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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは5件(分配関数・ラグランジアン・電磁波)。2023年度と共通のテーマは分配関数・ラグランジアン。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:名古屋大学 理学研究科 物理学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名大 物理学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学解析力学途中式の要点 / 試験で書くべき点あり
第2問電磁気学・回路電磁気学途中式の要点 / 試験で書くべき点あり
第3問熱・統計力学統計力学途中式の要点 / 自発磁化の条件あり
第4問量子力学—途中式の要点 / 試験で書くべき点あり

この年度の解説には検算4件・典型ミス4件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に5テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4問
両年度に出たテーマ
分配関数・ラグランジアン
2024年度で新しく出たテーマ
電磁波・波動関数・フェルミ・ボース統計
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第1問 — 解析力学

方針

拘束された質点の問題なので、最初に座標を一つに落とす。リングが外から一定角速度で回される場合は ϕ=ωt\phi=\omega t を代入してよい。一方、リングが自由に回転する場合は ϕ\phi を消去してはいけない。循環座標 ϕ\phi に対応する保存量が、後半の運動を決める。

途中式の要点

θ\theta は下向き鉛直から測るので、z=−Rcos⁡θz=-R\cos\theta である。重力ポテンシャルは V=mgz=−mgRcos⁡θV=mgz=-mgR\cos\theta となる。したがってラグランジアンには +mgRcos⁡θ+mgR\cos\theta が入る。ここを逆符号にすると、ω=0\omega=0 のとき底点が不安定になるためすぐに誤りと分かる。

検算

平衡点では ω2cos⁡θe=g/R\omega^2\cos\theta_e=g/R である。したがって線形化では、積の微分のうち平衡条件で消える項を確実に落とすと f′(θe)=−ω2sin⁡2θe f'(\theta_e)=-\omega^2\sin^2\theta_e だけが残る。係数が負であることは安定性の確認にもなる。

典型ミス

自由回転の場合に、初期角速度が小さいからといって ϕ˙=0\dot{\phi}=0 と近似してしまうと、θ=0\theta=0 を通れるという誤った結論になる。小さくても ℓ=mR2sin⁡2θ ϕ˙\ell=mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi} が非零なら、ℓ2/sin⁡2θ\ell^2/\sin^2\theta の項は θ=0\theta=0 の近くで支配的である。

試験で書くべき点

最後の設問では、単に「角運動量保存」と書くだけでは不十分である。保存量を用いて有効ポテンシャルを書き、θ→0\theta\to0 で発散することを明示すると、通過不能である理由が答案として完結する。

解答

リングの中心を原点に固定し、鉛直上向きを zz 軸の正方向にとる。質点の位置は、リング面の方位角を ϕ\phi として ρ=Rsin⁡θ,z=−Rcos⁡θ \rho=R\sin\theta,\qquad z=-R\cos\theta で表せる。したがって v2=R2θ˙2+R2sin⁡2θ ϕ˙2,V=mgz=−mgRcos⁡θ v^2=R^2\dot{\theta}^2+R^2\sin^2\theta\,\dot{\phi}^2, \qquad V=mgz=-mgR\cos\theta である。

まず、リングが角速度 ω\omega で強制的に回転している場合は ϕ˙=ω\dot{\phi}=\omega である。ラグランジアンは L=12mR2θ˙2+12mR2ω2sin⁡2θ+mgRcos⁡θ L=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{1}{2}mR^2\omega^2\sin^2\theta +mgR\cos\theta となる。オイラー・ラグランジュ方程式より mR2θ¨=mR2ω2sin⁡θcos⁡θ−mgRsin⁡θ mR^2\ddot{\theta} =mR^2\omega^2\sin\theta\cos\theta-mgR\sin\theta すなわち θ¨=(ω2cos⁡θ−gR)sin⁡θ \ddot{\theta} =\left(\omega^2\cos\theta-\frac{g}{R}\right)\sin\theta を得る。

θ≠0\theta\neq0 の平衡点は cos⁡θe=gRω2 \cos\theta_e=\frac{g}{R\omega^2} を満たす。これが存在するための条件は g/(Rω2)<1g/(R\omega^2)<1 であるから ωc=gR,cos⁡θe=(ωcω)2 \omega_c=\sqrt{\frac{g}{R}},\qquad \cos\theta_e=\left(\frac{\omega_c}{\omega}\right)^2 である。対称性により、リング上には左右一対の平衡点がある。

θ=θe+δθ\theta=\theta_e+\delta\theta とおき、∣δθ∣≪1|\delta\theta|\ll1 とする。右辺 f(θ)=(ω2cos⁡θ−gR)sin⁡θ f(\theta)=\left(\omega^2\cos\theta-\frac{g}{R}\right)\sin\theta を平衡点のまわりで展開すると、平衡条件により f′(θe)=−ω2sin⁡2θe f'(\theta_e)=-\omega^2\sin^2\theta_e である。よって微小振動は δθ¨+ω2sin⁡2θe δθ=0 \delta\ddot{\theta} +\omega^2\sin^2\theta_e\,\delta\theta=0 に従い、角振動数は Ω=ωsin⁡θe=ω1−(ωcω)4 \Omega=\omega\sin\theta_e =\omega\sqrt{1-\left(\frac{\omega_c}{\omega}\right)^4} である。

