九州大学 院試 過去問 解答例
九大 工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻 機械工学 2026年度 院試 解答例・解説
九州大学 工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻 機械工学 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 数学 第1問(特異値分解)
方針
特異値分解では、左特異ベクトルは の固有ベクトル、右特異ベクトルは の固有ベクトルとして求められる。ただしこの問題では の を先に対角化し、 で右特異ベクトルを作るのが最短である。
符号の自由度
固有ベクトル・特異ベクトルは同時に符号を反転しても同じ分解を与える。例えば をともに 倍しても正解である。ただし だけ、または だけを反転すると の符号が合わなくなる。
確認
実際に が成り立つ。これを最後に確認しておくと、正規化の係数ミスを発見しやすい。
第2問 — 数学 第2問(微分方程式)
(1) の注意
右辺が なので、特解は三角関数だけで置けばよい。斉次解には が現れるが、右辺には が掛かっていないため共振は起きない。
(2) の見抜き方
分母を払ったあと、 の形にして と を比べる。ここが一致するので、積分因子を探す必要はない。
(3) の構造
は半径方向、 は角度方向の微分である。この2つが同時に現れたら、極座標で を使うと分離形になる。符号を逆にすると最終式の の符号が反転するため注意する。
第3問 — 数学 第3問(極限と積分)
極限の確認
にそのまま似ているが、指数が ではなく である。対数を取れば となり、ずれが極限に影響しないことを確認できる。
ガウス積分の規格化
は確率密度の規格化を確認する形である。係数 と指数の分母 が打ち消し合い、全体の積分が になる。
楕円体積分の定石
楕円体では軸方向ごとに単位球へ戻す変数変換が最も安全である。さらに の積分は対称性で同じなので、球座標で1つずつ積分する必要はない。
第4問 — 数学 第4問(ラプラス変換)
初期値の入れ忘れ
ラプラス変換で最も失点しやすいのは、二階微分の変換で とする点である。この問題では だが なので、左辺は になる。
計算の簡約
を解く途中で一見三次式が出るが、右辺にも同じ二次因子 が現れて打ち消される。通分を丁寧に行うと まで落ちるため、逆変換は基本形だけで済む。
解の検算
得られた解は を満たす。また であり、初期値問題の第1式も確認できる。
第5問 — 材料力学 第I問(ピン結合トラス)
方針
この問題は,棒力そのものは節点の静力学だけで決まる。変位を求める段階で初めて,軸伸び と幾何学的適合条件を使う。力と変位を同時に未知量にしてしまうと式数が増え,かえって間違いやすい。
符号の確認
は,棒 が縮むことを意味する。実際,荷重は点 を下向きへ押すので, と の距離は短くなる成分をもつ。一方, と は同一直線上で引張となり, はこの荷重状態では力を受けない。
変位がゼロになる理由
は偶然の暗算結果ではない。 の伸縮が,点 の水平方向成分では相殺し,鉛直方向成分だけを残すためである。途中で の伸びを「力がゼロだから任意」として扱うと誤りで,力がゼロなら伸びもゼロであり,これが点 の変位方向を決めている。
第6問 — 材料力学 第II問(空間曲がりはり)
分解の考え方
点 の変位は直線片持ちはりの曲げだけで決まる。一方,点 では,荷重点が から 方向に離れているため,直線部 にねじりも生じる。このねじり項 を落とすのが典型的な失点である。
曲がり部の扱い
曲がり部では荷重も部材軸も -- 面内にあるため,内部モーメントは面外方向の曲げモーメントとして扱える。円弧の高次理論を使わずに と でエネルギー積分すればよい。丸棒なので曲げ軸の取り方で が変わらないことも重要である。
検算
