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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年夏季 院試 解答例・解説

東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 偏微分方程式・留数積分

方針

前半は球対称の拡散型方程式の分離変数である。時間方向の条件が T(0)=1T'(0)=-1 と与えられているため、分離定数は最後に自由に残らず λ=1\lambda=-1 に固定される。

原点条件の意味

R=(Asinr+Bcosr)/rR=(A\sin r+B\cos r)/r のうち、Bcosr/rB\cos r/rr0r\to0 で発散する。R1R\to1 という条件は、発散項を消すだけでなく、sinr/r1\sin r/r\to1 を使って係数 AA まで決める条件である。

3次元積分の見通し

角度積分で 11eikrudu=2sinkrkr \int_{-1}^{1}e^{ikru}\,du=\frac{2\sin kr}{kr} が出るので、問題は ksinkrk\sin kr を含む 1 次元積分に落ちる。留数計算では eikre^{ikr} を付けた積分を考えると、sinkr\sin kr が虚部として自然に現れる。

検算

MmM\to m の極限を除けば答えは正である。実際 M>mM>m かつ r>0r>0 なら emr>eMre^{-mr}>e^{-Mr} なので、3 次元積分の結果は正になる。また r0r\to0 の極限が有限になることは、元の 3 次元積分が大きな kkk2/k4k^2/k^4 程度に減衰することと整合している。

典型ミス

角度積分後の係数 4π/r4\pi/r を落としやすい。φ\varphi 積分の 2π2\pi と、θ\theta 積分の 2sinkr/(kr)2\sin kr/(kr) の両方を追うこと。また、留数積分で keikr/dk\int_{-\infty}^{\infty} k e^{ikr}/\cdots\,dk2i2i 倍の実積分に対応する点も符号ミスの多い箇所である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 力学

抵抗力の符号

抵抗力は常に速度と逆向きである。1 つ目では外力が十分大きいため vv は増加し、 mv˙=k1(2v0v)m\dot v=k_1(2v_0-v) となる。2 つ目では外力がなく、停止するまで mv˙=k2vm\dot v=-k_2\sqrt v である。符号を逆にすると、速さが増える不自然な解になる。

仕事の求め方

外力が一定なので、仕事は FxF x で求めるのが最も短い。v=v0v=v_0 になった時刻を出しただけでは仕事は決まらず、その時刻までの変位を積分する必要がある。

板の座標設定

長方形の慣性モーメントは板の向きによらないので、板に固定した X,YX,Y 座標で積分するのが簡単である。一方、衝突点の座標は実験室座標で必要になるため、長辺方向 u\boldsymbol u と法線方向 n\boldsymbol n を使って直線を表すと符号を追いやすい。

回転しない条件

摩擦なしの衝突では、力積は長辺に垂直な方向に限られる。板が回転しない条件は、力積の大きさがどうなるかではなく、その作用線が原点を通ること、すなわち原点まわりの角力積がゼロになることである。本問ではそれが s=0s=0、つまり衝突点がその長辺の中点になる条件である。

典型ミス

最後の非弾性衝突で、衝突後の慣性モーメントに付着した質点の寄与 m(x02+c2)m(x_0^2+c^2) を入れ忘れやすい。また、線運動量は原点を固定する拘束力のため一般には保存しないが、原点まわりの角運動量は保存する、という使い分けを書くことが重要である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 電磁気学

同軸円筒の場

円筒対称性が強いので、電場は Gauss の法則、磁場は Ampere の法則でほぼ一行で決まる。特に外側の r>br>b で磁場が消えるのは、包む電流が I+(I)=0I+(-I)=0 になるためである。

インダクタンスの検算

LL は単位長さあたりなので次元は H/m である。答え μ0(2π)1log(b/a)\mu_0(2\pi)^{-1}\log(b/a)μ0\mu_0 と同じく H/m の次元を持ち、対数の中身も無次元である。

波動方程式で書くべき点

ベクトル公式を使うだけでなく、E=0\nabla\cdot\boldsymbol E=0B=0\nabla\cdot\boldsymbol B=0 をどこで使ったかを明記する。ここを書かないと、(F)\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol F) の項を消した理由が不明になる。

