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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは3件(線形空間・基底・固有値・固有ベクトル・重積分と極座標)。2023年度と共通のテーマは線形空間・基底・固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

京大 基礎科目 2024年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析極座標による二重積分—あり
第2問線形代数三角型に近い行列の固有値と階数—あり
第3問—核と像の直和分解条件 2m の役割あり
第4問微分積分・解析ガウス型に集中する振動関数微分可能性の使い方あり
第5問微分積分・解析偶奇性とフーリエ積分—あり
第6問—球面二つの和写像の臨界値—あり
第7問線形代数行列単位を作る基底—あり

この年度の解説には採点の置き所7件・検算3件・典型ミス2件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に3テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 7問
2023年度のページを見る

第1問 — 極座標による二重積分

方針

領域条件は x2+y2x^2+y^2 の二乗を含むため,極座標にすると上限が簡潔になる。 積分関数も xyxy と e1−r2e^{1-r^2} なので,角度と半径の処理がきれいに分かれる。

検算

領域は第1象限内で有界であり,被積分関数は非負である。答え e/4−3/4+1/ee/4-3/4+1/e は正の値なので,符号の面でも自然である。

採点の置き所

極座標に移った後,領域条件を r2≤1+sin⁡2θ r^2\leq 1+\sin^2\theta まで簡約する部分が主要な得点源である。rr の上限を誤ると以後の計算はすべてずれる。 半径積分では u=r2u=r^2 により r3 dr=(u/2) dur^3\,dr=(u/2)\,du になることを明示し, 最後の t=sin⁡2θt=\sin^2\theta では sin⁡θcos⁡θ dθ=dt/2\sin\theta\cos\theta\,d\theta=dt/2 を落とさない。

解答

極座標 x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta を用いる。第1象限なので 0≤θ≤π/20\leq\theta\leq\pi/2 であり, 領域条件は r4≤r2(cos⁡2θ+2sin⁡2θ)=r2(1+sin⁡2θ) r^4\leq r^2(\cos^2\theta+2\sin^2\theta) =r^2(1+\sin^2\theta) すなわち 0≤r≤1+sin⁡2θ 0\leq r\leq \sqrt{1+\sin^2\theta} である。したがって積分は ∫0π/2∫01+sin⁡2θr3cos⁡θsin⁡θ e1−r2 drdθ \int_0^{\pi/2}\int_0^{\sqrt{1+\sin^2\theta}} r^3\cos\theta\sin\theta\, e^{1-r^2}\,drd\theta となる。

u=r2u=r^2 とおくと ∫01+sin⁡2θr3e1−r2 dr=e2∫01+sin⁡2θue−u du=e2{1−(2+sin⁡2θ)e−1−sin⁡2θ}. \int_0^{\sqrt{1+\sin^2\theta}}r^3e^{1-r^2}\,dr =\frac e2\int_0^{1+\sin^2\theta}ue^{-u}\,du =\frac e2\{1-(2+\sin^2\theta)e^{-1-\sin^2\theta}\}. さらに t=sin⁡2θt=\sin^2\theta とおけば dt=2sin⁡θcos⁡θ dθdt=2\sin\theta\cos\theta\,d\theta であるから,求める値は e4∫01{1−(2+t)e−1−t} dt=e4{1−e−1∫01(2+t)e−t dt}. \frac e4\int_0^1\{1-(2+t)e^{-1-t}\}\,dt =\frac e4\left\{1-e^{-1}\int_0^1(2+t)e^{-t}\,dt\right\}. ∫01(2+t)e−t dt=3−4e \int_0^1(2+t)e^{-t}\,dt=3-\frac4e より e4−34+1e \boxed{\frac e4-\frac34+\frac1e} である。

最終答

e/4−3/4+1/e\displaystyle e/4-3/4+1/e

第2問 — 三角型に近い行列の固有値と階数

方針

第1行がほぼ分離しているので,特性多項式を一気に展開せず,11 次因子と 22 次因子に分けて読む。 階数は行列式で正則な場合を除き,特殊値だけを直接調べればよい。

典型ミス

a=0a=0 と a=1a=1 はどちらも行列式が消えるが,階数の落ち方は同じではない。 行列式だけでは階数 11 か 22 かは決まらないので,特殊値代入が必要である。

採点の置き所

固有値は行列の形を見て 11 次因子を先に取り出すと計算量が減る。 階数については,a≠0,1a\neq0,1 で正則,a=0,1a=0,1 で直接代入,という三分岐を答案に残す。 特に a=1a=1 では非零行がすべて同一直線上に乗ることまで確認すると,階数 11 の根拠が明確になる。

三角型に近い行列の固有値と階数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 核と像の直和分解

方針

直和分解では,共通部分が零であることと次元が足りることを示すのが最短である。 仮定 fn=fmf^n=f^m は,共通部分の元 v=fmuv=f^m u に対して v=fn−mvv=f^{n-m}v と戻せる点で効く。

条件 n≥2mn\geq2m の役割

fn−2mf^{n-2m} を使うために必要である。この条件がないと,fn−mv=fn−2mfmvf^{n-m}v=f^{n-2m}f^m v という形で fmv=0f^m v=0 を利用できない。

