院試hub

大阪公立大学 院試 過去問 解答例

大阪公立大 理学研究科 数学専攻 数学 2025年度春入学 院試 過去問 解答例・解説(全20問)

全20問。微分積分・解析4問・確率・統計1問・線形代数1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・群論・環論)。2025年度2次募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

最終更新:

このページで公開
解説20問と大問1問の途中式・最終答(全20問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき20問)
問題本文
非収録

大阪公立大 数学 2025年度春入学 院試 過去問の出題内容(全20問)

この20問の分野は微分積分・解析4問・確率・統計1問・線形代数1問・代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数共通成分をもつ行列—あり
第2問—多項式で定まる内積—あり
第3問微分積分・解析逆三角関数と極限—あり
第4問微分積分・解析特異点をもつ重積分—あり
第5問—Jordan 標準形—あり
第6問—中心と共役類—あり
第7問代数イデアルの根基—あり
第8問—有限体上の分解体—あり
第9問—弱 Hausdorff 空間—あり
第10問—球面多角形—あり
第11問—上半平面のベクトル場—あり
第12問—単体複体とホモロジー—あり
第13問—櫛形空間のホモトピー—あり
第14問微分積分・解析対数評価と Poisson 極限—あり
第15問—留数計算—あり
第16問—閉部分空間への直交射影—あり
第17問微分方程式——あり
第18問微分積分・解析一様可積分性—あり
第19問確率・統計確率不等式—あり
第20問—指示変数と二項分布—あり

この年度の解説には典型ミス13件・試験で書くべきポイント4件・検算3件が付いています。

2025年度春入学の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は8問に5テーマが出ています。

前年度(2025年度2次募集)との違い

大問数
2025年度2次募集 4問 → 2025年度春入学 20問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2025年度春入学で新しく出たテーマ
線形空間・基底・群論・環論・重積分と極座標・留数定理
2025年度2次募集のページを見る

第1問 — 共通成分をもつ行列

方針

対角成分と非対角成分が一定の行列は,1\mathbf{1} 方向とその直交補空間に分けると一気に対角化できる。行基本変形で押し切るより,固有空間分解を使う方が階数と連立方程式の可解条件まで同時に見える。

典型ミス

s=ts=t の場合を「固有値が1つだけ消える」と誤る答案が多い。このとき A=tJA=tJ なので階数は 11 である。また s=−3ts=-3t のときは特異だが,右辺が 1⊥\mathbf{1}^{\perp} に入るため解は存在する。正則性と可解性を混同しないこと。

解答

1=(1,1,1,1)T\mathbf{1}=(1,1,1,1)^{\mathsf T}, J=11TJ=\mathbf{1}\mathbf{1}^{\mathsf T} とおくと,問題の行列は A=(s−t)I4+tJ A=(s-t)I_4+tJ と書ける。J1=41J\mathbf{1}=4\mathbf{1} であり,1⊥\mathbf{1}^{\perp} 上では J=0J=0 であるから,AA の固有値は s+3t(1重),s−t(3重) s+3t \quad (1\text{重}),\qquad s-t \quad (3\text{重}) である。

