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大阪公立大学 院試 過去問 解答例

大阪公立大 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度春入学 院試 解答例・解説

大阪公立大学 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度春入学の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全20問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 列ベクトルの一次関係

方針

列空間の問題と核の問題は,同じ行基本変形で同時に処理するのが最も確実である。既約階段形で主列を読むと列空間の基底が得られ,非主変数を自由変数にすると Ax=0Ax=0 の基底が得られる。

検算

実際に 3a12a2=(13,2,4,9)T,a1+2a2a4=(7,4,5,3)T 3a_1-2a_2=(13,2,4,9)^T,\qquad a_1+2a_2-a_4=(7,-4,5,3)^T である。また A(3,2,1,0,0)T=3a1+2a2+a3=0A(-3,2,1,0,0)^T=-3a_1+2a_2+a_3=0A(1,2,0,1,1)T=a12a2+a4+a5=0A(-1,-2,0,1,1)^T=-a_1-2a_2+a_4+a_5=0 なので,核の基底も関係式と一致している。

試験で書くべきポイント

a3,a5a_3,a_5a1,a2,a4a_1,a_2,a_4 の一次結合で書ける」だけでなく,a1,a2,a4a_1,a_2,a_4 が一次独立であることを階段形の主列から明示する。これを書かないと,基底であることの確認が不足する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 対称行列の直交対角化

方針

対称行列なので,異なる固有値の固有ベクトルは自動的に直交する。最後のノルム計算は,逆行列を直接求めるより,直交固有基底に分解する方が短く,かつ計算ミスが少ない。

典型ミス

方程式を (AαI)x=b(A-\alpha I)x=b と見るため,係数は (λjα)1(\lambda_j-\alpha)^{-1} である。二乗後は符号が消えるが,途中で (αλj)1(\alpha-\lambda_j)^{-1} と混在させると内積成分の符号を誤りやすい。

検算

bb の直交固有基底への射影の大きさが 3,2,13,2,1 であることが,右辺の分子 9,4,19,4,1 と対応している。したがって最終式の形は固有値と射影だけから確認できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 漸近展開とチェザロ平均

方針

極限計算では両項が 1/(2x)1/(2x) の特異性を持つ。必要なのは特異項の次の定数項だけなので,逆数展開は 1+cx+O(x2)1+cx+O(x^2) までで十分である。

典型ミス

xcosxx\cos x の展開は xx を掛けた後の次数でそろえる。cosx\cos xx5x^5 まで書く必要はなく,xcosxx\cos xx5x^5 まで必要だから cosx\cos xx4x^4 までで足りる。

試験で書くべきポイント

チェザロ平均の証明では,有限個の初項の寄与が C/nC/n で消えることと,十分後ろの項が一様に ε\varepsilon で抑えられることを分けて書くとよい。

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4 — 回転体の体積積分

方針

この立体は zz 方向の高さが半径 rr だけで決まる。したがって,薄い円環の面積 2πrdr2\pi r\,dr に高さ f(r)f(r) を掛けて足し合わせる,という見方でも同じ公式が得られる。

検算

f(r)=sinhrf(r)=\sinh r では I(a)=2πasinhaI'(a)=2\pi a\sinh a であり,求めた式を微分しても同じになる。初期値 I(0)=0I(0)=0 も満たしている。

典型ミス

最後の極限では f(a)2=a4(arctana)2f(a)^2=a^4(\arctan a)^2 である。I(a)I(a) の主要項も a4a^4 次なので,arctana\arctan a を定数 π/2\pi/2 と見た主要項の比較だけでも極限は 11 と確認できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 左乗法の固有空間

方針

M2(C)M_2(\mathbb C) の元を「2本の列ベクトル」と見ると,左乗法 BXBB\mapsto XB は各列に同じ XX を掛ける操作である。そのため,固有空間は XX 自身の固有空間を列ごとに並べたものになる。

典型ミス

a=ba=b のときも 22 が非零なので,XX はスカラー行列ではない。固有値が1つに合流しただけで固有空間は4次元にならない。

検算

非対角化の場合,AaIA-aI は第3標準基底を 22 倍の第1標準基底へ,第4標準基底を 22 倍の第2標準基底へ送る。したがって長さ2のジョルダン鎖が2本ある。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 群の基本定理

方針

前半はラグランジュの定理と第一同型定理の標準問題である。後半は「平方写像が準同型なら可換性が出る」ことと,「何度でも平方根が取れるなら整数値準同型の値は任意に高い 22 の冪で割れる」ことが核心である。

典型ミス

KHKH が部分群であるためには HH の正規性が必要である。積の閉性だけを形式的に書くのではなく,kHk1=HkHk^{-1}=H を使って HH の元を右側に戻す操作を書く。

試験で書くべきポイント

K/(KH)KH/HK/(K\cap H)\simeq KH/H は第二同型定理そのものだが,試験では写像 θ(k)=kH\theta(k)=kH の核と像を明記すると減点されにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 尖点曲線の座標環

