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名古屋工業大学 院試 過去問 解答例

名工大 工学研究科 物理工学系 材料機能プログラム 材料機能プログラム 専門科目 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。化学1問・材料力学・材料1問・物性物理1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・固有振動数と振動系・結晶構造)。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

名工大 材料機能プログラム 専門科目 2025年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は化学1問・材料力学・材料1問・物性物理1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—基礎物理数学—あり
第2問物性物理固体物理—あり
第3問化学材料物理化学—あり
第4問材料力学・材料材料科学—あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に7テーマが出ています。

第1問 — 基礎物理数学

方針

第1問は,線形代数と定係数微分方程式を混ぜた標準問題である。 行列式は余因子展開と行基本変形を併用する。振動問題は,指数関数解を 仮定して特性方程式に落とすのが最短である。連成振動は,ばねの式から 係数行列 AA を正しく作ることが勝負になる。

検算

減衰振動では γ=0\gamma=0 とおくと x(t)=C1cos⁡ω0t+C2sin⁡ω0t x(t)=C_1\cos\omega_0t+C_2\sin\omega_0t に戻るので,不足減衰の式は正しい。連成振動では,同相運動 (x1=x2)(x_1=x_2) では中央のばねが伸びず,角振動数が ω0\omega_0 になる。 逆相運動 (x1=−x2)(x_1=-x_2) では中央のばねも効くので 3 ω0\sqrt3\,\omega_0 になる。これは固有値 1,31,3 と一致する。

典型ミス

減衰項が −2mγx˙-2m\gamma\dot{x} なので,標準形の係数は 2γ2\gamma である。ここを γ\gamma としてしまうと, すべての条件が γ/2\gamma/2 だけずれる。また連成振動では mx¨=−kAxm\ddot{\boldsymbol{x}}=-kA\boldsymbol{x} の符号を忘れると, 対角化後の振動方程式の符号が反対になる。

試験で書くべきポイント

固有ベクトルは規格化を明記する。複素根の場合は,根だけで終わらせず, 実数解として e−γtcos⁡Ωte^{-\gamma t}\cos\Omega t, e−γtsin⁡Ωte^{-\gamma t}\sin\Omega t の形まで戻す。連成振動では q=VTx\boldsymbol{q}=V^T\boldsymbol{x} と x=Vq\boldsymbol{x}=V\boldsymbol{q} のどちらを使っているかを明示しておくと,最後の x1,x2x_1,x_2 の符号を 取り違えにくい。

解答

I 行列とパウリ行列

  1. 行列式は行基本変形で上三角化するのが安全である。計算すると det⁡Aa=14,det⁡Ab=12,det⁡Ac=0. \begin{aligned} \det A_{\mathrm{a}}&=14,\\ \det A_{\mathrm{b}}&=12,\\ \det A_{\mathrm{c}}&=0. \end{aligned} 例えば AbA_{\mathrm{b}} は第4行の第4成分だけが非零なので, その余因子展開により det⁡Ab=(−2)(−1)4+4∣−112230100∣=−2(−6)=12 \det A_{\mathrm{b}} =(-2)(-1)^{4+4} \begin{vmatrix} -1&1&2\\ 2&3&0\\ 1&0&0 \end{vmatrix} =-2(-6)=12 となる。
  2. σxσy=(0110)(0−ii0)=(i00−i)=iσz. \sigma_x\sigma_y = \begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}0&-i\\ i&0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}i&0\\0&-i\end{pmatrix} =i\sigma_z. 固有値と規格化固有ベクトルは次の通り。 行列固有値規格化固有ベクトルσx112(11)σx−112(1−1)σy112(1i)σy−112(1−i)σz1(10)σz−1(01) \begin{array}{c|c|c} \text{行列} & \text{固有値} & \text{規格化固有ベクトル}\\ \hline \sigma_x & 1 & \dfrac{1}{\sqrt2}\binom{1}{1}\\ \sigma_x & -1 & \dfrac{1}{\sqrt2}\binom{1}{-1}\\[1mm] \sigma_y & 1 & \dfrac{1}{\sqrt2}\binom{1}{i}\\ \sigma_y & -1 & \dfrac{1}{\sqrt2}\binom{1}{-i}\\[1mm] \sigma_z & 1 & \binom{1}{0}\\ \sigma_z & -1 & \binom{0}{1} \end{array}

II 減衰振動

運動方程式を標準形に直すと d2xdt2+2γdxdt+ω02x=0,ω02=km \frac{d^2x}{dt^2}+2\gamma\frac{dx}{dt}+\omega_0^2x=0, \qquad \omega_0^2=\frac{k}{m} である。

