院試hub

京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 知能情報学コース 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。情報2問・線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・二次形式・正規表現・形式言語)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・正規表現・形式言語。

最終更新:

このページで公開
解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

京大 知能情報学コース 2025年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は情報2問・線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数F1-1 線形代数漸化式は状態ベクトルに直す / 逆行列は連立方程式で出すあり
第2問微分積分・解析F1-2 微分積分対称性を使う / 級数は分母の主項を見るあり
第3問情報F2-1 アルゴリズムとデータ構造最短路は「通る場合」と「通らない場合」に分ける / 貪欲集合被覆とマッチングあり
第4問—F2-2 最小全域木カット性質 / Prim法の keyあり
第5問—S-1 統計ベータ分布とベルヌーイ試行は共役 / 合計点で条件づけると負相関が出るあり
第6問—S-2 パターン認識と機械学習二次項が消えるかを見る / ロジットは線形あり
第7問情報S-3 情報理論Huffman符号は一意ではない / エントロピー率あり
第8問—S-4 信号処理ROCが信号の向きを決める / 時間シフトとROCあり
第9問—S-5 形式言語理論回文は両端から作る / 同数言語を部品にするあり
第10問—S-6 認知神経科学・知覚認知心理学反応時間はノイズを含む測度 / 速いことが良いとは限らないあり

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に7テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 10問 → 2025年度 10問
2023年度のページを見る

第1問 — F1-1 線形代数

漸化式は状態ベクトルに直す

3項前までを使う漸化式は,(xm,xm−1,xm−2)T(x_m,x_{m-1},x_{m-2})^{\mathsf T} を状態に取ると一次の行列漸化式になる。以後の極限や和は,幾何級数 ∑Ar\sum A^r として扱える。

逆行列は連立方程式で出す

記号 a,ba,b を含む 3×33\times3 行列の逆行列は,余因子展開よりも (A−I)u=v(A-I)u=v を解く方がミスが少ない。最後に係数を v1,v2,v3v_1,v_2,v_3 ごとに読めば逆行列が得られる。

部分和は最初の3項を分ける

∑m=4nym\sum_{m=4}^n y_m の第一成分は ∑k=4nxk\sum_{k=4}^n x_k である。初期値 x1+x2+x3=4x_1+x_2+x_3=4 を戻す必要がある点に注意する。

解答

  1. ym=(xmxm−1xm−2) y_m= \begin{pmatrix}x_m\\x_{m-1}\\x_{m-2}\end{pmatrix} とおくと, ym+1=(axm−axm−1+bxm−2xmxm−1)=(a−ab100010)ym. y_{m+1}= \begin{pmatrix} ax_m-ax_{m-1}+bx_{m-2}\\ x_m\\ x_{m-1} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a&-a&b\\ 1&0&0\\ 0&1&0 \end{pmatrix} y_m. よって A=(a−ab100010) A= \begin{pmatrix} a&-a&b\\ 1&0&0\\ 0&1&0 \end{pmatrix} でよい。
  2. A−I=(a−1−ab1−1001−1) A-I= \begin{pmatrix} a-1&-a&b\\ 1&-1&0\\ 0&1&-1 \end{pmatrix} であり, det⁡(A−I)=b−1. \det(A-I)=b-1. したがって A−IA-I が正則であるための必要十分条件は b≠1 b\ne1 である。このとき,連立方程式 (A−I)(u1u2u3)=(v1v2v3) (A-I) \begin{pmatrix}u_1\\u_2\\u_3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}v_1\\v_2\\v_3\end{pmatrix} を解くと u1=v1+(b−a)v2+bv3b−1,u2=v1+(1−a)v2+bv3b−1,u3=v1+(1−a)v2+v3b−1. u_1=\frac{v_1+(b-a)v_2+bv_3}{b-1},\quad u_2=\frac{v_1+(1-a)v_2+bv_3}{b-1},\quad u_3=\frac{v_1+(1-a)v_2+v_3}{b-1}. よって (A−I)−1=1b−1(1b−ab11−ab11−a1). (A-I)^{-1} = \frac{1}{b-1} \begin{pmatrix} 1&b-a&b\\ 1&1-a&b\\ 1&1-a&1 \end{pmatrix}.
  3. 以下では a=−1/2, b=1/4a=-1/2,\ b=1/4 とする。特性方程式は λ3−aλ2+aλ−b=0 \lambda^3-a\lambda^2+a\lambda-b=0 であるから, λ3+12λ2−12λ−14=0. \lambda^3+\frac12\lambda^2-\frac12\lambda-\frac14=0. 両辺を4倍して因数分解すると 4λ3+2λ2−2λ−1=(2λ+1)(2λ2−1). 4\lambda^3+2\lambda^2-2\lambda-1 =(2\lambda+1)(2\lambda^2-1). したがって固有値は −12,12,−12 -\frac12,\qquad \frac{1}{\sqrt2},\qquad -\frac{1}{\sqrt2} である。いずれも絶対値が1未満であり,互いに異なるため AA は対角化可能である。よって lim⁡n→∞An=O \lim_{n\to\infty}A^n=O である。
  4. x4=−12x3+12x2+14x1=−12+1+14=34 x_4=-\frac12x_3+\frac12x_2+\frac14x_1 =-\frac12+1+\frac14=\frac34 であるから y4=(3/412). y_4= \begin{pmatrix}3/4\\1\\2\end{pmatrix}. また ∑m=4nym=∑r=0n−4Ary4=(I−An−3)(I−A)−1y4. \sum_{m=4}^{n}y_m = \sum_{r=0}^{n-4}A^r y_4 = (I-A^{n-3})(I-A)^{-1}y_4. 一方,第一成分を見ると ∑k=1nxk=4+(100)∑m=4nym \sum_{k=1}^{n}x_k = 4+ \begin{pmatrix}1&0&0\end{pmatrix} \sum_{m=4}^{n}y_m である。さらに (I−A)−1=(4/311/34/321/34/324/3) (I-A)^{-1} = \begin{pmatrix} 4/3&1&1/3\\ 4/3&2&1/3\\ 4/3&2&4/3 \end{pmatrix} なので, (100)(I−A)−1y4=43⋅34+1+13⋅2=83. \begin{pmatrix}1&0&0\end{pmatrix}(I-A)^{-1}y_4 = \frac43\cdot\frac34+1+\frac13\cdot2 = \frac83. lim⁡n→∞An−3=O\lim_{n\to\infty}A^{n-3}=O より lim⁡n→∞∑k=1nxk=4+83=203. \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}x_k = 4+\frac83 = \frac{20}{3}.

