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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2026年夏季 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは9件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・フーリエ変換)。2025年冬季と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・静電場。

最終更新:

収録19年度分の解答PDF:東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
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都立大 物理 2026年夏季 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学—張力と拘束の符号 / 有効ポテンシャルによる検算あり
第2問電磁気学・回路電磁気学ポインティングベクトルの向き / 点電荷の発散あり
第3問量子力学—フーリエ変換の規格化 / 不確定性の検算あり
第4問熱・統計力学統計力学縮退とエントロピー / 演算子平均の注意あり

この年度の解説には典型ミス1件が付いています。

2026年夏季の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に9テーマが出ています。

前年度(2025年冬季)との違い

大問数
2025年冬季 5問 → 2026年夏季 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・静電場
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第1問 — 力学

方針

この問題の要点は、A と B が一本の伸びない糸でつながっているため、A の鉛直運動と B の動径運動が同じ自由度で表されることである。zz と rr を独立に扱うとエネルギーを二重に数えたり、張力の消去で符号を誤ったりしやすい。

張力と拘束の符号

A の座標 zz は上向きを正に取っている。A は小孔の下にあるので zz 自体は負であり得るが、運動方程式では座標値の正負ではなく力の向きだけを見ればよい。張力は上向き、重力は下向きなので mz¨=T−mgm\ddot z=T-mg である。

B の動径方程式では、加速度の動径成分が r¨−rθ˙2\ddot r-r\dot\theta^2 である点を必ず書く。遠心力という言葉で考えるなら、慣性系の式 mr¨=mrθ˙2−T m\ddot r=mr\dot\theta^2-T と同じ内容である。

有効ポテンシャルによる検算

角運動量を用いると E=mr˙2+L22mr2+mgr⏟Ueff(r) E=m\dot r^2+\underbrace{\frac{L^2}{2mr^2}+mgr}_{U_{\mathrm{eff}}(r)} となる。Ueff(r)U_{\mathrm{eff}}(r) は r→0r\to0 で発散し、r→∞r\to\infty で mgrmgr により発散するので、有限の二つの転回点の間で周期運動することが分かる。初期点 r=ar=a は r˙=0\dot r=0 なので必ず転回点の一つであり、この事実を使うと三次方程式の因数分解が安定する。

典型ミス

エネルギーの動径運動エネルギーを 12mr˙2\frac12m\dot r^2 としてしまう誤りが多い。A と B の両方が同じ r˙\dot r で動くため、動径に対応する運動エネルギーは 12mr˙2+12mr˙2=mr˙2 \frac12m\dot r^2+\frac12m\dot r^2=m\dot r^2 である。また、重力ポテンシャルは定数を除いて mgrmgr であり、−mgr-mgr ではない。rr が増えると A は上に上がるため、重力ポテンシャルは増加する。

答案で書くべき点

試験答案では、(i) 糸の拘束 r−z=ℓr-z=\ell、(ii) 極座標の動径加速度、(iii) 中心力による角運動量保存、(iv) エネルギー保存から転回点を求める流れを明示する。最後の差は、どちらが最大かが v02v_0^2 と agag の大小で変わるため、絶対値で書くのが安全である。特に v02=agv_0^2=ag では二つの転回点が一致し、差は 00 になる。

解答

問1

糸の全長を一定値 ℓ\ell とする。質点 A は小孔の下にあるので、A の鉛直部分の長さは −z-z、質点 B までの水平部分の長さは rr である。したがって r−z=ℓ,z˙=r˙,z¨=r¨ r-z=\ell,\qquad \dot z=\dot r,\qquad \ddot z=\ddot r である。

質点 A について、zz 軸正向きを上向きにとると、張力は +z+z 向き、重力は −z-z 向きであるから mz¨=T−mg. m\ddot z=T-mg . すなわち拘束条件を用いれば mr¨=T−mg. m\ddot r=T-mg .