次に、リング自身が zz 軸まわりに自由に回転できる場合を考える。このとき ϕ\phi も力学変数であり、 L=12mR2θ˙2+12mR2sin⁡2θ ϕ˙2+mgRcos⁡θ L=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{1}{2}mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi}^2 +mgR\cos\theta である。運動方程式は θ¨=sin⁡θcos⁡θ ϕ˙2−gRsin⁡θ, \ddot{\theta} =\sin\theta\cos\theta\,\dot{\phi}^2 -\frac{g}{R}\sin\theta, ddt(mR2sin⁡2θ ϕ˙)=0 \frac{d}{dt}\left(mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi}\right)=0 となる。

保存量は、ϕ\phi が循環座標であることから ℓ=mR2sin⁡2θ ϕ˙ \ell=mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi} と、時間に陽に依存しないことから E=12mR2θ˙2+ℓ22mR2sin⁡2θ−mgRcos⁡θ E=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{\ell^2}{2mR^2\sin^2\theta} -mgR\cos\theta である。初期条件では ℓ=mR2sin⁡2θ0 ω0 \ell=mR^2\sin^2\theta_0\,\omega_0 であり、θ0≠0\theta_0\neq0, ω0>0\omega_0>0 なら ℓ≠0\ell\neq0 である。

したがって有効ポテンシャル Ueff(θ)=ℓ22mR2sin⁡2θ−mgRcos⁡θ U_{\mathrm{eff}}(\theta) = \frac{\ell^2}{2mR^2\sin^2\theta} -mgR\cos\theta は θ→0\theta\to0 で +∞+\infty に発散する。有限の全エネルギーをもつ運動はこの障壁を越えられないので、質点は θ=0\theta=0 を通過しない。特に ω0≪ωc\omega_0\ll\omega_c では重力による振り子運動に近いが、非零の zz 軸まわり角運動量による遠心障壁のため、底点の手前で反転する。

最終答

V=−mgRcos⁡θ,v=Rθ˙2+ω2sin⁡2θ, V=-mgR\cos\theta,\qquad v=R\sqrt{\dot{\theta}^2+\omega^2\sin^2\theta}, L=12mR2θ˙2+12mR2ω2sin⁡2θ+mgRcos⁡θ,θ¨=(ω2cos⁡θ−gR)sin⁡θ. L=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{1}{2}mR^2\omega^2\sin^2\theta +mgR\cos\theta, \qquad \ddot{\theta} =\left(\omega^2\cos\theta-\frac{g}{R}\right)\sin\theta . ωc=gR,cos⁡θe=(ωcω)2,Ω=ω1−(ωcω)4. \omega_c=\sqrt{\frac{g}{R}},\qquad \cos\theta_e=\left(\frac{\omega_c}{\omega}\right)^2,\qquad \Omega=\omega\sqrt{1-\left(\frac{\omega_c}{\omega}\right)^4}. 自由回転の場合は L=12mR2θ˙2+12mR2sin⁡2θ ϕ˙2+mgRcos⁡θ, L=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{1}{2}mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi}^2 +mgR\cos\theta, ℓ=mR2sin⁡2θ ϕ˙,E=12mR2θ˙2+ℓ22mR2sin⁡2θ−mgRcos⁡θ. \ell=mR^2\sin^2\theta\,\dot{\phi},\qquad E=\frac{1}{2}mR^2\dot{\theta}^2 +\frac{\ell^2}{2mR^2\sin^2\theta} -mgR\cos\theta . ℓ≠0\ell\neq0 なら有効ポテンシャルが θ=0\theta=0 で発散するため、質点は θ=0\theta=0 を通過しない。

第2問 — 電磁気学

方針

前半は、平行導体板を長さ Δx\Delta x の小区間に切ったときの集中定数 C,LC,L を求める問題である。後半は、その小区間を連ねたLC梯子回路が、連続極限で電磁波を運ぶことを確認する問題である。

途中式の要点

静電容量は電場エネルギーから求めてもよい。 12CV2=12ε0E2(abΔx) \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}\varepsilon_0E^2(a b\Delta x) を用いても同じ C=ε0aΔx/bC=\varepsilon_0 a\Delta x/b が得られる。同様に磁場エネルギー 12LI2=12μ0B2(abΔx) \frac{1}{2}LI^2 = \frac{1}{2\mu_0}B^2(a b\Delta x) から L=μ0bΔx/aL=\mu_0 b\Delta x/a が出る。この2つを並べておくと、後半で LC=ε0μ0(Δx)2LC=\varepsilon_0\mu_0(\Delta x)^2 が自然に見える。

