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筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 物理 2024年度 院試 解答例・解説

筑波大学 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 物理 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理数学

方針

問1、2、5、8、9、10は標準公式をそのまま使えるが、答案では「どの条件でその公式が使えるか」を一行添えると強い。問3、4は互いに関連しており、問3の sinc 関数の積分を問4のデルタ列として使う。

問2の直交性

有限区間の正弦基底は、端点 m=0,N+1m=0,N+1 で消える離散ラプラシアンの固有ベクトルである。異なる固有値に属する固有ベクトルが直交する、という見方をすると、余弦和を最後まで計算しなくても結果を説明できる。ただし試験答案では、少なくとも n=nn=n' の規格化係数 (N+1)/2(N+1)/2 を明示すること。

問3の符号

経路が原点を下側によけるため、e2iz/z2e^{2iz}/z^2 は上半平面で閉じたときに原点の極を含む。一方 e2iz/z2e^{-2iz}/z^2 は下半平面で閉じると原点を含まない。ここを逆にすると答えの符号が崩れる。2/z22/z^2 の項は留数がないだけでなく、小円弧を含めた経路積分としてゼロであることを確認しておくと安全である。

問4の検算

Kt(x)=sin2(tx)tx2 K_t(x)=\frac{\sin^2(tx)}{t x^2} は幅が 1/t1/t、面積が π\pi の山になる。したがって極限は πδ(x)\pi\delta(x) と同じ働きをし、結果が πf(0)\pi f(0) になる。f()=0f(\infty)=0 は遠方で余計な寄与が残らないための条件である。

典型ミス

×(×A)\nabla\times(\nabla\times\vec A) の符号を逆に書くミスが多い。成分表示で ϵijkϵklm=δilδjmδimδjl\epsilon_{ijk}\epsilon_{klm}=\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl} を一度書けば防げる。球座標の勾配では、θ\theta 成分に 1/r1/rϕ\phi 成分に 1/(rsinθ)1/(r\sin\theta) が付く理由を、線素 drd\vec r から説明するのが最も確実である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 力学

方針

[A] は保存則と慣性モーメントの基礎事項である。[B] は「エネルギー保存」「円運動の拘束」「拘束力が消える条件」を組み合わせる問題で、未定乗数 λ\lambda が垂直抗力に対応していることを見抜くのが核心である。

平行軸と垂直軸

平行軸の定理では、加わる項は必ず全質量 MM と軸間距離の二乗 2 \ell^2 の積である。円板の面内軸まわりの慣性モーメントでは、円板の対称性により Ix=IyI_x=I_y とする一行が必要である。

中心力の保存則

角運動量保存は「力が中心向きなのでトルクがゼロ」という内容である。答案では r˙×p=0\dot{\vec r}\times\vec p=0 も明示すること。ここを省くと、r×p˙\vec r\times\dot{\vec p} だけを見た不完全な証明になりやすい。

離脱条件の意味

λ=0\lambda=0 は、輪が質点を押す垂直抗力がゼロになることを表す。値 y=2a3 y=\frac{2a}{3} は頂点 y=ay=a より低く、最下点より高いので物理的に妥当である。もし y=a/3y=a/3 や負の値が出た場合は、エネルギー式または拘束条件の2階微分の符号を疑うとよい。

典型ミス

未定乗数付きラグランジアンで、[mgy]/y=mg\partial[-mgy]/\partial y=-mg の符号を落とすと問4の λ\lambda が誤る。また、離脱時に速度をゼロと置いてはいけない。ゼロになるのは輪から受ける垂直抗力であり、速度ではない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 量子力学

方針

[A] は線形代数、波束、エネルギーと運動量の誤差伝播である。[B] はパウリ行列の指数関数とスピンの歳差運動で、状態ベクトルそのものよりも「全体位相は期待値に影響しない」という点を意識すると計算が短くなる。

反エルミート行列

エルミート行列の固有値が実数であることと対になる事実である。A=AA^\dagger=-A なら期待値 vAv\vec v^\dagger A\vec v は純虚数になる。固有値の証明では、固有ベクトルのノルム vv\vec v^\dagger\vec v が正であることを書いて割るのが大切である。

波束の運動量

ガウス包絡から出る x/a2-x/a^2 の項は奇関数として消える。残るのは平面波因子 eikxe^{ikx} の波数 kk による k\hbar k である。正規化定数を細かく計算しなくても、奇偶性と規格化だけで期待値は求まる。

