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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・ラグランジュの未定乗数法)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底。

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収録6年度分の解答PDF:京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目(¥3,200・紙面見本あり)

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

京大 基礎科目 2025年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析回転対称な積分—あり
第2問線形代数三次行列の固有値—あり
第3問線形代数交換子と対角化可能行列—あり
第4問微分積分・解析振動積分の収束範囲—あり
第5問微分積分・解析対数を含む有理型積分符号の確認あり
第6問—連結な閉集合と固定点固定点部分の考え方あり
第7問—円板上の多項式の最大最小—あり

この年度の解説には採点の置き所7件・検算2件・典型ミス2件・試験でのポイント1件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に3テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 7問 → 2025年度 7問
2025年度で新しく出たテーマ
ラグランジュの未定乗数法
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第1問 — 回転対称な積分

方針

積分領域と内積の形が回転に関して不変なので,xx の向きを固定して大きさだけを残す。 この一手で二変数積分が単純な極座標積分になる。

典型ミス

分母に ρ\rho が現れるが,面積要素も ρ dρdθ\rho\,d\rho d\theta であるため原点で特異性は残らない。 絶対値 ∣cos⁡θ∣|\cos\theta| を落とすと角度積分が誤るので,対称性で第1象限に直してから計算する。

採点の置き所

(1) では,任意の直交変換で領域,内積,ノルム,測度がすべて不変であることを一つずつ書くと満点答案になる。 (2) では,xx を (r,0)(r,0) に回転してよい根拠が (1) であることを明示する。 最後の角度積分は 1+cos⁡θ=2cos⁡2θ2 1+\cos\theta=2\cos^2\frac{\theta}{2} を使うと,端点で発散しないことも同時に確認できる。

解答

(1) 任意の直交変換 QQ に対し,変数変換 y=Qηy=Q\eta を行うと,単位円板 BB は保たれ,面積要素も保たれる。 また (Qx)⋅(Qη)=x⋅η,∥Qx∥=∥x∥,∥Qη∥=∥η∥ (Qx)\cdot(Q\eta)=x\cdot\eta,\qquad \|Qx\|=\|x\|,\qquad \|Q\eta\|=\|\eta\| であるから f(Qx)=f(x) f(Qx)=f(x) が成り立つ。したがって f(x)f(x) は xx の向きには依存せず,∥x∥\|x\| のみに依存する。

(2) x≠0x\neq0 を固定し,r=∥x∥r=\|x\| とおく。(1) より直交変換で x=(r,0)x=(r,0) としてよい。 このとき極座標 y=ρ(cos⁡θ,sin⁡θ)y=\rho(\cos\theta,\sin\theta) を用いると ∣x⋅y∣+∥x∥∥y∥=rρ(1+∣cos⁡θ∣) |x\cdot y|+\|x\|\|y\|=r\rho(1+|\cos\theta|) である。したがって f(x)=∫01∫02πρ dθdρrρ(1+∣cos⁡θ∣)=1r∫02πdθ1+∣cos⁡θ∣. f(x)=\int_0^1\int_0^{2\pi} \frac{\rho\,d\theta d\rho}{r\rho(1+|\cos\theta|)} =\frac1r\int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{1+|\cos\theta|}. さらに対称性により ∫02πdθ1+∣cos⁡θ∣=4∫0π/2dθ1+cos⁡θ=4∫0π/212sec⁡2θ2 dθ=4. \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{1+|\cos\theta|} =4\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{1+\cos\theta} =4\int_0^{\pi/2}\frac12\sec^2\frac{\theta}{2}\,d\theta=4. よって f(x)=4∥x∥ f(x)=\frac4{\|x\|} である。

最終答

(1) f(x)f(x) は ∥x∥\|x\| のみに依存する。

(2) f(x)=4∥x∥. f(x)=\frac4{\|x\|}.

第2問 — 三次行列の固有値

方針

まず特性多項式で固有値と代数的重複度を確定し,その後で階数により幾何的重複度を調べる。 重根がある固有値 00 だけは,α\alpha の特殊値で固有空間の次元が変わる可能性がある。

検算

α=0\alpha=0 では零固有空間が明らかに2次元になる。一般の α\alpha でも固有値は変わらないが, 固有空間の次元は変わり得る。この区別を書かないと答案として不十分である。

採点の置き所

この問題は,固有値の列挙だけでは半分程度で止まりやすい。重複固有値 00 について, dim⁡E0=3−rank⁡A(α) \dim E_0=3-\operatorname{rank}A(\alpha) を用いて α=0\alpha=0 と α≠0\alpha\neq0 を分けるところが主要な得点源である。 固有値 11 についても階数が常に 22 であることを一言で済ませず,消えない 22 次小行列式を確認する形にすると答案が安定する。

三次行列の固有値の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 交換子と対角化可能行列

方針

対角化可能性は「固有値差で成分ごとに計算できる基底を取れる」という意味で使う。 交換子 AB−BAAB-BA は,対角基底では各成分に λi−λj\lambda_i-\lambda_j を掛ける操作になる。

試験でのポイント

AX=XAAX=XA は XX が AA と可換であることを意味する。これにより,固有値の異なる成分は XX では消える。 一方,固有値の等しい成分は最初から交換子で消えている。二つの場合を分ければ全成分が消える。

