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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2025年夏季 院試 解答例・解説

東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理 2025年夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 複素積分

方針

三角関数の有理式積分は、z=eiθz=e^{i\theta} によって単位円上の複素積分に直すのが定石である。このとき重要なのは、単位円上でだけ eiθ=z1e^{-i\theta}=z^{-1} と書ける点であり、複素共役を使う必要はない。

途中式の確認

置換後に最も符号を間違えやすいのは dθ=dz/(iz)d\theta=dz/(iz)2zz12i=1+4izz22iz 2-\frac{z-z^{-1}}{2i} =\frac{1+4iz-z^2}{2iz} の部分である。ここを一行で済ませず、分母を共通分母 2iz2iz にそろえて書くと、後の極の位置も安定して求められる。

検算

232-\sqrt{3} は正で 11 より小さいため、i(23)i(2-\sqrt{3}) は単位円内にある。一方で 2+3>12+\sqrt{3}>1 なので、もう一つの極は単位円外にある。最終値は負で大きさは約 6.98×1026.98\times 10^{-2} と小さい。これは sin3θ\sin3\theta の振動で正負がかなり打ち消し合うことと整合している。

典型ミス

sinθ=(zz1)/(2i)\sin\theta=(z-z^{-1})/(2i)ii を落とすと極の位置が実軸上にずれる。また、最後に求めるのは e3iθe^{3i\theta} の積分そのものではなく、その虚部である。この実部・虚部の取り分けを書かないと、問4の答案としては不足する。

試験答案で書くべき点

答案では、CC が反時計回りの単位円であること、単位円内の極が一つだけであること、そして留数定理を適用してから虚部を取ることを明記する。結果だけを書くよりも、どの極を採用したかを示す方が採点上の見通しがよい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — ばね振動と波動

方針

前半は二体問題なので、重心運動と相対運動に分けると一気に整理できる。重心は外力がないため等速直線運動、相対座標は自然長 \ell のまわりの単振動である。後半は離散的な差分方程式をテイラー展開で連続体の波動方程式に移す。

切断直後の扱い

ばねが切れた瞬間に蓄えられていた弾性エネルギーが熱に変わる、という条件は、切断後の力学的エネルギーからばねのポテンシャルを取り除くことを意味する。切断自体が質点に有限の撃力を与えるとは読まないので、速度は切断直前から連続である。長さ \ell' だけでは、伸びている途中か縮んでいる途中かが決まらないため、相対速度の符号は σ\sigma で残すのが安全である。

検算

m1=3m, m2=mm_1=3m,\ m_2=m のとき重心速度は X˙(0)=3mv4m=3v4 \dot{X}(0)=\frac{3mv}{4m}=\frac{3v}{4} で、ばねの内部運動とは独立に一定である。また、連続体方程式では k2/mk\ell^2/m の次元は length2/time2\mathrm{length}^2/\mathrm{time}^2 なので、波速 c=k/mc=\ell\sqrt{k/m} の次元も正しい。

典型ミス

相対座標を x1x2x_1-x_2 と定義してしまうと、初期相対速度の符号が反転する。問題の定義に合わせて xrel=x2x1x_{\mathrm{rel}}=x_2-x_1 としていることを最初に書くべきである。また、無限鎖では自然長 \ell の項が左右のばねで打ち消し合うため、運動方程式に余分な定数項を残さない。

試験答案で書くべき点

答案では、ばねの伸び、力の向き、重心・相対座標の定義を明示する。連続体近似では、一次差分が一階微分、二次差分が二階微分に対応することをテイラー展開で示すと、波動方程式の係数 k2k\ell^2 を落としにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 電磁気

方針

問1は円筒対称な静電ポテンシャルなので、勾配は半径方向だけを見ればよい。問2は一次遅れの RLRL 回路であり、電源投入時は立ち上がり、電源切断後は指数減衰である。問3は、回転による起電力、放射状電流の面積、オーム則を順に使う。

符号の見方

円板では反時計回りの角速度と上向き磁場により、v×B\mathbf v\times\mathbf B は半径方向外向きになる。したがって開回路では縁が中心より高電位になる。3-3 では指定変数が σ,I,d,r,a\sigma,I,d,r,a に限られているため、電流密度から求まる抵抗性の電位降下を答えている。外向き電流なら電位は外側で低くなるので VQVP>0V_Q-V_P>0 である。

検算

RLRL 回路の時定数は L/RL/R であり、指数の中身 Rt/LRt/L は無次元である。また I2πσdlnar \frac{I}{2\pi\sigma d}\ln\frac{a}{r} は、σd\sigma d が面内伝導の大きさを表し、ln(a/r)\ln(a/r) が二次元的な放射状抵抗の特徴を表している。

