京都大学 院試 過去問 解答例
京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2022年度 院試 解答例・解説
京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 極座標で見る収束条件
方針
角度 付近で が小さくなるため,単に分母を 程度とみなすと誤る。 角度積分を先に正確に計算するのが安全である。
検算
の置換により角度方向の特異性が という因子にまとまる。 その結果,半径方向の実効次数は であり,条件は となる。
採点の置き所
半径方向だけを先に粗く評価すると, 付近の寄与を失う。 角度積分を まで厳密に計算することがこの問題の核心である。 最後は 型積分の条件として, が収束する条件を出す。
第2問 — 四つのベクトルの一次独立性
方針
基底ではないが一次独立な が与えられているので, 方向の係数だけを見ればよい。 四つの を列ベクトルとして並べ,(1) は行列式,(2) は行列式が消える特殊値での階数を計算する。
典型ミス
行列式が になる値で,生成次元がすべて同じとは限らない。 では階数がさらに落ちるため, と分けて確認する必要がある。
採点の置き所
が一次独立であるため,係数行列の列の一次独立性だけを調べればよい。 この還元を書かないと,元のベクトル空間の次元や基底性を余計に仮定した答案に見える。 で特殊値を拾い,その特殊値で階数を直接計算して生成次元に読み替える。
第3問 — 有限アーベル群の部分群の数え上げ
方針
有限アーベル群は素数ごとの成分に分けると数えやすい。 条件 も -部分と -部分で独立に判定できる。
検算
位数公式 を使うと,-部分では交わりが自明である必要があることが分かる。 この条件が,候補の位数4部分群をふるい分ける基準である。
採点の置き所
素因数分解により,-primary 部分と -primary 部分を独立に数える。 -部分は2次元ベクトル空間の1次元部分空間の数え上げであり, と異なる3本を選ぶ。 -部分では位数4部分群を具体的に列挙し, と交わらないものだけを残す。 最後に独立な選択なので積を取る。
第4問 — 積分で定まる凸関数の最小値
方針
連続性と無限遠での発散を示せば,最小値の存在は閉区間上の最大最小定理に帰着する。 絶対値の中身が複雑でも, と三角不等式で十分である。
試験でのポイント
具体的な最小点を求める必要はない。存在を示す問題なので,連続性と coercive 性を明確に書くことが重要である。
採点の置き所
連続性は絶対値関数の Lipschitz 性 からすぐ出る。無限遠での発散は という下からの評価で示す。 この二つが揃えば,十分大きな閉区間に最小化を制限し,閉区間上の連続関数の定理を使える。
第5問 — 留数計算型の実積分
方針
を分解し,既知のフーリエ積分をパラメータ微分する。 留数計算で公式を導いてもよいが,答案では標準公式からの微分が最短である。
検算
被積分関数は偶関数なので全体の積分が零になることはない。 分解後の二つの正の寄与の差として が残る。
採点の置き所
偶奇性の確認では, が偶関数であることを明記する。 標準公式をパラメータ で微分する場合,微分後の符号に注意する。 なので,左辺の微分と求める正の積分の間にマイナスが入る。
第6問 — 二つの制約で定まる多様体
方針
コンパクト性は球面の閉部分集合として示す。滑らかさは二つの制約関数の勾配が独立であることを確認し, 正則値定理を使う。
典型ミス
球面との交わりだから自動的に多様体,とは言えない。二つ目の制約と接する可能性を排除するため, 勾配の一次独立性を必ず確認する。
採点の置き所
コンパクト性は, が単位球面の閉部分集合であることから従う。 正則性では, と が従属と仮定し,各成分が または同じ定数 に限られることを導く。 そのうえで と が同時には満たせないことを示せば,正則値定理を適用できる。