大阪公立大学 院試 過去問 解答例
大阪公立大 理学研究科 数学専攻 数学 2026年度春入学 院試 解答例・解説
大阪公立大学 理学研究科 数学専攻 数学 2026年度春入学の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
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第1問 — 行列の対角化
方針
固有値が相異なる 3 個に分かれるので,対角化の可否を悩む必要はない。 各固有空間から 1 本ずつ固有ベクトルを取り,その順番を最後まで固定するのが最も安全である。
検算
なら,多項式 に対して が成り立つ。したがって の正則性は の 3 個だけを見ればよい。ここで奇数 のときだけ になる。
典型ミス
を直接行列積で計算すると計算量が増え,符号ミスもしやすい。 この問題は,(1) で得た対角化を (2), (3) に使わせる構成である。
第2問 — 積分と一様収束
方針
積分は領域の入れ替えで の扱いを簡単にする。 を で直接積分しようとすると初等関数では処理できないので,先に で積分する形に変えるのが核心である。
一様収束の見方
点wise 極限は を固定して を使う。 しかし一様収束では を に依存させてよい。 そこで と置くと, になり,誤差が のオーダーで残る。
試験で書くべきポイント
有界区間での一様収束は と上限ノルムで書くと明確である。 「各点で収束するから一様収束」と書くのは誤りである。
第3問 — 円柱の商空間
方針
空間 は開円柱であり,商空間 では上側と下側が半回転を伴って貼り合わされる。 そのため, では中央円 を除くと上下に分離するが, では対応する中央部分を除いても上下が同一視でつながる。
コンパクト性の使い方
(4) は「コンパクト集合は開被覆の有限部分で覆える」という基本事実そのものである。 列 が単調増加であるため,有限個の添字の最大値 を取れば 1 個の にまとめられる。
同相でないことの決め手
単に と の連結性が違うだけでは,任意の同相が を に送るとは限らない。 そこで の増大列を同相で に引き戻し,(4) により必ず を含む段階を作る。 この一手が試験答案で重要である。
第4問 — 有限群
方針
この演算は第 2 成分にだけ という補正が入る。 群の公理を確認するときは,第 1, 第 3 成分を通常の加法として処理し,第 2 成分だけ丁寧に計算すればよい。
生成元の見つけ方
と は第 1 成分と第 3 成分を動かす基本元である。 交換しないことで中央の元 も作れるため,この 2 元で全体を生成できる。
典型ミス
では である。 特に逆元の第 2 成分は ではなく,標数 2 なので と書いてよい。
第5問 — イデアルと剰余環
方針
(1) は を に送る評価写像を使う。 (3) は互いに素なら積イデアルが共通部分になる,という整数での事実の PID 版である。
試験で書くべきポイント
(3) の逆向きでは, とおいたあと が単元であることを示す必要がある。 という記号は分数体の中で考えた略記であり,実際には と書いて が の元であることを確認しておくと安全である。
典型ミス
「任意の真のイデアルが素」から直ちに体とは言えない。 まず が素なので整域であることを使い,非零非単元 から を考えるのが要点である。
第6問 — 二項型多項式の分解体
方針
を 1 つの文字 と見ると,問題は 2 次方程式と 乗根の組合せになる。 が 1 の原始 乗根を含むため,1 つの 乗根 から がすべて得られる。
既約性の効き方
が 上既約なので,根 について である。 しかも は も含むため,分解体全体が になる。 ここを確認しないと,自己同型の一意性や固定体の次数計算が曖昧になる。
検算
である。 の 3 つの 2 次中間体は,この 2 式と で確認できる。
第7問 — 球面上の小円
方針
小円は平面 と単位球面の交わりであり,平面内の半径は である。 測地曲率は空間曲率ベクトルを球面法線方向と接平面方向に分解して求める。
面積計算の要点
の面積は直接積分でも求められるが,ガウス・ボンネを使うと短い。 境界は 2 本の小円弧で,各弧の測地曲率は一定,弧長も同じである。 交点の内角を と確認すれば,外角和もすぐに決まる。
典型ミス
立方体の 1 辺の長さを としてしまう誤りが多い。 単位球に内接する立方体は,中心から頂点までの距離が 1 なので,辺長 は を満たし, である。