  1. x=eλtx=e^{\lambda t} を代入すると λ2+2γλ+ω02=0 \lambda^2+2\gamma\lambda+\omega_0^2=0 が特性方程式である。
  2. 二つの根は λ=−γ±γ2−ω02 \lambda=-\gamma\pm\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2} である。
  3. 根が相異なる実数となる条件は γ>ω0. \gamma>\omega_0. このとき x(t)=C1e(−γ+γ2−ω02)t+C2e(−γ−γ2−ω02)t. x(t)=C_1e^{(-\gamma+\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2})t} +C_2e^{(-\gamma-\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2})t}.
  4. 根が相異なる複素数となる条件は 0≤γ<ω0. 0\le \gamma<\omega_0. Ω=ω02−γ2\Omega=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2} とおくと x(t)=e−γt{C1cos⁡Ωt+C2sin⁡Ωt}. x(t)=e^{-\gamma t}\{C_1\cos\Omega t+C_2\sin\Omega t\}.
  5. 重根となる条件は γ=ω0. \gamma=\omega_0. もう一つの解を x2=f(t)e−γtx_2=f(t)e^{-\gamma t} とおくと, 標準形へ代入して f′′(t)=0f''(t)=0 を得る。定数倍の解は 既知の解と同じなので,独立な解として f(t)=tf(t)=t を取ればよい。 したがって x(t)=(C1+C2t)e−γt. x(t)=(C_1+C_2t)e^{-\gamma t}.

III 連成振動

与えられた運動方程式は mx¨=−kAx,x=(x1x2),A=(2−1−12) m\ddot{\boldsymbol{x}}=-kA\boldsymbol{x},\qquad \boldsymbol{x}=\binom{x_1}{x_2},\qquad A=\begin{pmatrix}2&-1\\-1&2\end{pmatrix} と書ける。

  1. 固有値と規格化固有ベクトルは λ1=1,v1=12(11),λ2=3,v2=12(1−1). \lambda_1=1,\quad \boldsymbol{v}_1=\frac1{\sqrt2}\binom{1}{1}, \qquad \lambda_2=3,\quad \boldsymbol{v}_2=\frac1{\sqrt2}\binom{1}{-1}.
  2. 固有ベクトルを列に並べて V=12(111−1) V=\frac1{\sqrt2} \begin{pmatrix} 1&1\\ 1&-1 \end{pmatrix} とすれば,VT=V−1V^T=V^{-1} であり直交対角化に用いられる。
  3. 実際に VTAV=(1003) V^TAV= \begin{pmatrix}1&0\\0&3\end{pmatrix} である。
  4. q=VTx\boldsymbol{q}=V^T\boldsymbol{x} とおくと mq¨=−k(1003)q. m\ddot{\boldsymbol{q}} =-k \begin{pmatrix}1&0\\0&3\end{pmatrix} \boldsymbol{q}. ω02=k/m\omega_0^2=k/m より q¨1+ω02q1=0,q¨2+3ω02q2=0. \ddot q_1+\omega_0^2q_1=0,\qquad \ddot q_2+3\omega_0^2q_2=0. したがって q1=C1cos⁡(ω0t+α1),q2=C2cos⁡(3 ω0t+α2). q_1=C_1\cos(\omega_0t+\alpha_1),\qquad q_2=C_2\cos(\sqrt3\,\omega_0t+\alpha_2).
  5. x=Vq\boldsymbol{x}=V\boldsymbol{q} だから x1=12{C1cos⁡(ω0t+α1)+C2cos⁡(3 ω0t+α2)},x2=12{C1cos⁡(ω0t+α1)−C2cos⁡(3 ω0t+α2)}. \boxed{ \begin{aligned} x_1&=\frac{1}{\sqrt2} \{C_1\cos(\omega_0t+\alpha_1) +C_2\cos(\sqrt3\,\omega_0t+\alpha_2)\},\\ x_2&=\frac{1}{\sqrt2} \{C_1\cos(\omega_0t+\alpha_1) -C_2\cos(\sqrt3\,\omega_0t+\alpha_2)\}. \end{aligned}}

最終答

I(1) 14,12,014,12,0。I(2) σxσy=iσz\sigma_x\sigma_y=i\sigma_z,固有値・固有ベクトルは上表。II は過減衰・不足減衰・臨界減衰の各式。III は基準振動数 ω0,3ω0\omega_0,\sqrt3\omega_0。

