院試hub

筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学サブプログラム 専門科目 2026年度 1-2月実施 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。数学1問・電磁気学・回路1問・物性物理1問。テーマタグは11件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・剛体の回転運動)。2026年度 8月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・剛体の回転運動。

最終更新:

収録4年度分の解答PDF:筑波大学 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学サブプログラム 専門科目(¥2,580・紙面見本あり)

このページで公開
解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

筑波大 専門科目 2026年度 1-2月実施 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・物性物理1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—途中式の見方あり
第2問力学—途中式の意味あり
第3問電磁気学・回路電磁気途中式の意味あり
第4問量子力学—途中式の意味あり
第5問—光学分類の注意あり
第6問物性物理半導体物理符号の確認あり

この年度の解説には検算6件・試験で書くべきポイント6件・典型ミス6件が付いています。

2026年度 1-2月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に11テーマが出ています。

前年度(2026年度 8月実施)との違い

大問数
2026年度 8月実施 6問 → 2026年度 1-2月実施 6問
2026年度 1-2月実施で新しく出たテーマ
二次形式・電磁波・井戸型ポテンシャル・ベータ関数・ガンマ関数
2026年度 8月実施のページを見る

第1問 — 数学

方針

前半は、逆三角関数、複素指数表示、二次形式の標準化、ガンマ関数型積分、極座標変換という基本事項をそれぞれ独立に処理する。後半は、実対称行列であることを使い、正規直交固有ベクトルを列に並べるだけで直交対角化が完了する。

途中式の見方

複素数の小問では、ee と e−1e^{-1} の係数を分けるのが要点である。 sin⁡z=(eiz−e−iz)/(2i)\sin z=(e^{iz}-e^{-iz})/(2i) に z=π/3−iz=\pi/3-i を代入すると、片方に ee、もう片方に e−1e^{-1} が自然に現れる。楕円の面積では、行列式の平方根で割る方法でもよいが、ここでは u=x−y, v=2yu=x-y,\ v=2y として単位円型へ直すとヤコビアンまで明示できる。

検算

楕円の二次形式の行列は (1−1−15) \begin{pmatrix}1&-1\\-1&5\end{pmatrix} で、行列式は 44 である。したがって面積は一般公式 πa2/4=πa2/2\pi a^{2}/\sqrt{4}=\pi a^{2}/2 と一致する。行列の固有値も、トレース −4-4 と固有値和 −3−1+0=−4-3-1+0=-4、行列式 00 と固有値積 00 が一致する。

典型ミス

sin⁡−1x\sin^{-1}x を 1/sin⁡x1/\sin x と読まないこと。ここでは逆正弦である。また、P−1P^{-1} を一般の逆行列として計算し直す必要はない。正規直交固有ベクトルを列に並べた時点で P−1=PTP^{-1}=P^{T} である。

試験で書くべきポイント

最終値だけでなく、変数変換のヤコビアン、固有ベクトルの正規化、P−1AP=DP^{-1}AP=D の列の順序を明記する。特に固有値を昇順に指定されているので、λ1,λ2,λ3\lambda_{1},\lambda_{2},\lambda_{3} と PP の列順を対応させることが採点上重要である。

数学の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 力学

方針

前半は「薄い円筒殻に分けて x2dmx^{2}dm を積分する」だけでよい。後半は、摩擦なしなら並進だけ、摩擦ありなら並進と回転を静止摩擦力で結合し、転がり条件 a=Rαa=R\alpha を使う。

途中式の意味

転がり運動では重力の斜面方向成分 Mgsin⁡θMg\sin\theta の一部が回転運動に使われる。そのため、同じ質量・同じ外半径でも、I/(MR2)I/(MR^{2}) が大きいほど重心加速度は小さくなる。中空円筒は質量が外側に寄っているため、同じ外半径の中実円柱より慣性モーメントが大きい。

検算

IAI_{A} と IBI_{B} はどちらも MR2MR^{2} の次元を持つ。極限 r→0r\to 0 では中空円筒の式が IB→12MR2I_{B}\to \frac12MR^{2} となり、中実円柱と一致する。極限 r→Rr\to R では IB→MR2I_{B}\to MR^{2} となり、薄い輪の慣性モーメントに近づく。

