大阪公立大学 院試 過去問 解答例
大阪公立大 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度春入学 院試 解答例・解説
大阪公立大学 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度春入学の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全20問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 列ベクトルの一次関係
方針
列空間の問題と核の問題は,同じ行基本変形で同時に処理するのが最も確実である。既約階段形で主列を読むと列空間の基底が得られ,非主変数を自由変数にすると の基底が得られる。
検算
実際に である。また , なので,核の基底も関係式と一致している。
試験で書くべきポイント
「 が の一次結合で書ける」だけでなく, が一次独立であることを階段形の主列から明示する。これを書かないと,基底であることの確認が不足する。
第2問 — 対称行列の直交対角化
方針
対称行列なので,異なる固有値の固有ベクトルは自動的に直交する。最後のノルム計算は,逆行列を直接求めるより,直交固有基底に分解する方が短く,かつ計算ミスが少ない。
典型ミス
方程式を と見るため,係数は である。二乗後は符号が消えるが,途中で と混在させると内積成分の符号を誤りやすい。
検算
の直交固有基底への射影の大きさが であることが,右辺の分子 と対応している。したがって最終式の形は固有値と射影だけから確認できる。
第3問 — 漸近展開とチェザロ平均
方針
極限計算では両項が の特異性を持つ。必要なのは特異項の次の定数項だけなので,逆数展開は までで十分である。
典型ミス
の展開は を掛けた後の次数でそろえる。 を まで書く必要はなく, で まで必要だから は までで足りる。
試験で書くべきポイント
チェザロ平均の証明では,有限個の初項の寄与が で消えることと,十分後ろの項が一様に で抑えられることを分けて書くとよい。
第4問 — 回転体の体積積分
方針
この立体は 方向の高さが半径 だけで決まる。したがって,薄い円環の面積 に高さ を掛けて足し合わせる,という見方でも同じ公式が得られる。
検算
では であり,求めた式を微分しても同じになる。初期値 も満たしている。
典型ミス
最後の極限では である。 の主要項も 次なので, を定数 と見た主要項の比較だけでも極限は と確認できる。
第5問 — 左乗法の固有空間
方針
の元を「2本の列ベクトル」と見ると,左乗法 は各列に同じ を掛ける操作である。そのため,固有空間は 自身の固有空間を列ごとに並べたものになる。
典型ミス
のときも が非零なので, はスカラー行列ではない。固有値が1つに合流しただけで固有空間は4次元にならない。
検算
非対角化の場合, は第3標準基底を 倍の第1標準基底へ,第4標準基底を 倍の第2標準基底へ送る。したがって長さ2のジョルダン鎖が2本ある。
第6問 — 群の基本定理
方針
前半はラグランジュの定理と第一同型定理の標準問題である。後半は「平方写像が準同型なら可換性が出る」ことと,「何度でも平方根が取れるなら整数値準同型の値は任意に高い の冪で割れる」ことが核心である。
典型ミス
が部分群であるためには の正規性が必要である。積の閉性だけを形式的に書くのではなく, を使って の元を右側に戻す操作を書く。
試験で書くべきポイント
は第二同型定理そのものだが,試験では写像 の核と像を明記すると減点されにくい。
第7問 — 尖点曲線の座標環
方針
核は曲線の関係式 から予想する。厳密には について割り算し,余り を に代入して,偶数次数と奇数次数を比較する。
典型ミス
が で既約かどうかを議論してはいけない。問題は部分環 の中での既約性であり,この環には が入っていない。
試験で書くべきポイント
と同型でないことは,「正規でない」などの言葉でも示せるが,本問では が既約で素でないことを示すのが最も短い。
第8問 — 三次方程式の分解体
方針
と書かれているが,実質的には である。 に気づくと,分解体であることがすぐ分かる。
典型ミス
を示すとき,単に と掛けるだけでは不十分である。交わりが である理由として,次数が と の公約数でなければならないことを書く。
検算
分解体のガロア群は3次既約多項式の根に推移的に作用する。今回は拡大次数が なので, の真部分群ではなく全体になる。
第9問 — 特殊化順序と既約性
方針
は「 から見て区別できないほど近い点」の集合であり,閉包関係 と同じ情報を逆向きに表している。この同値を最初に押さえると,全体が特殊化順序の問題として整理できる。
典型ミス
(3) の逆向きでは, から を導く場面で, が の開近傍であることを使う。閉包の定義を点の近傍で正確に書くことが重要である。
試験で書くべきポイント
既約性は「任意の2つの空でない開集合が交わる」と同値である。この同値を閉集合の定義から一行で示してから使うと,最後の逆向きの証明が明瞭になる。
第10問 — 球面分割とオイラー標数
