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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは5件(調和振動子・剛体の回転運動・分配関数)。

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収録6年度分の解答PDF:名古屋大学 理学研究科 物理学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名大 物理学 2020年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学古典力学(拘束運動)途中式あり
第2問電磁気学・回路電磁気学(円電流)途中式あり
第3問量子力学量子力学(水素原子と摂動)途中式あり
第4問熱・統計力学統計力学(調和振動子と輻射)途中式あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2020年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に5テーマが出ています。

第1問 — 古典力学(拘束運動)

方針

固定円柱では質点の軌道は円のインボリュートである。接点の角度を θ\theta とすると,ほどけた糸の長さが RθR\theta になるため,OP→\overrightarrow{OP} を幾何だけで書ける。回転円柱では,接点の空間的な角度が θ+ψ\theta+\psi になる点だけを変えればよい。

途中式

固定円柱で r˙=Rθθ˙ er \dot{\mathbf r}=R\theta\dot\theta\,\mathbf e_r となることが重要である。速度が糸に垂直な方向を向くので,糸の張力は仕事をせず,質点の速さは一定になる。ただし張力の作用線は原点を通らないため,原点まわりの角運動量は保存しない。

検算

Rθθ˙=v0R\theta\dot\theta=v_0 から θ2∝t\theta^2\propto t となる。これはほどき始めで θ˙\dot\theta が形式的に発散することを示すが,物理的な速さ Rθθ˙R\theta\dot\theta は有限で v0v_0 である。座標 θ\theta が初期時刻で特異なだけで,運動自体が破綻しているわけではない。

典型ミス

回転円柱で θ\theta と ψ\psi を同じ角度として扱うと,質点速度の ψ˙ t\dot\psi\,\mathbf t の項を落としてしまう。θ\theta は糸がほどけた量,ψ\psi は円柱自体の回転量であり,接点の空間角は θ+ψ\theta+\psi である。

試験で書くべきポイント

ψ\psi が循環座標であることを見抜けば,保存量 pψp_\psi がすぐ得られる。初期条件から pψ=0p_\psi=0 とし,θ˙>0\dot\theta>0 を使って ψ˙<0\dot\psi<0 を示せば,回転方向の問いに短く答えられる。

解答

固定された円柱を考える。接点の位置を OC→=R(sin⁡θ,cos⁡θ) \overrightarrow{OC}=R(\sin\theta,\cos\theta) と書く。接点における接線方向の単位ベクトルを t=(cos⁡θ,−sin⁡θ) \mathbf t=(\cos\theta,-\sin\theta) とすると,ほどけた糸の長さは RθR\theta であり,質点は接点から −t-\mathbf t 方向にある。したがって CP→=−Rθ(cos⁡θ,−sin⁡θ), \overrightarrow{CP}=-R\theta(\cos\theta,-\sin\theta), OP→=R(sin⁡θ−θcos⁡θ, cos⁡θ+θsin⁡θ). \overrightarrow{OP} =R(\sin\theta-\theta\cos\theta,\, \cos\theta+\theta\sin\theta). これを時間微分すると r˙=Rθθ˙(sin⁡θ,cos⁡θ), \dot{\mathbf r} =R\theta\dot\theta(\sin\theta,\cos\theta), すなわち vx=Rθθ˙sin⁡θ,vy=Rθθ˙cos⁡θ. v_x=R\theta\dot\theta\sin\theta,\qquad v_y=R\theta\dot\theta\cos\theta .

ポテンシャルはないので L=m2∣r˙∣2=mR22θ2θ˙2. L=\frac{m}{2}|\dot{\mathbf r}|^2 =\frac{mR^2}{2}\theta^2\dot\theta^2 . オイラー・ラグランジュ方程式は ddt(mR2θ2θ˙)−mR2θθ˙2=0, \frac{d}{dt}(mR^2\theta^2\dot\theta)-mR^2\theta\dot\theta^2=0, すなわち θ2θ¨+θθ˙2=0. \theta^2\ddot\theta+\theta\dot\theta^2=0. θ>0\theta>0 では ddt(θθ˙)=0 \frac{d}{dt}(\theta\dot\theta)=0 だから,初速の条件 Rθθ˙=v0R\theta\dot\theta=v_0 を用いて θθ˙=v0R,θ(t)=2v0Rt \theta\dot\theta=\frac{v_0}{R},\qquad \theta(t)=\sqrt{\frac{2v_0}{R}t} となる。

原点まわりの角運動量は Lz=m(r×r˙)z=−mR2θ2θ˙ L_z=m(\mathbf r\times\dot{\mathbf r})_z =-mR^2\theta^2\dot\theta である。大きさは ∣Lz∣=mR2θ2θ˙=mRv0θ |L_z|=mR^2\theta^2\dot\theta=mRv_0\theta で,時間とともに変化する。よって角運動量は保存しない。一方, K=mR22θ2θ˙2=mv022 K=\frac{mR^2}{2}\theta^2\dot\theta^2=\frac{m v_0^2}{2} は保存する。