方針

核は曲線の関係式 y2=x3y^2=x^3 から予想する。厳密には yy について割り算し,余り r0(x)+r1(x)yr_0(x)+r_1(x)ytt に代入して,偶数次数と奇数次数を比較する。

典型ミス

t2,t3t^2,t^3C[t]\mathbb C[t] で既約かどうかを議論してはいけない。問題は部分環 C[t2,t3]\mathbb C[t^2,t^3] の中での既約性であり,この環には tt が入っていない。

試験で書くべきポイント

C[z]\mathbb C[z] と同型でないことは,「正規でない」などの言葉でも示せるが,本問では t2t^2 が既約で素でないことを示すのが最も短い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 三次方程式の分解体

方針

L=Q(α1,α2)L=\mathbb Q(\alpha_1,\alpha_2) と書かれているが,実質的には Q(23,ω)\mathbb Q(\sqrt[3]{2},\omega) である。ω=α2/α1\omega=\alpha_2/\alpha_1 に気づくと,分解体であることがすぐ分かる。

典型ミス

[Q(α1,ω):Q]=6[\mathbb Q(\alpha_1,\omega):\mathbb Q]=6 を示すとき,単に 323\cdot2 と掛けるだけでは不十分である。交わりが Q\mathbb Q である理由として,次数が 3322 の公約数でなければならないことを書く。

検算

分解体のガロア群は3次既約多項式の根に推移的に作用する。今回は拡大次数が 66 なので,S3S_3 の真部分群ではなく全体になる。

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9 — 特殊化順序と既約性

方針

[x][x] は「xx から見て区別できないほど近い点」の集合であり,閉包関係 x{y}x\in\overline{\{y\}} と同じ情報を逆向きに表している。この同値を最初に押さえると,全体が特殊化順序の問題として整理できる。

典型ミス

(3) の逆向きでは,f(x){f(z)}f(x)\in\overline{\{f(z)\}} から f(z)Vf(z)\in V を導く場面で,VVf(x)f(x) の開近傍であることを使う。閉包の定義を点の近傍で正確に書くことが重要である。

試験で書くべきポイント

既約性は「任意の2つの空でない開集合が交わる」と同値である。この同値を閉集合の定義から一行で示してから使うと,最後の逆向きの証明が明瞭になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 球面分割とオイラー標数

方針

面積条件から球面三角形の面積を出し,ジラールの定理で内角和へ変換する。頂点数は角度ではなく,面・辺・頂点の組合せとしてオイラーの公式で求める。

典型ミス

辺の数を 63+74=466\cdot3+7\cdot4=46 としてしまう誤りが多い。これは面ごとに見た辺の延べ数であり,各実際の辺は2回ずつ数えられている。

検算

V=12,E=23,F=13V=12,E=23,F=131223+13=2 12-23+13=2 を満たす。球面分割なので,最後に必ずオイラー標数 22 と一致するか確認する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — 楕円座標と微分形式

方針

微分の局所表示はヤコビ行列そのものである。2形式の引き戻しはヤコビアンを掛けるだけなので,(1) の行列式をそのまま使える。

典型ミス

vv の範囲は (π,π)(-\pi,\pi) であり,端点 π\pi は含まれない。そのため楕円全体ではなく,t=πt=\pi に対応する点だけが抜ける。

検算

ヤコビアンは sinh2ucos2v+cosh2usin2v0 \sinh^2u\cos^2v+\cosh^2u\sin^2v\ge0 であり,向きが反転して負になることはない。積分値が正になることもこの形から確認できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

12 — 単体的複体のホモロジー

方針

1次元複体では χ=cb1\chi=c-b_1 を使う。2次元の例は,具体的な三角形のリストよりも,既知の複体を貼り合わせてオイラー標数を計算する方が安全である。

典型ミス

(3) では B1B_1 の生成元が4個あっても,階数が4とは限らない。実際には関係があり,スミス標準形から階数3であることが分かる。

試験で書くべきポイント

H2H_2 はオイラー標数だけで階数が分かるが,ねじれはない。なぜなら H2=ker2H_2=\ker\partial_2 は自由アーベル群 C2C_2 の部分群だからである。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

13 — 二点を除いた平面の基本群

方針

U1U_1U2U_2 はそれぞれ片方の穴だけを持つ空間で,交わりは穴のない帯である。したがって,和集合は「2つの円周を1点で貼った空間」と同じ基本群を持つ。

典型ミス

U1U2U_1\cap U_2 からは除外点が消える。原点は a=0a=0,点 (2,0)(2,0)a=2a=2 にあるので,どちらも 0<a<20<a<2 の帯には入らない。

試験で書くべきポイント

ファン・カンペンを使うときは,U1U2U_1\cap U_2 が弧状連結で基本群が自明であることを書く。これにより自由積 ZZ\mathbb Z*\mathbb Z がそのまま出る。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

