京都大学 院試 過去問 解答例
京大 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2024年度 院試 解答例・解説
京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 基礎科目 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 極座標による二重積分
方針
領域条件は の二乗を含むため,極座標にすると上限が簡潔になる。 積分関数も と なので,角度と半径の処理がきれいに分かれる。
検算
領域は第1象限内で有界であり,被積分関数は非負である。答え は正の値なので,符号の面でも自然である。
採点の置き所
極座標に移った後,領域条件を まで簡約する部分が主要な得点源である。 の上限を誤ると以後の計算はすべてずれる。 半径積分では により になることを明示し, 最後の では を落とさない。
第2問 — 三角型に近い行列の固有値と階数
方針
第1行がほぼ分離しているので,特性多項式を一気に展開せず, 次因子と 次因子に分けて読む。 階数は行列式で正則な場合を除き,特殊値だけを直接調べればよい。
典型ミス
と はどちらも行列式が消えるが,階数の落ち方は同じではない。 行列式だけでは階数 か かは決まらないので,特殊値代入が必要である。
採点の置き所
固有値は行列の形を見て 次因子を先に取り出すと計算量が減る。 階数については, で正則, で直接代入,という三分岐を答案に残す。 特に では非零行がすべて同一直線上に乗ることまで確認すると,階数 の根拠が明確になる。
第3問 — 核と像の直和分解
方針
直和分解では,共通部分が零であることと次元が足りることを示すのが最短である。 仮定 は,共通部分の元 に対して と戻せる点で効く。
条件 の役割
を使うために必要である。この条件がないと, という形で を利用できない。
採点の置き所
直和分解を示すときは,和が全体であることを直接構成するよりも,有限次元であることを使って とするのが短い。したがって,共通部分が零である証明が答案の中心になる。 と の二つの情報を同時に使い, と戻す流れを丁寧に書く。
第4問 — ガウス型に集中する振動関数
方針
は原点付近に集中する偶関数である。(1) では でガウス関数に支配させ, (2) では原点近傍と外側に分ける。外側では単に上限を定数で抑えるのではなく, の尾部そのものが に行くことを書く必要がある。
微分可能性の使い方
(3) では と分解し,奇関数部分が偶関数との積で消えることを使う。 この対称性を書かずに絶対値だけで評価すると, 倍後の極限を十分に小さくできない。
採点の置き所
(1) の支配関数は に依存してよい。固定した ごとの絶対収束を示す場面だからである。 (2) では,原点近傍の長さを先に小さくし,外側を で消す二段階評価にする。 (3) は 倍が付くため, の寄与が奇関数性で厳密に消えることが決定的である。
第5問 — 偶奇性とフーリエ積分
方針
と分けると, を含む項は奇関数になる。 残った偶関数積分は,Poisson核型のフーリエ積分公式でただちに計算できる。
検算
なので積分値は負である。答えも であり,符号が合っている。
採点の置き所
原点近傍では なので, を含む項も可積分である。 この確認を入れると,奇関数だから全体積分が と言う部分が正当化される。 標準公式を使う場合も, に対して を明記し, の項との差として処理する。
第6問 — 球面二つの和写像の臨界値
方針
微分の像は二つの接平面の和である。二つの法線方向 が異なれば接平面の和は3次元, 法線が同じ方向なら2次元に落ちる。
典型ミス
値 は半径2の球面には含まれないが, の全点で臨界値として現れる。 同方向と反対方向の二つを両方拾う必要がある。
採点の置き所
臨界点の判定では,接空間の次元は ,目標空間は であることを意識する。 微分の像が になると書ければ,あとは二つの平面の和の次元の問題である。 が平行でないとき和が3次元,平行なとき2次元,という幾何の説明を入れると計算なしで判定できる。
第7問 — 行列単位を作る基底
方針
対角行列 の冪は行ごとに異なる重みを掛ける。巡回シフト の冪で非零成分の位置を巡回対角線ごとに分け, 最後に Vandermonde 行列で各成分を分離する。
検算
集合の元は 個で, の次元も である。 全行列単位を張ることが分かれば,自動的に一次独立性も従う。
採点の置き所
この構成では, の冪が「位置」を分け, の冪が「同じ位置列の中の成分」を分離する。 固定した ごとに現れる 個の重みが であり, が相異なるため Vandermonde 行列が正則になる,という一文が核心である。 最後に が全成分を重複なく覆うことを確認する。