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筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 物理 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・フーリエ変換)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・フーリエ変換。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

筑波大 物理 2026年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—物理数学線積分の検算 / デルタ関数の扱いあり
第2問力学—中心力と対称性 / 円錐上の運動の見方あり
第3問量子力学—ガウス波束の期待値 / スピン合成の覚え方あり
第4問電磁気学・回路電磁気学ガウスの法則の検算 / 誘電体挿入時の容量あり
第5問熱・統計力学熱統計力学熱容量の微分条件 / カノニカル分布での鎖の扱いあり

この年度の解説には典型ミス1件が付いています。

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に6テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 5問 → 2026年度 5問
2026年度で新しく出たテーマ
フェルミ・ボース統計
2025年度のページを見る

第1問 — 物理数学

方針

第I問は短答型であるが、計算過程を少し残しておくと検算しやすい。特に行列の逆行列、線積分、デルタ関数を含む境界値問題は、符号を一つ間違えるだけで答が変わる。

線積分の検算

問3は Stokes の定理でも確認できる。 (∇×F)z=∂x2∂x−∂(−y)∂y=2x+1. (\nabla\times\boldsymbol{F})_z =\frac{\partial x^2}{\partial x}-\frac{\partial(-y)}{\partial y} =2x+1. 円板上で ∬2x dS=0\iint 2x\,dS=0 なので、面積分は ∬1 dS=πR2\iint 1\,dS=\pi R^2 となる。反時計回りという向きは、法線を +z+z 方向に取ることに対応している。

デルタ関数の扱い

問9では δ(x)\delta(x) の係数を微分のジャンプ条件に変換するのが最も安全である。 12∫−ϵϵϕ′′(x) dx=−∫−ϵϵδ(x) dx \frac12\int_{-\epsilon}^{\epsilon}\phi''(x)\,dx=-\int_{-\epsilon}^{\epsilon}\delta(x)\,dx から ϕ′(0+)−ϕ′(0−)=−2\phi'(0+)-\phi'(0-)=-2 を得る。ここで符号を逆にすると、境界条件を満たしても下に尖った関数になり、方程式と合わない。

試験で書くべき点

問7はフーリエ変換の規約により 2π2\pi 因子が変わる。答案では最初に用いる定義を書いてから計算すること。問10は Euler--Lagrange 方程式だけでなく、「被積分関数が y′y' について凸なので極小である」または「最大値は存在しない」と一言添えると、極大・極小の区別が明確になる。

