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名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 理学研究科 物理学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは9件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数)。2024年度と共通のテーマは分配関数・ラグランジアン・波動関数。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名大 物理学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学—途中式の要点あり
第2問量子力学—途中式の要点あり
第3問電磁気学・回路電磁気学途中式の要点あり
第4問熱・統計力学統計力学途中式の要点あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に9テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 4問 → 2025年度 4問
両年度に出たテーマ
分配関数・ラグランジアン・波動関数
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第1問 — 力学

方針

前半は、慣性系では単純なラグランジアンを書き、回転座標へ移すことで慣性力を取り出す。後半は、振り子の微小振動にコリオリ力の水平成分だけを残し、振動面のゆっくりした回転を求める。

途中式の要点

座標変換後の速度の平方は (X˙−ωY)2+(Y˙+ωX)2+Z˙2 (\dot{X}-\omega Y)^2+(\dot{Y}+\omega X)^2+\dot{Z}^2 である。この符号を正しく出すことが、コリオリ力の符号を決める。回転座標の運動方程式はベクトル表示で mR¨=−∇U−2mω×R˙−mω×(ω×R) m\ddot{\boldsymbol{R}} =-\nabla U -2m\boldsymbol{\omega}\times\dot{\boldsymbol{R}} -m\boldsymbol{\omega}\times(\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{R}) とまとめられる。

振り子では、北緯 λ\lambda における自転ベクトルの鉛直成分 ωsin⁡λ\omega\sin\lambda だけが振動面の回転に効く。水平成分 ωcos⁡λ\omega\cos\lambda は、微小振動近似では主に鉛直方向の小さい補正に入る。

検算

赤道では λ=0\lambda=0 なので Trot→∞ T_{\mathrm{rot}}\to\infty となり、振動面は回転しない。北極では λ=π/2\lambda=\pi/2 なので、地球の自転角速度そのもの ω\omega で振動面が回る。これはフーコー振り子の標準結果と一致する。

典型ミス

張力の向きは質点から支点へ向かうため −Tl(x,y,z) -\frac{T}{l}(x,y,z) である。符号を逆にすると、微小振動で復元力ではなく発散する力になってしまう。また L=xy˙−x˙yL=x\dot{y}-\dot{x}y は質量を含まない量として定義されているため、通常の角運動量 mLmL と混同しない。

試験で書くべきポイント

回転座標の問題では、コリオリ力と遠心力をベクトル形で書いてから成分に直すと符号ミスが減る。振り子の最後では ddt{L+ωsin⁡λ r2}=0 \frac{d}{dt}\{L+\omega\sin\lambda\,r^2\}=0 を示すと、振動面の回転角速度まで一気に到達できる。

解答

前半では、慣性系の座標を (x,y,z)(x,y,z)、地球とともに回る座標を (X,Y,Z)(X,Y,Z) とする。ポテンシャルは原点からの距離だけに依存し、r=x2+y2+z2=X2+Y2+Z2r=\sqrt{x^2+y^2+z^2}=\sqrt{X^2+Y^2+Z^2} と書ける。

