院試hub

北海道大学 院試 過去問 解答例

北大 工学院 応用量子科学系研究室群 応用量子科学系 専門科目 2026年度 院試 解答例・解説

北海道大学 工学院 応用量子科学系研究室群 応用量子科学系 専門科目 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 応用数学

方針

問1は、分離形、置換、完全微分、定数係数線形、未定係数法を見分ける問題である。特に (1-3)(1\text{-}3)dy/dxdy/dx の形のまま押し切るより、Mdx+Ndy=0M\,dx+N\,dy=0 と見て M/y=N/x\partial M/\partial y=\partial N/\partial x を確認する方が速い。

検算

線形微分方程式の積分因子は、最後に (ePdxy)=ePdxQ \left(e^{\int Pdx}y\right)'=e^{\int Pdx}Q へ戻せるかで符号を確認する。問4の熱方程式では、得られた ϕ=etcosx+e9tcos3x\phi=e^{-t}\cos x+e^{-9t}\cos3x を代入すると ϕt=ϕxx\phi_t=\phi_{xx}ϕx(0,t)=0\phi_x(0,t)=0ϕ(π/2,t)=0\phi(\pi/2,t)=0 がすべて直ちに確かめられる。

典型ミス

ベクトル解析では、面積ベクトルの向きと線積分の向きを対応させる必要がある。今回の 三角形では PQRP\to Q\to R に対して 12(QP)×(RP)\frac12(Q-P)\times(R-P) を使う。逆にすると答えは 2-2 になる。 複素積分では、円の内部にある極を数え落とさないことが重要で、(4-2)(4\text{-}2) では ii3i-3i の両方が z=4|z|=4 の内部にある。

試験で書くべきポイント

多問構成なので、各小問で最初に使う型を一行で示すと答案が読みやすい。計算量の多い 小問でも、固有値条件、留数、面積要素など採点点になりやすい式を省略しないこと。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 接地導体面と鏡像法

方針

接地された無限平面導体では、導体面上の電位を0にする鏡像電荷を置くのが最短である。 真空領域 z>0z>0 でラプラス方程式を満たし、境界 z=0z=0 で電位0、点電荷近傍で 正しい特異性をもつので、一意性定理によりこの電位が解である。

検算

表面電荷密度は Q>0Q>0 なら負になる。導体に正電荷を近づけると導体表面に負電荷が誘起 されるので、符号は物理的にも正しい。また総誘起電荷が Q-Q になることは、鏡像電荷 の大きさと一致しており、積分結果のよい確認になる。

典型ミス

力を求めるときの距離は hh ではなく、実電荷と鏡像電荷の距離 2h2h である。 また σ=ε0En\sigma=\varepsilon_0E_nEnE_n は導体から真空へ向かう法線方向成分であり、 ここでは +z+z 方向を正にとる。

試験で書くべきポイント

鏡像電荷の位置と符号、境界面で電位が0になる確認、総誘起電荷の積分の3点を書けば、 解法の正当性が明確になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 電流が作る磁場と力のモーメント

方針

すべてビオ・サバールの法則から、有限直線電流または円形電流の基本式へ落とす問題で ある。三角形では内心から各辺への距離が共通なので、3辺の寄与を同じ形で足せる。 正 nn 角形では対称性により各辺の寄与が等しくなる。

検算

nn 角形の答えは nn\to\infty で円形回路の中心磁場 μ0I/(2r)\mu_0I/(2r) に近づく。これは式全体の係数を確認する強い検算になる。 特に tan(π/n)π/n\tan(\pi/n)\sim \pi/n を使うと余分な π\pi が残らない。

典型ミス

nn 角形で使う rr は外接円の半径であり、中心から辺までの距離は rcos(π/n)r\cos(\pi/n) である。ここを rr としてしまうと tan(π/n)\tan(\pi/n) ではなく sin(π/n)\sin(\pi/n) が出て、円形回路の極限と一致しない。

試験で書くべきポイント

有限直線電流の式をそのまま書くのではなく、角度が三角形の半角または π/n\pi/n に対応することを一言説明する。偶力のモーメントは m=ISn\boldsymbol m=I S\boldsymbol nN=m×B\boldsymbol N=\boldsymbol m\times\boldsymbol B から出すと、向きと大きさを同時に整理できる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — RC回路の過渡応答とエネルギー

