京都大学 院試 過去問 解答例
京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2025年度 院試 解答例・解説
京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 回転対称な積分
方針
積分領域と内積の形が回転に関して不変なので, の向きを固定して大きさだけを残す。 この一手で二変数積分が単純な極座標積分になる。
典型ミス
分母に が現れるが,面積要素も であるため原点で特異性は残らない。 絶対値 を落とすと角度積分が誤るので,対称性で第1象限に直してから計算する。
採点の置き所
(1) では,任意の直交変換で領域,内積,ノルム,測度がすべて不変であることを一つずつ書くと満点答案になる。 (2) では, を に回転してよい根拠が (1) であることを明示する。 最後の角度積分は を使うと,端点で発散しないことも同時に確認できる。
第2問 — 三次行列の固有値
方針
まず特性多項式で固有値と代数的重複度を確定し,その後で階数により幾何的重複度を調べる。 重根がある固有値 だけは, の特殊値で固有空間の次元が変わる可能性がある。
検算
では零固有空間が明らかに2次元になる。一般の でも固有値は変わらないが, 固有空間の次元は変わり得る。この区別を書かないと答案として不十分である。
採点の置き所
この問題は,固有値の列挙だけでは半分程度で止まりやすい。重複固有値 について, を用いて と を分けるところが主要な得点源である。 固有値 についても階数が常に であることを一言で済ませず,消えない 次小行列式を確認する形にすると答案が安定する。
第3問 — 交換子と対角化可能行列
方針
対角化可能性は「固有値差で成分ごとに計算できる基底を取れる」という意味で使う。 交換子 は,対角基底では各成分に を掛ける操作になる。
試験でのポイント
は が と可換であることを意味する。これにより,固有値の異なる成分は では消える。 一方,固有値の等しい成分は最初から交換子で消えている。二つの場合を分ければ全成分が消える。
採点の置き所
対角化可能性を使う場所は, を対角行列にしてよい点である。相似変換で を置き換えても, 交換子 が零かどうかは保存されるので,基底を変えてから成分計算してよい。 と の二式を並べると,固有値が等しい場合と異なる場合の両方が自然に処理できる。
第4問 — 振動積分の収束範囲
方針
広義積分は特異点ごとに条件を出す。原点は の零点の次数,無限遠は振動による条件付き収束を見る。
典型ミス
無限遠で絶対収束だけを見ると としてしまうが,問題は通常の収束である。 正弦の振動により でも条件付き収束する。
採点の置き所
原点と無限遠を独立に調べ,最後に条件を交差させる構成にする。 原点側では から と書き,指数が より大きい条件を出す。 無限遠側では,Dirichlet判定法を使うために を有限個の正弦波の線形結合へ直すか, 有界な原始関数を持つ振動項であることを明示する。
第5問 — 対数を含む有理型積分
方針
を含む積分では,まず基本積分 に落とす。 の変換により と が分かれ,奇対称性に対応する置換 で の寄与が消える。
符号の確認
なので部分分数の係数は である。 の順番を逆にしないことが,符号を合わせるための要点である。
採点の置き所
を導入した後, の変換で まで分けて書くとよい。後半の積分が である理由は,置換 により自分自身の負になるからである。 この一行がないと,標準積分を丸暗記した答案に見えてしまう。
第6問 — 連結な閉集合と固定点
方針
縦切片が連結で,射影が区間全体であることを使う。分離があれば,各縦切片は一方の成分に丸ごと入るため, 射影側の区間 が分離されてしまう。
固定点部分の考え方
を区間 と見れば,求めることは となる点の存在である。 存在しないと仮定すると,グラフ全体が対角線の上側または下側に分かれ,端点 の事情から区間の分離が起こる。
採点の置き所
(1) は,射影 とファイバーの連結性を使う問題である。 が閉写像であることは, がコンパクトで がハウスドルフであることから従う,と書けば十分である。 (2) では, が開であることを列や閉性で確認する部分が省かれやすい。 ここを書かないと「二つに分かれる」という直感だけの答案になるため,部分列を取る議論を入れる。
第7問 — 円板上の多項式の最大最小
方針
閉円板上の連続関数なので最大値・最小値は存在する。候補は内部臨界点と境界臨界点に限られる。 境界では円周制約を入れてラグランジュ未定乗数法を使う。
検算
内部の最小候補 よりも,境界点 の値 の方が小さい。 境界の確認を省くと最小値を取り違える。
採点の置き所
閉円板上なので,候補点を有限個まで絞った後に値を比較する,という流れを明確にする。 内部では ,境界ではラグランジュ条件と を同時に解く。 境界計算で出た点のうち,制約を満たすものだけを残し,最後に表の形で値を比較すると取りこぼしを防げる。