  1. 慣性系では L=m2(x˙2+y˙2+z˙2)−U(r). L=\frac{m}{2}(\dot{x}^2+\dot{y}^2+\dot{z}^2)-U(r).
  2. 座標変換の逆変換を用いると x=Xcos⁡ωt−Ysin⁡ωt,y=Xsin⁡ωt+Ycos⁡ωt. x=X\cos\omega t-Y\sin\omega t,\qquad y=X\sin\omega t+Y\cos\omega t. したがって x˙2+y˙2=(X˙−ωY)2+(Y˙+ωX)2. \dot{x}^2+\dot{y}^2 =(\dot{X}-\omega Y)^2+(\dot{Y}+\omega X)^2. よって回転座標でのラグランジアンは L=m2{(X˙−ωY)2+(Y˙+ωX)2+Z˙2}−U(R), L=\frac{m}{2}\{(\dot{X}-\omega Y)^2 +(\dot{Y}+\omega X)^2+\dot{Z}^2\}-U(R), ただし R=X2+Y2+Z2R=\sqrt{X^2+Y^2+Z^2} である。
  3. オイラー・ラグランジュ方程式より mX¨=−∂U∂X+2mωY˙+mω2X, m\ddot{X}=-\frac{\partial U}{\partial X} +2m\omega\dot{Y}+m\omega^2X, mY¨=−∂U∂Y−2mωX˙+mω2Y, m\ddot{Y}=-\frac{\partial U}{\partial Y} -2m\omega\dot{X}+m\omega^2Y, mZ¨=−∂U∂Z. m\ddot{Z}=-\frac{\partial U}{\partial Z}.
  4. R=(X,Y,Z)\boldsymbol{R}=(X,Y,Z)、ω=(0,0,ω)\boldsymbol{\omega}=(0,0,\omega) とおくと、ω\omega に比例する慣性力は Fcor=−2m ω×R˙. \boldsymbol{F}_{\mathrm{cor}} =-2m\,\boldsymbol{\omega}\times\dot{\boldsymbol{R}}. 成分は (2mωY˙, −2mωX˙, 0) (2m\omega\dot{Y},\ -2m\omega\dot{X},\ 0) で、問3の運動方程式の一次の項と一致する。
  5. ω\omega に比例する力はコリオリ力、ω2\omega^2 に比例する力は遠心力である。

後半では、北緯 λ\lambda の局所座標を用いる。xx を東向き、yy を北向き、zz を鉛直上向きに取り、地球自転の角速度ベクトルを ω=(0,ωcos⁡λ,ωsin⁡λ) \boldsymbol{\omega}=(0,\omega\cos\lambda,\omega\sin\lambda) とする。遠心力は無視し、コリオリ力だけを残す。

  1. 糸の張力を TT とする。質点の位置を r=(x,y,z)\boldsymbol{r}=(x,y,z)、糸の長さを ll とすれば、張力は原点向きなので FT=−Tl(x,y,z). \boldsymbol{F}_T=-\frac{T}{l}(x,y,z). よって成分は FTx=−Tlx,FTy=−Tly,FTz=−Tlz. F_{Tx}=-\frac{T}{l}x,\qquad F_{Ty}=-\frac{T}{l}y,\qquad F_{Tz}=-\frac{T}{l}z.
  2. 実在の力は重力と張力であり、回転座標ではコリオリ力 −2mω×r˙-2m\boldsymbol{\omega}\times\dot{\boldsymbol{r}} を加える。したがって mx¨=−Tlx−2mω(cos⁡λ z˙−sin⁡λ y˙), m\ddot{x} =-\frac{T}{l}x -2m\omega(\cos\lambda\,\dot{z}-\sin\lambda\,\dot{y}), my¨=−Tly−2mωsin⁡λ x˙, m\ddot{y} =-\frac{T}{l}y -2m\omega\sin\lambda\,\dot{x}, mz¨=−Tlz−mg+2mωcos⁡λ x˙. m\ddot{z} =-\frac{T}{l}z-mg +2m\omega\cos\lambda\,\dot{x}.

