院試hub

名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・剛体の回転運動)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:名古屋大学 理学研究科 物理学(¥3,200・紙面見本あり)

このページで公開
解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名大 物理学 2026年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学—途中式の要点あり
第2問電磁気学・回路電磁気学途中式の要点あり
第3問量子力学—途中式の要点あり
第4問熱・統計力学統計力学途中式の要点あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に8テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
2026年度で新しく出たテーマ
剛体の回転運動・熱力学第一・第二法則・摂動論
2025年度のページを見る

第1問 — 力学

方針

どちらも一般化座標が1つの拘束運動である。棒の系では「重心の並進」と「重心まわりの回転」に分けると、個々の質点の速度を毎回展開しなくてよい。円筒の系では、中心の円運動と自転の角速度を分け、転がり条件を最後に代入するのが安全である。

途中式の要点

棒の系で 12m(l−r)2θ˙ 2+12m(l+r)2θ˙ 2=m(l2+r2)θ˙ 2 \frac{1}{2}m(l-r)^2\dot{\theta}^{\,2} +\frac{1}{2}m(l+r)^2\dot{\theta}^{\,2} =m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} となる。交差項が消えるのは、2つのおもりが重心から対称な位置にあるためである。また位置エネルギーでは mg(l−r)(1−cos⁡θ)+mg(l+r)(1−cos⁡θ)=2mgl(1−cos⁡θ) mg(l-r)(1-\cos\theta)+mg(l+r)(1-\cos\theta) =2mgl(1-\cos\theta) となり、rr には依存しない。重力は重心だけに働く、という見方と一致している。

円筒の系では、中心の軌道半径が 4R−R=3R4R-R=3R であることを最初に押さえる。さらに、問題で与えられる転がりの幾何条件から α˙=3θ˙\dot{\alpha}=3\dot{\theta} として自転エネルギーを 12IAα˙ 2 \frac{1}{2}I_A\dot{\alpha}^{\,2} に代入する。ここで中心速度 3Rθ˙3R\dot{\theta} と自転角速度 3θ˙3\dot{\theta} を混同しないことが重要である。

検算

棒の系で r=0r=0 とすると、2つの質点が同じ場所にある質量 2m2m の単振り子になり、 ω0=gl \omega_0=\sqrt{\frac{g}{l}} を再現する。円筒の系では、長さの次元を確認すると g/Rg/R だけが角振動数の2乗の次元を持つので、Ω02=g/(6R)\Omega_0^2=g/(6R) は次元的に正しい。

典型ミス

棒の運動エネルギーを 12(2m)(l2+r2)θ˙ 2 \frac{1}{2}(2m)(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} のように書くと、係数が2倍ずれる。T=m(l2+r2)θ˙ 2T=m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} はすでに2つの質点を足した後の値である。また、ラグランジアンの運動エネルギーが通常の 12Iθ˙2\frac{1}{2}I\dot{\theta}^2 の形に見えないため、∂L/∂θ˙\partial\mathcal{L}/\partial\dot{\theta} を取るときに係数2を落としやすい。

試験で書くべきポイント

答案では、距離 l−r,l+rl-r,l+r、中心軌道半径 3R3R、転がり条件からの α˙=3θ˙\dot{\alpha}=3\dot{\theta} を明示する。最後に微小振動で sin⁡θ≃θ\sin\theta\simeq\theta と書けば、振動数だけを答えた答案よりも減点されにくい。

解答

前半では、棒に沿って原点から近いおもりまでの距離を l−rl-r、遠いおもりまでの距離を l+rl+r とおく。棒の角度を鉛直下向きから θ\theta とすれば、距離 ss にある質点の速度の大きさは sθ˙s\dot{\theta}、高さは −scos⁡θ-s\cos\theta である。

