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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2026年度 院試 解答例・解説

名古屋大学 理学研究科 物理学 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 力学

方針

どちらも一般化座標が1つの拘束運動である。棒の系では「重心の並進」と「重心まわりの回転」に分けると、個々の質点の速度を毎回展開しなくてよい。円筒の系では、中心の円運動と自転の角速度を分け、転がり条件を最後に代入するのが安全である。

途中式の要点

棒の系で 12m(lr)2θ˙2+12m(l+r)2θ˙2=m(l2+r2)θ˙2 \frac{1}{2}m(l-r)^2\dot{\theta}^{\,2} +\frac{1}{2}m(l+r)^2\dot{\theta}^{\,2} =m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} となる。交差項が消えるのは、2つのおもりが重心から対称な位置にあるためである。また位置エネルギーでは mg(lr)(1cosθ)+mg(l+r)(1cosθ)=2mgl(1cosθ) mg(l-r)(1-\cos\theta)+mg(l+r)(1-\cos\theta) =2mgl(1-\cos\theta) となり、rr には依存しない。重力は重心だけに働く、という見方と一致している。

円筒の系では、中心の軌道半径が 4RR=3R4R-R=3R であることを最初に押さえる。さらに、問題で与えられる転がりの幾何条件から α˙=3θ˙\dot{\alpha}=3\dot{\theta} として自転エネルギーを 12IAα˙2 \frac{1}{2}I_A\dot{\alpha}^{\,2} に代入する。ここで中心速度 3Rθ˙3R\dot{\theta} と自転角速度 3θ˙3\dot{\theta} を混同しないことが重要である。

検算

棒の系で r=0r=0 とすると、2つの質点が同じ場所にある質量 2m2m の単振り子になり、 ω0=gl \omega_0=\sqrt{\frac{g}{l}} を再現する。円筒の系では、長さの次元を確認すると g/Rg/R だけが角振動数の2乗の次元を持つので、Ω02=g/(6R)\Omega_0^2=g/(6R) は次元的に正しい。

典型ミス

棒の運動エネルギーを 12(2m)(l2+r2)θ˙2 \frac{1}{2}(2m)(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} のように書くと、係数が2倍ずれる。T=m(l2+r2)θ˙2T=m(l^2+r^2)\dot{\theta}^{\,2} はすでに2つの質点を足した後の値である。また、ラグランジアンの運動エネルギーが通常の 12Iθ˙2\frac{1}{2}I\dot{\theta}^2 の形に見えないため、L/θ˙\partial\mathcal{L}/\partial\dot{\theta} を取るときに係数2を落としやすい。

試験で書くべきポイント

答案では、距離 lr,l+rl-r,l+r、中心軌道半径 3R3R、転がり条件からの α˙=3θ˙\dot{\alpha}=3\dot{\theta} を明示する。最後に微小振動で sinθθ\sin\theta\simeq\theta と書けば、振動数だけを答えた答案よりも減点されにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 電磁気学

方針

前半は点電荷2個の重ね合わせから双極子近似へ進む問題である。後半は同じ構造を連続分布に拡張し、全電荷と双極子モーメントを積分で求める。式の形は Qr+qrr3 \frac{Q}{r}+\frac{\boldsymbol{q}\cdot\boldsymbol{r}}{r^3} でそろえて見ると、点双極子と分布電荷が同じ考え方で処理できる。

途中式の要点

点電荷の遠方展開では 1r11r(1+Lzr2),1r21r(1Lzr2) \frac{1}{r_1}\simeq \frac{1}{r}\left(1+\frac{Lz}{r^2}\right), \qquad \frac{1}{r_2}\simeq \frac{1}{r}\left(1-\frac{Lz}{r^2}\right) なので、単極子項 1/r1/r が打ち消し合う。この打ち消しが双極子近似の核心である。

連続分布では、ρcosθ\rho\propto\cos\theta' であるため 0πsinθcosθdθ=0 \int_0^\pi \sin\theta'\cos\theta'\,d\theta'=0 となり全電荷は0になる。一方、双極子モーメントの zz 成分ではさらに z=rcosθz'=r'\cos\theta' が掛かるため cos2θ\cos^2\theta' になり、積分は0にならない。

検算

xx 軸上で ϕ=0\phi=0 になるのは、正電荷と負電荷からの距離が等しいためである。これは近似式だけでなく厳密な式でも成り立つ。正の zz 軸上では正電荷側に近いので ϕ>0\phi>0 となり、符号も物理的な直観と一致する。

また、q=qaz^\boldsymbol{q}=qa\,\hat{\boldsymbol{z}} の次元は「電荷 ×\times 長さ」であり、双極子モーメントの次元になっている。