方針

前半は直列RC回路の定常交流、後半はコンデンサーの充電と電荷再分配である。 スイッチの状態ごとに、どの素子が実際に接続されているかを先に整理すると迷いにくい。

検算

交流の消費電力はコンデンサーではなく抵抗でのみ消費されるので P=Irms2R1P=I_{\mathrm{rms}}^2R_1 になる。直流充電では t=0+t=0^+i1=V/R1i_1=V/R_1tt\to\inftyi10i_1\to0 となり、極限が物理的に正しい。

典型ミス

コンデンサー2への再分配では、終状態で抵抗2の電圧降下は0である。したがって コンデンサー1とコンデンサー2は終状態で同じ電圧をもつ。電圧源はスイッチ1で切り離され ているので、最終電圧を VV としてはいけない。

試験で書くべきポイント

エネルギー問題では、消費エネルギーを直接積分するより、初期エネルギーと終状態エネルギー の差で求める方が確実である。その際、電荷保存を使って最終電圧を先に決めることが採点上 の要点になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 半導体とpn接合

方針

半導体の問題は、バンド図、キャリアの種類、pn接合の内部電場、光子エネルギーの4点を つなげて答える。定性的な設問でも、どちらのキャリアがどちらへ動くかを明確に書くと 答案の説得力が上がる。

検算

E[eV]λ[nm]1240E[\mathrm{eV}]\lambda[\mathrm{nm}]\simeq1240 を使うと、Siの 1.1eV1.1\,\mathrm{eV} は約 1100nm1100\,\mathrm{nm} になる。これはSi太陽電池が近赤外まで 感度をもつという一般的な事実と整合する。

典型ミス

太陽電池動作と外部電池による順方向バイアスでは、外部回路の電流向きが逆になる。 光照射時はデバイスが電源として働き、p側が正端子になる。一方、電池でp側を正にすると ダイオードに順方向電流を流し込む向きになる。

試験で書くべきポイント

n型化では「5族元素」「ドナー準位は伝導帯直下」「フェルミ準位は伝導帯側」「多数 キャリアは電子」をセットで書く。スペクトル比較では、バンドギャップを限界波長に換算し、 図の波長範囲と対応させて理由を述べる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 水素透過とbcc炭素鋼

方針

この問題は、水素透過を Fick の法則で扱う部分と、bcc/fcc の幾何・拡散機構を説明する部分に分かれる。 数値計算は bcc の体対角線の関係 4r=3a4r=\sqrt{3}a を使えば十分で、拡散係数の議論では 「水素は置換型ではなく侵入型に近い」という見方が要点になる。

符号の確認

Fick の第1法則は J=DdC/dyJ=-D\,dC/dy である。内壁側濃度が外壁側濃度より高い通常の場合、 C0>C1C_0>C_1 なので dC/dy<0dC/dy<0、したがって外向きの JJ は正になる。 DH(C1C0)/xD_{\mathrm H}(C_1-C_0)/x と書くと、向きの定義を逆にした量になってしまう。

bcc の検算

bcc の充填率は 2(4π/3)(3a/4)3a3=π38 \frac{2(4\pi/3)(\sqrt{3}a/4)^3}{a^3} =\frac{\pi\sqrt{3}}{8} で、代表値 0.680.68 と一致する。fcc や hcp の 0.740.74 と混同しないこと。 また 0.2866nm0.2866\,\mathrm{nm} のおよそ半分が 0.143nm0.143\,\mathrm{nm} なので、 求めた半径 0.124nm0.124\,\mathrm{nm} は妥当な大きさである。

典型ミス

空孔が多いと置換型原子の拡散は促進されることが多いが、水素のような小さい侵入型原子では 空孔・欠陥がトラップとして働き、実効的な移動度を下げる場合がある。この問題では炭素の影響を 無視してよいので、炭素との相互作用ではなく点欠陥による捕獲を理由にする。