  1. 位置エネルギーの基準を θ=0\theta=0 に取ると T1=12m(l−r)2θ˙ 2,U1=mg(l−r)(1−cos⁡θ), T_1=\frac{1}{2}m(l-r)^2\dot{\theta}^{\,2},\quad U_1=mg(l-r)(1-\cos\theta), T2=12m(l+r)2θ˙ 2,U2=mg(l+r)(1−cos⁡θ). T_2=\frac{1}{2}m(l+r)^2\dot{\theta}^{\,2},\quad U_2=mg(l+r)(1-\cos\theta).
  2. 2つのおもりの重心は原点から距離 ll の位置にあり、全質量は 2m2m である。したがって Tcm=12(2m)(lθ˙)2=ml2θ˙ 2. T_{\mathrm{cm}} =\frac{1}{2}(2m)(l\dot{\theta})^2 =m l^2\dot{\theta}^{\,2}.
  3. 重心まわりでは2つのおもりが距離 rr にあるので Icm=2mr2,Trot=12Icmθ˙ 2=mr2θ˙ 2. I_{\mathrm{cm}}=2mr^2,\qquad T_{\mathrm{rot}} =\frac{1}{2}I_{\mathrm{cm}}\dot{\theta}^{\,2} =m r^2\dot{\theta}^{\,2}.
  4. 全運動エネルギーと全位置エネルギーは T=m(l2+r2)θ˙ 2,U=2mgl(1−cos⁡θ). T=m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2},\qquad U=2mgl(1-\cos\theta). よって L=m(l2+r2)θ˙ 2−2mgl(1−cos⁡θ) \mathcal{L} =m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} -2mgl(1-\cos\theta) であり、オイラー・ラグランジュ方程式から 2m(l2+r2)θ¨+2mglsin⁡θ=0 2m(l^2+r^2)\ddot{\theta}+2mgl\sin\theta=0 を得る。
  5. 微小振動では sin⁡θ≃θ\sin\theta\simeq\theta だから θ¨+gll2+r2θ=0. \ddot{\theta}+\frac{gl}{l^2+r^2}\theta=0. したがって角振動数は ω0=gll2+r2,f=12πgll2+r2. \omega_0=\sqrt{\frac{gl}{l^2+r^2}}, \qquad f=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{gl}{l^2+r^2}}.

後半では、円筒Aの中心は半径 3R3R の円周上を動く。角度を同じく鉛直下向きから θ\theta とする。

  1. 薄い円筒とみなすので、中心軸まわりの慣性モーメントは IA=mR2. I_A=mR^2.
  2. 中心の速さは 3Rθ˙3R\dot{\theta} であるから Tcm=12m(3Rθ˙)2=92mR2θ˙ 2. T_{\mathrm{cm}} =\frac{1}{2}m(3R\dot{\theta})^2 =\frac{9}{2}mR^2\dot{\theta}^{\,2}.
  3. 純転がり条件から、円筒Aの自転角速度は α˙=3θ˙ \dot{\alpha}=3\dot{\theta} と書ける。したがって中心軸まわりの回転エネルギーは Trot=12mR2(3θ˙)2=92mR2θ˙ 2. T_{\mathrm{rot}} =\frac{1}{2}mR^2(3\dot{\theta})^2 =\frac{9}{2}mR^2\dot{\theta}^{\,2}.
  4. 全運動エネルギーは T=9mR2θ˙ 2. T=9mR^2\dot{\theta}^{\,2}. 位置エネルギーを θ=0\theta=0 で0に取れば U=3mgR(1−cos⁡θ) U=3mgR(1-\cos\theta) なので L=9mR2θ˙ 2−3mgR(1−cos⁡θ). \mathcal{L} =9mR^2\dot{\theta}^{\,2} -3mgR(1-\cos\theta).
  5. オイラー・ラグランジュ方程式より 18mR2θ¨+3mgRsin⁡θ=0 18mR^2\ddot{\theta}+3mgR\sin\theta=0 すなわち θ¨+g6Rsin⁡θ=0. \ddot{\theta}+\frac{g}{6R}\sin\theta=0.
  6. 微小振動では θ¨+g6Rθ=0. \ddot{\theta}+\frac{g}{6R}\theta=0. よって角振動数と振動数は Ω0=g6R,f=12πg6R. \Omega_0=\sqrt{\frac{g}{6R}}, \qquad f=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{g}{6R}}.

