東京大学 院試 過去問 解答例
東大 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 創造情報学 専門科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)
全3問。電磁気学・回路1問。テーマタグは3件(計算量理論・ソートアルゴリズム・ニューラルネットワーク)。2024年度と共通のテーマは計算量理論。
最終更新:
- このページで公開
- 解説3問と大問1問の途中式・最終答(全3問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき3問)
- 問題本文
- 非収録
東大 創造情報学 専門科目 2026年度 院試 過去問の出題内容(全3問)
この3問の分野は電磁気学・回路1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 電磁気学・回路 | 論理回路と二進演算 | 採点上の注意 | あり |
| 第2問 | — | 通信遅延と指数バックオフ | 単位を先にそろえる / FECと再送の比較 | あり |
| 第3問 | — | 情報システム用語の説明 | 採点されやすい説明の形 / 選ぶ項目 | あり |
この年度の解説には典型ミス2件・採点上の注意1件が付いています。
2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は1問に3テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 計算量理論 | 第3問 | 9大学・36問 | |
| ソートアルゴリズム | 第3問 | 9大学・24問 | |
| ニューラルネットワーク | 第3問 | 4大学・9問 |
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 3問 → 2026年度 3問
- 両年度に出たテーマ
- 計算量理論
- 2026年度で新しく出たテーマ
- ソートアルゴリズム・ニューラルネットワーク
第1問 — 論理回路と二進演算
方針
この問題は,個々の真理値表を暗記で処理するよりも「下位から最初に1が現れるまで」という 条件を接頭辞ORとして数式化するのが安全である。 番目の出力は より下位のビットだけを 見れば決まるので,入力 自身を含めない点に注意する。
典型ミス
としてしまうと,最初に1が現れたビットまで0になり, 例に合わない。減算回路でも,同じ理由で「最初の1を含めて反転する」ことを確認してから の出力をXORの制御に使う必要がある。
採点上の注意
回路図を描く設問では,ゲート数だけでなく,どの入力がマルチプレクサの選択信号なのかを 明示することが重要である。特に で を選ぶ向きを取り違えると,XOR回路と減算回路が どちらも反転してしまう。
第2問 — 通信遅延と指数バックオフ
単位を先にそろえる
Mbpsは bit/s として扱う。伝搬距離と伝送速度を混同すると,0.5 msと0.4 msの 寄与を逆にしたり,片道と往復を取り違えたりしやすい。RTTでは伝搬・送信・処理がそれぞれ 往復で何回入るかを表にしてから足すとよい。
FECと再送の比較
再送制御の期待遅延は「失敗時だけ余分に1 RTT」と見ると一行で出る。FECは誤りを消す代わりに 毎回パケットを長くする方式なので,誤り率が低い領域では損になり,高い領域では得になる。 境界 は追加遅延 と再送の期待追加遅延 を等置しても得られる。
バックオフの積
回目で初めて解決する事象は,「1回目から 回目までは同じスロットを選び, 回目で異なるスロットを選ぶ」という積である。指数バックオフではスロット数が倍々に 増えるため,衝突確率の指数の和 が現れる。
解答
片道伝搬遅延は である。また,4000 bitを10 Mbpsで送る時間は である。
- 往復で伝搬が2回,送信が2回,処理遅延が端末側とアクセスポイント側で1回ずつ入るので,
- 初回成功なら所要時間は ,初回失敗なら1回分だけ余分に がかかる。したがって期待RTTは であり, では増加分は
- 符号化率を とすると,
- 符号化後の送信時間は片道 なので,
- 誤り率を とおくと,再送制御の期待RTTは である。 FECが小さい遅延になる条件は すなわち である。 では同程度,それより小さければ冗長ビットの送信時間の方が不利になる。
- 再送制御は,失敗時だけRTTが大きく伸びるため遅延のばらつきが大きい。FECは毎回同じ 冗長度を払うため平均遅延は少し増えるが,遅延は安定する。音声・映像会議,遠隔操作, 対話型配信のように一定の遅延上限が重要な用途ではFECが適している。
- 1回目の再送では各端末が2個のスロットから独立に選ぶ。同じスロットを選ぶ確率は なので,競合が解決する確率は
- 1回目に再衝突する確率が ,2回目の再送では4個のスロットから選ぶので,異なる スロットを選ぶ確率は である。よって
- 回目の再送で再衝突する確率は である。したがって, 回目で初めて解決 する確率は
最終答
,再送制御の平均増加分は ,FEC後の長さは5000 bit,,FECが遅延面で有利なのは 。バックオフは 。
第3問 — 情報システム用語の説明
採点されやすい説明の形
用語説明では,最初の1文で定義を置き,続けて仕組み,最後に利点・限界・計算量のいずれかを 述べると答案が安定する。単に「重要な技術である」と書いても点になりにくい。
選ぶ項目
短時間で高得点を狙うなら,計算量や具体的な機構を書きやすい項目を選ぶのがよい。マージソートは ,仮想記憶はページテーブルとページフォルト,Transformerは自己注意の式まで 書けるため,説明の密度を出しやすい。
典型ミス
Transformerを単に大規模言語モデルの名前として書く,ガベージコレクションを手動解放と混同する, 仮想記憶をキャッシュと同一視する,といった誤りは減点されやすい。専門用語を並べるだけでなく, 「何を入力として何を解決する仕組みか」を明確にすることが大切である。
東大 創造情報学 専門科目 院試 過去問の収録3年度
2026年度(このページ・全3問)
論理回路と二進演算 / 通信遅延と指数バックオフ / 情報システム用語の説明
最尤推定と混合正規分布 / ハミング距離検索と専用回路 / 情報システム用語の説明
分離資源配分と動的計画法 / ACK制御とウィンドウ転送 / 情報システム用語の説明