(s)−s<0g(s)-s<0 となり、s=0s=0 で正なので内側の交点が生じる。

確率母関数の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 正規母集団の検定

標準誤差

標本平均の分散は 1/n1/n なので、標準誤差は 1/n1/\sqrt n である。 n=100n=100 なら 0.10.1、n=25n=25 なら 0.20.2 になる。

P値の分布

連続分布の正しい帰無仮説の下では、P値は一様分布になる。この問題では両側検定なので 2{1−F(∣T∣)}2\{1-F(|T|)\} と書いて直接確認できる。

正規母集団の検定の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 正規言語とポンピング

一文字アルファベットのDFA

一文字だけの言語では、DFAは長さの集合を認識している。今回の集合は有限個の例外を除けば 偶数全体なので、途中まで数えてから偶奇ループに入ればよい。

互いに素条件は正規でない

ポンピングで0の個数だけを変え、1の個数との最大公約数が 11 でなくなるようにする。 p!+1p!+1 を使うのは、ポンプされる長さ 1,…,p1,\ldots,p と互いに素にするためである。

帰納法の分け方

先頭が 11 なら左側の0数を変えずに処理でき、末尾が 00 なら右側の1数を変えずに処理できる。 先頭が 00 かつ末尾が 11 の場合だけ、両方を同時に1増やす。

正規言語とポンピングの途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 繰り返し二乗法

奇数と偶数の分岐

奇数なら指数を1減らして係数 aa を一つ外に出し、偶数なら底を二乗して指数を半分にする。 これは高速累乗法の基本形である。

計算量の見積もり

指数 bb の値そのものではなく、ビット長 nn で測る。半分にする操作が中心なので呼び出し回数は O(n)O(n)、各回の乗算・剰余が O(n2)O(n^2) で、合計 O(n3)O(n^3) となる。

繰り返し二乗法の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 浮動小数点表現

指数部は2の補数

通常のIEEE 754のようなバイアス表現ではない。例えば 1111(2)1111_{(2)} は 1515 ではなく −1-1 である。 ここを間違えると小さい数の値が大きくずれる。

ゼロ方向丸め

正の数では、仮数部に入りきらない下位ビットを切り捨てる。6.3756.375 は 1.10011×221.10011\times2^2 だが、3ビット仮数では 1.1001.100 になり、6.06.0 に戻る。

加算順序の違い

先に大きい数 xx と小さい数 yy を足すと、yy の一部が丸めで消える。 一方で y+z=0.5y+z=0.5 は正確に表せるため、その後 xx と足すと 6.56.5 が残る。

浮動小数点表現の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 専門科目(数理・計算科学) 院試 過去問の収録5年度