典型ミス

誘導起電力の符号は、閉路の向きの取り方で表記が変わる。ただし自己インダクタンスは正の量なので、最終的には ∣E∣=L∣dIdt∣ |\mathcal{E}|=L\left|\frac{dI}{dt}\right| に対応する係数を答えればよい。答案では「電流変化を妨げる向き」と一言添えると符号の曖昧さを避けられる。

検算

差分方程式に AnA^n を代入すると、右辺が A+A−1−2A+A^{-1}-2 になる。ここで A−2+A−1A-2+A^{-1} の符号を逆にすると、低周波で k2<0k^2<0 となり、進行波ではなく減衰解になってしまう。低周波で A≃e±iLCωA\simeq e^{\pm i\sqrt{LC}\omega} となることがよい検算である。

試験で書くべき点

最後の数値は、LL と CC の幾何因子 a,b,Δxa,b,\Delta x がすべて相殺されることを示してから書く。これは等価回路が真空中の伝送線路を表していることの物理的確認であり、単に公式 c=1/ε0μ0c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0} を書くより説得力がある。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 統計力学

方針

前半はフェルミ分布の標準導出である。後半は、スピン分極 Δ\Delta による運動エネルギーの増加と、相互作用エネルギーの減少を競わせる。これはストーナー模型の最も簡単な形であり、Δ2\Delta^2 の係数だけで臨界値が決まる。

途中式の要点

非分極の全密度 nn ではスピン縮退度2を含むため n=kF33π2 n=\frac{k_F^3}{3\pi^2} である。一方、上向きスピンだけを見ると縮退度は1なので n↑=kF↑36π2 n_\uparrow=\frac{k_{F\uparrow}^3}{6\pi^2} となる。ここで 3π23\pi^2 と 6π26\pi^2 を混同すると、以後の係数がすべてずれる。

検算

(1+x)5/3+(1−x)5/3=2+109x2+O(x4) (1+x)^{5/3}+(1-x)^{5/3} = 2+\frac{10}{9}x^2+O(x^4) であり、奇数次の項は左右のスピンを入れ替える対称性により消える。したがって、Δ\Delta の最低次補正が Δ2\Delta^2 であることは物理的にも自然である。

典型ミス

全密度の kFk_F と、片スピン成分の kF↑k_{F\uparrow} を同じ状態数で数えるのが典型的なミスである。非分極では 3π23\pi^2、片スピンでは 6π26\pi^2 が出ることを、積分の縮退度から必ず確認する。

自発磁化の条件

相互作用項 Eint=αV(n24−Δ2) E_{\mathrm{int}}=\alpha V\left(\frac{n^2}{4}-\Delta^2\right) は Δ≠0\Delta\neq0 を好む。一方、運動エネルギーはフェルミ面を片側のスピンに押し込むため増加する。相互作用による低下が運動エネルギーの増加を上回ると、Δ=0\Delta=0 が不安定になる。

試験で書くべき点

臨界値は全エネルギーの定数項ではなく Δ2\Delta^2 の係数から読む。グラフでは、α>αc\alpha>\alpha_c のとき Δ=0\Delta=0 ではなく左右対称な Δ≠0\Delta\neq0 の位置に最小が移ること、矢印で自発磁化の位置を示すことが重要である。

統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学

方針

デルタ関数ポテンシャルでは、原点以外は自由粒子として解き、原点での接続条件にすべての効果を押し込む。波動関数は連続だが、1階微分はポテンシャル強度に比例して跳ぶ。この2条件を正しく出せれば、散乱も束縛状態も同じ流れで解ける。

途中式の要点

符号は最も落としやすい。ポテンシャルが −V0δ(x)-V_0\delta(x) で引力なので u′(+0)−u′(−0)=−2mV0ℏ2u(0) u'(+0)-u'(-0)=-\frac{2mV_0}{\hbar^2}u(0) となる。斥力デルタ障壁なら右辺の符号が逆になる。

典型ミス

eiαxe^{i\alpha x} は +x+x 方向、e−iαxe^{-i\alpha x} は −x-x 方向へ進む。右側から左向きに入射する場合、領域Iに右向き入射波は存在しないため AI=0A_I=0 である。この条件を BI=0B_I=0 と取り違えると、透過波を消してしまう。

検算

透過率と反射率は T+R=1 T+R=1 を満たす。これは左右のポテンシャルが同じ自由空間で、吸収がないことの確認である。また V0→0V_0\to0 では λ→0\lambda\to0 なので T→1T\to1、R→0R\to0 となる。

試験で書くべき点

束縛状態では、どの指数関数を残すかを無限遠での発散条件から説明する。x<0x<0 では eβxe^{\beta x}、x>0x>0 では e−βxe^{-\beta x} だけが許される。この一文がないと、正しいエネルギー式だけを書いても導出として弱い。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

名大 物理学 院試 過去問の収録6年度