解答

小問は5問選択であるが、確認用に10問すべてを解く。

  1. A=(1−2002−1100) A= \begin{pmatrix} 1&-2&0\\ 0&2&-1\\ 1&0&0 \end{pmatrix} とおく。列ごとに Ax=ejA\boldsymbol{x}=\boldsymbol{e}_j を解くと A−1=(001−12012−1−11). A^{-1}= \begin{pmatrix} 0&0&1\\ -\frac12&0&\frac12\\ -1&-1&1 \end{pmatrix}.
  2. B=(0i−i0) B=\begin{pmatrix}0&i\\ -i&0\end{pmatrix} に対して det⁡(B−λI)=det⁡(−λi−i−λ)=λ2−1 \det(B-\lambda I)= \det\begin{pmatrix}-\lambda&i\\ -i&-\lambda\end{pmatrix} =\lambda^2-1 であるから、固有値は λ=±1\lambda=\pm 1 である。対応する単位固有ベクトルの一例は λ=1:12(1−i),λ=−1:12(1i). \lambda=1:\quad \frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\ -i\end{pmatrix}, \qquad \lambda=-1:\quad \frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\ i\end{pmatrix}.
  3. 円周を r(t)=(Rcos⁡t,Rsin⁡t,0),0≤t≤2π \boldsymbol{r}(t)=(R\cos t,R\sin t,0),\qquad 0\le t\le 2\pi とおくと、dr=(−Rsin⁡t,Rcos⁡t,0) dtd\boldsymbol{r}=(-R\sin t,R\cos t,0)\,dt である。したがって F⋅dr=(−Rsin⁡t)(−Rsin⁡t) dt+(R2cos⁡2t)(Rcos⁡t) dt. \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r} =(-R\sin t)(-R\sin t)\,dt +(R^2\cos^2 t)(R\cos t)\,dt . よって ∮CF⋅dr=R2∫02πsin⁡2t dt+R3∫02πcos⁡3t dt=πR2. \oint_C\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r} =R^2\int_0^{2\pi}\sin^2t\,dt +R^3\int_0^{2\pi}\cos^3t\,dt =\pi R^2 .
  4. r≠0r\ne0 で ∇⋅(rr2)=∂∂x(xr2)+∂∂y(yr2)+∂∂z(zr2). \nabla\cdot\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r^2}\right) =\frac{\partial}{\partial x}\left(\frac{x}{r^2}\right) +\frac{\partial}{\partial y}\left(\frac{y}{r^2}\right) +\frac{\partial}{\partial z}\left(\frac{z}{r^2}\right). ∇(r−2)=−2r/r4\nabla(r^{-2})=-2\boldsymbol{r}/r^4 を用いれば ∇⋅(rr2)=3r2+r⋅(−2rr4)=1r2. \nabla\cdot\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r^2}\right) =\frac{3}{r^2}+\boldsymbol{r}\cdot\left(-\frac{2\boldsymbol{r}}{r^4}\right) =\frac{1}{r^2}.
  5. 線形方程式 y′+2y=5e3xy'+2y=5e^{3x} に対して、特殊解を yp=Ae3xy_p=Ae^{3x} とおくと 5Ae3x=5e3x5Ae^{3x}=5e^{3x} なので A=1A=1 である。斉次解は Ce−2xCe^{-2x} だから y=e3x+Ce−2x. y=e^{3x}+Ce^{-2x}.
  6. 特性方程式は α2−6α+9=(α−3)2=0. \alpha^2-6\alpha+9=(\alpha-3)^2=0. 重解 α=3\alpha=3 をもつので y=(C1+C2x)e3x. y=(C_1+C_2x)e^{3x}.
  7. ここではフーリエ変換を f^(k)=∫−∞∞f(x)e−ikx dx \hat f(k)=\int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-ikx}\,dx で定義する。このとき f^(k)=∫−11e−ikx dx={2sin⁡kk,k≠0,2,k=0. \hat f(k)=\int_{-1}^{1}e^{-ikx}\,dx = \begin{cases} \displaystyle \frac{2\sin k}{k},& k\ne0,\\[4pt] 2,& k=0. \end{cases}
  8. 標準積分 ∫−∞∞eixx2+1 dx=πe−1 \int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{ix}}{x^2+1}\,dx=\pi e^{-1} の実部をとると ∫−∞∞cos⁡xx2+1 dx=πe. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos x}{x^2+1}\,dx=\frac{\pi}{e}.
  9. x≠0x\ne0 では ϕ′′=0\phi''=0 なので ϕ\phi は左右で一次関数である。境界条件を先に入れて ϕ(x)={A(x+1),−1≤x≤0,B(1−x),0≤x≤1 \phi(x)= \begin{cases} A(x+1),& -1\le x\le0,\\ B(1-x),& 0\le x\le1 \end{cases} とおく。連続性から A=BA=B。また、方程式を x=0x=0 の近くで積分すると 12{ϕ′(0+)−ϕ′(0−)}=−1 \frac12\{\phi'(0+)-\phi'(0-)\}=-1 すなわち ϕ′(0+)−ϕ′(0−)=−2\phi'(0+)-\phi'(0-)=-2 である。A=BA=B と合わせて A=B=1A=B=1 となるので ϕ(x)=1−∣x∣. \phi(x)=1-|x|.
  10. 汎関数 J[y]=∫01{1+(y′)2} dx J[y]=\int_0^1\{1+(y')^2\}\,dx の被積分関数を L=1+(y′)2L=1+(y')^2 とする。Euler--Lagrange 方程式は ddx∂L∂y′−∂L∂y=0⟹ddx(2y′)=0 \frac{d}{dx}\frac{\partial L}{\partial y'}-\frac{\partial L}{\partial y}=0 \quad\Longrightarrow\quad \frac{d}{dx}(2y')=0 であり、y′′=0y''=0。したがって y=C1x+C0y=C_1x+C_0 で、境界条件から y(x)=2x+1. y(x)=2x+1. この関数は極小を与える。なお、滑らかな関数全体では J[y]J[y] を任意に大きくできるため、最大値は存在しない。

