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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年冬季 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。数学1問・熱・統計力学1問・力学1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子)。2024年夏季と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・留数定理・剛体の回転運動。

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収録19年度分の解答PDF:東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理(¥3,200・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

都立大 物理 2024年冬季 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は数学1問・熱・統計力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—試験答案で書くべき点あり
第2問力学剛体の転がり試験答案で書くべき点あり
第3問—静電ポテンシャル試験答案で書くべき点あり
第4問—調和振動子試験答案で書くべき点あり
第5問熱・統計力学熱力学試験答案で書くべき点あり

この年度の解説には検算5件・典型ミス5件が付いています。

2024年冬季の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2024年夏季)との違い

大問数
2024年夏季 5問 → 2024年冬季 5問
2024年冬季で新しく出たテーマ
調和振動子
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第1問 — 数学

検算

問1では E0E_0 が 11、E1E_1 が一次式、E2E_2 が二次式になっており、母関数の係数として次数がそろっている。問2では A(425)=(281435)=7(425) A\begin{pmatrix}4\\2\\5\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}28\\14\\35\end{pmatrix} = 7\begin{pmatrix}4\\2\\5\end{pmatrix} となるので固有ベクトルの確認ができる。問3では 1/(2πi)1/(2\pi i) が前に付いているため、答えは積分値そのものではなく留数である。

典型ミス

問1で E2(x)E_2(x) を求めるとき、(log⁡F)′′(\log F)'' の項を落とすと余分な定数 1/41/4 が残る。問2では行列が対称でないので、直交固有ベクトルを仮定しない。問3では時計回りと取り違えると符号が反転するが、本問の向きは反時計回りである。

試験答案で書くべき点

母関数では「Ek(x)=F(k)(0)E_k(x)=F^{(k)}(0)」という対応を明記する。固有値問題では特性多項式の因数分解と、最大固有値の固有ベクトルを長さ1に規格化する計算を省かない。複素積分では Laurent 展開の z−1z^{-1} 係数を示してから留数定理に接続する。

数学の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 剛体の転がり

検算

加速度は x¨=23gsin⁡θ \ddot x=\frac{2}{3}g\sin\theta で、摩擦のない質点の gsin⁡θg\sin\theta より小さい。重力の一部が回転エネルギーに回るため、この大小関係は自然である。また、エネルギーの和 MgLsin⁡θMgL\sin\theta は長さ LL に比例し、エネルギーの次元を持つ。

典型ミス

摩擦力の向きを斜面下向きにしてしまうと、円板に転がりを作るトルクが得られない。本問の静止摩擦は斜面上向きに働き、並進加速度を小さくする。問3では静止摩擦があるからといって機械的エネルギーが失われるわけではない。滑らない転がりでは接触点が瞬間的に静止しているため、静止摩擦は仕事をしない。

試験答案で書くべき点

運動方程式 Mx¨=Mgsin⁡θ−fM\ddot x=Mg\sin\theta-f、回転の式 Iα=faI\alpha=fa、拘束条件 x¨=aα\ddot x=a\alpha の3本をそろえて書く。最後の摩擦条件では、必要摩擦力 ff と最大静止摩擦力 μMgcos⁡θ\mu Mg\cos\theta を比較してから tan⁡β\tan\beta を出す。

解答

方針

薄い円板の慣性モーメントを求めたあと、並進運動と回転運動を静止摩擦で結びつける。滑らない条件は x¨=aα\ddot x=a\alpha であり、摩擦力は仕事をしないのでエネルギー保存も使える。