試験で書くべきポイント

低温貯蔵の理由は二つを分けて書く。状態方程式からは貯蔵密度の利点、Arrhenius 型の拡散係数からは 水素透過抑制の利点が出る。片方だけでは設問の要求を満たしにくい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — X線回折と二相平衡

方針

前半は X 線回折の面間隔計算と消滅則、後半は二相分離の自由エネルギー最小化である。 回折角は 2θ2\theta で与えられるので、Bragg の式に入れる角度はその半分である。

ピークの見分け方

bcc と fcc は最初に現れる許容反射が異なる。bcc では (110)(110)、fcc では (111)(111) が最初である。 実際に d=a/h2+k2+l2d=a/\sqrt{h^2+k^2+l^2} で格子定数を逆算すると、bcc 側は約 0.300nm0.300\,\mathrm{nm}、fcc 側は約 0.350nm0.350\,\mathrm{nm} にそろう。 この「同じ相のピークから同じ格子定数が出る」ことが、相の同定の検算になる。

強度からわかること

ピーク位置は格子定数と面指数を反映し、ピーク強度は相の量、構造因子、多重度、補正因子などに依存する。 この設問では各合金でピーク位置が共通なので、同じ α+β\alpha+\beta 二相を含み、相分率だけが変わったと 読む。したがって、α\alpha 相由来ピークが強い alloy 2 が α\alpha 側の X、β\beta 相由来ピークが 強い alloy 1 が β\beta 側の Z、中間的な alloy 3 が Y に対応する。

自由エネルギーの意味

二相に分かれた系の自由エネルギーは、各相の自由エネルギーの重み付き平均である。 組成も同じ重みで平均されるため、自由エネルギー図上では二つの点を結ぶ直線の上に全体の点が乗る。 平衡ではこの直線をできるだけ下げればよいので、二つの曲線に共通接線を引く問題になる。

典型ミス

全合金濃度 XBalloyX_B^{\mathrm{alloy}} と、平衡で共存する各相の濃度 XBαX_B^\alphaXBβX_B^\beta を 混同しやすい。二相領域では、合金全体の濃度が変わっても共存相の濃度は共通接線の接点で決まり、 変わるのは相分率である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 核分裂エネルギーと中性子散乱

核分裂エネルギーの単位換算

核分裂1回あたりのエネルギーを J に直してから、原子数を掛ける。 MeV\mathrm{MeV} のまま計算して最後に J へ直してもよいが、10610^6101910^{-19} を落としやすい。 200MeV=3.2×1011J200\,\mathrm{MeV}=3.2\times 10^{-11}\,\mathrm{J} を先に作ると計算が安定する。

燃焼度の基準

MWd/t\mathrm{MWd/t}tt は燃料1トンあたりである。したがって、3\%濃縮なら 1トン中の 235U{}^{235}\mathrm{U}30kg30\,\mathrm{kg} として計算する。 燃焼度の値が 104MWd/t10^4\,\mathrm{MWd/t} 程度になることは実用炉の典型値とも整合する。

形状バックリングの意味

形状バックリングは、有限体系から中性子が漏れやすいほど大きくなる量である。 同じ材料なら、材料バックリング側は同じなので、形状バックリングの小さい方が臨界に近く、 実効増倍率が大きい。ここでは円筒に半径方向と高さ方向の両方の項があるため、球より大きくなる。

二回散乱の分布

2回散乱後の分布は、単に一様分布を二乗したものではない。2回目の一様分布の幅が (1α)E1(1-\alpha)E_1E1E_1 に依存するため、1/E11/E_1 を積分して対数が出る。 この対数分布まで導けると、散乱の確率密度として十分に説得力がある。

表現の注意

最後の小問では、指定された式 E2/E0\sqrt{E_2/E_0} は「2回散乱後の残存エネルギー比の平方根」、 すなわち1回あたりの幾何平均的な残存比である。文字通りの損失割合を問う答案にするなら 1E2/E01-\sqrt{E_2/E_0} の期待値を書き、5/95/9 とする。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — 矩形フィンの一次元定常熱伝導

方針

矩形フィンの標準問題であり、検査体積の熱収支から二階線形微分方程式を作る。 未知関数を TT のまま扱うより、周囲流体との差 Θ=TTc\Theta=T-T_c を使うと式が Θm2Θ=0\Theta''-m^2\Theta=0 にまとまり、境界条件も見通しがよい。

