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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは4件(分配関数・ハミルトン形式・ラグランジアン)。2020年度と共通のテーマは分配関数・ラグランジアン。

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収録6年度分の解答PDF:名古屋大学 理学研究科 物理学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名大 物理学 2022年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学古典力学(分子振動)途中式の見方あり
第2問電磁気学・回路電磁気学(ベクトルポテンシャル)途中式あり
第3問量子力学量子力学(一次元ポテンシャル)途中式あり
第4問熱・統計力学統計力学(理想気体と吸着)途中式あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2020年度)との違い

大問数
2020年度 4問 → 2022年度 4問
両年度に出たテーマ
分配関数・ラグランジアン
2022年度で新しく出たテーマ
ハミルトン形式・井戸型ポテンシャル
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第1問 — 古典力学(分子振動)

方針

前半は三質点二ばねの一次元微小振動である。自然長 ℓ\ell は平衡位置を決めるだけで,平衡からの微小変位で書くと運動方程式から消える。後半は重心固定条件で自由度を減らし,x+x_+ と x−x_-,または y1y_1 だけのラグランジアンに落とすのが最短である。

途中式の見方

x−x_- は左右の端の原子が逆向きに動く反対称モードで,中央の原子は動かない。したがって有効質量も有効ばね定数も左右2個の原子だけから決まり,ω−2=k1/m\omega_-^2=k_1/m となる。x+x_+ は左右の端の原子が同じ向きに動き,中央の原子が逆向きに動く対称伸縮であり,重心固定により中央の変位が −(m/M)x+-(m/M)x_+ と決まるため,ω+2=k1(M+2m)/(mM)\omega_+^2=k_1(M+2m)/(mM) になる。

検算

M→∞M\to\infty とすると中央の原子は固定壁のように振る舞う。この極限で ω+→k1/m\omega_+\to\sqrt{k_1/m} となり,反対称モードと同じ振動数になる。一方,MM が小さいと中央原子が大きく動くため対称伸縮の振動数が大きくなる。これは式の 1/M1/M 依存と整合している。

典型ミス

自然長 ℓ\ell を微小変位の運動方程式に残してしまう誤りが多い。平衡条件 X2−X1=ℓ, X3−X2=ℓX_2-X_1=\ell,\ X_3-X_2=\ell を引けば,ℓ\ell は必ず消える。また x+=x1+x3x_+=x_1+x_3 と x−=x1−x3x_-=x_1-x_3 を使うとき,x1,x3x_1,x_3 の逆変換に 1/21/2 が付くことを落とすと,有効質量が2倍ずれる。

試験で書くべきポイント

行列式を完全に展開しなくても,並進,反対称,対称の3モードを明示すれば十分に説得力がある。屈曲では,角運動量を一次までで評価しているため,yix˙iy_i\dot x_i のような二次小量を捨てることを一言添えると答案が安定する。

解答

ばねの自然長を含む伸びを Δ1=X2−X1−ℓ,Δ2=X3−X2−ℓ \Delta_1=X_2-X_1-\ell,\qquad \Delta_2=X_3-X_2-\ell とおくと,XX 方向のラグランジアンは LX=m2X˙12+M2X˙22+m2X˙32−k12Δ12−k12Δ22. L_X=\frac{m}{2}\dot X_1^2+\frac{M}{2}\dot X_2^2 +\frac{m}{2}\dot X_3^2 -\frac{k_1}{2}\Delta_1^2-\frac{k_1}{2}\Delta_2^2 . したがって運動方程式は mX¨1=k1(X2−X1−ℓ),MX¨2=k1(X1−2X2+X3),mX¨3=k1(X2−X3+ℓ). \begin{aligned} m\ddot X_1&=k_1(X_2-X_1-\ell),\\ M\ddot X_2&=k_1(X_1-2X_2+X_3),\\ m\ddot X_3&=k_1(X_2-X_3+\ell). \end{aligned}

平衡位置からの微小変位を x1,x2,x3x_1,x_2,x_3 とすると, mx¨1=k1(x2−x1),Mx¨2=k1(x1−2x2+x3),mx¨3=k1(x2−x3). \begin{aligned} m\ddot x_1&=k_1(x_2-x_1),\\ M\ddot x_2&=k_1(x_1-2x_2+x_3),\\ m\ddot x_3&=k_1(x_2-x_3). \end{aligned} xj=Ajeiωtx_j=A_j e^{i\omega t} を代入すると,振幅は (k1−mω2−k10−k12k1−Mω2−k10−k1k1−mω2)(A1A2A3)=0 \begin{pmatrix} k_1-m\omega^2 & -k_1 & 0\\ -k_1 & 2k_1-M\omega^2 & -k_1\\ 0 & -k_1 & k_1-m\omega^2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix}A_1\\ A_2\\ A_3\end{pmatrix} =0 を満たす。非自明解の条件から ω2=0,ω2=k1m,ω2=k1(M+2m)mM \omega^2=0,\qquad \omega^2=\frac{k_1}{m},\qquad \omega^2=\frac{k_1(M+2m)}{mM} を得る。並進運動に対応するのは A1=A2=A3A_1=A_2=A_3 の ω=0\omega=0 である。