典型ミス

静止摩擦力は斜面上向きに働くが、滑らない場合には接触点は瞬間的に静止しているので仕事はしない。したがって、摩擦力を単にエネルギー損失として扱うのは誤りである。また、摩擦なしの場合に慣性モーメントを使う必要はない。

試験で書くべきポイント

円筒殻の質量要素、MM と密度の関係、並進方程式、回転方程式、転がり条件を順に書く。時刻比較では、加速度の大小と到達時刻の大小が逆になることを一言添えると答案が明確になる。

解答

  1. 半径 xx、厚さ δx\delta x、長さ LL の薄い円筒殻の体積は δV=2πxL δx \delta V=2\pi xL\,\delta x である。したがって δm=ρAδV=2πρALx δx. \delta m=\rho_{A}\delta V =2\pi\rho_{A}Lx\,\delta x.
  2. 中心軸まわりの慣性モーメントは、薄い円筒殻の寄与 x2δmx^{2}\delta m を積分して IA=∫0Rx2(2πρALx dx)=2πρAL∫0Rx3 dx=π2ρALR4. I_{A} = \int_{0}^{R}x^{2}(2\pi\rho_{A}Lx\,dx) = 2\pi\rho_{A}L\int_{0}^{R}x^{3}\,dx = \frac{\pi}{2}\rho_{A}LR^{4}. 円柱の質量は M=πR2LρA M=\pi R^{2}L\rho_{A} であるから IA=12MR2. I_{A}=\frac12MR^{2}.
  3. 中空円筒の密度を ρB\rho_{B} とすると M=π(R2−r2)LρB. M=\pi(R^{2}-r^{2})L\rho_{B}. よって IB=∫rRx2(2πρBLx dx)=π2ρBL(R4−r4)=12M(R2+r2). I_{B} = \int_{r}^{R}x^{2}(2\pi\rho_{B}Lx\,dx) = \frac{\pi}{2}\rho_{B}L(R^{4}-r^{4}) = \frac12M(R^{2}+r^{2}).
  4. 摩擦がないとき、物体は回転せず、斜面方向の加速度はいずれも gsin⁡θ g\sin\theta である。同じ高さから静止状態で出発するので、床に到達する時刻は等しく tA=tB. t_{A}=t_{B}.
  5. 円柱 A について、斜面下向きを正、静止摩擦力の大きさを ff とする。並進運動は Ma=Mgsin⁡θ−f, Ma=Mg\sin\theta-f, 回転運動は IAα=fR. I_{A}\alpha=fR. 滑らず転がるので a=Rαa=R\alpha であり、 f=IAR2a. f=\frac{I_{A}}{R^{2}}a. これを並進の式に代入すると (M+IAR2)a=Mgsin⁡θ. \left(M+\frac{I_{A}}{R^{2}}\right)a=Mg\sin\theta. したがって重心加速度の大きさは a=gsin⁡θ1+IA/(MR2). a= \frac{g\sin\theta}{1+I_{A}/(MR^{2})}.
  6. 滑らず転がる剛体では acm=gsin⁡θ1+I/(MR2) a_{\mathrm{cm}} = \frac{g\sin\theta}{1+I/(MR^{2})} である。したがって aC=gsin⁡θ1+2/5=57gsin⁡θ,aA=gsin⁡θ1+1/2=23gsin⁡θ, a_{C}=\frac{g\sin\theta}{1+2/5}=\frac57g\sin\theta, \qquad a_{A}=\frac{g\sin\theta}{1+1/2}=\frac23g\sin\theta, また 0<r<R0<r<R の中空円筒では IBMR2=12(1+r2R2)>12 \frac{I_{B}}{MR^{2}} = \frac12\left(1+\frac{r^{2}}{R^{2}}\right) > \frac12 なので aB<aA<aC. a_{B}<a_{A}<a_{C}. 同じ距離を静止から進む時刻は t=2s/at=\sqrt{2s/a} に比例するため、 tC′<tA′<tB′. t'_{C}<t'_{A}<t'_{B}.

