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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析4問・線形代数2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・ラグランジュの未定乗数法)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・ラグランジュの未定乗数法。

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

京大 基礎科目 2026年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析4問・線形代数2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析広義積分の収束範囲原点近傍の典型ミス / 無限遠の見方あり
第2問線形代数行列の階数—あり
第3問線形代数可換な行列全体の次元—あり
第4問微分積分・解析上極限・下極限の最値—あり
第5問微分積分・解析調和関数の表示一価性の確認あり
第6問微分積分・解析陰関数で定まる曲面と高さ関数の臨界点臨界点条件の意味あり
第7問—二元部分集合族の分類共通頂点をもたない場合あり

この年度の解説には検算3件・典型ミス2件が付いています。

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に5テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 7問 → 2026年度 7問
2026年度で新しく出たテーマ
ジョルダン標準形・コーシーの積分定理
2025年度のページを見る

第1問 — 広義積分の収束範囲

方針

広義積分では,特異性が起こる場所を分けるのが第一歩である。この問題では 分母が小さくなる原点近傍と,領域が無限に伸びる x→∞x\to\infty の二つだけを見ればよい。

原点近傍の典型ミス

0≤y≤x20\leq y\leq x^2 という幅を忘れて,単に (x3+y3)−α∼x−3α(x^3+y^3)^{-\alpha}\sim x^{-3\alpha} とだけ見ると 条件が一つずれる。幅が x2x^2 なので,実際には x2−3αx^{2-3\alpha} が現れる。

無限遠の見方

無限遠では yy の範囲が 0≤y≤x20\leq y\leq x^2 と広いので,yy を xx で割る変数変換が自然である。 このとき上限が xx になるため,内側の積分 I(x)I(x) の増大度をさらに調べる必要がある。 特に α=1/3\alpha=1/3 は対数発散を生む境界値なので,試験答案では等号の場合を省かないことが重要である。

解答

積分の収束性は,原点近傍と無限遠で別々に調べればよい。領域を D={(x,y)∣x>0, 0≤y≤x2} D=\{(x,y)\mid x>0,\ 0\leq y\leq x^2\} と書く。

まず 0<x<10<x<1 では 0≤y≤x2≤x0\leq y\leq x^2\leq x であるから x3≤x3+y3≤x3+x6≤2x3 x^3 \leq x^3+y^3 \leq x^3+x^6 \leq 2x^3 が成り立つ。したがって原点近傍の積分は定数倍を除いて ∫01∫0x2x−3α dy dx=∫01x2−3α dx \int_0^1 \int_0^{x^2} x^{-3\alpha}\,dy\,dx =\int_0^1 x^{2-3\alpha}\,dx と同じ収束性をもつ。よって原点近傍で収束するための条件は 2−3α>−1,α<1 2-3\alpha>-1,\qquad \alpha<1 である。

次に x>1x>1 を見る。変数変換 y=xty=xt を使うと ∫0x2dy(x3+y3)α=x1−3α∫0xdt(1+t3)α \int_0^{x^2}\frac{dy}{(x^3+y^3)^\alpha} =x^{1-3\alpha}\int_0^x\frac{dt}{(1+t^3)^\alpha} となる。ここで I(x)=∫0x(1+t3)−α dt I(x)=\int_0^x(1+t^3)^{-\alpha}\,dt とおく。α>1/3\alpha>1/3 なら I(x)I(x) は上に有界で正の極限をもつため, 無限遠での収束性は ∫1∞x1−3α dx \int_1^\infty x^{1-3\alpha}\,dx に帰着される。これは 1−3α<−11-3\alpha<-1,すなわち α>2/3\alpha>2/3 のときに限り収束する。

α=1/3\alpha=1/3 では I(x)∼log⁡xI(x)\sim \log x となり, x1−3αI(x)=I(x)x^{1-3\alpha}I(x)=I(x) の積分は発散する。α<1/3\alpha<1/3 では I(x)I(x) が x1−3αx^{1-3\alpha} と同程度以上に増大するので,無限遠の積分は発散する。

したがって全体で収束するための必要十分条件は 23<α<1 \frac23<\alpha<1 である。

最終答

23<α<1\displaystyle \frac23<\alpha<1

第2問 — 行列の階数

方針

階数分類では,まず行列式で階数 44 の場合を分離する。行列式が消える場合だけを個別に調べれば, 場合分けの量をかなり減らせる。

検算

a=0, b≠0a=0,\ b\neq0 のときは det⁡A=4b4≠0\det A=4b^4\neq0 なので階数は 44 である。 この点を b=0b=0 の場合と混同しやすい。行列式の因子は b2(b−a)(b+a)b^2(b-a)(b+a) であり, aa だけが零であることは特異条件ではない。

答案で書くべきこと

「行列式が零だから階数 33」とは言えない。階数が 22 以下に落ちていないことを示すため, 少なくとも一つの 33 次小行列式が非零であること,または三つの独立な行・列を明示することが必要である。

行列の階数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 可換な行列全体の次元

方針

可換な行列全体は中心化代数と呼ばれる。最小値を問う問題では, 「どんな行列でも少なくとも nn 次元ある」ことと「実際に nn 次元で済む例がある」ことを分けて示す。