不確定性の見積もり

E=p2/(2m)E=p^2/(2m) から ΔE=(p/m)Δp\Delta E=(p/m)\Delta p とするのは、揺らぎが平均値に比べて十分小さいときの一次近似である。ここでは ΔE/E=104\Delta E/E=10^{-4} なので妥当である。最後の Δx\Delta x は等号ではなく下限であり、「少なくともこの程度」と読む。

スピン時間発展の検算

zz 軸磁場で x-x 方向のスピンが半周期だけ回って +x+x 方向になるため、問5で Sx=+/2\langle S_x\rangle=+\hbar/2 となる。さらに yy 軸まわりに半回転させると初期方向へ戻るため、問6の期待値は初期状態と同じになる。ただし状態ベクトルには全体位相 ii が残るので、重なりは 11 ではなく i-i である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 電磁気学

方針

[A] はガウスの法則とアンペールの法則から、内側と外側の rr 依存性を判定する問題である。選択肢を見比べる前に、まず r<Rr<Rr>Rr>R の式を出すと迷いにくい。[B] は電磁誘導によるエネルギー散逸を、減衰振動の運動方程式に読み替える問題である。

グラフ選択の根拠

一様帯電球の内部電場は包む電荷が r3r^3 に比例するため ErE\propto r である。球殻や導体球の内部電場はゼロだが、ポテンシャルはゼロではなく一定である。この「電場ゼロ」と「ポテンシャルゼロ」を混同しないことが重要である。

ポテンシャルの検算

ポテンシャルは E=dV/drE=-dV/dr でつながる。球殻・導体球の内部で VV が一定なら内部電場はゼロになる。一様帯電球の内部ポテンシャルは中心で最大だが有限で、r=Rr=R で外部の 1/r1/r 型と滑らかにつながる。

誘導起電力の符号

磁束を Φ=BAsinθ\Phi=BA\sin\theta と置くと、Faraday の法則から E=dΦ/dt\mathcal E=-d\Phi/dt である。符号は正方向の取り方に依存するが、電力 P1=E2/RP_1=\mathcal E^2/R と減衰係数は符号に依存しない。運動方程式では、誘導電流の効果が必ず θ˙\dot\theta に反対向きの制動項になることを確認する。

減衰条件

θ¨+γθ˙+ω02θ=0 \ddot\theta+\gamma\dot\theta+\omega_0^2\theta=0 は、γ<2ω0\gamma<2\omega_0 のときだけ振動しながら減衰する。等号は臨界減衰、超えると非振動的に戻る。試験では、条件式だけでなく、失われたエネルギーが抵抗のジュール熱になることまで書くと問5の要求を満たす。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 熱統計力学

方針

[A] は熱力学ポテンシャルの定義を、分配関数で書き直すだけでよい。[B] は「異種気体では各成分が全体積を使えるようになる」ことと、「同種気体では粒子を区別して数えてはいけない」ことが中心である。

分配関数からエントロピーへ

S=(FT)V=kBlogZ+kBTlogZT S=-\left(\frac{\partial F}{\partial T}\right)_V = k_B\log Z+k_BT\frac{\partial\log Z}{\partial T} の第2項を落とさないこと。理想気体では logZ\log Z(3N/2)logT(3N/2)\log T が含まれるため、この微分から (3/2)NkB(3/2)Nk_B が出る。

混合エントロピーの意味

異なる気体では、混合後に気体1も気体2も体積 V1+V2V_1+V_2 を探索できる。そのため N1kBlog(V/V1)+N2kBlog(V/V2) N_1k_B\log(V/V_1)+N_2k_B\log(V/V_2) だけエントロピーが増える。この式は質量 m1,m2m_1,m_2 に依存しない。質量依存項は混合前後で変化しないためである。

不可逆性

断熱的に仕切りを外して異種気体を混ぜる過程では、外界に何も残さずに元の分離状態へ戻すことはできない。エントロピー増大 ΔS>0\Delta S>0 がその熱力学的な表現である。可逆経路を使うのは、実際の混合過程が可逆だからではなく、エントロピーが状態量だからである。

ギブスのパラドックス

同種気体を異種気体として数えると、存在しない混合エントロピー NkBlog2Nk_B\log2 が出てしまう。正しくは混合後の同一粒子全体に対して N!N! で割る。この不可区別性の補正により、同じ温度・圧力の同種気体を混ぜてもエントロピーは変化しない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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