方針
面積条件から球面三角形の面積を出し,ジラールの定理で内角和へ変換する。頂点数は角度ではなく,面・辺・頂点の組合せとしてオイラーの公式で求める。
典型ミス
辺の数を としてしまう誤りが多い。これは面ごとに見た辺の延べ数であり,各実際の辺は2回ずつ数えられている。
検算
は を満たす。球面分割なので,最後に必ずオイラー標数 と一致するか確認する。
第11問 — 楕円座標と微分形式
方針
微分の局所表示はヤコビ行列そのものである。2形式の引き戻しはヤコビアンを掛けるだけなので,(1) の行列式をそのまま使える。
典型ミス
の範囲は であり,端点 は含まれない。そのため楕円全体ではなく, に対応する点だけが抜ける。
検算
ヤコビアンは であり,向きが反転して負になることはない。積分値が正になることもこの形から確認できる。
第12問 — 単体的複体のホモロジー
方針
1次元複体では を使う。2次元の例は,具体的な三角形のリストよりも,既知の複体を貼り合わせてオイラー標数を計算する方が安全である。
典型ミス
(3) では の生成元が4個あっても,階数が4とは限らない。実際には関係があり,スミス標準形から階数3であることが分かる。
試験で書くべきポイント
はオイラー標数だけで階数が分かるが,ねじれはない。なぜなら は自由アーベル群 の部分群だからである。
第13問 — 二点を除いた平面の基本群
方針
と はそれぞれ片方の穴だけを持つ空間で,交わりは穴のない帯である。したがって,和集合は「2つの円周を1点で貼った空間」と同じ基本群を持つ。
典型ミス
からは除外点が消える。原点は ,点 は にあるので,どちらも の帯には入らない。
試験で書くべきポイント
ファン・カンペンを使うときは, が弧状連結で基本群が自明であることを書く。これにより自由積 がそのまま出る。
第14問 — 弱特異核の連続性
方針
核 は対角線上で特異だが, なので1次元では可積分である。近傍部分の寄与を で一様に抑えることが鍵である。
典型ミス
(2) は点ごとの極限だが,実際には上の評価により一様に へ収束している。端点 でも片側積分になるだけなので,同じ上界で処理できる。
試験で書くべきポイント
の連続性は,特異核を切り詰めた有界連続核 で近似して示すと明快である。いきなり積分内の連続性だけを述べると,対角線上の特異性の扱いが不足する。
第15問 — 留数計算による実積分
方針
は上半平面で の減衰を持つので,上半円を閉じる。弧積分が になることを先に示しておくと,実軸上の積分が上半平面の留数だけで決まる。
典型ミス
の上半平面の極は2つだけである。, は下半平面にあるので,この輪郭では数えない。
検算
被積分関数 は偶関数であり,既知の形 と一致する。答えは正で,指数減衰因子 を含む。
第16問 — 閉作用素と商空間
方針
閉作用素の定義は「グラフが閉」である。核の閉性も,商上の作用素の閉性も,収束列をグラフに持ち込んで閉性を使う形に落とす。
典型ミス
は一般に 全体で定義されていない。 を作るとき, であり, が線形部分空間であることを使って と確認する必要がある。
試験で書くべきポイント
商ノルムの正定値性では が閉であることを使う。ここが (1) と (2) の接続部分であり,書き落とすとノルムではなく半ノルムの確認に留まってしまう。
第17問 — 連立線形微分方程式
方針
定数係数の場合は固有値で安定性を見る。2次元では,固有値を直接解かなくても,トレースが負かつ行列式が正であれば実部が負になる。
典型ミス
(2) では固有値 の項が で増大する。初期値条件は であり, の関係に戻すと である。
検算
(4) の行列は で,回転成分と拡大縮小成分に分かれている。ノルム平方が 倍されるため, なら全ての軌道が原点へ縮む。
第18問 — 積分記号下の微分
方針
差分商を作り,平均値の定理で偏微分の絶対値評価に帰着する。その差分商を可積分関数で支配できるので,支配収束定理により極限と積分を交換できる。
典型ミス
ガンマ関数では と の両方で可積分性を確認する必要がある。 では ,無限遠では指数減衰 が効く。
試験で書くべきポイント
(1) の仮定は偏微分の絶対値が1つの可積分関数で支配されるという形で使う。この点を明記すると,支配収束定理の適用条件がはっきりする。
第19問 — 正規分布と符号反転
方針
は の一部を符号反転した変数だが,標準正規分布が対称なので周辺分布は と同じである。一方, は完全に保たれるため,独立ではない。
典型ミス
の分布が に依存すると考えて複雑な場合分けをしがちである。区間内の符号反転は対称分布を保つので,分布関数は常に である。
検算
では なので 。 では に近づくので共分散は に近づく。求めた式はこの直感と一致している。
第20問 — 符号検定と二項分布
方針
これは対応のある2変量データに対する符号検定の形である。 の回数だけを使うので,統計量は二項分布に従う。
典型ミス
(2) では対立仮説が なので,上側棄却域を取る。 まで含めるとサイズが となり, を大きく超える。
検算
信頼区間の幅は で最大になる。偶数 ではこの最大値が実際に達成されるため, をそのまま解けばよい。