符号の扱い

熱伝導量を Q˙x=kAdT/dx\dot Q_x=-kA\,dT/dx と定義すると、根元から先端へ熱が流れる通常の温度分布で Q˙x>0\dot Q_x>0 になる。熱収支では「左から流入、右へ流出、側面から放出」と考え、 Q˙xQ˙x+dxdQ˙f=0\dot Q_x-\dot Q_{x+dx}-d\dot Q_f=0 と書くと符号ミスを避けやすい。

境界条件の読み方

先端で dT/dx=0dT/dx=0 という条件は、先端断面から熱伝導で出ていく熱がない、すなわち断熱先端を意味する。 そのため解は先端を中心に偶関数的な cosh{m(Lx)}\cosh\{m(L-x)\} の形になる。 先端からも対流放熱する場合は境界条件が変わり、効率式も変わるので注意する。

検算

mL1mL\ll 1 なら tanh(mL)mL\tanh(mL)\simeq mL なので η1\eta\simeq 1 となる。 これは短い、または熱伝導がよいフィンでは全体がほぼ根元温度になることを表す。 一方 mL1mL\gg 1 なら η1/(mL)\eta\simeq 1/(mL) となり、長すぎるフィンの先端側は放熱にあまり寄与しない。

試験で書くべきポイント

最終式だけでなく、m2=hP/(kA)m^2=hP/(kA) の定義と、理想放熱量 hPL(T0Tc)hPL(T_0-T_c) に先端面を含めないことを 明記する。ここを曖昧にすると、同じ温度分布を出していても効率の分母を誤りやすい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 核反応のQ値とアルファ壊変

Q値の符号

Q=(反応前の静止質量反応後の静止質量)c2 Q=(\text{反応前の静止質量}-\text{反応後の静止質量})c^2 である。正なら発熱反応、負なら吸熱反応である。 吸熱反応のしきい値では、入射粒子の運動エネルギーの一部が重心運動として残るため、 単に Q|Q| ではなく (1+ma/mX)Q(1+m_a/m_X)|Q| になる。

原子質量を使える理由

27Al(α,n)30P{}^{27}\mathrm{Al}(\alpha,n){}^{30}\mathrm{P} では、原子質量で数えても反応前後の電子数が同じになる。 したがって、与えられた原子質量単位の値をそのまま差し引いてよい。 ただし、核反応の計算では最後に必ず uc2\mathrm{u}\,c^2MeV\mathrm{MeV} に変換する。

結合エネルギーから壊変Q値を出す

結合エネルギーが大きいほど原子核の質量は小さい。 したがって壊変で解放されるエネルギーは Q=BafterBbefore Q=B_{\mathrm{after}}-B_{\mathrm{before}} であり、222Rn{}^{222}\mathrm{Rn}4He{}^{4}\mathrm{He} の結合エネルギーを足してから 226Ra{}^{226}\mathrm{Ra} の結合エネルギーを引く。逆に引くと 51.7MeV51.7\,\mathrm{MeV} のような 不自然に大きい値になり、典型的な α\alpha 壊変エネルギー数 MeV と合わない。

運動エネルギーの分配

二体壊変では運動量の大きさが等しいため、軽い粒子ほど大きな運動エネルギーを受け取る。 Kα=QmYmY+mα K_\alpha=Q\frac{m_Y}{m_Y+m_\alpha} となるので、重い娘核がほとんど動かず、α\alpha 粒子が QQ 値の大部分を持ち去る。 今回も 222/(222+4)0.982222/(222+4)\simeq 0.982 であり、4.9MeV4.9\,\mathrm{MeV} のほとんどが α\alpha 粒子の運動エネルギーになる。

典型ミス

しきい値計算では、負の QQ 値をそのまま代入して負のしきい値を書かないこと。 また α\alpha 壊変では、結合エネルギーの差と質量差の符号が逆向きに見えるため、 「崩壊後の結合エネルギー和が崩壊前より大きい分が放出エネルギー」と言葉で確認してから式を書くとよい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

北海道大学 応用量子科学系 専門科目 — 他の年度