東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2025年冬季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 物理学専攻 物理 2025年冬季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 線形代数・微積分
方針
問1は、固有値を特性方程式から出し、回転行列の列ベクトルがどの固有方向を向くかで を決める。問2は が だけの関数であることを使う。問3は指定された半角置換を使えば、積分が に落ちる。
途中式の要点
対角化では であることだけでなく、 の第1列が の固有ベクトルであることを明示する。ラプラシアンでは まで出してから発散を取ると、各成分の符号を追いやすい。
検算
固有値の和は 、積は で、特性方程式と一致する。また なので は確かに条件を満たす。積分結果は微分すると となる。
典型ミス
だけを書いて、反対向きの固有ベクトルに対応する を落としやすい。また のラプラシアンは2次元では で だが、この問題は3次元なので である。積分では絶対値と積分定数を忘れない。
試験答案で書くべき点
特性多項式、固有方向、 の範囲確認を順に書く。微分では の条件を添え、積分では置換後の と を両方示すと、計算過程の要求に十分応えられる。
第2問 — 強制振動
方針
板の運動は外力としてばねの自然長との差に入る。まず静的なずれを避けるため に移し、非共鳴の強制振動を解いてから の極限を取る。
途中式の要点
最も重要なのは力の符号である。伸びが なので、質点を左向きへ戻す力は である。非共鳴解では、強制振動の特解だけでなく、初期条件を満たすための固有振動項 が残る。
検算
とすると になり、初期位置で静止し続ける。非共鳴解を に代入すると 、微分して を代入すると である。共鳴解の支配項は なので、減衰のない共鳴として振幅が時間に比例して増大する。
典型ミス
を直接 に足すだけにして、ばねの自然長 を力の式から落とすミスが多い。また、共鳴で単に分母を にして「発散」と書くのではなく、極限を取って の項を導く必要がある。
試験答案で書くべき点
運動方程式、変数 、非共鳴解の係数決定、共鳴極限の計算を順に示す。概略図では、細かい位相よりも「振動しながら包絡線が線形に広がる」ことが伝わるように描けばよい。
第3問 — 電磁気
方針
静電場は から 成分を直接微分する。誘導電荷は境界条件で面密度に直し、円環要素 で積分する。磁場は同軸対称なのでアンペールの法則だけで決まる。
途中式の要点
鏡像電荷の項を微分するとき、 の符号と の符号を同時に追う。磁場では、円筒導線内部のアンペール経路が内側の円柱電流も囲んでいる点が重要である。
検算
誘導電荷の総量が になるのは、接地無限導体に対する鏡像電荷法の結果と一致する。磁場の式は で有限かつ になり、円柱表面 で となる。円筒内部では で向きが反転するため、大きさには絶対値が必要である。
典型ミス
表面上の を3次元距離のまま扱うと、面積要素を誤る。ここでは表面内の半径を として積分するのが安全である。また、円筒導線の断面積を としてしまうと電流密度が誤る。
試験答案で書くべき点
静電場では 、表面での符号、面密度から総電荷への積分を省略せずに書く。磁場では、領域ごとの包絡電流 を明示すれば、アンペールの法則の適用が読み手に伝わる。
第4問 — 量子干渉
方針
電子を波として扱い、二つのスリットからの波動関数を足し合わせる。観測される強度に相当する量は振幅ではなく なので、干渉項 を取り出すのが中心である。
途中式の要点
距離の近似では、平方根を まで展開する。 では と が消え、一次の だけが残る。
検算
では なので中央は明線になる。近似式でも である。また と書けば明線間隔は となり、通常の二重スリットの式と一致する。
典型ミス
振幅を足さずに確率を先に足してしまうと、干渉項が消えて縞が出ない。もう一つのミスは、位相差を とすることである。干渉を決めるのは二経路の差 である。
試験答案で書くべき点
現象名、位相差、波動関数の重ね合わせ、二乗による確率、距離差の近似、明線条件をこの順に書く。スリットの上下の取り方で の符号が逆になっても、明線間隔は同じであることを理解しておく。
第5問 — 二準位系
方針
この問題は、組合せ数からエントロピーを作り、エネルギー変数に変換して温度の定義を使う流れで解く。二準位の縮退は与えられていないので、配置数は単純な二項係数になる。
途中式の要点
スターリング近似では、 が消えること、さらに の項も により消えることを示すとよい。問5では なので、 を に直す係数 を落とさない。
検算
正の温度では なので となる。低いエネルギー の状態が多く占有されるという物理的直観と一致する。高温極限 では となり、二つの状態がほぼ等確率になる。
典型ミス
状態1のエネルギーが 、状態2が であるため、 の符号を逆にしやすい。ここを逆にすると最後の の符号も逆になる。また、 ではなく である。
試験答案で書くべき点
配置数 、スターリング近似後の整理、 と の対応、温度定義による微分を順に書く。最後の式だけでなく、 が出る途中式を残すと符号の根拠が明確になる。