東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年夏季 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・微分方程式1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・留数定理・剛体の回転運動)。
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- 解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
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- 途中式と最終答(最終答つき5問)
- 問題本文
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都立大 物理 2024年夏季 院試 過去問の出題内容(全5問)
この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・微分方程式1問・量子力学1問・力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分方程式 | 偏微分方程式・留数積分 | 原点条件の意味 / 3次元積分の見通し | あり |
| 第2問 | 力学 | — | 抵抗力の符号 / 仕事の求め方 | あり |
| 第3問 | 電磁気学・回路 | 電磁気学 | 同軸円筒の場 / インダクタンスの検算 | あり |
| 第4問 | 量子力学 | — | 井戸型ポテンシャルの方針 / 接続条件 | あり |
| 第5問 | 熱・統計力学 | 統計力学 | 理想気体の内部エネルギー / 重力場中で熱容量が増える理由 | あり |
この年度の解説には典型ミス4件・検算1件が付いています。
2024年夏季の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に8テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第4問 | 25大学・544問 | |
| 留数定理 | 第1問 | 18大学・126問 | |
| 剛体の回転運動 | 第2問 | 16大学・103問 | |
| 分配関数 | 第5問 | 16大学・88問 | |
| 電磁波 | 第3問 | 15大学・55問 | |
| 井戸型ポテンシャル | 第4問 | 15大学・31問 | |
| フェルミ・ボース統計 | 第5問 | 13大学・27問 | |
| スピン | 第4問 | 11大学・17問 |
前年度(2023年度 冬季)との違い
- 大問数
- 2023年度 冬季 5問 → 2024年夏季 5問
第1問 — 偏微分方程式・留数積分
方針
前半は球対称の拡散型方程式の分離変数である。時間方向の条件が と与えられているため、分離定数は最後に自由に残らず に固定される。
原点条件の意味
のうち、 は で発散する。 という条件は、発散項を消すだけでなく、 を使って係数 まで決める条件である。
3次元積分の見通し
角度積分で が出るので、問題は を含む 1 次元積分に落ちる。留数計算では を付けた積分を考えると、 が虚部として自然に現れる。
検算
の極限を除けば答えは正である。実際 かつ なら なので、3 次元積分の結果は正になる。また の極限が有限になることは、元の 3 次元積分が大きな で 程度に減衰することと整合している。
典型ミス
角度積分後の係数 を落としやすい。 積分の と、 積分の の両方を追うこと。また、留数積分で が 倍の実積分に対応する点も符号ミスの多い箇所である。
解答
- まず を代入する。すると であるから、 の範囲で割って を得る。左辺は だけ、右辺は だけの関数なので、両辺は定数である。この定数を とおく。 したがって より である。条件 から 、また である。よって を の方程式に代入すると すなわち である。 とおくと だから したがって で有限かつ となるためには、 の発散を消す必要があるので であり、さらに より である。ゆえに
- まず 1 次元積分を求める。上半平面で半円の閉曲線を取り、 を考える。上半平面の極は である。留数は よって 次に 3 次元積分を考える。 の向きを極軸に取ると であり、体積要素は である。したがって となる。 として角度積分を先に行うと かつ 積分から が出るので を得る。 最後の積分は を上半平面で積分して求める。 では Jordan の補題により弧の寄与は消え、 一方、左辺の虚部は である。したがって ゆえに 3 次元積分は である。 ではこの式の極限を取ればよく、 となる。
最終答
% 変数分離では また であり、 である。
第2問 — 力学
抵抗力の符号
抵抗力は常に速度と逆向きである。1 つ目では外力が十分大きいため は増加し、 となる。2 つ目では外力がなく、停止するまで である。符号を逆にすると、速さが増える不自然な解になる。
仕事の求め方
外力が一定なので、仕事は で求めるのが最も短い。 になった時刻を出しただけでは仕事は決まらず、その時刻までの変位を積分する必要がある。
板の座標設定
長方形の慣性モーメントは板の向きによらないので、板に固定した 座標で積分するのが簡単である。一方、衝突点の座標は実験室座標で必要になるため、長辺方向 と法線方向 を使って直線を表すと符号を追いやすい。
回転しない条件
摩擦なしの衝突では、力積は長辺に垂直な方向に限られる。板が回転しない条件は、力積の大きさがどうなるかではなく、その作用線が原点を通ること、すなわち原点まわりの角力積がゼロになることである。本問ではそれが 、つまり衝突点がその長辺の中点になる条件である。
典型ミス
最後の非弾性衝突で、衝突後の慣性モーメントに付着した質点の寄与 を入れ忘れやすい。また、線運動量は原点を固定する拘束力のため一般には保存しないが、原点まわりの角運動量は保存する、という使い分けを書くことが重要である。
第3問 — 電磁気学
同軸円筒の場