微小振動では z≃−lz\simeq-l、z˙≃0\dot{z}\simeq0、x2+y2≪l\sqrt{x^2+y^2}\ll l とする。

  1. 鉛直方向のつり合いから T≃mg. T\simeq mg. 水平方向の復元力は −mgx/l-mgx/l、−mgy/l-mgy/l であるから、コリオリ力を無視した固有角振動数は ω0=gl. \omega_0=\sqrt{\frac{g}{l}}.
  2. 極座標 x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta を用いると L=xy˙−x˙y=r2θ˙. L=x\dot{y}-\dot{x}y=r^2\dot{\theta}.
  3. 微小振動の水平運動方程式は x¨=−glx+2ωsin⁡λ y˙,y¨=−gly−2ωsin⁡λ x˙. \ddot{x}=-\frac{g}{l}x+2\omega\sin\lambda\,\dot{y}, \qquad \ddot{y}=-\frac{g}{l}y-2\omega\sin\lambda\,\dot{x}. これを用いると ddt(xy˙−yx˙)=xy¨−yx¨=−2ωsin⁡λ(xx˙+yy˙)=−ωsin⁡λddt(r2). \begin{aligned} \frac{d}{dt}(x\dot{y}-y\dot{x}) &=x\ddot{y}-y\ddot{x} \\ &=-2\omega\sin\lambda(x\dot{x}+y\dot{y})\\ &=-\omega\sin\lambda\frac{d}{dt}(r^2). \end{aligned} 初めに r=0r=0 とすれば積分定数は0なので L=−ωsin⁡λ r2. L=-\omega\sin\lambda\,r^2.
  4. したがって θ˙=Lr2=−ωsin⁡λ. \dot{\theta}=\frac{L}{r^2}=-\omega\sin\lambda. 振動面は角速度の大きさ ωsin⁡λ\omega\sin\lambda で回転するので、周期は Trot=2πωsin⁡λ T_{\mathrm{rot}}=\frac{2\pi}{\omega\sin\lambda} である。

最終答

% Lrot=m2{(X˙−ωY)2+(Y˙+ωX)2+Z˙2}−U(R),mR¨=−∇U−2mω×R˙−mω×(ω×R),ω0=gl,T≃mg,L=xy˙−x˙y=−ωsin⁡λ r2,Trot=2πωsin⁡λ. \begin{gathered} L_{\mathrm{rot}} =\frac{m}{2}\{(\dot{X}-\omega Y)^2 +(\dot{Y}+\omega X)^2+\dot{Z}^2\}-U(R),\\ m\ddot{\boldsymbol{R}} =-\nabla U-2m\boldsymbol{\omega}\times\dot{\boldsymbol{R}} -m\boldsymbol{\omega}\times(\boldsymbol{\omega}\times\boldsymbol{R}),\\ \omega_0=\sqrt{\frac{g}{l}},\qquad T\simeq mg,\qquad L=x\dot{y}-\dot{x}y=-\omega\sin\lambda\,r^2,\\ T_{\mathrm{rot}}=\frac{2\pi}{\omega\sin\lambda}. \end{gathered}

第2問 — 量子力学

方針

無限井戸では、境界条件 u(0)=u(a)=0u(0)=u(a)=0 がすべてを決める。後半の多項式波動関数は、井戸の固有関数 sin⁡(nπx/a)\sin(n\pi x/a) へのフーリエ正弦級数として展開する。

途中式の要点

負のエネルギーがないことは、解の形を場合分けするよりも、期待値 ℏ22m∫0a∣u′(x)∣2 dx \frac{\hbar^2}{2m}\int_0^a |u'(x)|^2\,dx が非負であることから示すのが短い。境界条件で部分積分の境界項が消えることを明記する。

展開係数では ∫01y(1−y)sin⁡(nπy) dy=2{1−(−1)n}(nπ)3 \int_0^1 y(1-y)\sin(n\pi y)\,dy =\frac{2\{1-(-1)^n\}}{(n\pi)^3} が鍵である。偶数 nn が消えるのは、ψ(x)\psi(x) が x=a/2x=a/2 に関して対称であり、偶数番目の固有関数が反対称だからである。

検算

係数の規格化は ∑n=1n odd∞960n6π6=1 \sum_{\substack{n=1\\ n\ \mathrm{odd}}}^{\infty} \frac{960}{n^6\pi^6}=1 で確認できる。問題で与えられた ∑n=1,3,5,…1/n6=π6/960\sum_{n=1,3,5,\ldots}1/n^6=\pi^6/960 と一致する。

典型ミス

unu_n の番号を n=0n=0 から始めると、基底エネルギーを0としてしまう。無限井戸では n=1,2,…n=1,2,\ldots であり、基底状態にも零点エネルギーがある。また、エネルギー測定後も元の ψ(x)\psi(x) で位置平均を取るのは誤りで、測定結果 E1E_1 を得た時点で状態は u1u_1 に変わる。

試験で書くべきポイント

答案では、固有関数の規格化、展開係数の偶奇、測定後の状態の射影をはっきり分ける。特に問7以降は、確率 ∣cn∣2|c_n|^2 とエネルギー固有値 EnE_n を混同しないように書く。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電磁気学