採点の置き所

直和分解を示すときは,和が全体であることを直接構成するよりも,有限次元であることを使って dim⁡ker⁡fm+dim⁡Im⁡fm=dim⁡V \dim\ker f^m+\dim\operatorname{Im}f^m=\dim V とするのが短い。したがって,共通部分が零である証明が答案の中心になる。 v=fmuv=f^m u と fmv=0f^m v=0 の二つの情報を同時に使い,v=fn−mv=0v=f^{n-m}v=0 と戻す流れを丁寧に書く。

核と像の直和分解の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ガウス型に集中する振動関数

方針

ρr\rho_r は原点付近に集中する偶関数である。(1) では ∣sin⁡u∣≤u|\sin u|\leq u でガウス関数に支配させ, (2) では原点近傍と外側に分ける。外側では単に上限を定数で抑えるのではなく, ∫∣x∣≥δre−r2x2 dx\int_{|x|\ge\delta}r e^{-r^2x^2}\,dx の尾部そのものが 00 に行くことを書く必要がある。

微分可能性の使い方

(3) では f(x)=f′(0)x+o(x)f(x)=f'(0)x+o(x) と分解し,奇関数部分が偶関数との積で消えることを使う。 この対称性を書かずに絶対値だけで評価すると,rr 倍後の極限を十分に小さくできない。

採点の置き所

(1) の支配関数は rr に依存してよい。固定した rr ごとの絶対収束を示す場面だからである。 (2) では,原点近傍の長さを先に小さくし,外側を r→∞r\to\infty で消す二段階評価にする。 (3) は rr 倍が付くため,f′(0)xf'(0)x の寄与が奇関数性で厳密に消えることが決定的である。

ガウス型に集中する振動関数の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 偶奇性とフーリエ積分

方針

(x+1)/x=1+1/x(x+1)/x=1+1/x と分けると,1/x1/x を含む項は奇関数になる。 残った偶関数積分は,Poisson核型のフーリエ積分公式でただちに計算できる。

検算

cos⁡x−1≤0\cos x-1\leq0 なので積分値は負である。答えも e−a−1<0e^{-a}-1<0 であり,符号が合っている。

採点の置き所

原点近傍では cos⁡x−1=O(x2)\cos x-1=O(x^2) なので,1/x1/x を含む項も可積分である。 この確認を入れると,奇関数だから全体積分が 00 と言う部分が正当化される。 標準公式を使う場合も,a>0a>0 に対して ∫−∞∞cos⁡xx2+a2 dx=πae−a \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos x}{x^2+a^2}\,dx=\frac{\pi}{a}e^{-a} を明記し,11 の項との差として処理する。

偶奇性とフーリエ積分の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 球面二つの和写像の臨界値

方針

微分の像は二つの接平面の和である。二つの法線方向 x,yx,y が異なれば接平面の和は3次元, 法線が同じ方向なら2次元に落ちる。

典型ミス

値 00 は半径2の球面には含まれないが,y=−xy=-x の全点で臨界値として現れる。 同方向と反対方向の二つを両方拾う必要がある。

採点の置き所

臨界点の判定では,接空間の次元は 44,目標空間は R3\mathbf{R}^3 であることを意識する。 微分の像が x⊥+y⊥x^\perp+y^\perp になると書ければ,あとは二つの平面の和の次元の問題である。 x,yx,y が平行でないとき和が3次元,平行なとき2次元,という幾何の説明を入れると計算なしで判定できる。

球面二つの和写像の臨界値の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 行列単位を作る基底

方針

対角行列 AA の冪は行ごとに異なる重みを掛ける。巡回シフト BB の冪で非零成分の位置を巡回対角線ごとに分け, 最後に Vandermonde 行列で各成分を分離する。

検算

集合の元は n2n^2 個で,Mn(C)M_n(\mathbf{C}) の次元も n2n^2 である。 全行列単位を張ることが分かれば,自動的に一次独立性も従う。

採点の置き所

この構成では,BB の冪が「位置」を分け,AA の冪が「同じ位置列の中の成分」を分離する。 固定した jj ごとに現れる nn 個の重みが 1,λ,λ2,…,λn−1 1,\lambda,\lambda^2,\ldots,\lambda^{n-1} であり,λ=1,…,n\lambda=1,\ldots,n が相異なるため Vandermonde 行列が正則になる,という一文が核心である。 最後に j=0,…,n−1j=0,\ldots,n-1 が全成分を重複なく覆うことを確認する。

行列単位を作る基底の途中式・最終答をPDFで見る

京大 基礎科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全7問)

    広義積分の収束範囲 / 行列の階数 / 可換な行列全体の次元

  • 2025年度(全7問)

    回転対称な積分 / 三次行列の固有値 / 交換子と対角化可能行列

  • 2024年度(このページ・全7問)

    極座標による二重積分 / 三角型に近い行列の固有値と階数 / 核と像の直和分解

  • 2023年度(全6問)

    二次形式の球殻積分 / 二つの核の共通部分 / 可換な対角化可能写像

  • 2022年度(全6問)

    極座標で見る収束条件 / 四つのベクトルの一次独立性 / 有限アーベル群の部分群の数え上げ

  • 2020年度(全7問)

    第1八分球での単項式積分 / パラメータ付き三次行列の固有値 / 右逆写像からの直和分解