最終答

  1. A−1=(001−12012−1−11)\displaystyle A^{-1}= \begin{pmatrix} 0&0&1\\ -\frac12&0&\frac12\\ -1&-1&1 \end{pmatrix}。
  2. 固有値は 1,−11,-1。単位固有ベクトルの一例は λ=1\lambda=1 に対して 12(1,−i)T\frac1{\sqrt2}(1,-i)^{\mathsf T}、 λ=−1\lambda=-1 に対して 12(1,i)T\frac1{\sqrt2}(1,i)^{\mathsf T}。
  3. ∮CF⋅dr=πR2\displaystyle \oint_C\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}=\pi R^2。
  4. ∇⋅(r/r2)=1/r2(r≠0)\displaystyle \nabla\cdot(\boldsymbol{r}/r^2)=1/r^2\quad(r\ne0)。
  5. y=e3x+Ce−2x\displaystyle y=e^{3x}+Ce^{-2x}。
  6. y=(C1+C2x)e3x\displaystyle y=(C_1+C_2x)e^{3x}。
  7. f^(k)=2sin⁡k/k\displaystyle \hat f(k)=2\sin k/k、ただし k=0k=0 では 22。
  8. π/e\displaystyle \pi/e。
  9. ϕ(x)=1−∣x∣\displaystyle \phi(x)=1-|x|。
  10. y(x)=2x+1\displaystyle y(x)=2x+1 が極小を与え、最大値は存在しない。

第2問 — 力学

中心力と対称性

角運動量保存の本質は、トルク r×F\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{F} が消えることである。球対称なら任意の点で力が中心方向を向く。回転楕円体では一般の点で力は中心方向とは限らないが、赤道面上では反射対称性と回転対称性により面内動径方向になるため、非自明な保存軌道を作れる。なお、三軸不等楕円体でも主軸上を直線的に落下するような L=0L=0 の軌道を広く「保存」と呼べば例外的に保存するが、入試で問われる中心力・回転対称性の文脈では球と回転楕円体を選ぶのが自然である。

円錐上の運動の見方

この問題は、束縛条件により θ\theta が定数に固定された球座標運動である。したがって v2=R˙2+R2sin⁡2θ ϕ˙2 v^2=\dot R^2+R^2\sin^2\theta\,\dot\phi^2 をすぐ使える。RR は水平距離ではなく、円錐の頂点から質点までの実距離である点に注意する。水平半径は Rsin⁡θR\sin\theta、高さは Rcos⁡θR\cos\theta である。

有効ポテンシャルの形

遠心項は R→0R\to0 で壁を作り、重力項は R→∞R\to\infty で上昇する。そのため ℓz≠0\ell_z\ne0 の軌道は RR 方向に束縛される。答案では、グラフだけでなく「U(R)≤EU(R)\le E が運動可能条件」と明記することが重要である。

典型ミス

ℓz=mR2ϕ˙\ell_z=mR^2\dot\phi として sin⁡2θ\sin^2\theta を落とすミスが多い。角運動量に入る半径は水平半径 Rsin⁡θR\sin\theta なので、必ず m(Rsin⁡θ)2ϕ˙m(R\sin\theta)^2\dot\phi になる。また、重力ポテンシャルの符号は zz 軸上向きを正に取っているため +mgRcos⁡θ+mgR\cos\theta である。

力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学

ガウス波束の期待値

規格化では ∣ψ∣2=N2e−ax2|\psi|^2=N^2e^{-ax^2} になるため、指数の係数が aa であることを確認する。⟨x⟩\langle x\rangle と ⟨p⟩\langle p\rangle はどちらも奇関数の積分としてゼロになる。⟨p⟩\langle p\rangle については、微分した後に x∣ψ∣2x|\psi|^2 が現れることを書けば十分である。

スピン合成の覚え方

2電子のスピン状態は交換に対して対称な三重項と反対称な一重項に分かれる。S=1S=1 の3状態は mS=1,0,−1m_S=1,0,-1 に対応し、S=0S=0 は mS=0m_S=0 の反対称結合である。係数は必ず 1/21/\sqrt2 であり、1/21/2 と書かないこと。