最終答

A=(a−ab100010)A=\begin{pmatrix}a&-a&b\\1&0&0\\0&1&0\end{pmatrix}。A−IA-I は b≠1b\ne1 のとき正則で, (A−I)−1=1b−1(1b−ab11−ab11−a1)(A-I)^{-1}=\frac{1}{b-1}\begin{pmatrix}1&b-a&b\\1&1-a&b\\1&1-a&1\end{pmatrix}。 a=−1/2,b=1/4a=-1/2,b=1/4 では固有値は −1/2,±1/2-1/2,\pm1/\sqrt2,lim⁡An=O\lim A^n=O,lim⁡n→∞∑k=1nxk=20/3\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n x_k=20/3。

第2問 — F1-2 微分積分

対称性を使う

球面上で xyzxyz を最大・最小にする問題では,絶対値が等しくなる点が候補になる。符号の偶奇で最大と最小が分かれる。

xsin⁡(ax)x\sin(ax) は積の微分で処理する

一般の nn 階導関数ではLeibnizの公式が有効である。xx の高階導関数が消えるため,実際には2項しか残らない。

級数は分母の主項を見る

分母の差は有理化してもよいが,ここでは n2n^2 をくくるだけで主項が分かる。指数因子 enxe^{nx} があるため,境界 x=0x=0 を別に確認するのが安全である。

F1-2 微分積分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — F2-1 アルゴリズムとデータ構造

最短路は「通る場合」と「通らない場合」に分ける

xx が関係するのは辺 abab を使う経路だけである。したがって aa から jj への最短路では,bb を通る経路と通らない経路の最短長を比較すればよい。

貪欲集合被覆とマッチング

集合がすべて2要素の場合,貪欲法が最初に選ぶ集合列は,未被覆点どうしを結ぶ辺の極大マッチングに対応する。最小個数は最大マッチング,最大個数は小さい極大マッチングを考えると整理しやすい。

F2-1 アルゴリズムとデータ構造の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — F2-2 最小全域木

カット性質

あるカットを横切る辺のうち重みが一意に最小の辺は,すべての最小全域木に含まれる。ここでは (d,f)(d,f) 側のカットで (b,d)(b,d) が一意に最小になる。

Prim法の key

各頂点の keykey は,現在の木へ入るための最小辺重みである。隣接頂点を緩和するときは,まだキューに残っている頂点だけを対象にし,現在の keykey より小さいときに更新する。