最終答

δm=2πρALx δx,IA=12MR2,IB=12M(R2+r2),tA=tB,a=gsin⁡θ1+IA/(MR2),tC′<tA′<tB′(0<r<R). \begin{gathered} \delta m=2\pi\rho_{A}Lx\,\delta x,\qquad I_{A}=\frac12MR^{2},\qquad I_{B}=\frac12M(R^{2}+r^{2}),\\ t_{A}=t_{B},\qquad a=\frac{g\sin\theta}{1+I_{A}/(MR^{2})},\qquad t'_{C}<t'_{A}<t'_{B}\quad(0<r<R). \end{gathered}

第3問 — 電磁気

方針

同軸円筒コンデンサでは、対称性から電束密度は半径 rr のみに依存し、ガウス面の側面だけを通る。円電流の軸上磁場では、各電流素片の作る磁場のうち軸に垂直な成分が一周で相殺されるため、軸方向成分だけを足せばよい。

途中式の意味

円筒コンデンサの電位は、基準 V(b)=0V(b)=0 を使って外側から内側へ積分する。内側電極が正に帯電しているので、内側ほど電位が高くなり、ln⁡(b/r)>0\ln(b/r)>0 となる。円電流では、ビオ・サバールの法則の分母は距離の三乗だが、外積の大きさから距離が一つ戻るため、ΔB\Delta B の大きさは距離の二乗に反比例する。

検算

静電容量の式は b→ab\to a で大きくなり、電極間隔が狭いほど容量が大きいという物理的直観と合う。円電流の磁場は r=0r=0 で B(0)=μ0I2a B(0)=\frac{\mu_{0}I}{2a} となり、円形電流中心の標準公式に一致する。また遠方 r≫ar\gg a では B∝r−3B\propto r^{-3} となり、磁気双極子場の減衰と整合する。

典型ミス

同軸円筒のガウス面で、上下のふたの面積まで SS に入れないこと。電束は側面を貫き、ふた面には平行である。円電流では、ΔB\Delta B の大きさをそのまま一周分足すと過大評価になる。足すべきなのは軸方向成分である。

試験で書くべきポイント

対称性、ガウス面の面積、電位の基準、軸方向成分の射影因子を明記する。特に最後の磁場は「垂直成分は対称性で相殺」と書いてから積分に進むと、式の意味が伝わりやすい。

電磁気の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学

方針

無限井戸の固有関数はすでに与えられているので、エネルギーは二階微分で直ちに出る。重ね合わせ状態では、各固有状態が異なる位相で時間発展するため、確率密度と確率流にはエネルギー差 ε2−ε1\varepsilon_{2}-\varepsilon_{1} による振動が現れる。

途中式の意味

p‾=0\overline{p}=0 なのに p2‾≠0\overline{p^{2}}\ne 0 である点が重要である。井戸内の定常状態は左右に進む運動量成分の重ね合わせで、平均運動量は打ち消すが、運動量の二乗平均は有限である。確率流は単独の実固有関数では消えるが、異なる固有状態の相対位相が時間変化すると非零になる。

検算

SS の次元は (ℏ/ma2)(\hbar/m a^{2}) で、これは 1/time1/\text{time} である。一次元の確率流は「単位時間あたりに点を通過する確率」なので、この次元で正しい。また t=0t=0 では波動関数が実関数であり、式も S(a/2,0)=0S(a/2,0)=0 を与える。

典型ミス

ψ(x,t)\psi(x,t) で全体に同じ位相を掛けるだけにしてはいけない。固有エネルギーが異なるため、φ1\varphi_{1} と φ2\varphi_{2} には別々の時間因子が付く。また、左半分の確率を計算するとき、干渉項 φ1φ2\varphi_{1}\varphi_{2} を落とすと時間依存性が消えてしまう。