典型ミス

遠方展開で (1+η)1/2112η (1+\eta)^{-1/2}\simeq 1-\frac{1}{2}\eta の符号を取り違えると、双極子ポテンシャルの符号が逆になる。もう一つ多い誤りは、電場を求めるときに r3=3r/r5\nabla r^{-3}=-3\boldsymbol{r}/r^5 を落として、zz 成分だけを微分してしまうことである。

試験で書くべきポイント

答案では、まず厳密なポテンシャルを重ね合わせで書き、次に L/r1L/r\ll1 の一次まで残す、と段階を分ける。分布電荷では QQq\boldsymbol{q} の定義式を書いたうえで積分範囲を明示すると、計算の意味が伝わりやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 量子力学

方針

前半はエルミート演算子の基本性質を、内積と部分積分だけで示す。中盤は調和振動子の生成消滅演算子の標準計算である。後半の摂動と変分法は、どちらも同じ調和振動子に戻るため、結果の相互検算がしやすい。

途中式の要点

F^=d/dx\hat{F}=-d/dx の共役では、境界項 [ϕ(x)ψ(x)] [-\phi^*(x)\psi(x)]_{-\infty}^{\infty} が0になることを書く必要がある。この一行がないと、演算子の定義域を無視した計算に見える。

調和振動子では a^a^=N^+1 \hat{a}\hat{a}^{\dagger}=\hat{N}+1 を使って規格化係数を決める。単に「上昇演算子だから」と書くだけでは、係数 n+1\sqrt{n+1} の根拠が弱い。

検算

摂動 βx2\beta x^2 はポテンシャルのばね定数を変えるだけなので、厳密解は角振動数 Ω=ω2+2βm \Omega=\sqrt{\omega^2+\frac{2\beta}{m}} の調和振動子になる。これを一次展開して摂動論の答えと一致することは、係数の強い検算になる。

変分法では、最小値が厳密な基底エネルギー ω/2\hbar\omega/2 になる。試行関数が真の基底状態を含む形で選ばれているためである。

典型ミス

p^=id/dx\hat{p}=-i\hbar d/dx を用いるとき、a^ψ0=0\hat{a}\psi_0=0(x+mωddx)ψ0=0 \left(x+\frac{\hbar}{m\omega}\frac{d}{dx}\right)\psi_0=0 であり、符号を逆にすると発散するガウス関数になる。また x2\langle x^2\rangle/(mω)\hbar/(m\omega) としてしまう誤りが多いが、正しくは基底状態で /(2mω)\hbar/(2m\omega) である。

試験で書くべきポイント

エルミート性の証明では「境界項が消える」こと、固有値が実数である証明では「(ψ,ψ)0(\psi,\psi)\ne0 で割る」ことを明記する。調和振動子では、x^\hat{x}a^,a^\hat{a},\hat{a}^{\dagger} で表してから期待値を取ると、不要な積分を避けられる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 統計力学

方針

独立な2準位系なので、最初に1粒子分配関数 zz を正確に書けば、熱力学量はほぼ微分で決まる。後半の操作は「熱浴に接しているか」「孤立しているか」で使う原理が変わる。等温可逆操作では W=ΔFW=\Delta F、孤立した断熱操作では占有数が保存され W=ΔUW=\Delta U である。

途中式の要点

内部エネルギーは U=βlnZ U=-\frac{\partial}{\partial\beta}\ln Z から求める。ここで x=βεx=\beta\varepsilonβ\beta 微分により ε\varepsilon が出るので、 U=Nεtanhx U=-N\varepsilon\tanh x となる。比熱では dx/dT=x/Tdx/dT=-x/T を使うと C=NkBx2sech2x C=Nk_Bx^2\operatorname{sech}^2x が得られる。

検算

TT\to\infty、すなわち x0x\to0 では U0,SNkBln2,N+N2. U\to0,\qquad S\to Nk_B\ln2,\qquad \langle N_+\rangle\to \frac{N}{2}. これは2つの状態が等確率になる極限と一致する。反対に T0T\to0 では tanhx1\tanh x\to1 となり、全粒子が低エネルギー状態に落ちるため UNεU\to-N\varepsilonS0S\to0 となる。

典型ミス

+ε+\varepsilon 状態のボルツマン因子は eβεe^{-\beta\varepsilon} である。符号を逆にすると、低温で高エネルギー状態に粒子が集まるという不自然な結果になる。また、系のエントロピー変化だけを見ると負になるが、第二法則で確認すべきなのは熱浴を含めた全エントロピー変化である。

試験で書くべきポイント

仕事の符号規約を答案の中で明示する。ここでは「外部が系にする仕事を正」としたため、準位幅を広げる等温操作の仕事は負になる。断熱操作後の温度は、エネルギーそのものではなく占有比 p+p \frac{p_+}{p_-} を比較して決めると、T=2TT'=2T がすぐに出る。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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