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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2025年度 院試 解答例・解説

名古屋大学 理学研究科 物理学 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 力学

方針

前半は、慣性系では単純なラグランジアンを書き、回転座標へ移すことで慣性力を取り出す。後半は、振り子の微小振動にコリオリ力の水平成分だけを残し、振動面のゆっくりした回転を求める。

途中式の要点

座標変換後の速度の平方は (X˙ωY)2+(Y˙+ωX)2+Z˙2 (\dot{X}-\omega Y)^2+(\dot{Y}+\omega X)^2+\dot{Z}^2 である。この符号を正しく出すことが、コリオリ力の符号を決める。回転座標の運動方程式はベクトル表示で mR¨=U2mω×R˙mω×(ω×R) m\ddot{\boldsymbol{R}} =-\nabla U -2m\boldsymbol{\omega}\times\dot{\boldsymbol{R}} -m\boldsymbol{\omega}\times(\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{R}) とまとめられる。

振り子では、北緯 λ\lambda における自転ベクトルの鉛直成分 ωsinλ\omega\sin\lambda だけが振動面の回転に効く。水平成分 ωcosλ\omega\cos\lambda は、微小振動近似では主に鉛直方向の小さい補正に入る。

検算

赤道では λ=0\lambda=0 なので Trot T_{\mathrm{rot}}\to\infty となり、振動面は回転しない。北極では λ=π/2\lambda=\pi/2 なので、地球の自転角速度そのもの ω\omega で振動面が回る。これはフーコー振り子の標準結果と一致する。

典型ミス

張力の向きは質点から支点へ向かうため Tl(x,y,z) -\frac{T}{l}(x,y,z) である。符号を逆にすると、微小振動で復元力ではなく発散する力になってしまう。また L=xy˙x˙yL=x\dot{y}-\dot{x}y は質量を含まない量として定義されているため、通常の角運動量 mLmL と混同しない。

試験で書くべきポイント

回転座標の問題では、コリオリ力と遠心力をベクトル形で書いてから成分に直すと符号ミスが減る。振り子の最後では ddt{L+ωsinλr2}=0 \frac{d}{dt}\{L+\omega\sin\lambda\,r^2\}=0 を示すと、振動面の回転角速度まで一気に到達できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 量子力学

方針

無限井戸では、境界条件 u(0)=u(a)=0u(0)=u(a)=0 がすべてを決める。後半の多項式波動関数は、井戸の固有関数 sin(nπx/a)\sin(n\pi x/a) へのフーリエ正弦級数として展開する。

途中式の要点

負のエネルギーがないことは、解の形を場合分けするよりも、期待値 22m0au(x)2dx \frac{\hbar^2}{2m}\int_0^a |u'(x)|^2\,dx が非負であることから示すのが短い。境界条件で部分積分の境界項が消えることを明記する。

展開係数では 01y(1y)sin(nπy)dy=2{1(1)n}(nπ)3 \int_0^1 y(1-y)\sin(n\pi y)\,dy =\frac{2\{1-(-1)^n\}}{(n\pi)^3} が鍵である。偶数 nn が消えるのは、ψ(x)\psi(x)x=a/2x=a/2 に関して対称であり、偶数番目の固有関数が反対称だからである。

検算

係数の規格化は n=1n odd960n6π6=1 \sum_{\substack{n=1\\ n\ \mathrm{odd}}}^{\infty} \frac{960}{n^6\pi^6}=1 で確認できる。問題で与えられた n=1,3,5,1/n6=π6/960\sum_{n=1,3,5,\ldots}1/n^6=\pi^6/960 と一致する。

典型ミス

unu_n の番号を n=0n=0 から始めると、基底エネルギーを0としてしまう。無限井戸では n=1,2,n=1,2,\ldots であり、基底状態にも零点エネルギーがある。また、エネルギー測定後も元の ψ(x)\psi(x) で位置平均を取るのは誤りで、測定結果 E1E_1 を得た時点で状態は u1u_1 に変わる。