試験で書くべきポイント

正規直交性による AA の決定、各固有状態の時間発展、x=a/2x=a/2 での三角関数の値、連続の式 ∂∣ψ∣2∂t+∂S∂x=0 \frac{\partial |\psi|^{2}}{\partial t}+\frac{\partial S}{\partial x}=0 との対応を明記する。最後の関係 dPL/dt=−S(a/2,t)dP_{L}/dt=-S(a/2,t) は物理的説明まで書くと得点しやすい。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 光学

方針

この問題は計算よりも、幾何光学と波動光学の言葉を混同せずに使えるかが問われている。屈折率、光路長、スネルの法則は互いに関連しており、屈折率が波数 k=nω/ck=n\omega/c と位相速度 v=c/nv=c/n の両方に入ることを押さえると整理しやすい。

分類の注意

image formation は、厳密には回折限界まで含めれば波動光学でも扱う。しかし初等的な用語分類では、レンズによる結像公式や光線追跡に対応する幾何光学の項目として答えるのが自然である。一方、wavefront は波の等位相面であると同時に、幾何光学では光線の法線面として使うので BOTH とした。

検算

スネルの法則は、n2>n1n_{2}>n_{1} なら sin⁡θ2<sin⁡θ1\sin\theta_{2}<\sin\theta_{1} となり、光線は法線側へ曲がる。これは光が遅い媒質へ入ると法線に近づくという直観と一致する。また、法線入射 θ1=0\theta_{1}=0 では θ2=0\theta_{2}=0 となる。

典型ミス

屈折率を v/cv/c と逆に書かないこと。通常の媒質では v<cv<c なので n>1n>1 である。また、波面を描く問題で角度を波面と界面の角として読んでしまうと、sin⁡\sin と cos⁡\cos が入れ替わる。入射角・屈折角は法線から測る角である。

試験で書くべきポイント

スネルの法則の証明では「界面上で位相が連続する」ことと「接線方向の波数成分が等しい」ことを明記する。単に公式だけを書くより、k=nω/ck=n\omega/c を挟んで屈折率との関係まで示すと、波動光学からの導出として十分な答案になる。

光学の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 半導体物理

方針

空乏近似では、可動キャリアを無視し、イオン化したドナー・アクセプタだけを電荷密度として扱う。したがって各側でポアソン方程式を二回積分し、空乏層端で電場がゼロ、接合面で電場と電位が連続、全体で電荷中性という条件を使えばよい。

符号の確認

p 側の固定電荷は −qNA-qN_A、n 側の固定電荷は +qND+qN_D である。ポアソン方程式を ϕ′′=−ρ/ε\phi''=-\rho/\varepsilon と書くと、p 側では ϕ′′>0\phi''>0、n 側では ϕ′′<0\phi''<0 となる。今回の基準 ϕ(−Wp)=0\phi(-W_p)=0 では、ϕ\phi は p 側から n 側へ単調に増加し、最終的に VdV_d に達する。

検算

VdV_d の式 Vd=q2ε(NAWp2+NDWn2) V_d=\frac{q}{2\varepsilon}(N_AW_p^2+N_DW_n^2) は、qN/εqN/\varepsilon が 1/length21/\text{length}^{2} に電位を掛けた次元を持つので、全体として電位の次元になる。また NA≫NDN_A\gg N_D なら Wp≪Wn W_p\ll W_n となり、高濃度側の空乏層が薄いという物理的直観と一致する。

典型ミス

空乏層幅は高濃度側ほど小さい。したがって Wn/Wp=NA/NDW_n/W_p=N_A/N_D であり、逆にしないこと。また、バンド図では電位 ϕ\phi が上がる向きと電子エネルギーのバンド端が下がる向きが逆である。電位差は VdV_d、バンド端のエネルギー差は qVdqV_d と区別して書く。

試験で書くべきポイント

ポアソン方程式、境界条件、電荷中性条件の三つを明記する。容量の設問では、単位面積あたりなので C=ε/WC=\varepsilon/W と書ける。最後の 1/C21/C^{2}-VV プロットは、傾きが負で横軸切片が VdV_d になること、つまり C-V 測定から内蔵電位を外挿できることまで述べる。

半導体物理の途中式・最終答をPDFで見る

筑波大 専門科目 院試 過去問の収録4年度