採点の置き所

対角化可能性を使う場所は,AA を対角行列にしてよい点である。相似変換で AA を置き換えても, 交換子 AB−BAAB-BA が零かどうかは保存されるので,基底を変えてから成分計算してよい。 xij=(λi−λj)bij x_{ij}=(\lambda_i-\lambda_j)b_{ij} と 0=(λi−λj)xij 0=(\lambda_i-\lambda_j)x_{ij} の二式を並べると,固有値が等しい場合と異なる場合の両方が自然に処理できる。

交換子と対角化可能行列の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 振動積分の収束範囲

方針

広義積分は特異点ごとに条件を出す。原点は sin⁡x\sin x の零点の次数,無限遠は振動による条件付き収束を見る。

典型ミス

無限遠で絶対収束だけを見ると α>1\alpha>1 としてしまうが,問題は通常の収束である。 正弦の振動により 0<α≤10<\alpha\leq1 でも条件付き収束する。

採点の置き所

原点と無限遠を独立に調べ,最後に条件を交差させる構成にする。 原点側では sin⁡x∼x\sin x\sim x から sin⁡5xxα∼x5−α \frac{\sin^5x}{x^\alpha}\sim x^{5-\alpha} と書き,指数が −1-1 より大きい条件を出す。 無限遠側では,Dirichlet判定法を使うために sin⁡5x\sin^5x を有限個の正弦波の線形結合へ直すか, 有界な原始関数を持つ振動項であることを明示する。

振動積分の収束範囲の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 対数を含む有理型積分

方針

log⁡x\log x を含む積分では,まず基本積分 I(c)I(c) に落とす。 x=ctx=ct の変換により log⁡c\log c と log⁡t\log t が分かれ,奇対称性に対応する置換 t↦1/tt\mapsto1/t で log⁡t\log t の寄与が消える。

符号の確認

a>ba>b なので部分分数の係数は 1/(a2−b2)1/(a^2-b^2) である。 I(b)−I(a)I(b)-I(a) の順番を逆にしないことが,符号を合わせるための要点である。

採点の置き所

I(c)I(c) を導入した後,x=ctx=ct の変換で I(c)=log⁡cc∫0∞dt1+t2+1c∫0∞log⁡t1+t2 dt I(c)=\frac{\log c}{c}\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2} +\frac1c\int_0^\infty\frac{\log t}{1+t^2}\,dt まで分けて書くとよい。後半の積分が 00 である理由は,置換 t=1/ut=1/u により自分自身の負になるからである。 この一行がないと,標準積分を丸暗記した答案に見えてしまう。

対数を含む有理型積分の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 連結な閉集合と固定点

方針

縦切片が連結で,射影が区間全体であることを使う。分離があれば,各縦切片は一方の成分に丸ごと入るため, 射影側の区間 [0,1][0,1] が分離されてしまう。

固定点部分の考え方

KxK_x を区間 [a(x),b(x)][a(x),b(x)] と見れば,求めることは a(x)≤x≤b(x)a(x)\leq x\leq b(x) となる点の存在である。 存在しないと仮定すると,グラフ全体が対角線の上側または下側に分かれ,端点 0,10,1 の事情から区間の分離が起こる。

採点の置き所

(1) は,射影 p(K)=[0,1]p(K)=[0,1] とファイバーの連結性を使う問題である。pp が閉写像であることは, KK がコンパクトで [0,1][0,1] がハウスドルフであることから従う,と書けば十分である。 (2) では,U,VU,V が開であることを列や閉性で確認する部分が省かれやすい。 ここを書かないと「二つに分かれる」という直感だけの答案になるため,部分列を取る議論を入れる。

連結な閉集合と固定点の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 円板上の多項式の最大最小

方針

閉円板上の連続関数なので最大値・最小値は存在する。候補は内部臨界点と境界臨界点に限られる。 境界では円周制約を入れてラグランジュ未定乗数法を使う。

検算

内部の最小候補 −1-1 よりも,境界点 (0,−2)(0,-\sqrt2) の値 −22/3-2\sqrt2/3 の方が小さい。 境界の確認を省くと最小値を取り違える。

採点の置き所

閉円板上なので,候補点を有限個まで絞った後に値を比較する,という流れを明確にする。 内部では fx=fy=0f_x=f_y=0,境界ではラグランジュ条件と x2+y2=2x^2+y^2=2 を同時に解く。 境界計算で出た点のうち,制約を満たすものだけを残し,最後に表の形で値を比較すると取りこぼしを防げる。

円板上の多項式の最大最小の途中式・最終答をPDFで見る

京大 基礎科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全7問)

    広義積分の収束範囲 / 行列の階数 / 可換な行列全体の次元

  • 2025年度(このページ・全7問)

    回転対称な積分 / 三次行列の固有値 / 交換子と対角化可能行列

  • 2024年度(全7問)

    極座標による二重積分 / 三角型に近い行列の固有値と階数 / 核と像の直和分解

  • 2023年度(全6問)

    二次形式の球殻積分 / 二つの核の共通部分 / 可換な対角化可能写像

  • 2022年度(全6問)

    極座標で見る収束条件 / 四つのベクトルの一次独立性 / 有限アーベル群の部分群の数え上げ

  • 2020年度(全7問)

    第1八分球での単項式積分 / パラメータ付き三次行列の固有値 / 右逆写像からの直和分解