第2問 — 固体物理

方針

前半はドルーデ模型で,抵抗力を含む一次微分方程式を解き,ドリフト速度から 電流密度を作る。後半は一次元量子散乱で,領域ごとの一般解を書き, 境界で ψ\psi と dψ/dxd\psi/dx を連続にする。ポテンシャルが有限段差なので, 波動関数そのものだけでなく導関数の連続条件が必要である。

検算

E>VE>V で V→0V\to0 とすると k2→k1k_2\to k_1 なので R→0,T→1 R\to0,\qquad T\to1 となる。逆に E→V+0E\to V+0 では k2→0k_2\to0 なので R→1,T→0 R\to1,\qquad T\to0 となり,物理的な極限と一致する。E<VE<V では ∣B/A∣=1\left|B/A\right|=1 で全反射になるが,右側に 指数減衰する波が残る点が古典力学との違いである。

典型ミス

透過率は単なる ∣C/A∣2|C/A|^2 ではない。左右で波数が異なるため, 確率流束の比として k2/k1k_2/k_1 を掛ける必要がある。また, E<VE<V の右側で ek3xe^{k_3x} を残すと無限遠で発散するため, 物理的な解にならない。

試験で書くべきポイント

ドルーデ模型では,電子の速度は電場と逆向きだが,電流密度は 電荷 −e-e を掛けるため電場と同じ向きになる。この符号の説明を 一言入れると答案が安定する。量子散乱では,k1,k2,k3k_1,k_2,k_3 の定義, 境界条件,確率流束による R,TR,T の定義を順に書く。

固体物理の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 材料物理化学

方針

電位--pH 図では,線の傾きが H+^+ を含むかどうかを教えてくれる。 水素線と酸素線はいずれも pH に対して負の傾きを持つ。銅の Cu2+/Cu\mathrm{Cu}^{2+}/\mathrm{Cu} 境界は H+^+ を含まないので, pH に依存しない水平線になる。

検算

水素線で aH+a_{\mathrm{H^+}} が小さくなる,すなわち pH が大きくなると E′E' は低くなる。これは Pourbaix 図の下側破線が右下がりであることと 一致する。また Cu2+/Cu\mathrm{Cu}^{2+}/\mathrm{Cu} の Nernst 式では, Cu2+\mathrm{Cu}^{2+} 濃度を下げると金属 Cu が安定化し,境界電位は 低下する。

典型ミス

不活態と免疫域を混同しやすい。酸化物皮膜で守られているのが不活態, 金属単体が熱力学的に安定で溶解しにくいのが免疫域である。また Tafel 反応は二つの吸着水素を使うため,速度は θCads\theta C_{\mathrm{ad}}^s の二乗に比例する。

試験で書くべきポイント

Nernst 式では反応商を先に書くと符号ミスを防げる。水素発生反応の 電流符号は流儀に依存するため,答案では「電流の大きさ」か 「アノード正の符号付き電流」かを一言で宣言しておくとよい。

材料物理化学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 材料科学

方針

結晶面は切片の逆数を取る。立方晶ではそのまま (hkl)(hkl),六方晶では (hkil)(hkil) かつ h+k+i=0h+k+i=0 を満たすように読む。すべりは Schmid 因子の比較,状態図はレバー則,CCT 線図は冷却曲線がどの変態線を 横切るかで判断する。

検算

d111=0.209 nmd_{111}=0.209\,\mathrm{nm} は格子定数 0.361 nm0.361\,\mathrm{nm} より 小さく,稠密面の間隔として妥当である。レバー則では 初析フェライト分率とパーライト分率の和が 0.427+0.573=1.000 0.427+0.573=1.000 となる。パーライト内部の α\alpha と Fe3C\mathrm{Fe_3C} についても 0.888+0.112=1.000 0.888+0.112=1.000 であり,質量分率として整合している。

典型ミス

Schmid 因子では,すべり面法線と引張軸の角度だけでなく, すべり方向と引張軸の角度も必要である。片方だけで判断すると 候補系を誤る。また,亜共析鋼の A1A_1 直下のパーライト分率は, 共析直前に残っていたオーステナイト分率である。パーライト中の フェライト分率とは別のレバー則なので混同しない。

試験で書くべきポイント

数値問題では,どの組成値を使ったかを明記する。ここでは Cα=0.02 mass%C_\alpha=0.02\,\mathrm{mass\%}, CE=0.77 mass%C_E=0.77\,\mathrm{mass\%}, CFe3C=6.69 mass%C_{\mathrm{Fe_3C}}=6.69\,\mathrm{mass\%} を用いた。 CCT 線図では,冷却曲線が開始線だけを横切るのか,終了線まで横切るのかを 言葉で説明すると,組織判定の根拠が伝わる。

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