重心を固定し, x+=x1+x3,x−=x1−x3,x2=−mMx+ x_+=x_1+x_3,\qquad x_-=x_1-x_3,\qquad x_2=-\frac{m}{M}x_+ を用いると, x1=x++x−2,x3=x+−x−2. x_1=\frac{x_++x_-}{2},\qquad x_3=\frac{x_+-x_-}{2}. これを LXL_X の微小振動形に代入して LX=m(M+2m)4Mx˙+2+m4x˙−2−k1(M+2m)24M2x+2−k14x−2. L_X= \frac{m(M+2m)}{4M}\dot x_+^2+\frac{m}{4}\dot x_-^2 -\frac{k_1(M+2m)^2}{4M^2}x_+^2-\frac{k_1}{4}x_-^2 . よって基準振動数は ω+=k1(M+2m)mM,ω−=k1m. \omega_+=\sqrt{\frac{k_1(M+2m)}{mM}},\qquad \omega_-=\sqrt{\frac{k_1}{m}} .

次に YY 方向の屈曲を考える。原子2の平衡位置まわりの角運動量は,一次の微小量までで Lz=m(−ℓ)y˙1+m(ℓ)y˙3=mℓ(y˙3−y˙1) L_z =m(-\ell)\dot y_1+m(\ell)\dot y_3 =m\ell(\dot y_3-\dot y_1) である。したがって y1=y3y_1=y_3 では角運動量は 00 になる。

さらに y1=y3y_1=y_3 と重心固定条件 2my1+My2=0 2my_1+My_2=0 を用いると,y2=−2my1/My_2=-2my_1/M である。屈曲の変数 δ=(y1−y2)+(y3−y2)ℓ \delta=\frac{(y_1-y_2)+(y_3-y_2)}{\ell} を消去すると δ=2(M+2m)Mℓy1. \delta=\frac{2(M+2m)}{M\ell}y_1 . したがって TY=m2y˙12+M2y˙22+m2y˙32=m(M+2m)My˙12, T_Y=\frac{m}{2}\dot y_1^2+\frac{M}{2}\dot y_2^2+\frac{m}{2}\dot y_3^2 =\frac{m(M+2m)}{M}\dot y_1^2, UY=k2ℓ22δ2=2k2(M+2m)2M2y12. U_Y=\frac{k_2\ell^2}{2}\delta^2 =\frac{2k_2(M+2m)^2}{M^2}y_1^2 . よって LY=m(M+2m)My˙12−2k2(M+2m)2M2y12, L_Y=\frac{m(M+2m)}{M}\dot y_1^2 -\frac{2k_2(M+2m)^2}{M^2}y_1^2, 屈曲振動の振動数は ωY=2k2(M+2m)mM \omega_Y=\sqrt{\frac{2k_2(M+2m)}{mM}} である。

最終答

LX=m2X˙12+M2X˙22+m2X˙32−k12(X2−X1−ℓ)2−k12(X3−X2−ℓ)2,ω=0,ω−=k1m,ω+=k1(M+2m)mM,Lz=mℓ(y˙3−y˙1),y1=y3⇒Lz=0,LY=m(M+2m)My˙12−2k2(M+2m)2M2y12,ωY=2k2(M+2m)mM. \begin{gathered} L_X=\frac{m}{2}\dot X_1^2+\frac{M}{2}\dot X_2^2+\frac{m}{2}\dot X_3^2 -\frac{k_1}{2}(X_2-X_1-\ell)^2-\frac{k_1}{2}(X_3-X_2-\ell)^2,\\ \omega=0,\quad \omega_-=\sqrt{\frac{k_1}{m}},\quad \omega_+=\sqrt{\frac{k_1(M+2m)}{mM}},\\ L_z=m\ell(\dot y_3-\dot y_1),\quad y_1=y_3\Rightarrow L_z=0,\quad L_Y=\frac{m(M+2m)}{M}\dot y_1^2-\frac{2k_2(M+2m)^2}{M^2}y_1^2,\\ \omega_Y=\sqrt{\frac{2k_2(M+2m)}{mM}} . \end{gathered}

第2問 — 電磁気学(ベクトルポテンシャル)

方針

前半はビオ・サバールの式を「回転の形」に直す問題である。∇\nabla が観測点 r\mathbf r に作用することを明記すれば,符号が自然に決まる。後半は遠方近似で長方形ループを磁気双極子に置き換える。

途中式

4辺のベクトルポテンシャルを足すと,∫ds/r\int d\mathbf s/r に対応する 1/r1/r 項は閉曲線なので消える。残るのは位置 r′\mathbf r' に比例する一次の項で,これは面積 4ab4ab と電流 II の積,すなわち磁気双極子モーメントだけで決まる。

