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筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学 専門科目 2025年8月実施 院試 解答例・解説

筑波大学 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学 専門科目 2025年8月実施の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 数学

方針

前半は「既知の幾何級数」「留数定理」「特異点を中心とする球座標」の三つを正しく選ぶ問題である。特に三重積分では,単位球の中心ではなく被積分関数の特異点 (0,0,1)(0,0,1) を原点に移すと,積分範囲が π2θπ,0ρ2cosθ \frac{\pi}{2}\le \theta\le \pi,\qquad 0\le \rho\le -2\cos\theta と単純になる。

途中式の要点

f(x)f(x)arctanhx\operatorname{arctanh}x そのものであり,先に微分して f(x)=11x2 f'(x)=\frac{1}{1-x^2} を得てから積分するのが最短である。留数計算では eize^{iz} が上半平面で減衰するため,上半平面を選ぶ。下半平面を選ぶと指数因子が増大し,半円弧の積分を消せない。

線形代数の後半では BBxyxy 平面での 9090^\circ 回転,zz 方向で恒等写像であることを見抜くと,固有値 i,i,1i,-i,1 と一般項の形が自然に出る。複素固有ベクトルを用いるが,もとの漸化式が実係数なので,実ベクトルの列は最後の回転表示で実数のまま表される。

検算

detA=1+p2+q2+r2\det A=1+p^2+q^2+r^2p=q=r=0p=q=r=011 になり,歪対称成分を加えても正である。BB については B4=I B^4=I が成り立つため,固有値が 44 乗して 11 になる i,i,1i,-i,1 であることと整合する。三重積分の答え 4π/34\pi/3 は,単位球の体積と同じ数値になるが,これは偶然ではなく,特異点を境界にもつ球のポテンシャル積分として有限値に収まっていることを示している。

典型ミス

log1x\log |1-x| の微分で符号を落とすと f(x)=x/(1x2)f'(x)= -x/(1-x^2) のような誤答になる。三重積分では ρ=0\rho=0 が領域から除かれているが,体積積分としては可積分特異点なので値は変わらない。線形代数では P1BP=DP^{-1}BP=DPBP1=DPBP^{-1}=D を取り違えると,PP の行と列が逆になる。

試験で書くべきポイント

級数問題では収束半径を必ず添える。留数問題では「どの半平面で閉じたか」と「含まれる極」を明記する。対角化問題では,固有ベクトルを正規化したこと,および PP がユニタリであるため P1=PP^{-1}=P^* とできることを書くと減点されにくい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 力学

方針

棒は単振り子ではなく剛体振り子である。したがって質点の式 ml2θ¨ml^2\ddot{\theta} ではなく,固定端まわりの慣性モーメント II を使う。復元モーメントは重心に働く重力から作る。

途中式の要点

復元モーメントの腕の長さは l/2l/2 であるため,線形化後の式は Iθ¨+mgl2θ=0 I\ddot{\theta}+mg\frac{l}{2}\theta=0 となる。減衰項を標準形に直すときは γmglI=2γω02 \frac{\gamma mgl}{I}=2\gamma\omega_0^2 を使うのが整理しやすい。この形にしておくと,減衰定数が δ=γω02\delta=\gamma\omega_0^2 とすぐ分かる。

検算と次元確認

ω02=3g/(2l)\omega_0^2=3g/(2l) は次元が 1/s21/\mathrm{s}^2 である。点質量を棒の先端に置いた単振り子なら g/lg/l になるが,一様棒では重心が l/2l/2 にあり,慣性モーメントが ml2/3ml^2/3 であるため係数 3/23/2 が現れる。減衰振動では γω0<1\gamma\omega_0<1 が無次元条件なので,γ\gamma は時間の次元をもつ。

典型ミス

重力モーメントを mglθmgl\theta としてしまうと,重心位置を無視した式になる。また,減衰モーメントの符号は運動と逆向きなので,標準形では +θ˙+\dot{\theta} の項として左辺に移す。振幅比 β\beta は周期が長くなる効果を含むため,T0T_0 ではなく減衰振動の周期 TT を使う。

試験で書くべきポイント

慣性モーメントの積分,復元モーメントの符号,微小角近似の適用箇所を答案に残す。最後に 0<β<1,α>1 0<\beta<1,\qquad \alpha>1 となることを書けば,減衰によって周期が長くなり振幅が小さくなるという物理的な整合性も示せる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 電磁気学