次に円柱が回転できる場合を考える。円柱の回転角を ψ\psi,接点の空間内の角度を α=θ+ψ \alpha=\theta+\psi とする。接点方向と接線方向を er=(sin⁡α,cos⁡α),t=(cos⁡α,−sin⁡α) \mathbf e_r=(\sin\alpha,\cos\alpha),\qquad \mathbf t=(\cos\alpha,-\sin\alpha) とおけば r=R(er−θt). \mathbf r=R(\mathbf e_r-\theta\mathbf t). したがって r˙=R{ψ˙ t+θ(θ˙+ψ˙)er} \dot{\mathbf r} =R\left\{\dot\psi\,\mathbf t+\theta(\dot\theta+\dot\psi)\mathbf e_r\right\} であり, ∣r˙∣2=R2[ψ˙2+θ2(θ˙+ψ˙)2]. |\dot{\mathbf r}|^2 =R^2\left[\dot\psi^2+\theta^2(\dot\theta+\dot\psi)^2\right]. 円柱の慣性モーメントを II と書くと,ラグランジアンは L=mR22[ψ˙2+θ2(θ˙+ψ˙)2]+I2ψ˙2. L= \frac{mR^2}{2} \left[\dot\psi^2+\theta^2(\dot\theta+\dot\psi)^2\right] +\frac{I}{2}\dot\psi^2 .

Ω=θ˙+ψ˙\Omega=\dot\theta+\dot\psi とおくと,θ\theta について ddt{mR2θ2Ω}−mR2θΩ2=0, \frac{d}{dt}\{mR^2\theta^2\Omega\} -mR^2\theta\Omega^2=0, すなわち θ2(θ¨+ψ¨)+2θθ˙(θ˙+ψ˙)−θ(θ˙+ψ˙)2=0. \theta^2(\ddot\theta+\ddot\psi) +2\theta\dot\theta(\dot\theta+\dot\psi) -\theta(\dot\theta+\dot\psi)^2=0. ψ\psi は循環座標なので pψ=(I+mR2)ψ˙+mR2θ2(θ˙+ψ˙) p_\psi= (I+mR^2)\dot\psi +mR^2\theta^2(\dot\theta+\dot\psi) が保存する。初期に円柱は静止し,θ=0\theta=0 から始まるので保存値は 00 である。したがって ψ˙=−mR2θ2I+mR2+mR2θ2θ˙. \dot\psi = -\frac{mR^2\theta^2}{I+mR^2+mR^2\theta^2}\dot\theta . θ˙>0\dot\theta>0 であるから ψ˙<0\dot\psi<0 となり,時計回りを正に取った規約では,円柱は反時計回りに回転する。

この場合,質点だけの運動エネルギー Kp=mR22[ψ˙2+θ2(θ˙+ψ˙)2] K_{\mathrm p}= \frac{mR^2}{2} \left[\dot\psi^2+\theta^2(\dot\theta+\dot\psi)^2\right] は一般には保存しない。保存するのは Ktotal=Kp+I2ψ˙2 K_{\mathrm total}=K_{\mathrm p}+\frac{I}{2}\dot\psi^2 である。

最終答

CP→=−Rθ(cos⁡θ,−sin⁡θ),OP→=R(sin⁡θ−θcos⁡θ, cos⁡θ+θsin⁡θ),r˙=Rθθ˙(sin⁡θ,cos⁡θ),L=mR22θ2θ˙2,θ(t)=2v0Rt,∣Lz∣=mRv0θ で非保存,K=12mv02 で保存,L=mR22[ψ˙2+θ2(θ˙+ψ˙)2]+I2ψ˙2,θ2(θ¨+ψ¨)+2θθ˙(θ˙+ψ˙)−θ(θ˙+ψ˙)2=0,pψ=(I+mR2)ψ˙+mR2θ2(θ˙+ψ˙)=0,ψ˙<0. \begin{gathered} \overrightarrow{CP}=-R\theta(\cos\theta,-\sin\theta),\qquad \overrightarrow{OP}=R(\sin\theta-\theta\cos\theta,\ \cos\theta+\theta\sin\theta),\\ \dot{\mathbf r}=R\theta\dot\theta(\sin\theta,\cos\theta),\qquad L=\frac{mR^2}{2}\theta^2\dot\theta^2,\qquad \theta(t)=\sqrt{\frac{2v_0}{R}t},\\ |L_z|=mRv_0\theta\ \text{で非保存},\qquad K=\frac12mv_0^2\ \text{で保存},\\ L= \frac{mR^2}{2} \left[\dot\psi^2+\theta^2(\dot\theta+\dot\psi)^2\right] +\frac{I}{2}\dot\psi^2,\\ \theta^2(\ddot\theta+\ddot\psi) +2\theta\dot\theta(\dot\theta+\dot\psi) -\theta(\dot\theta+\dot\psi)^2=0,\\ p_\psi=(I+mR^2)\dot\psi+mR^2\theta^2(\dot\theta+\dot\psi)=0,\qquad \dot\psi<0 . \end{gathered}