別解の見方

相異なる固有値をもつ対角行列を先に思いつけば,上限 nn はすぐ得られる。 下限については,巡回行列なら多項式 p(X)p(X) が nn 次元分あるが,一般の XX では最小多項式の次数が nn 未満になり得る。 したがって「I,X,…,Xn−1I,X,\ldots,X^{n-1} が常に独立」と書くのは誤りである。ジョルダン標準形を用いるのが安全である。

試験での書き方

ジョルダンブロックの公式を完全に証明しなくても,少なくとも各固有値の一般化固有空間上に ブロック対角的に可換な自由度が合計 nn 以上存在することを説明すれば,下限の主張は通る。

可換な行列全体の次元の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 上極限・下極限の最値

方針

上極限・下極限の問題では,個々の数列の極限点集合を区間として眺めると整理しやすい。 ただし ana_n と bnb_n をどのタイミングで組み合わせるかは自由なので,端点を同時に出す構成が必要である。

典型ミス

[0,3][0,3] と [1,7][1,7] の距離だけを見て「下極限の最大も 44」などと判断してはいけない。 bnb_n は必ず 11 に近づく部分列をもつため,その時点で ana_n を最大の 33 にしても距離は高々 22 である。

検算

構成例はすべて二値または三値の周期的な数列で足りる。複雑な数列を作る必要はなく, 指定された lim inf⁡,lim sup⁡\liminf,\limsup が本当に実現しているかを最後に確認すればよい。

上極限・下極限の最値の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 調和関数の表示

方針

調和関数そのものではなく,複素微分に対応する ux−iuyu_x-iu_y を見ると,正則関数の孤立特異点の問題に変わる。 与えられた勾配評価は,原点では単純極まで,無限遠では定数までしか許さないことを意味している。

一価性の確認

1/z1/z を積分すると log⁡z\log z が現れるが,log⁡z=log⁡∣z∣+iarg⁡z\log z=\log|z|+i\arg z は多価である。 実数値の一価な uu に残せるのは log⁡∣z∣\log|z| の実数倍だけで,偏角の実数倍は残せない。 ここを省くと,存在しない関数まで答えに含めてしまう。

検算

log⁡(x2+y2)\log(x^2+y^2) の勾配は (2xx2+y2,2yx2+y2) \left(\frac{2x}{x^2+y^2},\frac{2y}{x^2+y^2}\right) で,評価の右辺と同じ 1/∣z∣1/|z| オーダーである。一次関数の勾配は定数なので, 仮定の 1+1/∣z∣1+1/|z| という成長条件とちょうど合っている。

調和関数の表示の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 陰関数で定まる曲面と高さ関数の臨界点

方針

前半は正則値定理,後半はラグランジュ未定乗数法で処理する。 同じ ∇F\nabla F を使うが,前半では「∇F\nabla F が XX 上で消えない」こと,後半では 「∇f\nabla f が ∇F\nabla F と平行になる」ことを見る。

臨界点条件の意味

曲面 XX 上で zz が臨界値をとるとは,高さ方向の変化が接平面に沿って一次的に消えるということである。 これは高さ方向ベクトル (0,0,1)(0,0,1) が曲面の法線 ∇F\nabla F と平行になることと同値である。

典型ミス

nn が偶数なら常に二つ,とはならない。右辺 1/a1/a が正でなければ偶数乗の実数解は存在しない。 また a=0a=0 は曲面としては問題ないが,azn=1az^n=1 を満たせないので臨界点はない。

陰関数で定まる曲面と高さ関数の臨界点の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 二元部分集合族の分類

方針

これは「互いに交わる辺集合」の分類である。星型族が標準例で,例外として K3K_3 の三角形がある。 n=4n=4 ではこの三角形がちょうど大きさ n−1n-1 になるため,全射性を壊す。

共通頂点をもたない場合

二つの辺が交わるとして,第三の辺がその交点を通らないなら,互いに交わるためには三角形を作るしかない。 この観察により,非星型の交わり族は三角形の三辺以内に閉じ込められる。

試験での注意

n=4n=4 の反例を見落としやすい。一般のErdos--Ko--Rado型の直感では「最大交わり族は星型」と言いたくなるが, 22 元部分集合では三角形が小さい次数で例外になる。

二元部分集合族の分類の途中式・最終答をPDFで見る

京大 基礎科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(このページ・全7問)

    広義積分の収束範囲 / 行列の階数 / 可換な行列全体の次元

  • 2025年度(全7問)

    回転対称な積分 / 三次行列の固有値 / 交換子と対角化可能行列

  • 2024年度(全7問)

    極座標による二重積分 / 三角型に近い行列の固有値と階数 / 核と像の直和分解

  • 2023年度(全6問)

    二次形式の球殻積分 / 二つの核の共通部分 / 可換な対角化可能写像

  • 2022年度(全6問)

    極座標で見る収束条件 / 四つのベクトルの一次独立性 / 有限アーベル群の部分群の数え上げ

  • 2020年度(全7問)

    第1八分球での単項式積分 / パラメータ付き三次行列の固有値 / 右逆写像からの直和分解