各項の次元はいずれも または で,長さになる。また とおけば曲がり部とねじりの寄与が消え,通常の片持ちはり先端たわみに戻る。
第7問 — 材料力学 第III問(固定はりと剛体棒)
剛体棒の置き換え
剛体棒上端の水平力は,はりの点 に対して「水平力」と「偶力」に分解される。鉛直たわみを求める限り,水平力による軸変形は対象外で,偶力 だけが曲げに効く。
単位荷重法の利点
集中モーメントの寄与は,モーメントが作用点より左側にだけ現れるので と短く書ける。全区間に を入れると係数がずれる。
反力問題の見方
固定端反力は,先端変位と先端回転をともにゼロにする二つの未知量である。変位条件だけで を決めると,回転拘束を満たさないため不完全な解になる。
第8問 — 機械力学 第1問(中心力とひも拘束)
符号と拘束条件
この問題で最も落としやすいのは,質点Bの座標 が上向き正である点である。つり下がった部分の長さは ではなく なので,全長一定条件は となる。ここを とすると,後半の加速度の符号がすべて反転する。
角運動量保存の使いどころ
張力は常に穴を通る向きに作用するため,穴まわりのモーメントは0である。手で質点Bをゆっくり動かしている間にも,手の力はBの鉛直方向に作用し,Aにはひもを通じて半径方向の力しか伝わらない。したがってAの は保存量として扱える。
検算
円運動の結果は であり,次元は で正しい。最後の式では が小さいほど遠心項 が大きくなるので,Bの加速度が上向きに転じやすい。この物理的傾向も式と一致している。
第9問 — 機械力学 第2問(可動滑車の振動)
拘束式の作り方
滑車が下向きに で動き,反時計回りに で回ると,左右の接触点速度は になる。床側は固定端なので速度0,質点側は である。この2本から , が出る。ここを長さの暗算だけで処理すると,回転角の符号を間違えやすい。
有効質量による検算
拘束式を使うと運動エネルギーは ばねエネルギーは である。したがって固有角振動数が になることを独立に確認できる。
弛み条件
弛みは変位ではなく張力で判定する。特に床側張力 は加速度に対する係数が大きく,質点側より先に0へ到達する。答案では と の両方を一度書いてから最小値を調べると,採点者に条件の根拠が伝わる。
第10問 — 機械力学 第3問(二自由度モード解析)
微小回転の変位
棒上の点の横変位を と書くのが出発点である。右端は ,左端は になる。符号を逆にすると剛性行列の非対角項 の符号が反転し,モードの対応も入れ替わる。
対称性による検算
質量は左右対称なので質量行列の連成項は0である。一方,ばね剛性は左右非対称なので剛性行列には連成項が残る。この「質量は非連成,剛性は連成」という形になっていれば,設定を正しく読めている可能性が高い。
モードを消す条件
モード成分が消える条件は,外力ベクトルそのものが0になることではなく,そのモードへの射影 が0になることである。モード直交性を使っているため,必ず質量行列から得た固有モードと同じ正規化で射影する。
第11問 — 熱工学 第I問(可逆断熱圧縮と中間冷却)
工業仕事の符号
閉じた系の境界仕事では を使うが、コンプレッサの流れ仕事を含む工業仕事では、可逆過程に対して が対応する。断熱定常流であれば第一法則から と書けるので、符号を迷ったら「圧縮では正」と決めて確認するとよい。
単位確認
の単位は であり、圧力比と対数は無次元である。したがって 、、 はいずれも になる。
極限チェック
では、すべての仕事は に近づく。また かつ なら、断熱圧縮の出口温度は入口温度より高く、圧縮仕事も正である。無限段中間冷却の式が を含まないのは、極限で過程が理想気体の等温圧縮になり、必要な式が だけになるためである。
答案で落としやすい点
二段圧縮の仕事低減は、単に「冷やすから小さい」と書くだけでは不十分である。同じ圧力で温度が下がると比体積が下がり、 の面積が減る、という順に説明すると図と式がつながる。
第12問 — 熱工学 第II問(発熱平板とピンフィン)
発熱平板の見方