  1. 一様な薄い円板の中心を通り、円板面に垂直な軸まわりの慣性モーメントは I=12Ma2. I=\frac12Ma^2 .
  2. 斜面下向きを正に取り、重心加速度を x¨\ddot x、角加速度を α\alpha とする。摩擦力の大きさを ff とし、上向きに働く向きを正の大きさとして書くと Mx¨=Mgsin⁡θ−f,Iα=fa. M\ddot x=Mg\sin\theta-f, \qquad I\alpha=fa . 滑らずに転がるので x¨=aα. \ddot x=a\alpha . よって f=Ia2x¨ f=\frac{I}{a^2}\ddot x であり、 (M+Ia2)x¨=Mgsin⁡θ. \left(M+\frac{I}{a^2}\right)\ddot x=Mg\sin\theta . したがって x¨=gsin⁡θ1+I/(Ma2). \ddot x=\frac{g\sin\theta}{1+I/(Ma^2)} . 静かに放しているので初速は0であり、時刻 t1t_1 の速さは v(t1)=gsin⁡θ1+I/(Ma2)t1. v(t_1)=\frac{g\sin\theta}{1+I/(Ma^2)}t_1 . 問1の I=12Ma2I=\frac12Ma^2 を代入すれば v(t1)=23gt1sin⁡θ. v(t_1)=\frac23g t_1\sin\theta .
  3. 滑らない転がりでは静止摩擦は接触点に対して仕事をしない。重心が距離 LL だけ下ったとき、重力による位置エネルギーの減少は MgLsin⁡θ MgL\sin\theta である。したがって、並進運動エネルギーと回転エネルギーの和は Ktrans+Krot=MgLsin⁡θ. K_{\mathrm{trans}}+K_{\mathrm{rot}}=MgL\sin\theta . 途中で速さを使って確認すると Ktrans=12Mv2,Krot=12I(va)2, K_{\mathrm{trans}}=\frac12Mv^2,\qquad K_{\mathrm{rot}}=\frac12I\left(\frac{v}{a}\right)^2, Ktrans+Krot=12(M+Ia2)v2=MgLsin⁡θ K_{\mathrm{trans}}+K_{\mathrm{rot}} =\frac12\left(M+\frac{I}{a^2}\right)v^2 =MgL\sin\theta となる。
  4. 滑らずに転がるために必要な静止摩擦力は f=Ia2x¨=Ia2gsin⁡θ1+I/(Ma2). f=\frac{I}{a^2}\ddot x = \frac{I}{a^2} \frac{g\sin\theta}{1+I/(Ma^2)} . これは f=Mgsin⁡θIMa2+I f = Mg\sin\theta \frac{I}{Ma^2+I} と書ける。一方、最大静止摩擦力は μMgcos⁡θ \mu Mg\cos\theta であるから Mgsin⁡θIMa2+I≤μMgcos⁡θ. Mg\sin\theta\frac{I}{Ma^2+I} \le \mu Mg\cos\theta . よって tan⁡θ≤μMa2+II. \tan\theta\le \mu\frac{Ma^2+I}{I}. I=12Ma2I=\frac12Ma^2 を代入して tan⁡β=3μ. \tan\beta=3\mu .

最終答

% I=12Ma2\displaystyle I=\frac12Ma^2, v(t1)=23gt1sin⁡θ\displaystyle v(t_1)=\frac23g t_1\sin\theta, Ktrans+Krot=MgLsin⁡θ\displaystyle K_{\mathrm{trans}}+K_{\mathrm{rot}}=MgL\sin\theta, tan⁡β=3μ\displaystyle \tan\beta=3\mu。

第3問 — 静電ポテンシャル

検算

k→0k\to0 とすると ϕ=A/r\phi=A/r となり、電場は A/r2A/r^2 になる。このとき原点以外の電荷密度は0となり、通常の点電荷ポテンシャルに戻る。全体では原点の正電荷 qq と周囲の電荷 −q-q が打ち消し、無限遠で十分速く減衰するポテンシャルと整合する。

典型ミス

∇2(1/r)\nabla^2(1/r) のデルタ関数を問3の r>0r>0 の計算に混ぜないこと。原点の点電荷は問2で別に取り出す。また、ρ\rho の符号は Poisson 方程式 ∇2ϕ=−ρ/ε0\nabla^2\phi=-\rho/\varepsilon_0 から決まり、負になる。

試験答案で書くべき点

問1では E=−∇ϕ\boldsymbol E=-\nabla\phi から動径成分を求める。問2では球面積分 4πR2E(R)4\pi R^2E(R) を明示してから R→0R\to0 を取る。問4では 4πr2dr4\pi r^2dr を忘れず、∫0∞re−krdr=1/k2\int_0^\infty re^{-kr}dr=1/k^2 まで示すとよい。

静電ポテンシャルの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 調和振動子

検算

基底状態の波動関数は x=0x=0 を中心とする偶関数であるため、⟨x⟩=0\langle x\rangle=0 になることと整合する。また、指数の係数 mω/ℏm\omega/\hbar は 1/長さ21/\text{長さ}^2 の次元を持つので、指数全体は無次元である。

典型ミス

a^\hat{a} の座標表示で ip^i\hat{p} を代入するとき、i(−iℏ)=+ℏi(-i\hbar)=+\hbar になる点を落としやすい。また、[N^,a^][\hat{N},\hat{a}] は +a^+\hat{a} ではなく −a^-\hat{a} であり、a^\hat{a} は固有値を下げる演算子である。

試験答案で書くべき点

問1は任意の ψ(x)\psi(x) に作用させて計算すると減点されにくい。問4では固有値が下がる式だけでなく、λ≥1\lambda\ge1 で a^∣λ⟩\hat{a}|\lambda\rangle が零ベクトルでないことをノルムで示すと答案として強い。