束縛状態の条件

井戸の左端が無限壁なので、領域 I の波動関数は cos⁡\cos 成分を持たず sin⁡\sin だけになる。有限井戸の両側が開いている問題と比べると、偶奇の分類ではなく x=0x=0 の境界条件が直接効く。束縛状態の出現条件は、E=0E=0 に近づく極限で最初の枝が k0a=π/2k_0a=\pi/2 を越えるかどうかで決まる。

位相シフトの低エネルギー極限

問4の式を得たあと、すぐ k=0k=0 を代入してはいけない。tan⁡(ka)\tan(ka) も tan⁡δ\tan\delta も O(k)O(k) なので、kk の一次まで展開する必要がある。最終的な a−tan⁡(k0a)k0 a-\frac{\tan(k_0a)}{k_0} は1次元の散乱長に相当し、長さの次元を持つことでも検算できる。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 電磁気学

ガウスの法則の検算

一様に帯電した円柱では、内側の包有電荷が ρ2\rho^2 に比例するため、電場は内側で ρ\rho に比例する。外側では全線電荷 λ\lambda だけが効くので 1/ρ1/\rho に比例する。ρ=a\rho=a で両式が λ2πε0a \frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0a} に一致することも確認できる。

誘電体挿入時の容量

誘電体が入った部分と入っていない部分は、電場方向ではなく面積方向に分かれているので並列である。一方、挿入部分の内部では真空層と誘電体層が電場方向に重なっているため直列である。この「並列」と「直列」の区別を逆にすると容量が大きくずれる。電池接続下の力は F=12V2dCdℓ F=\frac12V^2\frac{dC}{d\ell} で求める。電荷一定の場合とはエネルギーの扱いが異なる点に注意する。

Drude と London の違い

Drude 模型では衝突項 −mvˉ/τ-m\bar{\boldsymbol{v}}/\tau が定常速度を作り、j∝E\boldsymbol{j}\propto\boldsymbol{E} というオームの法則になる。散乱がない場合は速度が電場で加速され続けるため、比例するのは電流そのものではなく時間微分 ∂j/∂t\partial\boldsymbol{j}/\partial t である。

磁場侵入長

半無限超伝導体の表面に垂直な座標を xx とし、磁場が表面に平行な一成分だけを持つ場合、問4の式は d2Bdx2=BλL2 \frac{d^2B}{dx^2}=\frac{B}{\lambda_L^2} となる。内部で有限な解は B(x)=B(0)e−x/λL B(x)=B(0)e^{-x/\lambda_L} である。したがって λL\lambda_L は磁場がどの程度内部に入り込めるかを表す長さであり、次元も長さになっている。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 熱統計力学

熱容量の微分条件

CVC_V では体積を固定して温度微分する。したがって U=χT−aVU=\chi T-aV の −aV-aV は温度微分で消える。分配関数から求める場合は U=−∂βln⁡Z U=-\partial_\beta\ln Z を使う。Z∝TN∝β−NZ\propto T^N\propto\beta^{-N} なら、比例定数に何が含まれていても CV=NkBC_V=Nk_B は変わらない。

カノニカル分布での鎖の扱い

この模型では要素間相互作用がなく、エネルギーが各要素の寄与の和になっている。そのため全分配関数は1要素分配関数の NN 乗である。まず1要素の状態とボルツマン重みを表にしてから NN 乗するのが最もミスが少ない。

電場が強い極限の検算

1次元鎖で b=βqEa→∞b=\beta qEa\to\infty とすると、すべての要素が +x+x 方向を向き、 ⟨X⟩→Na,⟨H⟩→−NqEa \langle X\rangle\to Na,\qquad \langle H\rangle\to -NqEa となる。b→0b\to0 では tanh⁡b→0\tanh b\to0 なので ⟨X⟩→0\langle X\rangle\to0 であり、左右が等確率になる極限と一致する。

2次元鎖の分散

2次元の場合、電場は xx 方向にしか作用しないため、+y+y と −y-y は常に同じ重みを持つ。そのため ⟨Y⟩=0\langle Y\rangle=0 である。一方、強い電場では +x+x 方向が選ばれやすくなり、yy 方向を向く確率が減るので Na21+cosh⁡b→0 \frac{Na^2}{1+\cosh b}\to0 となる。この極限は分散の符号・分母の検算に使える。

熱統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

筑波大 物理 院試 過去問の収録3年度