第8問 — 定値写像の微分
方針
多様体上の滑らかさは座標表示に戻して判定する。 定値写像はどの座標で見ても定値写像であり,ユークリッド空間での定値写像は任意階微分が存在する。
微分の意味
は接ベクトルを接ベクトルに送る線型写像である。 定値写像では,曲線を入れても像の曲線は一点に止まるため,速度ベクトルは常に 0 になる。
試験で書くべきポイント
(3) は を正しい点で書くことが重要である。 の添字は であり, ではない。
第9問 — 座標大円の複体
方針
は , , の 3 つの場合の和集合である。 球面上では,これは 3 本の互いに直交する大円であり,正八面体の辺だけを取り出したグラフになる。
商空間の見方
反対点同一視を行うと,正八面体の反対頂点が同じ点になる。 辺も反対側の辺と組になるので,商は「3 頂点の各 2 頂点間に 2 本の辺があるグラフ」と考えられる。 単体的複体では同じ 2 頂点を結ぶ複数の 1 単体をそのまま置けないため,片方の辺を中点で細分して表した。
検算
連結グラフの の階数は である。 今回の では なので, とも確認できる。
第10問 — トーラスと基本群
方針
はソリッドトーラスである。 第 2 成分の円周は の中でつぶれるが,第 1 成分の円周は残る。
貼り付けの効果
円板を境界ループに沿って貼ることは,基本群ではその境界ループを自明にする操作である。 境界ループは では だが, に入れると第 2 成分が消えるため,結局 倍の生成元だけを殺す。
典型ミス
としてしまうのは誤りである。 貼り付けは ではなく,すでに に境界を持つ状態で行われるため, は 内で消えている。
第11問 — 鍵穴積分
方針
正の実軸を切断線とする鍵穴型の積分である。 上側の正の実軸では偏角が ,下側では偏角が になるため,同じ実積分に異なる係数が掛かる。
円弧評価
が効くのは円弧の消失である。 外側では ,内側では となる。
典型ミス
この分枝では であり, ではない。 また,下側の実軸の向きは から へ戻る向きなので,符号が 1 つ反転する。
第12問 — グロンウォールの不等式
方針
(1) は積分型グロンウォール不等式である。 の場合にも対応するため,最初に を加えてから最後に とするのが安全である。
一意性の核心
2 つの解の差は を満たす。これはグロンウォールで 0 と評価されるため,差が消える。
典型ミス
(3) では が の近くでリプシッツ連続でない。 そのため一意性定理の仮定を満たさず,実際に非自明解 が存在する。
第13問 — ell1 上の射影
方針
は有限成分への切り詰めである。 では尾和が 0 に収束するため,任意の固定ベクトルに対して が成り立つ。
ノルム収束ではない点
(1) は強収束であり,作用素ノルム収束ではない。 ただし が有界な場合には,ノルムそのものは と収束する。 これは と,ほぼノルムを達成するベクトルを 1 つ固定する議論で示す。
試験で書くべきポイント
(3) の (i) は一様有界性原理を使う問題である。 各 について を先に確認してから,バナッハ空間 に適用する。
第14問 — ヘルダー不等式とSchur型評価
方針
(2) は Schur のテストの 版である。 を に分け,片方を ,もう片方を に入れてヘルダー不等式を使う。
指数の確認
なので, 乗した段階では が現れる。 最後に 乗根を取るため,係数は になる。
典型ミス
本問の は を固定して で積分した上限, は を固定して で積分した上限である。 最後の積分順序交換後に使うのは であり,ここを逆にしないようにする。
第15問 — Box--Muller変換
方針
これは Box--Muller 変換であり, を極座標と見る。 は半径, は角度で,最後に極座標のヤコビアンを掛ければ の密度が出る。
検算
得られた同時密度は と分解できる。 したがって は独立な標準正規分布になることも確認できる。
典型ミス
のヤコビアンは だが,本問 (3) は逆向きの を聞いているので答えは である。
第16問 — 指数分布の推定
方針
この指数分布は rate ではなく scale による表示である。 したがって平均は ,分散は になる。
最尤推定の確認
対数尤度の微分は である。ここから が出る。 端点 と で対数尤度が に落ちることも書いておくと,最大であることが明確になる。
典型ミス
rate パラメータ の指数分布と混同すると,情報量や分散が逆になる。 本問では密度が なので,標本全体の情報量は である。