片面断熱のため、発熱量 がそのまま外表面熱流束になる。平板 や熱伝導率 は表面温度や界面温度には効くが、外へ出る総熱流束そのものはエネルギー保存だけで決まる。
最高温度の位置
であるから、断熱面で傾きがゼロ、そこから外側へ向かって温度が下がる。発熱体中央ではなく断熱面が最高温度になる点に注意する。
フィン効率
フィンを付けると実表面積は増えるが、フィンの温度は根元から先端に向かって低下する。したがって有効面積は実面積より小さく、放熱増加率は面積増加率 を下回る。この議論は熱伝達率 と流体温度 が同じであることを前提としている。
単位確認
は 、 は 、 も である。
第13問 — 熱工学 第III問(飽和蒸気サイクル)
乾き度の決め方
湿り蒸気域では、比エントロピーは乾き度に対して線形に補間できる。可逆断熱過程では なので、状態1と4の乾き度は高圧側で指定された , を低圧側の湿り蒸気式へ代入するだけで決まる。
第一法則と第二法則の使い分け
正味仕事は第一法則から で求められる。一方、各熱量を と書けるのは、相変化が飽和温度で進む可逆過程だからである。
単位確認
温度 と比エントロピー の積は であり、熱量と仕事の単位に一致する。
答案上の注意
このサイクルは - 線図上で長方形になるため、効率がカルノー形 になる。乾き度を求める前に , を明示しておくと、計算の根拠が伝わりやすい。
第14問 — 流体工学 第I問(曲板噴流)
検査体積と符号
力は「曲板を保持するために外部が曲板へ加える力」として書いた。これは曲板が水へ及ぼす力と同じ向きであり,水が曲板へ及ぼす力とは逆向きである。したがって なら左向き, なら下向きに支持力が必要である。
ベルヌーイ式の使い分け
主流側には損失が指定されていないので速度は変わらない。スリット側だけは の損失を入れる点が要点である。ここで損失を の動圧で定義してしまうと の式が変わる。
単位と極限の確認
は単位奥行きあたりの力で,単位は である。 では となりスリットからの流出は消える。また では , となり,対称な 転向流の結果に戻る。
答案上の注意
運動量式では流出運動量から流入運動量を引く。入口が 上向き,主出口が 向き,スリット出口が 正向きであることを最初にベクトルで明示すると,符号ミスを避けやすい。
第15問 — 流体工学 第II問(管路損失)
流量が先に決まる理由
鉛直管出口の到達高さから出口速度が決まり,水槽Bの水位一定条件から水平管の流量も決まる。水平管の損失計算は,この流量に必要な水槽B気体圧を求めるために使う。
分岐の扱い
分岐後の二本は幾何条件が同じで,分岐部と曲がり部の局所損失も無視される。したがって同じ圧力差に対して同じ流量が流れる。枝管径が なので,各枝管速度は急拡大前速度 の である。
損失係数の整理
損失係数はすべて に換算して足し合わせた。急拡大後の本管速度は ,枝管速度は であるため,摩擦損失の係数にそれぞれ , が付く。
単位と極限の確認
は に長さを掛けた形なので圧力の単位になる。 が大きくなるほど必要な流量と損失が増え, および は小さくなる。これは,強い噴流を作るほど水槽B側の圧力余裕を消費することを表している。
第16問 — 流体工学 第III問(成層液体の水圧)
圧力分布の作り方
密度が高さで変わるときも,基本は である。上端の圧力を境界値にして下向きに積分すればよい。混合領域の圧力が二次式になるのは,密度が の一次式だからである。
扉が開く条件
扉の蝶番まわりのモーメントで判定する。右側の圧力は扉を左へ開く向き,左側の液体Aはそれを閉じる向きである。 がちょうどしきい値なので,この状態で両モーメントを等置する。
単位確認
圧力分布はすべて に長さを掛けた形である。モーメントは単位奥行きあたりなので, の次元になり,これは としてのモーメントに対応する。
答案上の注意
液体Bのみの領域の圧力が に依存しない形へ簡単化される点は,検算に使える。混合領域の積分範囲を取り違えると,この連続性が崩れる。