円筒対称性が強いので、電場は Gauss の法則、磁場は Ampere の法則でほぼ一行で決まる。特に外側の で磁場が消えるのは、包む電流が になるためである。
インダクタンスの検算
は単位長さあたりなので次元は H/m である。答え は と同じく H/m の次元を持ち、対数の中身も無次元である。
波動方程式で書くべき点
ベクトル公式を使うだけでなく、 と をどこで使ったかを明記する。ここを書かないと、 の項を消した理由が不明になる。
振幅比の符号
本問の配置では が 方向、 が 方向なので は 方向で、伝搬方向と一致する。振幅比は正の量として と書けばよい。
典型ミス
磁場エネルギー密度は であり、 ではない。また時間平均では の平均が になるため、最終的な係数は になる。
第4問 — 量子力学
井戸型ポテンシャルの方針
エネルギーが井戸の底より上で外側のポテンシャルより下にあるため、井戸内では三角関数、外側では指数減衰になる。無限壁では を直接課すので、井戸内の 成分は消える。
接続条件
ポテンシャルが有限に跳ぶ点 では、波動関数だけでなく微分も連続である。ここで微分条件の右辺が になる符号が重要であり、これを間違えると という誤った式になる。
しきい値の意味
は束縛状態が消える直前の極限である。 となるため条件は になり、最小の井戸の深さは最初の解 から決まる。より大きな解を使うと、励起束縛状態が現れるしきい値を求めてしまう。
スピン測定の解釈
は の固有状態なので、 成分の測定値は完全に確定している。しかし の固有状態ではないため、 成分にはばらつきが残る。期待値 は「いつも 0 が測定される」という意味ではなく、 と の平均が 0 になるという意味である。
典型ミス
不確定性原理を「非可換なら必ず 」と機械的に書くのは危険である。Robertson 不等式の右辺は交換子の期待値であり、この状態では のため下限は 0 になる。それでも と が同時に確定するわけではない、という点を言葉で補う必要がある。
第5問 — 統計力学
理想気体の内部エネルギー
単原子理想気体では、重力がない場合の内部エネルギーは運動エネルギーだけで決まる。各粒子に 3 つの二次自由度があるため、等分配則で が出る。
重力場中で熱容量が増える理由
重力場中では位置エネルギー も熱的に分布する。 方向の位置積分 が余分な 依存性を持つため、1 粒子あたり平均位置エネルギー が加わる。したがって内部エネルギーは となる。
分配関数の係数
は位相空間のセルの大きさを表すので、 粒子では で割る。また同種粒子であるため で割る。この 2 つを落とすと、問題で指定された分配関数の形に一致しない。
定数状態密度のフェルミ気体
状態密度が一定なので、 では粒子数が長方形の面積 、エネルギーが三角形の面積 と見なせる。このため平均エネルギーは になる。
高温極限の注意
高温・低密度極限では となるので であり、化学ポテンシャルは負になる。これは古典極限で粒子を入れることの自由エネルギー的なコストが大きいことを表しており、符号の検算に使える。
都立大 物理 院試 過去問の収録19年度
解析力学 / 電磁気学 / 量子力学
力学 / 電磁気学 / 量子力学
線形代数・微積分 / 強制振動 / 電磁気
複素積分 / ばね振動と波動 / 電磁気
数学 / 剛体の転がり / 静電ポテンシャル
2024年夏季(このページ・全5問)
偏微分方程式・留数積分 / 力学 / 電磁気学
数学:固有値問題・行列の指数関数・不定積分 / 力学:一様棒の物理振り子と回転軸の移動 / 電磁気学:直交電磁場中の荷電粒子とサイクロイド運動
数学:演算子の指数関数と留数定理による実積分 / 力学:ばねで連結された2質点と中空円板の制動 / 電磁気学:電流間の力・電磁波の横波性・点電荷系の遠方展開
数学:実対称行列の直交対角化と留数定理による実積分 / 力学:円板の物理振り子と周期を最小にする支点 / 電磁気学:点電荷の電場と接地導体面の鏡像法
数学:ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式 / 力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下 / 電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答
数学:複素数の方程式 \sin z=2 と実対称行列の指数関数 / 力学:あらい斜面上を転がる円柱と滑りから転がりへの移行 / 電磁気学:平行板コンデンサの電荷配置と各領域の電場
数学:固有値・ベクトル解析・フーリエ余弦級数 / 力学:一様密度球の重力場と質点の運動 / 電磁気学:同軸ケーブルの静電容量と自己インダクタンス
数学:ラゲール多項式とパウリ行列の指数関数 / 力学:斜面を転がり落ちる剛体球 / 電磁気学:一様帯電球の静電エネルギーと円電流にはたらく力
数学:極座標変換によるガウス積分と拡散方程式の変数分離 / 力学:完全非弾性衝突後の単振動と斜面を転がる剛体 / 電磁気学:電気双極子と鏡像法、円電流と磁気双極子
数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数 / 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰 / 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場
数学:複素積分と巡回行列の指数関数 / 力学:3質点・4ばね系の基準振動 / 電磁気学:導体球殻の静電場と円柱電流の磁場
数学:母関数・行列の固有値・定積分・微分方程式 / 力学:剛体の制動回転と円すい面上の質点 / 電磁気学:帯電円環板の静電場とRLC共振回路
2016年度 冬季(全5問)解答・最終答まで全文公開
数学:母関数・行列の固有値・本質的特異点まわりの積分 / 力学:バネにつながれた物体への衝突と、二軸に拘束された棒の運動 / 電磁気学:一様帯電球の電場と電位、回転する帯電球の磁束密度
2016年度 夏季(全5問)解答・最終答まで全文公開
数学:母関数・行列指数関数・境界値問題 / 力学:連結ばね・斜面の摩擦・滑車の回転 / 電磁気学:変位電流と共焦点回転楕円体導体