最終答

% 棒の系:ω0=gll2+r2,f=12πgll2+r2,円筒の系:IA=mR2,Ω0=g6R,f=12πg6R. \begin{gathered} \text{棒の系:}\quad \omega_0=\sqrt{\frac{gl}{l^2+r^2}}, \qquad f=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{gl}{l^2+r^2}},\\ \text{円筒の系:}\quad I_A=mR^2,\quad \Omega_0=\sqrt{\frac{g}{6R}}, \qquad f=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{g}{6R}}. \end{gathered}

第2問 — 電磁気学

方針

前半は点電荷2個の重ね合わせから双極子近似へ進む問題である。後半は同じ構造を連続分布に拡張し、全電荷と双極子モーメントを積分で求める。式の形は Qr+q⋅rr3 \frac{Q}{r}+\frac{\boldsymbol{q}\cdot\boldsymbol{r}}{r^3} でそろえて見ると、点双極子と分布電荷が同じ考え方で処理できる。

途中式の要点

点電荷の遠方展開では 1r1≃1r(1+Lzr2),1r2≃1r(1−Lzr2) \frac{1}{r_1}\simeq \frac{1}{r}\left(1+\frac{Lz}{r^2}\right), \qquad \frac{1}{r_2}\simeq \frac{1}{r}\left(1-\frac{Lz}{r^2}\right) なので、単極子項 1/r1/r が打ち消し合う。この打ち消しが双極子近似の核心である。

連続分布では、ρ∝cos⁡θ′\rho\propto\cos\theta' であるため ∫0πsin⁡θ′cos⁡θ′ dθ′=0 \int_0^\pi \sin\theta'\cos\theta'\,d\theta'=0 となり全電荷は0になる。一方、双極子モーメントの zz 成分ではさらに z′=r′cos⁡θ′z'=r'\cos\theta' が掛かるため cos⁡2θ′\cos^2\theta' になり、積分は0にならない。

検算

xx 軸上で ϕ=0\phi=0 になるのは、正電荷と負電荷からの距離が等しいためである。これは近似式だけでなく厳密な式でも成り立つ。正の zz 軸上では正電荷側に近いので ϕ>0\phi>0 となり、符号も物理的な直観と一致する。

また、q=qa z^\boldsymbol{q}=qa\,\hat{\boldsymbol{z}} の次元は「電荷 ×\times 長さ」であり、双極子モーメントの次元になっている。

典型ミス

遠方展開で (1+η)−1/2≃1−12η (1+\eta)^{-1/2}\simeq 1-\frac{1}{2}\eta の符号を取り違えると、双極子ポテンシャルの符号が逆になる。もう一つ多い誤りは、電場を求めるときに ∇r−3=−3r/r5\nabla r^{-3}=-3\boldsymbol{r}/r^5 を落として、zz 成分だけを微分してしまうことである。

試験で書くべきポイント

答案では、まず厳密なポテンシャルを重ね合わせで書き、次に L/r≪1L/r\ll1 の一次まで残す、と段階を分ける。分布電荷では QQ と q\boldsymbol{q} の定義式を書いたうえで積分範囲を明示すると、計算の意味が伝わりやすい。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学

方針

前半はエルミート演算子の基本性質を、内積と部分積分だけで示す。中盤は調和振動子の生成消滅演算子の標準計算である。後半の摂動と変分法は、どちらも同じ調和振動子に戻るため、結果の相互検算がしやすい。

途中式の要点

F^=−d/dx\hat{F}=-d/dx の共役では、境界項 [−ϕ∗(x)ψ(x)]−∞∞ [-\phi^*(x)\psi(x)]_{-\infty}^{\infty} が0になることを書く必要がある。この一行がないと、演算子の定義域を無視した計算に見える。