質点 B の速度・加速度の動径成分は vr=r˙,ar=r¨−rθ˙2 v_r=\dot r,\qquad a_r=\ddot r-r\dot\theta^2 である。質点 B には動径方向に小孔へ向かう張力 −T-T が働くので m(r¨−rθ˙2)=−T. m(\ddot r-r\dot\theta^2)=-T .

力学的エネルギーは、A の運動エネルギー、B の運動エネルギー、A の重力ポテンシャルの和である。 重力ポテンシャルの基準を r=0r=0 のときに取ると U=mg(z+ℓ)=mgr U=mg(z+\ell)=mgr であるから E=12mz˙2+12m(r˙2+r2θ˙2)+mgr=mr˙2+12mr2θ˙2+mgr. E =\frac12m\dot z^2+\frac12m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)+mgr =m\dot r^2+\frac12mr^2\dot\theta^2+mgr .

質点 B の原点まわりの角運動量は L=r×mv=mr2θ˙ z^. \boldsymbol L=\boldsymbol r\times m\boldsymbol v =mr^2\dot\theta\,\hat{\boldsymbol z}. また dLdt=r×ma=r×(−Tr^)=0 \frac{d\boldsymbol L}{dt} =\boldsymbol r\times m\boldsymbol a =\boldsymbol r\times(-T\hat{\boldsymbol r}) =\boldsymbol 0 である。したがって L\boldsymbol L は保存する。

問2

初期条件は r=a, r˙=0, θ˙=v0/ar=a,\ \dot r=0,\ \dot\theta=v_0/a である。よって L=mav0. L=mav_0 . 初期時刻の全エネルギーは E=12mv02+mga. E=\frac12mv_0^2+mga .

角運動量保存より θ˙=Lmr2=av0r2 \dot\theta=\frac{L}{mr^2}=\frac{av_0}{r^2} である。したがってエネルギー保存は E=mr˙2+L22mr2+mgr E=m\dot r^2+\frac{L^2}{2mr^2}+mgr すなわち r˙2=v022+ga−gr−a2v022r2 \dot r^2 =\frac{v_0^2}{2}+ga-gr-\frac{a^2v_0^2}{2r^2} となる。到達可能な rr の端点は r˙=0\dot r=0 で決まり、 gr+a2v022r2=ga+v022. gr+\frac{a^2v_0^2}{2r^2} =ga+\frac{v_0^2}{2}. 両辺に 2r22r^2 を掛けて整理すると 2gr3−(2ga+v02)r2+a2v02=0 2gr^3-(2ga+v_0^2)r^2+a^2v_0^2=0 であり、r=ar=a が一つの根である。因数分解して (r−a)(2gr2−v02r−av02)=0. (r-a)(2gr^2-v_0^2r-av_0^2)=0 . 正のもう一つの根は r∗=v02+v04+8agv024g. r_* =\frac{v_0^2+\sqrt{v_0^4+8agv_0^2}}{4g}. 物理的な転回点は aa と r∗r_* であるから、求める最大値と最小値の差は rmax⁡−rmin⁡=∣v02+v04+8agv024g−a∣. r_{\max}-r_{\min} = \left| \frac{v_0^2+\sqrt{v_0^4+8agv_0^2}}{4g}-a \right|.

最終答

mz¨=T−mg,m(r¨−rθ˙2)=−T, m\ddot z=T-mg,\qquad m(\ddot r-r\dot\theta^2)=-T, E=mr˙2+12mr2θ˙2+mgr,L=mr2θ˙ z^,dLdt=0. E=m\dot r^2+\frac12mr^2\dot\theta^2+mgr,\qquad \boldsymbol L=mr^2\dot\theta\,\hat{\boldsymbol z},\qquad \frac{d\boldsymbol L}{dt}=0. 初期条件に対して L=mav0,E=12mv02+mga, L=mav_0,\qquad E=\frac12mv_0^2+mga, rmax⁡−rmin⁡=∣v02+v04+8agv024g−a∣. r_{\max}-r_{\min} = \left| \frac{v_0^2+\sqrt{v_0^4+8agv_0^2}}{4g}-a \right|.