第2問 — 電磁気学(円電流)

方針

円電流は,微小電流素片に働くローレンツ力 dF=I ds×Bd\mathbf F=I\,d\mathbf s\times\mathbf B を一周積分すればよい。一様磁場では合力は消え,トルクだけが残る。磁場勾配がある場合は,左右で力の大きさが異なるため合力が出る。

途中式

一様磁場で求めたトルクは N=μ×B \mathbf N=\boldsymbol\mu\times\mathbf B と比較するとすぐ磁気モーメントを読める。図の電流向きでは μ\boldsymbol\mu は +z+z 方向である。向きを逆に取れば,μ\boldsymbol\mu,トルク,誘導起電力の符号は同時に反転する。

検算

非一様磁場での合力は B0B_0 に依存しない。B0B_0 は円周上で同じ大きさの半径方向の力を作るだけで,一周積分すると相殺される。残るのは勾配 B1B_1 に比例する項だけである。

典型ミス

誘導起電力の符号は,どちらの周回方向を正にしたかに依存する。本解では初めの電流方向を正に取ったので,E<0\mathcal E<0 はレンツの法則どおり電流を弱める向きを意味する。エネルギー比較では符号付き起電力ではなく,電源が供給する正の仕事 −IE-I\mathcal E を積分する。

試験で書くべきポイント

最後に Wel=K W_{\mathrm el}=K を示すと,電流を一定に保つための外部電源の仕事が,導線の力学的エネルギーに変換されたことが分かる。これは式だけでなく物理的説明も書く価値がある。

電磁気学(円電流)の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学(水素原子と摂動)

方針

前半はスターク効果である。基底状態ではパリティにより一次補正が消え,n=2n=2 では縮退摂動論が必要になる。後半は,内部電場との相互作用が交換子で書けることを使い,波動関数の一次変化と外部電場中のエネルギーを調べる。

途中式

z=rcos⁡θz=r\cos\theta は奇パリティで,かつ球面調和関数の m=0m=0 成分を持つ。したがって 2s2s と 2pm=02p_{m=0} だけが一次で混ざる。m=±1m=\pm1 の 2p2p 状態は同じ n=2n=2 の中にあるが,zz では結合しないため一次ではエネルギーがずれない。

検算

n=2n=2 の線形スターク効果で得た分裂幅は ea0Eexea_0E_{\mathrm ex} の次元を持つ。eEexeE_{\mathrm ex} は力,a0a_0 は長さなので,積はエネルギーであり次元が合う。また,基底状態では偶関数と奇演算子の期待値なので一次補正が消える。

典型ミス

縮退がある n=2n=2 で,単に対角成分 ⟨n,l,m∣H^A∣n,l,m⟩\langle n,l,m|\hat H_A|n,l,m\rangle だけを見ると線形スターク分裂を見落とす。縮退部分空間の中で行列を作り,対角化することが必要である。

試験で書くべきポイント

電気双極子相互作用の符号は,d^\hat{\mathbf d} の向きの定義で全体が反転し得る。答案では一つの符号規約を明示し,電荷の外場エネルギーと双極子の直接エネルギーが一次で相殺することを示せばよい。この相殺が後半の物理的な要点である。

量子力学(水素原子と摂動)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学(調和振動子と輻射)

方針

前半は1個の調和振動子を解き,独立な NN 個なら分配関数を NN 乗する。後半は電磁波の各モードを量子調和振動子と見なし,モード密度 g(ω)g(\omega) で和を積分に置き換える。

途中式

古典分配関数では pp と qq のガウス積分がそれぞれ1つずつ出る。結果は kBT/(ℏω)k_BT/(\hbar\omega) となり,高温で量子分配関数 11−e−βℏω \frac{1}{1-e^{-\beta\hbar\omega}} の近似と一致する。これは対応原理のよい検算である。

検算

輻射場では FR∝−VT4,UR∝VT4,PR=UR3V F_R\propto -VT^4,\qquad U_R\propto VT^4,\qquad P_R=\frac{U_R}{3V} となる。特に PR=UR/(3V)P_R=U_R/(3V) は黒体輻射の標準結果であり,係数計算の検算に使える。

典型ミス

電磁波モード密度で偏光の2倍を忘れると,g(ω)g(\omega) から先の全係数が半分になる。また,箱の境界条件が ki=πni/Lk_i=\pi n_i/L で ni≥0n_i\ge0 なので,kk 空間では八分球を数える。全空間を数えてさらに2倍すると8倍の過大評価になる。

試験で書くべきポイント

グラフは定性的な形だけでなく,高温極限・低温極限,または最大位置の式を書き込むと採点しやすい。プランク分布では ω3\omega^3 の立ち上がりと指数関数による減衰の競合でピークが生じる,という説明を添えるとよい。

統計力学(調和振動子と輻射)の途中式・最終答をPDFで見る

名大 物理学 院試 過去問の収録6年度