  1. よって det⁡A=(s+3t)(s−t)3. \det A=(s+3t)(s-t)^3.
  2. AA が正則であるための必要十分条件は,すべての固有値が 00 でないことである。したがって s≠t,s≠−3t s\ne t,\qquad s\ne -3t が必要十分条件である。
  3. s,t≠0s,t\ne0 より,s=ts=t と s=−3ts=-3t は同時には起こらない。従って rank⁡A={4,s≠t, s≠−3t,3,s=−3t,1,s=t. \operatorname{rank}A= \begin{cases} 4, & s\ne t,\ s\ne -3t,\\ 3, & s=-3t,\\ 1, & s=t. \end{cases}
  4. 右辺を bb とする。AA が正則なら解は存在する。残る特異な場合を調べる。 s=−3ts=-3t のとき,ker⁡A=R1\ker A=\mathbb{R}\mathbf{1} であり,AA は対称行列なので Im⁡A=1⊥\operatorname{Im}A=\mathbf{1}^{\perp} である。この場合 1Tb=2s+6t=2(s+3t)=0 \mathbf{1}^{\mathsf T}b=2s+6t=2(s+3t)=0 となるから,解は存在する。 一方 s=ts=t のとき A=tJA=tJ なので Im⁡A=R1\operatorname{Im}A=\mathbb{R}\mathbf{1} である。しかし第1成分と他の成分が一致するには 2s+3t=t2s+3t=t,すなわち s=−ts=-t が必要で,これは s=t≠0s=t\ne0 と両立しない。従って解は存在しない。 以上より,解が存在するための必要十分条件は s≠t s\ne t である。
  5. (4) の条件を満たし,かつ AA が正則でないのは s=−3ts=-3t の場合である。t≠0t\ne0 で割ると (J−4I4)x=(−3,1,1,1)T (J-4I_4)x=(-3,1,1,1)^{\mathsf T} を解けばよい。S=x1+x2+x3+x4S=x_1+x_2+x_3+x_4 とおくと S−4x1=−3,S−4xi=1(i=2,3,4). S-4x_1=-3,\qquad S-4x_i=1\quad (i=2,3,4). 従って x1=S+34,x2=x3=x4=S−14. x_1=\frac{S+3}{4},\qquad x_2=x_3=x_4=\frac{S-1}{4}. SS は任意に選べるので,解全体は x=(3/4−1/4−1/4−1/4)+c(1111)(c∈R) x= \begin{pmatrix} 3/4\\ -1/4\\ -1/4\\ -1/4 \end{pmatrix} +c \begin{pmatrix} 1\\1\\1\\1 \end{pmatrix} \qquad (c\in\mathbb{R}) である。

最終答

det⁡A=(s+3t)(s−t)3\det A=(s+3t)(s-t)^3。正則条件は s≠t, s≠−3ts\ne t,\ s\ne -3t。階数は上の表の通り。Ax=bAx=b が解をもつ条件は s≠ts\ne t。特異で解をもつ場合 s=−3ts=-3t の解は x=(3/4,−1/4,−1/4,−1/4)Tc(1,1,1,1)T(c∈R). x=(3/4,-1/4,-1/4,-1/4)^{\mathsf T} c(1,1,1,1)^{\mathsf T}\quad(c\in\mathbb{R}).

第2問 — 多項式で定まる内積

方針

この問題の内積は,ベクトルそのものではなく対応する多項式の積分で定義されている。したがって直交条件は「11 と xx に対するモーメントが 00」という2本の一次方程式になる。

試験で書くべきポイント

(1) では「積分が 00 だから多項式が 00」を一言で済ませず,非負連続関数の積分が 00 なら恒等的に 00 であること,さらに多項式の係数がすべて 00 になることまで書くと答案として安全である。

多項式で定まる内積の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 逆三角関数と極限

方針

(2) は (sin⁡−1x)2(\sin^{-1}x)^2 の級数を直接覚えていなくても,(1) の微分方程式から係数比較で出せる。偶関数であることを先に使うと,奇数次をすべて処理できる。

検算

k=1k=1 では f′′(0)=2f''(0)=2,k=2k=2 では係数が 1/31/3 なので f(4)(0)=24/3=8f^{(4)}(0)=24/3=8 となる。これは sin⁡−1x=x+x36+O(x5) \sin^{-1}x=x+\frac{x^3}{6}+O(x^5) から (sin⁡−1x)2=x2+x43+O(x6)(\sin^{-1}x)^2=x^2+\frac{x^4}{3}+O(x^6) と一致する。

逆三角関数と極限の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 特異点をもつ重積分

方針

原点近くでは f∼r−2f\sim r^{-2} なので絶対値の積分は ∫dr/r\int dr/r 型で発散する。一方,符号付きでは角度方向の平均 ∫cos⁡2φ dφ\int\cos2\varphi\,d\varphi が効く。逐次積分の値が入れ替えで変わるのは,絶対可積分でないことの典型例である。

典型ミス

(3) で (1), (2) の値が異なることだけから「重積分は存在しない」と断定してはいけない。ここでは原点を円でくり抜く標準的な広義積分では角度方向の発散項が打ち消される。ただし絶対収束ではないため,Fubini の定理をそのまま使うことはできない。