方針

薄い円管では電流が表面に流れるため,円管内部にはその円管自身による磁場がない。一方,中実の円柱導線では電流密度が断面全体に分布し,内部磁場が rr に比例して増える。この差が,最後の内部インダクタンス μ0/(4π)\mu_0/(4\pi) として現れる。

途中式の要点

平行往復回路の外部インダクタンスは,中心間を結ぶ面を貫く磁束から求めると計算が短い。 ada(1x+1dx)dx=2logdaa \int_a^{d-a}\left(\frac{1}{x}+\frac{1}{d-x}\right)\,dx =2\log\frac{d-a}{a} であり,前の係数 1/(2π)1/(2\pi) と合わせて μ0/π\mu_0/\pi が残る。中実導線の内部エネルギーは,まず1本について求め,最後に2本分にする。

検算と次元確認

インダクタンスの長さあたりの単位は H/m\mathrm{H/m} であり,μ0\mu_0 の単位そのものと一致する。対数 log(d/a)\log(d/a)1/41/4 は無次元である。中実導線の内部磁場 B(r)=μ0Ir2πa2 B(r)=\frac{\mu_0 I r}{2\pi a^2} r=0r=000r=ar=a で外部磁場 μ0I/(2πa)\mu_0 I/(2\pi a) に連続するので妥当である。

典型ミス

2本の往復電流では,導体間の磁場は打ち消しではなく加算される。向きを図で確認しないと符号を誤りやすい。また,磁場エネルギーからインダクタンスを出すときは U=12LI2 U=\frac{1}{2}LI^2 1/21/2 を忘れやすい。これを落とすと内部インダクタンスが2倍になる。

試験で書くべきポイント

Ampere の法則を使う箇所では,どの経路をとり,どれだけの電流を囲むかを書く。薄い円管と中実導線の違いは「導体内部の磁場エネルギーの有無」で説明する。最後の比較問題では,大小だけでなく理由をエネルギーまたは内部インダクタンスに結び付けて述べる。

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4 — 量子力学

方針

この問題は,期待値の時間微分をシュレーディンガー方程式で置き換え,交換子の形に整理するのが中心である。演算子の順序が重要なので,O^H^\hat{O}\hat{H}H^O^\hat{H}\hat{O} を勝手に入れ替えない。

途中式の要点

O^\langle \hat{O}\rangle の時間微分では,ψ\psi^* 側と ψ\psi 側の両方を微分する。左側に作用した H^\hat{H} を右側へ移せるのは H^\hat{H} がエルミートで,波動関数が無限遠または境界で適切に消えるからである。この条件を書いておくと,単なる形式計算ではなく内積の計算として正当化できる。

検算

1i[x,p^2/(2m)]=1i2ip^2m=p^m \frac{1}{i\hbar}[x,\hat{p}^2/(2m)] = \frac{1}{i\hbar}\frac{2i\hbar\hat{p}}{2m} = \frac{\hat{p}}{m} となり,古典的な速度 p/mp/m と一致する。自由粒子ではポテンシャルがないため p^\hat{p}H^\hat{H} が可換になり,運動量期待値が保存される。

典型ミス

ψ/t=(1/i)H^ψ\partial\psi/\partial t=(1/i\hbar)\hat{H}\psi の符号を誤ると,交換子の順序が逆になる。また,[x,p^]=i[x,\hat{p}]=i\hbar は演算子等式なので,必ず試験関数に作用させて示す。単に xppxxp-px と書くだけでは,微分が xψx\psi 全体に作用する点が見えない。

試験で書くべきポイント

最後の古典対応では,「位置そのもの」ではなく「位置の期待値」が古典方程式に従うと書く。波束は時間発展で広がり得るため,量子状態が古典的な点粒子そのものになる,という意味ではない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 光学

方針

前半は近軸光学の符号とレンズ式,後半は薄膜反射での光路差と反射位相の問題である。像距離 bb は実像側を正,虚像側を負と決めると,b=af/(af)b=af/(a-f) の符号から実像・虚像の範囲を一度に判定できる。

途中式の要点

2枚レンズでは,1枚目だけなら焦点は1枚目から ff の位置にできる。2枚目から見たこの点の距離を dfd-f と符号付きで扱うと,d<fd<f の場合の虚物体も同じ式で処理できる。