振幅比の符号

本問の配置では E\boldsymbol Exx 方向、B\boldsymbol Byy 方向なので E×B\boldsymbol E\times\boldsymbol B+z+z 方向で、伝搬方向と一致する。振幅比は正の量として E0/B0=cE_0/B_0=c と書けばよい。

典型ミス

磁場エネルギー密度は B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) であり、μ0B2/2\mu_0B^2/2 ではない。また時間平均では cos2\cos^2 の平均が 1/21/2 になるため、最終的な係数は 1/41/4 になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 量子力学

井戸型ポテンシャルの方針

エネルギーが井戸の底より上で外側のポテンシャルより下にあるため、井戸内では三角関数、外側では指数減衰になる。無限壁では ψ(0)=0\psi(0)=0 を直接課すので、井戸内の coskx\cos kx 成分は消える。

接続条件

ポテンシャルが有限に跳ぶ点 x=bx=b では、波動関数だけでなく微分も連続である。ここで微分条件の右辺が qF-qF になる符号が重要であり、これを間違えると kcot(kb)=qk\cot(kb)=q という誤った式になる。

しきい値の意味

E0E\to0- は束縛状態が消える直前の極限である。q0q\to0 となるため条件は cot(kb)=0\cot(kb)=0 になり、最小の井戸の深さは最初の解 kb=π/2kb=\pi/2 から決まる。より大きな解を使うと、励起束縛状態が現れるしきい値を求めてしまう。

スピン測定の解釈

ϕ|\phi\rangles^x\hat s_x の固有状態なので、xx 成分の測定値は完全に確定している。しかし s^z\hat s_z の固有状態ではないため、zz 成分にはばらつきが残る。期待値 00 は「いつも 0 が測定される」という意味ではなく、+/2+\hbar/2/2-\hbar/2 の平均が 0 になるという意味である。

典型ミス

不確定性原理を「非可換なら必ず ΔxΔz>0\Delta x\Delta z>0」と機械的に書くのは危険である。Robertson 不等式の右辺は交換子の期待値であり、この状態では s^y=0\langle\hat s_y\rangle=0 のため下限は 0 になる。それでも s^x\hat s_xs^z\hat s_z が同時に確定するわけではない、という点を言葉で補う必要がある。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 統計力学

理想気体の内部エネルギー

単原子理想気体では、重力がない場合の内部エネルギーは運動エネルギーだけで決まる。各粒子に 3 つの二次自由度があるため、等分配則で 3kBT/23k_BT/2 が出る。

重力場中で熱容量が増える理由

重力場中では位置エネルギー mgzmgz も熱的に分布する。zz 方向の位置積分 0eβmgzdz=1/(βmg)\int_0^\infty e^{-\beta mgz}\,dz=1/(\beta mg) が余分な TT 依存性を持つため、1 粒子あたり平均位置エネルギー kBTk_BT が加わる。したがって内部エネルギーは 3kBT/2+kBT=5kBT/23k_BT/2+k_BT=5k_BT/2 となる。

分配関数の係数

aa は位相空間のセルの大きさを表すので、NN 粒子では a3Na^{3N} で割る。また同種粒子であるため N!N! で割る。この 2 つを落とすと、問題で指定された分配関数の形に一致しない。

定数状態密度のフェルミ気体

状態密度が一定なので、T=0T=0 では粒子数が長方形の面積 D0ϵFD_0\epsilon_F、エネルギーが三角形の面積 D0ϵF2/2D_0\epsilon_F^2/2 と見なせる。このため平均エネルギーは ϵF/2\epsilon_F/2 になる。

高温極限の注意

高温・低密度極限では kBTϵFk_BT\gg\epsilon_F となるので log(ϵF/kBT)<0\log(\epsilon_F/k_BT)<0 であり、化学ポテンシャルは負になる。これは古典極限で粒子を入れることの自由エネルギー的なコストが大きいことを表しており、符号の検算に使える。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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