東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年夏季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 偏微分方程式・留数積分
方針
前半は球対称の拡散型方程式の分離変数である。時間方向の条件が と与えられているため、分離定数は最後に自由に残らず に固定される。
原点条件の意味
のうち、 は で発散する。 という条件は、発散項を消すだけでなく、 を使って係数 まで決める条件である。
3次元積分の見通し
角度積分で が出るので、問題は を含む 1 次元積分に落ちる。留数計算では を付けた積分を考えると、 が虚部として自然に現れる。
検算
の極限を除けば答えは正である。実際 かつ なら なので、3 次元積分の結果は正になる。また の極限が有限になることは、元の 3 次元積分が大きな で 程度に減衰することと整合している。
典型ミス
角度積分後の係数 を落としやすい。 積分の と、 積分の の両方を追うこと。また、留数積分で が 倍の実積分に対応する点も符号ミスの多い箇所である。
第2問 — 力学
抵抗力の符号
抵抗力は常に速度と逆向きである。1 つ目では外力が十分大きいため は増加し、 となる。2 つ目では外力がなく、停止するまで である。符号を逆にすると、速さが増える不自然な解になる。
仕事の求め方
外力が一定なので、仕事は で求めるのが最も短い。 になった時刻を出しただけでは仕事は決まらず、その時刻までの変位を積分する必要がある。
板の座標設定
長方形の慣性モーメントは板の向きによらないので、板に固定した 座標で積分するのが簡単である。一方、衝突点の座標は実験室座標で必要になるため、長辺方向 と法線方向 を使って直線を表すと符号を追いやすい。
回転しない条件
摩擦なしの衝突では、力積は長辺に垂直な方向に限られる。板が回転しない条件は、力積の大きさがどうなるかではなく、その作用線が原点を通ること、すなわち原点まわりの角力積がゼロになることである。本問ではそれが 、つまり衝突点がその長辺の中点になる条件である。
典型ミス
最後の非弾性衝突で、衝突後の慣性モーメントに付着した質点の寄与 を入れ忘れやすい。また、線運動量は原点を固定する拘束力のため一般には保存しないが、原点まわりの角運動量は保存する、という使い分けを書くことが重要である。
第3問 — 電磁気学
同軸円筒の場
円筒対称性が強いので、電場は Gauss の法則、磁場は Ampere の法則でほぼ一行で決まる。特に外側の で磁場が消えるのは、包む電流が になるためである。
インダクタンスの検算
は単位長さあたりなので次元は H/m である。答え は と同じく H/m の次元を持ち、対数の中身も無次元である。
波動方程式で書くべき点
ベクトル公式を使うだけでなく、 と をどこで使ったかを明記する。ここを書かないと、 の項を消した理由が不明になる。
振幅比の符号
本問の配置では が 方向、 が 方向なので は 方向で、伝搬方向と一致する。振幅比は正の量として と書けばよい。
典型ミス
磁場エネルギー密度は であり、 ではない。また時間平均では の平均が になるため、最終的な係数は になる。
第4問 — 量子力学
井戸型ポテンシャルの方針
エネルギーが井戸の底より上で外側のポテンシャルより下にあるため、井戸内では三角関数、外側では指数減衰になる。無限壁では を直接課すので、井戸内の 成分は消える。
接続条件
ポテンシャルが有限に跳ぶ点 では、波動関数だけでなく微分も連続である。ここで微分条件の右辺が になる符号が重要であり、これを間違えると という誤った式になる。
しきい値の意味
は束縛状態が消える直前の極限である。 となるため条件は になり、最小の井戸の深さは最初の解 から決まる。より大きな解を使うと、励起束縛状態が現れるしきい値を求めてしまう。
スピン測定の解釈
は の固有状態なので、 成分の測定値は完全に確定している。しかし の固有状態ではないため、 成分にはばらつきが残る。期待値 は「いつも 0 が測定される」という意味ではなく、 と の平均が 0 になるという意味である。
典型ミス
不確定性原理を「非可換なら必ず 」と機械的に書くのは危険である。Robertson 不等式の右辺は交換子の期待値であり、この状態では のため下限は 0 になる。それでも と が同時に確定するわけではない、という点を言葉で補う必要がある。
第5問 — 統計力学
理想気体の内部エネルギー
単原子理想気体では、重力がない場合の内部エネルギーは運動エネルギーだけで決まる。各粒子に 3 つの二次自由度があるため、等分配則で が出る。
重力場中で熱容量が増える理由
重力場中では位置エネルギー も熱的に分布する。 方向の位置積分 が余分な 依存性を持つため、1 粒子あたり平均位置エネルギー が加わる。したがって内部エネルギーは となる。
分配関数の係数
は位相空間のセルの大きさを表すので、 粒子では で割る。また同種粒子であるため で割る。この 2 つを落とすと、問題で指定された分配関数の形に一致しない。
定数状態密度のフェルミ気体
状態密度が一定なので、 では粒子数が長方形の面積 、エネルギーが三角形の面積 と見なせる。このため平均エネルギーは になる。
高温極限の注意
高温・低密度極限では となるので であり、化学ポテンシャルは負になる。これは古典極限で粒子を入れることの自由エネルギー的なコストが大きいことを表しており、符号の検算に使える。