特異点をもつ重積分の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — Jordan 標準形

方針

固有多項式だけでは 00 固有値の Jordan ブロックサイズは決まらない。ここでは ker⁡A\ker A が1次元であること,また Av2=v1, Av3=v2Av_2=v_1,\ Av_3=v_2 となる Jordan 鎖を実際に作ることで,33 次ブロックが1つあると分かる。

検算

上の PP は det⁡P=1\det P=1 なので確かに正則である。また J3=diag⁡(0,0,0,1)J^3=\operatorname{diag}(0,0,0,1) になるため,A3=PJ3P−1A^3=PJ^3P^{-1} は射影行列で,実際に A4=A3A^4=A^3 を満たす。

Jordan 標準形の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 中心と共役類

方針

共役類と中心化群の関係は「軌道と固定部分群」の基本例である。(2) の写像は自然に思いつくが,商集合から定める以上,well-defined と単射性を必ず確認する。

典型ミス

G/Z(G)G/Z(G) の中心が常に自明だと勘違いしやすい。正しい主張は「G/Z(G)G/Z(G) が巡回群なら GG は可換」であり,その場合は商が自明になる。任意の群で中心が消えるわけではない。

中心と共役類の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — イデアルの根基

方針

根基の加法閉性では,(a+b)N(a+b)^N の各項が ama^m または bnb^n を因子に持つように N=m+n−1N=m+n-1 と選ぶのが定石である。

試験で書くべきポイント

(4) では「(a)\sqrt{(a)} が素」から「aa が素元の冪」と結論するまでに,UFD の一意分解を明示する必要がある。特に複数の非同伴な素因子があると,そのうち1つの冪だけでは aa を割り切れない,という割り切りの矛盾を書く。

イデアルの根基の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 有限体上の分解体

方針

ff は3乗根,gg は4乗根,hh は8乗根の有無を見る問題である。有限体 Fp×\mathbb{F}_p^\times は位数 p−1p-1 の巡回群なので,必要な位数の元が存在するかを合同条件に直せる。

典型ミス

p=2,3p=2,3 では重根が出るため,奇素数での合同条件をそのまま使うと誤る。小さい標数は必ず直接因数分解して確認する。

有限体上の分解体の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 弱 Hausdorff 空間

方針

弱 Hausdorff の定義は「コンパクト Hausdorff 空間からの像が閉」という形なので,証明では常にコンパクト Hausdorff な閉部分空間を作り,その像が閉であることを使う。

試験で書くべきポイント

(3) の分離では,単に KK 上で A1,A2A_1,A_2 を分離するだけでは足りない。その開集合を f(K)f(K) 側の開集合に押し下げるために,f(K∖Ui)f(K\setminus U_i) が閉であることを使うのが核心である。

弱 Hausdorff 空間の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 球面多角形

方針

球面幾何の面積公式と,球面分割の Euler 公式を組み合わせる問題である。面積が等しいことは (1) で使い,頂点数と隣接条件は (2) で EE を決めるために使う。

典型ミス

48n=E48n=E としてしまうと各辺を二重に数えていない。隣接する2つの面が1つの辺を共有するので,面から数えた辺の総数は 2E2E である。

球面多角形の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 上半平面のベクトル場

方針

上半平面は開部分多様体なので,接空間も微分写像も通常の R2\mathbb{R}^2 の微分で計算できる。抽象的な定義を述べた後は,座標表示に戻してよい。

典型ミス

[X,Y][X,Y] の符号に注意する。定義を [X,Y]=XY−YX[X,Y]=XY-YX としているなら,Y(y)=yY(y)=y が効いて xx 成分は −y-y になる。

上半平面のベクトル場の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 単体複体とホモロジー

方針

(1) の空間は円に弦を1本加えたグラフであり,ホモロジーはグラフの閉路数で読める。(3) は S2S^2 に1本の弧を付けるので,ホモトピー型としては S2∨S1S^2\vee S^1 と同じになり,Euler 標数が 11 になる。

典型ミス

(3) で四面体境界を使うと,北極と南極を結ぶ辺がすでに存在してしまい,追加する内側の線分を単体複体として区別できない。正八面体境界のように NN と SS が辺で結ばれていない分割を選ぶと安全である。

単体複体とホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — 櫛形空間のホモトピー

方針

この空間は可縮だが,基点 aa の近くで細い縦線分が x=0x=0 に集積しているため,基点を固定した縮約はできない。通常のホモトピーと基点固定ホモトピーを区別するのがこの問題の核心である。

