名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 理学研究科 物理学 2020年度 院試 解答例・解説
名古屋大学 理学研究科 物理学 2020年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 古典力学(拘束運動)
方針
固定円柱では質点の軌道は円のインボリュートである。接点の角度を とすると,ほどけた糸の長さが になるため, を幾何だけで書ける。回転円柱では,接点の空間的な角度が になる点だけを変えればよい。
途中式
固定円柱で となることが重要である。速度が糸に垂直な方向を向くので,糸の張力は仕事をせず,質点の速さは一定になる。ただし張力の作用線は原点を通らないため,原点まわりの角運動量は保存しない。
検算
から となる。これはほどき始めで が形式的に発散することを示すが,物理的な速さ は有限で である。座標 が初期時刻で特異なだけで,運動自体が破綻しているわけではない。
典型ミス
回転円柱で と を同じ角度として扱うと,質点速度の の項を落としてしまう。 は糸がほどけた量, は円柱自体の回転量であり,接点の空間角は である。
試験で書くべきポイント
が循環座標であることを見抜けば,保存量 がすぐ得られる。初期条件から とし, を使って を示せば,回転方向の問いに短く答えられる。
第2問 — 電磁気学(円電流)
方針
円電流は,微小電流素片に働くローレンツ力 を一周積分すればよい。一様磁場では合力は消え,トルクだけが残る。磁場勾配がある場合は,左右で力の大きさが異なるため合力が出る。
途中式
一様磁場で求めたトルクは と比較するとすぐ磁気モーメントを読める。図の電流向きでは は 方向である。向きを逆に取れば,,トルク,誘導起電力の符号は同時に反転する。
検算
非一様磁場での合力は に依存しない。 は円周上で同じ大きさの半径方向の力を作るだけで,一周積分すると相殺される。残るのは勾配 に比例する項だけである。
典型ミス
誘導起電力の符号は,どちらの周回方向を正にしたかに依存する。本解では初めの電流方向を正に取ったので, はレンツの法則どおり電流を弱める向きを意味する。エネルギー比較では符号付き起電力ではなく,電源が供給する正の仕事 を積分する。
試験で書くべきポイント
最後に を示すと,電流を一定に保つための外部電源の仕事が,導線の力学的エネルギーに変換されたことが分かる。これは式だけでなく物理的説明も書く価値がある。
第3問 — 量子力学(水素原子と摂動)
方針
前半はスターク効果である。基底状態ではパリティにより一次補正が消え, では縮退摂動論が必要になる。後半は,内部電場との相互作用が交換子で書けることを使い,波動関数の一次変化と外部電場中のエネルギーを調べる。
途中式
は奇パリティで,かつ球面調和関数の 成分を持つ。したがって と だけが一次で混ざる。 の 状態は同じ の中にあるが, では結合しないため一次ではエネルギーがずれない。
検算
の線形スターク効果で得た分裂幅は の次元を持つ。 は力, は長さなので,積はエネルギーであり次元が合う。また,基底状態では偶関数と奇演算子の期待値なので一次補正が消える。
典型ミス
縮退がある で,単に対角成分 だけを見ると線形スターク分裂を見落とす。縮退部分空間の中で行列を作り,対角化することが必要である。
試験で書くべきポイント
電気双極子相互作用の符号は, の向きの定義で全体が反転し得る。答案では一つの符号規約を明示し,電荷の外場エネルギーと双極子の直接エネルギーが一次で相殺することを示せばよい。この相殺が後半の物理的な要点である。
第4問 — 統計力学(調和振動子と輻射)
方針
前半は1個の調和振動子を解き,独立な 個なら分配関数を 乗する。後半は電磁波の各モードを量子調和振動子と見なし,モード密度 で和を積分に置き換える。
途中式
古典分配関数では と のガウス積分がそれぞれ1つずつ出る。結果は となり,高温で量子分配関数 の近似と一致する。これは対応原理のよい検算である。
検算
輻射場では となる。特に は黒体輻射の標準結果であり,係数計算の検算に使える。
典型ミス
電磁波モード密度で偏光の2倍を忘れると, から先の全係数が半分になる。また,箱の境界条件が で なので, 空間では八分球を数える。全空間を数えてさらに2倍すると8倍の過大評価になる。
試験で書くべきポイント
グラフは定性的な形だけでなく,高温極限・低温極限,または最大位置の式を書き込むと採点しやすい。プランク分布では の立ち上がりと指数関数による減衰の競合でピークが生じる,という説明を添えるとよい。