14 — 弱特異核の連続性

方針

xyα|x-y|^{-\alpha} は対角線上で特異だが,α<1\alpha<1 なので1次元では可積分である。近傍部分の寄与を nα1n^{\alpha-1} で一様に抑えることが鍵である。

典型ミス

(2) は点ごとの極限だが,実際には上の評価により一様に 00 へ収束している。端点 x=0,1x=0,1 でも片側積分になるだけなので,同じ上界で処理できる。

試験で書くべきポイント

hh の連続性は,特異核を切り詰めた有界連続核 KmK_m で近似して示すと明快である。いきなり積分内の連続性だけを述べると,対角線上の特異性の扱いが不足する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

15 — 留数計算による実積分

方針

eize^{iz} は上半平面で eImze^{-\operatorname{Im}z} の減衰を持つので,上半円を閉じる。弧積分が 00 になることを先に示しておくと,実軸上の積分が上半平面の留数だけで決まる。

典型ミス

z4+1z^4+1 の上半平面の極は2つだけである。e5πi/4e^{5\pi i/4}e7πi/4e^{7\pi i/4} は下半平面にあるので,この輪郭では数えない。

検算

被積分関数 cosx/(x4+1)\cos x/(x^4+1) は偶関数であり,既知の形 20cosxx4+1dx 2\int_0^\infty \frac{\cos x}{x^4+1}\,dx と一致する。答えは正で,指数減衰因子 e1/2e^{-1/\sqrt2} を含む。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

16 — 閉作用素と商空間

方針

閉作用素の定義は「グラフが閉」である。核の閉性も,商上の作用素の閉性も,収束列をグラフに持ち込んで閉性を使う形に落とす。

典型ミス

TT は一般に XX 全体で定義されていない。un=xnwnu_n=x_n-w_n を作るとき,wnND(T)w_n\in N\subset D(T) であり,D(T)D(T) が線形部分空間であることを使って unD(T)u_n\in D(T) と確認する必要がある。

試験で書くべきポイント

商ノルムの正定値性では NN が閉であることを使う。ここが (1) と (2) の接続部分であり,書き落とすとノルムではなく半ノルムの確認に留まってしまう。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

17 — 連立線形微分方程式

方針

定数係数の場合は固有値で安定性を見る。2次元では,固有値を直接解かなくても,トレースが負かつ行列式が正であれば実部が負になる。

典型ミス

(2) では固有値 11 の項が ete^t で増大する。初期値条件は C1=0C_1=0 であり,p,qp,q の関係に戻すと q=3pq=-3p である。

検算

(4) の行列は (a11a) \begin{pmatrix}a&1\\-1&a\end{pmatrix} で,回転成分と拡大縮小成分に分かれている。ノルム平方が e2ate^{2at} 倍されるため,a<0a<0 なら全ての軌道が原点へ縮む。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

18 — 積分記号下の微分

方針

差分商を作り,平均値の定理で偏微分の絶対値評価に帰着する。その差分商を可積分関数で支配できるので,支配収束定理により極限と積分を交換できる。

典型ミス

ガンマ関数では x=0x=0x=x=\infty の両方で可積分性を確認する必要がある。x=0x=0 では xs0/21logxx^{s_0/2-1}|\log x|,無限遠では指数減衰 exe^{-x} が効く。

試験で書くべきポイント

(1) の仮定は偏微分の絶対値が1つの可積分関数で支配されるという形で使う。この点を明記すると,支配収束定理の適用条件がはっきりする。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

19 — 正規分布と符号反転

方針

YcY_cXX の一部を符号反転した変数だが,標準正規分布が対称なので周辺分布は XX と同じである。一方,Yc=X|Y_c|=|X| は完全に保たれるため,独立ではない。

典型ミス

YcY_c の分布が cc に依存すると考えて複雑な場合分けをしがちである。区間内の符号反転は対称分布を保つので,分布関数は常に Φ\Phi である。

検算

c=0c=0 では Y0=XY_0=X なので f(0)=Cov(X,X)=1f(0)=\operatorname{Cov}(X,X)=1cc\to\infty では Yc=XY_c=-X に近づくので共分散は 1-1 に近づく。求めた式はこの直感と一致している。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

20 — 符号検定と二項分布

方針

これは対応のある2変量データに対する符号検定の形である。Yi>XiY_i>X_i の回数だけを使うので,統計量は二項分布に従う。

典型ミス

(2) では対立仮説が p>1/2p>1/2 なので,上側棄却域を取る。T6T\ge6 まで含めるとサイズが 37/25637/256 となり,0.050.05 を大きく超える。

検算

信頼区間の幅は T=n/2T=n/2 で最大になる。偶数 nn ではこの最大値が実際に達成されるため,1.96/n0.11.96/\sqrt n\le0.1 をそのまま解けばよい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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