方針

球対称な一様電荷分布の内部電場は位置に比例する。電子は負電荷なので、力は原点向きの復元力となり、基本は3次元の等方的な調和振動子である。外部電場は平衡位置をずらし、外部磁場は x,yx,y 運動を結合させる。

途中式の要点

内部電場を求めるとき、ガウス面に含まれる電荷は全電荷 ee ではなく er3R3 e\frac{r^3}{R^3} である。このため E(r)∝rE(r)\propto r になる。電子の力は −eE-eE なので、運動方程式の符号は mr¨=−eKr m\ddot{\boldsymbol{r}}=-eK\boldsymbol{r} である。

磁場中では −e v×Bz^=(−eBy˙, eBx˙, 0) -e\,\boldsymbol{v}\times B\hat{\boldsymbol{z}} =(-eB\dot{y},\ eB\dot{x},\ 0) となる。ここから u=x+iyu=x+iy を導入すると、2本の実方程式が1本の複素方程式にまとまり、固有振動数がすぐに求まる。

検算

B→0B\to0 とすると λ1=λ2=ω0 \lambda_1=\lambda_2=\omega_0 となり、問3の単振動に戻る。また外部電場だけを加えた場合の解では、時間平均位置が xˉ=−E0K \bar{x}=-\frac{E_0}{K} となる。これは静的なつり合い条件 −eKx−eE0=0-eKx-eE_0=0 と一致する。

典型ミス

ローレンツ力の符号は電子が負電荷であるため、正電荷の場合と逆である。ここを間違えると λ1,λ2\lambda_1,\lambda_2 の大小や y(t)y(t) の符号が反転する。また、特性方程式の2つの根の一方は負になるので、正の角振動数としては λ1\lambda_1 と λ2\lambda_2 を定義し直して使うと見通しがよい。

試験で書くべきポイント

電場のみの設問では、平衡位置を先に求めてから単振動を書く。磁場の設問では、成分方程式、複素変数 uu、特性方程式の順に書くと、導出が短くても根拠が明確になる。

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第4問 — 統計力学

方針

前半は古典理想気体の正準分布で、位置積分が VNV^N、運動量積分がガウス積分になる。後半は小孔を通過する分子束の問題であり、速度分布そのものではなく、法線方向速度 vzv_z に比例した重みを付けて数える。

途中式の要点

分配関数では 1h3NN! \frac{1}{h^{3N}N!} を忘れない。h3Nh^{3N} は古典位相空間の無次元化、N!N! は粒子の不可区別性を反映する。

小孔から出る粒子数では、速度 v\boldsymbol{v} を持つ粒子が時間 dtdt に到達できる体積が Svzdt S v_zdt である。このため、単純な確率密度 f(v)f(\boldsymbol{v}) ではなく vzf(v)v_z f(\boldsymbol{v}) を積分する。

検算

流出率は R=NS4V⟨v⟩ R=\frac{NS}{4V}\langle v\rangle となる。これは「等方的な気体では、面を横切る分子束は数密度 ×\times 平均速さの4分の1」という標準公式と一致する。また P=NkTV P=\frac{NkT}{V} を用いると、小孔による力の大きさ FP=PSF_P=PS は圧力差に面積を掛けた形になり、次元も力になる。

典型ミス

小孔を通る分子の平均速さをそのまま使って R=(N/V)S⟨v⟩R=(N/V)S\langle v\rangle とすると、方向の効果を4倍過大評価する。正しくは半分の分子だけが外向き成分を持ち、さらに法線方向成分の平均を取るため、係数 1/41/4 が現れる。

試験で書くべきポイント

速度分布 f(v)f(\boldsymbol{v}) と速さ分布 Φ(v)\Phi(v) を区別する。小孔の設問では vz>0v_z>0 の条件を必ず書き、最後に ⟨v⟩\langle v\rangle を用いた形へ直すと、設問間のつながりが明確になる。

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名大 物理学 院試 過去問の収録6年度