Union-Findの条件

Kruskal法で辺を採用してよいのは,その両端が異なる連結成分に属しているときだけである。同じ成分なら,その辺を加えると閉路ができる。

F2-2 最小全域木の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — S-1 統計

ベータ分布とベルヌーイ試行は共役

ベルヌーイ試行の尤度は θk(1−θ)n−k\theta^k(1-\theta)^{n-k} の形になる。ベータ事前分布に掛けると指数が足されるだけなので,事後分布もベータ分布になる。

合計点で条件づけると負相関が出る

もともと独立な変数でも,その和で条件づけると互いに制約し合う。これは選抜バイアスやBerkson型の現象として理解できる。

有意性と効果量の違い

pp 値は「差がない」という仮説の下での観測の珍しさを表すが,差の大きさを直接表さない。効果量を併記することで,統計的有意性と実質的重要性を分けて解釈できる。

S-1 統計の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — S-2 パターン認識と機械学習

二次項が消えるかを見る

最近傍プロトタイプ法でも,共通共分散の正規分布判別でも,境界式を展開したときに xx の二次項が消える。そのため線形判別になる。

ロジットは線形

sigmoidモデルの本質は,事後確率そのものではなく,対数オッズが wTxw^{\mathsf T}x で線形になる点にある。

softmaxはロジスティック回帰の多クラス版

二値分類の y^−y\hat y-y という形は,多クラスでは pj−tjp_j-t_j に対応する。ニューラルネットワークでは,この出力層の誤差を各層へ連鎖律で戻す。

S-2 パターン認識と機械学習の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — S-3 情報理論

Huffman符号は一意ではない

同じ確率の記号があるため,符号語そのものは複数あり得る。ただし符号長の組と平均符号長が同じであれば正しい。

エントロピー率

マルコフ情報源では,各時刻の記号の周辺分布だけでなく,直前の状態を知った上での条件付き不確実性を見る。依存がある分だけ,エントロピー率は周辺分布のエントロピー以下になる。

ブロック化の効果

同じ文字の周辺分布でも,文字列の作られ方に強い制約があれば,ブロック単位で符号化することで短くできる。周辺分布だけに基づく記憶のないモデルは,その制約を捨ててしまう。

S-3 情報理論の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — S-4 信号処理

ROCが信号の向きを決める

同じ有理式でも,収束領域が外側なら右側列,内側なら左側列に対応する。設問(2)では2つの極の間がROCなので,右側列と左側列の和になる。

時間シフトとROC

両側 zz 変換では,時間シフトで z−kz^{-k} が掛かる。収束する環の内外半径は変わらないが,原点や無限遠の扱いだけは変わる可能性がある。

Wiener-Hopf方程式

平均二乗誤差は hh に関する二次形式である。微分して0とおくと正規方程式 Rh=pRh=p が得られる。

S-4 信号処理の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — S-5 形式言語理論

回文は両端から作る

回文の文法は,中央から始めて両端に同じ文字を付ける形にすると自然に書ける。空文字と1文字を停止規則に入れるのがポイントである。

同数言語を部品にする

#a>#b\#a>\#b のような個数差の言語は,同数の部分を生成する非終端記号を作ると扱いやすい。余分な aa を区切りとして,等数部分を挟む形に分解する。

補集合を直接作らない

文脈自由言語は一般には補集合で閉じていない。したがって,補集合を正規言語と簡単な文脈自由言語の有限和として明示するのが安全である。

S-5 形式言語理論の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — S-6 認知神経科学・知覚認知心理学

反応時間はノイズを含む測度

反応時間は認知処理だけでなく,注意状態,運動準備,測定誤差の影響も受ける。複数試行を集める理由は,これらの偶然変動を平均化して条件差を推定するためである。

速いことが良いとは限らない

判断課題では,速く答えるほど誤答が増えることがある。反応時間と誤答率を同時に見ることで,処理効率の差なのか,方略の差なのかを区別しやすくなる。

時間分解能の違い

MEGとfMRIはどちらも脳機能計測に使われるが,得意な情報が異なる。反応時間のような数百ミリ秒スケールの現象には,時間分解能の高いMEGが向いている。

S-6 認知神経科学・知覚認知心理学の途中式・最終答をPDFで見る

京大 知能情報学コース 院試 過去問の収録3年度

  • 2025年度(このページ・全10問)

    F1-1 線形代数 / F1-2 微分積分 / F2-1 アルゴリズムとデータ構造

  • 2023年度(全10問)

    F1-1 線形代数 / F1-2 微分積分 / F2-1 アルゴリズムとデータ構造

  • 2021年度(全10問)

    F1-1 線形代数 / F1-2 微分積分 / F2-1 アルゴリズムとハッシュ