調和振動子の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 熱力学

検算

張力が X=ATX=AT と温度に比例するため、温度一定で伸ばしたときの自由エネルギー増加は AT dLAT\,dL である。一方、エントロピー変化は −A dL-A\,dL なので、F+TSF+TS では2つが打ち消し、内部エネルギーが LL に依らないという結果が確認できる。

典型ミス

通常の気体の dU=T dS−p dVdU=T\,dS-p\,dV の符号をそのまま持ち込むと、本問では符号を誤る。ここでは問題文の仕事の定義に合わせて dU=T dS+X dLdU=T\,dS+X\,dL と書く。また、断熱を単に dT=0dT=0 としないこと。断熱可逆では dS=0dS=0 であり、そこから温度変化を求める。

試験答案で書くべき点

問3では Maxwell 関係を、問5では CL=T(∂S∂T)L C_L=T\left(\frac{\partial S}{\partial T}\right)_L を明示して符号を判定する。最後は正負だけでなく、(∂T∂L)S=AT/CL\left(\frac{\partial T}{\partial L}\right)_S=AT/C_L まで書くと説得力がある。

熱力学の途中式・最終答をPDFで見る

都立大 物理 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年冬季(全4問)

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  • 2026年夏季(全4問)

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  • 2025年冬季(全5問)

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  • 2025年夏季(全5問)

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  • 2024年冬季(このページ・全5問)

    数学 / 剛体の転がり / 静電ポテンシャル

  • 2024年夏季(全5問)

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  • 2023年度 冬季(全5問)

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  • 2023年度 夏季(全5問)

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  • 2022年度 冬季(全5問)

    数学:実対称行列の直交対角化と留数定理による実積分 / 力学:円板の物理振り子と周期を最小にする支点 / 電磁気学:点電荷の電場と接地導体面の鏡像法

  • 2022年度 夏季(全5問)

    数学:ベクトル解析・複素積分・行列の対角化と偏微分方程式 / 力学:単振り子と巻取り軸つき円板の落下 / 電磁気学:3点電荷の釣り合い・電流回路の磁場・RC回路の過渡応答

  • 2021年度 冬季(全5問)

    数学:複素数の方程式 \sin z=2 と実対称行列の指数関数 / 力学:あらい斜面上を転がる円柱と滑りから転がりへの移行 / 電磁気学:平行板コンデンサの電荷配置と各領域の電場

  • 2019年度 冬季(全5問)

    数学:固有値・ベクトル解析・フーリエ余弦級数 / 力学:一様密度球の重力場と質点の運動 / 電磁気学:同軸ケーブルの静電容量と自己インダクタンス

  • 2019年度 夏季(全5問)

    数学:ラゲール多項式とパウリ行列の指数関数 / 力学:斜面を転がり落ちる剛体球 / 電磁気学:一様帯電球の静電エネルギーと円電流にはたらく力

  • 2018年度 冬季(全5問)

    数学:極座標変換によるガウス積分と拡散方程式の変数分離 / 力学:完全非弾性衝突後の単振動と斜面を転がる剛体 / 電磁気学:電気双極子と鏡像法、円電流と磁気双極子

  • 2018年度 夏季(全5問)

    数学:留数定理による定積分とパウリ行列の指数関数 / 力学:有効ポテンシャルによる円軌道の安定性と、強制振動・臨界減衰 / 電磁気学:一様磁場を出入りするループの落下と、球対称電荷分布の静電場

  • 2017年度 冬季(全5問)

    数学:複素積分と巡回行列の指数関数 / 力学:3質点・4ばね系の基準振動 / 電磁気学:導体球殻の静電場と円柱電流の磁場

  • 2017年度 夏季(全5問)

    数学:母関数・行列の固有値・定積分・微分方程式 / 力学:剛体の制動回転と円すい面上の質点 / 電磁気学:帯電円環板の静電場とRLC共振回路

  • 2016年度 冬季(全5問)解答・最終答まで全文公開

    数学:母関数・行列の固有値・本質的特異点まわりの積分 / 力学:バネにつながれた物体への衝突と、二軸に拘束された棒の運動 / 電磁気学:一様帯電球の電場と電位、回転する帯電球の磁束密度

  • 2016年度 夏季(全5問)解答・最終答まで全文公開

    数学:母関数・行列指数関数・境界値問題 / 力学:連結ばね・斜面の摩擦・滑車の回転 / 電磁気学:変位電流と共焦点回転楕円体導体