典型ミス

静電ポテンシャルの勾配で符号を落とすと、正の線電荷なのに電場が内向きになる。回転円板では、v×B\mathbf v\times\mathbf B の向きを ϕ^×z^=r^\hat{\boldsymbol\phi}\times\hat{\mathbf z}=\hat{\mathbf r} と確認することが重要である。電流密度では面積を πr2\pi r^2 ではなく、半径 rr を横切る側面積 2πrd2\pi r d とする。

試験答案で書くべき点

RLRL の微分方程式には初期条件を添える。グラフは厳密な形よりも、I(0)=0I(0)=0、単調増加、漸近値 V/RV/R の三点が伝わることが重要である。回転円板の電位差は、どちらの点からどちらの点を引いた値かを明記しておくと符号の減点を避けられる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 量子力学

方針

前半はランダウゲージで yy 方向の並進対称性を使い、pyp_yk\hbar k に置き換える。残る xx 方向のハミルトニアンは、二次式を平方完成すれば調和振動子そのものになる。後半は角運動量の交換関係と、J2=(L+S)2\mathbf J^2=(\mathbf L+\mathbf S)^2 の恒等式を使う。

最低エネルギーの読み方

上の ε0(k)\varepsilon_0(k) は、固定した波数 kk の部分空間での最低エネルギーである。無限平面で kk に制限がないと、電場項により kE/B-\hbar kE/B が現れて大域的な下限は定まらない。通常の有限試料では境界条件により許される kk が制限され、その範囲内で最低値を考える。

検算

ωc=eB/m\omega_c=eB/m はサイクロトロン角振動数であり、電場 EE00 にすると εn=ωc(n+12) \varepsilon_n=\hbar\omega_c\left(n+\frac{1}{2}\right) に戻る。これはランダウ準位の基本形と一致する。角運動量側では、gg の式を g=1+j(j+1)+s(s+1)l(l+1)2j(j+1) g=1+\frac{j(j+1)+s(s+1)-l(l+1)}{2j(j+1)} と変形でき、通常の Landé の gg 因子の形になっている。

典型ミス

(k+eBx)2(\hbar k+eBx)^2 の符号を keBx\hbar k-eBx としてしまうと、平方完成後の kEkE 項の符号が変わる。これは電子の電荷が e-e であり、ハミルトニアンに p+eA\mathbf p+e\mathbf A が入っているためである。また、ここでの L,S,J\mathbf L,\mathbf S,\mathbf J\hbar をくくり出した無次元演算子なので、交換関係の右辺は iLzi\hbar L_z ではなく iLziL_z である。

試験答案で書くべき点

平方完成では、振動中心と定数項の両方を書く。定数項を落とすと最低エネルギーが求まらない。角運動量の問題では、LS\mathbf L\cdot\mathbf S を直接計算するより、J2L2S2\mathbf J^2-\mathbf L^2-\mathbf S^2 から出す方が短く確実である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 熱力学

方針

熱力学ポテンシャルの問題では、まずどの変数を自然変数として持つかを見る。GG の自然変数は T,p,NT,p,N であり、全微分は SdT+Vdp+μdN-S\,dT+V\,dp+\mu\,dN になる。相平衡では同じ T,pT,p のもとで粒子をどちらの相に置いても自由エネルギーが変わらないため、化学ポテンシャルが等しくなる。

潜熱の符号

液体から気体になると通常 Sg>SlS_g>S_l である。したがって ΔH=T0(SgSl)>0 \Delta H=T_0(S_g-S_l)>0 であり、外部から熱を受け取って気化するという物理的な向きと一致する。

クラペイロンの式

dpdT=ΔsΔv \frac{dp}{dT}=\frac{\Delta s}{\Delta v} は、共存線上で二つの相の化学ポテンシャルが等しいことを微分するだけで得られる。気液共存では Δs>0\Delta s>0 かつ Δv>0\Delta v>0 なので傾きは正になる。一方、水の固液共存では Δs=slss>0\Delta s=s_l-s_s>0 だが Δv=vlvs<0\Delta v=v_l-v_s<0 なので傾きが負になる。

検算

富士山頂では平地より圧力が低い。固液共存線の傾きが負なら、圧力を下げる変化は温度を上げる変化に対応する。よって選択肢は「低い」ではなく「高い」である。直感だけで答えると間違えやすいので、符号を dT=dp/(dp/dT)dT=dp/(dp/dT) で確認するとよい。

典型ミス

dGdG の導出で +SdT+S\,dT としてしまう符号ミスが多い。また、問4で μl=μg\mu_l=\mu_g を「共存しているから」とだけ書くと説明不足である。全分子数一定のもとで NlN_lNgN_g を微小に入れ替え、dG=0dG=0 を使うところまで書くと答案として強い。

試験答案で書くべき点

問5では、dμ=sdT+vdpd\mu=-s\,dT+v\,dp を一分子あたりの式として使うことを明記する。問7では、エントロピー差だけでなく体積差の符号まで述べる必要がある。「氷は水より密度が小さい」、すなわち「一分子あたりの体積が大きい」と書けば、負の傾きの理由が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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