試験で書くべきポイント

(3) では「直感的に無理」と書くだけでは不十分である。pn=(1/n,1)→ap_n=(1/n,1)\to a と一様連続性を組み合わせ,aa の小近傍内に pnp_n と aa を結ぶ道が生じてしまう,という矛盾を明示する。

櫛形空間のホモトピーの途中式・最終答をPDFで見る

第14問 — 対数評価と Poisson 極限

方針

(2) は二項分布の Poisson 極限定理そのものである。ただし答案では,(1−pn)n→e−α(1-p_n)^n\to e^{-\alpha} を示すために (1) の対数評価を使うのが自然である。

典型ミス

(1−pn)n−k(1-p_n)^{n-k} の kk は固定である。したがって (1−pn)−k→1(1-p_n)^{-k}\to1 を分けて処理すればよい。kk が nn とともに動く場合の近似と混同しないこと。

対数評価と Poisson 極限の途中式・最終答をPDFで見る

第15問 — 留数計算

方針

分母が z2+4z^2+4 なので,上半平面で拾う極は 2i2i のみである。eize^{iz} は上半平面で減衰するため,上半円で閉じるのが自然である。

検算

∫−∞∞cos⁡xx2+a2 dx=πae−a\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos x}{x^2+a^2}\,dx=\frac{\pi}{a}e^{-a} という標準公式に a=2a=2 を入れると πe−2/2\pi e^{-2}/2 であり,上の結果と一致する。

留数計算の途中式・最終答をPDFで見る

第16問 — 閉部分空間への直交射影

方針

射影の問題では,部分空間の基底を直交化するのが第一手である。この問題では最初から 11 と cos⁡θ\cos\theta が直交しているため,Fourier 係数をそのまま書けばよい。

典型ミス

∫−ππcos⁡2θ dθ\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2\theta\,d\theta は 2π2\pi ではなく π\pi である。定数成分と余弦成分で正規化係数が違う点に注意する。

閉部分空間への直交射影の途中式・最終答をPDFで見る

第17問 — 微分方程式

方針

(1) は同次形なので x/tx/t を導入する。(3) は平衡点を先に完全に出し,それぞれの Jacobi 行列の固有値で局所安定性を判定する。

典型ミス

a=1a=1 では2つの平衡点が合流し,線形化に固有値 00 が出る。ここで「判定不能」のまま終えると安定性を調べたことにならない。中心多様体上の2次項を見ると不安定である。

微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第18問 — 一様可積分性

方針

条件 (∗)(*) は一様可積分性の尾部条件である。(1) は「大きい値の部分」と「有界な部分」に分け,有界な部分は tμ(A)t\mu(A) で抑える。

典型ミス

(2) で μ(An)=1/n\mu(A_n)=1/n を掛け忘れると条件がずれる。積分値は振幅 nκn^\kappa ではなく,振幅と台の測度を掛けた nκ−1n^{\kappa-1} で判定する。

一様可積分性の途中式・最終答をPDFで見る

第19問 — 確率不等式

方針

(2) が Markov の不等式で,(3) はそれを二乗偏差に適用した Chebyshev の不等式である。(4) も同じく Markov の不等式を絶対値に適用するだけでよい。

典型ミス

(5) は Z>0Z>0 上に制限して Cauchy--Schwarz を使うのが短い。非負整数値という条件から Z=0Z=0 と Z>0Z>0 の分解が自然に出る。

確率不等式の途中式・最終答をPDFで見る

第20問 — 指示変数と二項分布

方針

UU はしきい値を超えたかどうかを表す指示変数である。したがって期待値は成功確率,分散は q(1−q)q(1-q) になる。

典型ミス

(4) で Xj<2X_j<2 は幾何分布の台が 1,2,…1,2,\ldots であるため Xj=1X_j=1 と同じである。成功確率は Pr⁡(Xj=1)=p\Pr(X_j=1)=p であり,Pr⁡(Xj<2)=1−(1−p)2\Pr(X_j<2)=1-(1-p)^2 ではない。

指示変数と二項分布の途中式・最終答をPDFで見る

大阪公立大 数学 院試 過去問の収録6年度