第2問 — 電磁気学

方針

前半は円筒対称性だけで決まる。磁場はアンペールの法則、電場は円筒コンデンサーの電位差から求める。後半は、球対称または軸対称なベクトル場を球座標で処理する問題であり、直交座標で成分計算を始めるよりも発散・勾配の標準公式を使う方が安定する。

ポインティングベクトルの向き

導体間では E\boldsymbol E は内側導体から外側導体へ向かう半径方向、H\boldsymbol H は電流を取り巻く周方向である。したがって E×H\boldsymbol E\times\boldsymbol H は +z+z 方向を向く。断面積分が VIVI になることは、電磁場が導体間の空間を通って電力を運んでいるという物理的な検算になっている。

点電荷の発散

∇⋅(r/r3)=0\nabla\cdot(\boldsymbol r/r^3)=0 は r≠0r\ne0 での式である。点電荷の問題では、原点を含む領域に対しては発散のデルタ関数を忘れてはいけない。答案では「原点以外では 00、分布としては qδ(3)(r)/ε0q\delta^{(3)}(\boldsymbol r)/\varepsilon_0」と書くと、局所計算とガウスの法則の両方を押さえられる。

磁位の符号

磁位では ∂∂z1r=−zr3 \frac{\partial}{\partial z}\frac1r=-\frac{z}{r^3} の符号が重要である。ここを誤ると HrH_r と HθH_\theta の符号がともに反転する。さらに HθH_\theta には球座標の係数 1/r1/r が入るため、r−3r^{-3} 依存になることも確認しておく。

答案で書くべき点

同軸導体では、点 (x,0,0)(x,0,0) で ρ^=x^\hat{\boldsymbol\rho}=\hat{\boldsymbol x}、ϕ^=y^\hat{\boldsymbol\phi}=\hat{\boldsymbol y} であることを一言添えると成分の符号が明確になる。磁化球では、HrH_r、HθH_\theta、HϕH_\phi を求めたあと、赤道で Hθ=M/3H_\theta=M/3 だけが残ることを使えば、有効数字 2 桁の数値まで迷わず出せる。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学

方針

問1はガウス波束のフーリエ変換であり、位置幅が広いほど運動量幅が狭くなることを確認する問題である。問2は二次元調和振動子の縮退した第一励起状態を、角運動量の固有状態に組み替える問題である。

フーリエ変換の規格化

この問題ではフーリエ変換に 1/2πℏ1/\sqrt{2\pi\hbar} が入っている。ここを通常の数学の 1/2π1/\sqrt{2\pi} と混同すると、ϕ~(p)\widetilde\phi(p) の前係数に ℏ\hbar が足りなくなる。検算として ∫−∞∞∣ϕ~(p)∣2 dp=1 \int_{-\infty}^{\infty}|\widetilde\phi(p)|^2\,dp=1 を確認するとよい。

不確定性の検算

位置分布は ∣ϕ(x)∣2=1πλe−x2/λ2 |\phi(x)|^2=\frac1{\sqrt\pi\lambda}e^{-x^2/\lambda^2} なので Δx=λ2. \Delta x=\frac{\lambda}{\sqrt2}. したがって Δx Δp=λ2ℏ2λ=ℏ2 \Delta x\,\Delta p = \frac{\lambda}{\sqrt2}\frac{\hbar}{\sqrt2\lambda} = \frac{\hbar}{2} となり、最小不確定性波束であることが分かる。これは Δp\Delta p の係数のよい検算になる。

角運動量の符号

qx−iqy=re−iθq_x-iq_y=re^{-i\theta} であるから、角運動量固有値は −ℏ-\hbar である。qx+iqyq_x+iq_y なら +ℏ+\hbar になる。第一励起状態の線形結合に付いた −i-i の符号を落とすと、ここが反対になる。