試験で書くべきポイント

答案では、固有関数の規格化、展開係数の偶奇、測定後の状態の射影をはっきり分ける。特に問7以降は、確率 cn2|c_n|^2 とエネルギー固有値 EnE_n を混同しないように書く。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 電磁気学

方針

球対称な一様電荷分布の内部電場は位置に比例する。電子は負電荷なので、力は原点向きの復元力となり、基本は3次元の等方的な調和振動子である。外部電場は平衡位置をずらし、外部磁場は x,yx,y 運動を結合させる。

途中式の要点

内部電場を求めるとき、ガウス面に含まれる電荷は全電荷 ee ではなく er3R3 e\frac{r^3}{R^3} である。このため E(r)rE(r)\propto r になる。電子の力は eE-eE なので、運動方程式の符号は mr¨=eKr m\ddot{\boldsymbol{r}}=-eK\boldsymbol{r} である。

磁場中では ev×Bz^=(eBy˙, eBx˙, 0) -e\,\boldsymbol{v}\times B\hat{\boldsymbol{z}} =(-eB\dot{y},\ eB\dot{x},\ 0) となる。ここから u=x+iyu=x+iy を導入すると、2本の実方程式が1本の複素方程式にまとまり、固有振動数がすぐに求まる。

検算

B0B\to0 とすると λ1=λ2=ω0 \lambda_1=\lambda_2=\omega_0 となり、問3の単振動に戻る。また外部電場だけを加えた場合の解では、時間平均位置が xˉ=E0K \bar{x}=-\frac{E_0}{K} となる。これは静的なつり合い条件 eKxeE0=0-eKx-eE_0=0 と一致する。

典型ミス

ローレンツ力の符号は電子が負電荷であるため、正電荷の場合と逆である。ここを間違えると λ1,λ2\lambda_1,\lambda_2 の大小や y(t)y(t) の符号が反転する。また、特性方程式の2つの根の一方は負になるので、正の角振動数としては λ1\lambda_1λ2\lambda_2 を定義し直して使うと見通しがよい。

試験で書くべきポイント

電場のみの設問では、平衡位置を先に求めてから単振動を書く。磁場の設問では、成分方程式、複素変数 uu、特性方程式の順に書くと、導出が短くても根拠が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 統計力学

方針

前半は古典理想気体の正準分布で、位置積分が VNV^N、運動量積分がガウス積分になる。後半は小孔を通過する分子束の問題であり、速度分布そのものではなく、法線方向速度 vzv_z に比例した重みを付けて数える。

途中式の要点

分配関数では 1h3NN! \frac{1}{h^{3N}N!} を忘れない。h3Nh^{3N} は古典位相空間の無次元化、N!N! は粒子の不可区別性を反映する。

小孔から出る粒子数では、速度 v\boldsymbol{v} を持つ粒子が時間 dtdt に到達できる体積が Svzdt S v_zdt である。このため、単純な確率密度 f(v)f(\boldsymbol{v}) ではなく vzf(v)v_z f(\boldsymbol{v}) を積分する。

検算

流出率は R=NS4Vv R=\frac{NS}{4V}\langle v\rangle となる。これは「等方的な気体では、面を横切る分子束は数密度 ×\times 平均速さの4分の1」という標準公式と一致する。また P=NkTV P=\frac{NkT}{V} を用いると、小孔による力の大きさ FP=PSF_P=PS は圧力差に面積を掛けた形になり、次元も力になる。

典型ミス

小孔を通る分子の平均速さをそのまま使って R=(N/V)SvR=(N/V)S\langle v\rangle とすると、方向の効果を4倍過大評価する。正しくは半分の分子だけが外向き成分を持ち、さらに法線方向成分の平均を取るため、係数 1/41/4 が現れる。

試験で書くべきポイント

速度分布 f(v)f(\boldsymbol{v}) と速さ分布 Φ(v)\Phi(v) を区別する。小孔の設問では vz>0v_z>0 の条件を必ず書き、最後に v\langle v\rangle を用いた形へ直すと、設問間のつながりが明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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