薄膜では,幾何学的な余分距離をそのまま足すのではなく,屈折率を掛けた光路長で比較する。膜内角を φ\varphi として Δ=2ndcosφ \Delta=2nd\cos\varphi まで出せば,Snell の法則で θ\theta 表示に直すだけでよい。

検算

d=0d=0 の2枚レンズは接触した同一薄レンズ2枚なので合成焦点距離は f/2f/2 である。式 b=f(df)d2f b'=\frac{f(d-f)}{d-2f} d=0d=0 を入れると f/2f/2 となり整合する。また,媒質を変えた焦点距離 ff'n=1n'=1 で元の ff に戻り,n=nn'=n で曲面で屈折しなくなるため無限大になる。

典型ミス

薄膜反射では,表面反射と裏面反射のどちらが位相反転するかを逆にすると,明暗条件が入れ替わる。今回の暗線条件が Δ=mλ\Delta=m\lambda になるのは,反射位相差がすでに π\pi あるためである。また,膜厚計算では λ=0.65 μm\lambda=0.65\ \mu\mathrm{m} をそのまま使い,最後まで単位を μm\mu\mathrm{m} でそろえるとよい。

試験で書くべきポイント

グラフ問題では,式だけでなく a=fa=f の漸近線,a>fa>f の実像領域,a<fa<f の虚像領域を図中に示す。薄膜の最後の設問では,可視域の下限をおよそ 0.4 μm0.4\ \mu\mathrm{m} と見て,m2m\ge 2 なら λm+10.43 μm\lambda_{m+1}\ge 0.43\ \mu\mathrm{m} となることを明示すると論理が通る。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 半導体工学

方針

nチャネルMOSでは,正のゲート電圧によってp型半導体表面を空乏化し,さらに強反転へ向かわせる。理想構造では VG=0V_G=0 がフラットバンドなので, VG=VOX+ϕS V_G=V_{\mathrm{OX}}+\phi_S からしきい値電圧を作る。しきい値の条件は ϕS=2ϕB\phi_S=2\phi_B である。

途中式の要点

空乏近似では,半導体中の電荷密度を qNA-qN_A と一定にして Poisson 方程式を解く。境界条件は空乏層端で電場が消えることと,バルク電位を基準に取ることである。この2条件から ϕS=qNAWp22εS \phi_S=\frac{qN_AW_p^2}{2\varepsilon_S} が出る。酸化膜電圧は空乏電荷の大きさを COXC_{\mathrm{OX}} で割ったものであり,符号は QB<0Q_B<0 を意識して VOX=QB/COX V_{\mathrm{OX}}=-Q_B/C_{\mathrm{OX}} と書くと間違えにくい。

検算と次元確認

QBQ_B は単位面積あたりの電荷なので C/m2\mathrm{C/m^2}COXC_{\mathrm{OX}}F/m2\mathrm{F/m^2} である。したがって QB/COXQ_B/C_{\mathrm{OX}} は電圧になる。しきい値式の第2項も qεSNAϕBCOX \frac{\sqrt{q\varepsilon_SN_A\phi_B}}{C_{\mathrm{OX}}} の形で電圧の次元をもつ。QOX>0Q_{\mathrm{OX}}>0 なら VFBV_{\mathrm{FB}} は負になり,正電荷を打ち消してフラットバンドにするには負のゲート電圧が必要,という物理的直観とも合う。

典型ミス

半導体のバンド曲がりはエネルギー図で下向き,表面電位 ϕS\phi_S は正,という符号の対応を混同しやすい。電子のエネルギーは qϕ-q\phi であるため,正の表面電位では EC,Ei,EVE_C,E_i,E_V が下がる。また,酸化膜中電荷の位置依存を無視して常に QOX/COX-Q_{\mathrm{OX}}/C_{\mathrm{OX}} とすると,電荷が金属電極上にある極限 x0=TOXx_0=T_{\mathrm{OX}} でもシフトが残ってしまう。

試験で書くべきポイント

バンド図では EC,Ei,EV,EFE_C,E_i,E_V,E_F の上下関係,フラットバンドか曲がっているか,および WpW_p の範囲を明示する。数式問題では QBQ_B の符号を先に定義し,その後で QB|Q_B| を使う。最後の選択問題は,固定酸化膜電荷が VGV_G 軸方向の平行移動として効くことを書けば,ΔVFB=ΔVT\Delta V_{\mathrm{FB}}=\Delta V_T が自然に示せる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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