答案で書くべき点

調和振動子では、まず h^μ=ℏω(n^μ+1/2)\hat h_\mu=\hbar\omega(\hat n_\mu+1/2) を示し、そのあと座標表示で a^μ†\hat a_\mu^\dagger を基底状態に作用させると答案が短くまとまる。最後の概形図では、振幅が原点で消えること、有限の半径で最大になること、位相が一周で −2π-2\pi 巻くことを言葉でも補うと十分である。

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第4問 — 統計力学

方針

問1は、ハミルトニアンを固有状態基底で対角化してからカノニカル分布を作る。問2は、運動量積分と位置積分が分離するため、それぞれ 1 粒子の平均を計算して最後に NN 倍すればよい。

縮退とエントロピー

T=0T=0 のエントロピーで 00 と答えたくなるが、この系では最低エネルギーが 2 重縮退している。カノニカル分布の β→∞\beta\to\infty 極限では、その 2 状態が等確率に残るため、1 系あたり kBlog⁡2k_B\log2 の残留エントロピーが出る。

演算子平均の注意

∣a⟩|a\rangle はエネルギー固有状態ではない。したがって A^=∣a⟩⟨a∣\hat A=|a\rangle\langle a| の平均は、エネルギー固有状態における重み ⟨n∣A^∣n⟩ \langle n|\hat A|n\rangle を計算してからボルツマン重みを掛ける必要がある。縮退した −Δ-\Delta の部分空間があるが、e−βH^e^{-\beta\hat H} はその部分空間で単位演算子に比例するので、正規直交基底の取り方に物理量は依存しない。

四次ポテンシャルの検算

一般化されたビリアル定理を使うと、V(x)=cx4V(x)=cx^4 では ⟨xdVdx⟩=4⟨V⟩=kBT \left\langle x\frac{dV}{dx}\right\rangle = 4\langle V\rangle = k_BT となる。したがって ⟨V⟩=kBT/4\langle V\rangle=k_BT/4 であり、ガンマ関数による計算結果と一致する。運動エネルギーは通常の等分配則により 1 自由度あたり kBT/2k_BT/2 である。

概形選択の理由

四次ポテンシャルでは典型的な位置の大きさは βcx4∼1⇒x2∼(βc)−1/2∝T1/2 \beta c x^4\sim1 \quad\Rightarrow\quad x^2\sim(\beta c)^{-1/2}\propto T^{1/2} で見積もれる。調和ポテンシャルの TT 依存より遅く増えるため、直線より下側に曲がる概形を選ぶ。図の記号だけを書くのではなく、⟨xi2⟩∝T1/2\langle x_i^2\rangle\propto T^{1/2} を示してから (d) と結論するのが答案として強い。

答案で書くべき点

統計力学の答案では、平均が 1 粒子あたりなのか全体なのかを明記する。ここでは NN 粒子系なので、途中で 1 粒子平均を出し、最後に NN 倍した全エネルギーも書いた。図選択では、定量式を出せなくても βcx4∼1\beta c x^4\sim1 のスケーリングを示せば、正しい概形を十分に説明できる。

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都立大 物理 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年冬季(全4問)

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  • 2026年夏季(このページ・全4問)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2025年冬季(全5問)

    線形代数・微積分 / 強制振動 / 電磁気

  • 2025年夏季(全5問)

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  • 2024年冬季(全5問)

    数学 / 剛体の転がり / 静電ポテンシャル

  • 2024年夏季(全5問)

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  • 2023年度 冬季(全5問)

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  • 2023年度 夏季(全5問)

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  • 2022年度 夏季(全5問)

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  • 2021年度 冬季(全5問)

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  • 2019年度 冬季(全5問)

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  • 2019年度 夏季(全5問)

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  • 2018年度 冬季(全5問)

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  • 2018年度 夏季(全5問)

    数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数 / 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰 / 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場

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  • 2017年度 夏季(全5問)

    数学:母関数・行列の固有値・定積分・微分方程式 / 力学:剛体の制動回転と円すい面上の質点 / 電磁気学:帯電円環板の静電場とRLC共振回路

  • 2016年度 冬季(全5問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2016年度 夏季(全5問)解答・最終答まで全文公開

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