調和振動子では a^a^†=N^+1 \hat{a}\hat{a}^{\dagger}=\hat{N}+1 を使って規格化係数を決める。単に「上昇演算子だから」と書くだけでは、係数 n+1\sqrt{n+1} の根拠が弱い。

検算

摂動 βx2\beta x^2 はポテンシャルのばね定数を変えるだけなので、厳密解は角振動数 Ω=ω2+2βm \Omega=\sqrt{\omega^2+\frac{2\beta}{m}} の調和振動子になる。これを一次展開して摂動論の答えと一致することは、係数の強い検算になる。

変分法では、最小値が厳密な基底エネルギー ℏω/2\hbar\omega/2 になる。試行関数が真の基底状態を含む形で選ばれているためである。

典型ミス

p^=−iℏd/dx\hat{p}=-i\hbar d/dx を用いるとき、a^ψ0=0\hat{a}\psi_0=0 は (x+ℏmωddx)ψ0=0 \left(x+\frac{\hbar}{m\omega}\frac{d}{dx}\right)\psi_0=0 であり、符号を逆にすると発散するガウス関数になる。また ⟨x2⟩\langle x^2\rangle を ℏ/(mω)\hbar/(m\omega) としてしまう誤りが多いが、正しくは基底状態で ℏ/(2mω)\hbar/(2m\omega) である。

試験で書くべきポイント

エルミート性の証明では「境界項が消える」こと、固有値が実数である証明では「(ψ,ψ)≠0(\psi,\psi)\ne0 で割る」ことを明記する。調和振動子では、x^\hat{x} を a^,a^†\hat{a},\hat{a}^{\dagger} で表してから期待値を取ると、不要な積分を避けられる。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学

方針

独立な2準位系なので、最初に1粒子分配関数 zz を正確に書けば、熱力学量はほぼ微分で決まる。後半の操作は「熱浴に接しているか」「孤立しているか」で使う原理が変わる。等温可逆操作では W=ΔFW=\Delta F、孤立した断熱操作では占有数が保存され W=ΔUW=\Delta U である。

途中式の要点

内部エネルギーは U=−∂∂βln⁡Z U=-\frac{\partial}{\partial\beta}\ln Z から求める。ここで x=βεx=\beta\varepsilon の β\beta 微分により ε\varepsilon が出るので、 U=−Nεtanh⁡x U=-N\varepsilon\tanh x となる。比熱では dx/dT=−x/Tdx/dT=-x/T を使うと C=NkBx2sech⁡2x C=Nk_Bx^2\operatorname{sech}^2x が得られる。

検算

T→∞T\to\infty、すなわち x→0x\to0 では U→0,S→NkBln⁡2,⟨N+⟩→N2. U\to0,\qquad S\to Nk_B\ln2,\qquad \langle N_+\rangle\to \frac{N}{2}. これは2つの状態が等確率になる極限と一致する。反対に T→0T\to0 では tanh⁡x→1\tanh x\to1 となり、全粒子が低エネルギー状態に落ちるため U→−NεU\to-N\varepsilon、S→0S\to0 となる。

典型ミス

+ε+\varepsilon 状態のボルツマン因子は e−βεe^{-\beta\varepsilon} である。符号を逆にすると、低温で高エネルギー状態に粒子が集まるという不自然な結果になる。また、系のエントロピー変化だけを見ると負になるが、第二法則で確認すべきなのは熱浴を含めた全エントロピー変化である。

試験で書くべきポイント

仕事の符号規約を答案の中で明示する。ここでは「外部が系にする仕事を正」としたため、準位幅を広げる等温操作の仕事は負になる。断熱操作後の温度は、エネルギーそのものではなく占有比 p+p− \frac{p_+}{p_-} を比較して決めると、T′=2TT'=2T がすぐに出る。

統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

名大 物理学 院試 過去問の収録6年度