検算

長方形ループの電流は +z+z 方向から見て反時計回りなので,右ねじの規則より m\mathbf m は +z+z 方向である。求めた A∝(−y,x,0) \mathbf A\propto(-y,x,0) は zz 軸まわりに回る向きであり,m∥+z^\mathbf m\parallel +\hat{\mathbf z} の双極子ポテンシャルと一致する。

典型ミス

A=(μ0/4π)m×r/r3\mathbf A=(\mu_0/4\pi)\mathbf m\times\mathbf r/r^3 と r×m\mathbf r\times\mathbf m を取り違えると,A\mathbf A と UU の符号が反転する。もう一つのミスは,外部場の yy 成分もループを貫くと考えてしまうことである。ループ面は xyxy 平面なので,磁束に寄与するのは Bz=Bcos⁡θB_z=B\cos\theta だけである。

試験で書くべきポイント

最終的に U=−m⋅Bext U=-\mathbf m\cdot\mathbf B_{\mathrm ext} までまとめると,エネルギー最小の条件は「磁気双極子が外部磁場と平行になる」と一行で説明できる。物理的意味まで書けば,計算途中で符号を疑われにくい。

電磁気学(ベクトルポテンシャル)の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学(一次元ポテンシャル)

方針

無限井戸では境界条件が量子化条件を直接与える。有限井戸では,井戸の外で波動関数が指数減衰することと,境界で ψ,ψ′\psi,\psi' が連続することが本質である。どちらも「境界条件を先に書く」答案にすると見通しがよい。

途中式

⟨p⟩n=0\langle p\rangle_n=0 は,粒子が静止しているという意味ではない。運動量の確率分布が正負対称で平均が0という意味であり,実際には ⟨p2⟩n=2mEn\langle p^2\rangle_n=2mE_n は正である。重ね合わせ状態では,xx の非対角成分 ⟨1∣x∣2⟩\langle 1|x|2\rangle が干渉項を作り,期待値が時間振動する。

検算

⟨x⟩n=a/2\langle x\rangle_n=a/2 は井戸の中央対称性から当然である。重ね合わせ状態の ⟨H⟩\langle H\rangle は時間に依存しない。これはハミルトニアンが時間に依存しないためであり,計算結果が時間関数になったら直交性の使い方を見直すべきである。

典型ミス

有限井戸の外側で振動解を書いてしまうミスが多い。0<E<V00<E<V_0 なので外側では古典的に禁制領域であり,κ\kappa を用いた指数減衰解になる。また境界で連続なのは ψ\psi だけでなく ψ′\psi' も含む。ポテンシャルが有限の段差であるため,導関数は飛ばない。

試験で書くべきポイント

図示問題では,正確な振幅よりも節の数,境界で0になるか,外側に指数的な尾が出るかが採点対象になる。基底状態は節なし,第1励起状態は1節,という節定理を書き添えると答案の意図が明確になる。

量子力学(一次元ポテンシャル)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学(理想気体と吸着)

方針

理想気体の部分はガウス積分で運動量を消去し,VV 依存と TT 依存を読む。吸着の部分は,吸着点1個を「空」または「占有」の二準位系として扱うと大分配関数がすぐ書ける。

途中式

吸着粒子数は固定されていないため,正準分配関数ではなく大分配関数を使う。占有状態の重みは exp⁡[−β(E−μN)]=exp⁡[−β(−ϵ1−μ)]=exp⁡{β(μ+ϵ1)} \exp[-\beta(E-\mu N)] =\exp[-\beta(-\epsilon_1-\mu)] =\exp\{\beta(\mu+\epsilon_1)\} である。ここで符号を確認しておくと,吸着エネルギーが深いほど占有率が上がることが式から見える。

検算

P→0P\to0 では eβμ→0e^{\beta\mu}\to0 なので f→0f\to0,高圧極限では f→1f\to1 である。これは吸着点が高々1個の粒子しか持てないという仮定と一致する。また f=1/2f=1/2 の条件は eβ(μ+ϵ1)=1e^{\beta(\mu+\epsilon_1)}=1 であり,温度に依らず μ=−ϵ1\mu=-\epsilon_1 となる。

典型ミス

吸着点 MM 個を粒子のように 1/M!1/M! で割ってはいけない。吸着点は箱の表面に固定された区別可能な位置であり,各点が独立な二状態を持つ。また,吸着された粒子のエネルギーは −ϵ1-\epsilon_1 なので,平均エネルギーは負になる。

試験で書くべきポイント

最後のグラフは式 f(P)=PP+P1/2 f(P)=\frac{P}{P+P_{1/2}} から,原点を通ること,P1/2P_{1/2} で 1/21/2,高圧で飽和することを示せば十分である。この形はラングミュア吸着等温式である。

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名大 物理学 院試 過去問の収録6年度