九州大学 院試 過去問 解答例
九大 工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻 機械工学 2024年度 院試 解答例・解説
九州大学 工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻 機械工学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 数学 第1問(射影行列)
射影行列の性質
を満たす行列は射影行列である。1回作用させた後は、もう一度作用させても変わらない。そのため、像空間上では固有値 、核上では固有値 として働く。
固有ベクトルの取り方
成分 から直接連立方程式を解いてもよいが、 の列と の列を使う方が構造が見える。もし選んだ列が零なら、もう一方の列を使えばよい。
との違い
では であり、一般には と一致しない。設問で を扱うときは、通常 として を書くのが安全である。
第2問 — 数学 第2問(重積分と曲面積)
極座標に直す判断
と は が中心にあり、領域も円または円柱で与えられているため、極座標が自然である。ヤコビアン の付け忘れは大きな失点になる。
の分岐
では積分指数が になり、べき乗公式の分母 が0になる。ここは対数として別扱いする。
円柱の範囲
は であり、原点を通る円柱である。極座標では となるので、 の範囲だけを取る。
第3問 — 数学 第3問(常微分方程式)
一階線形方程式への整理
(1) は最初に の係数を1にする。すると となり、積分因子 がすぐ出る。元の式のまま無理に積分しようとしないことが重要である。
因数分解の見落とし
(2) は と置くと、 に関する二次方程式になる。因数分解 を見つければ、2つの一階方程式に分かれる。
解の扱い
厳密には、区間ごとにどちらの因子が0になるかを考える余地がある。入試答案では、通常の一般解として を挙げれば十分である。
第4問 — 数学 第4問(最小二乗法)
正規方程式の構造
二次式近似では、設計行列の列が である。したがって はこれらの列同士の内積を並べたグラム行列になり、 の形が自然に現れる。
コレスキー分解
コレスキー分解では対角成分を正に取る。問題文で非負成分の下三角行列と指定されているため、 や は正の値を採用する。
数値の検算
得られた係数で が成り立つ。最小二乗の問題では、最後に正規方程式へ代入して確認すると計算ミスを見つけやすい。
第5問 — 材料力学 第I問(すきま付き弾性支持)
等価ばねとして見る
斜材は軸ばね,横はりは片持ちはり先端ばねとして扱える。左右対称なので剛体棒は回転せず,鉛直 1 自由度のばね直列・並列問題に落ちる。
(1) と (2) の違い
(1) では が動かないため,すきま がそのまま斜材の相対変位になる。(2) では がはりのたわみによって追従するので,斜材の有効伸びは になる。この差を入れないと,(2) が (1) と同じ答えになってしまう。
(3) の反力
荷重 の一部を斜材系が,残りを左右のはりが負担する。 は荷重全体ではなく,斜材系を通って点 に伝わる分担力である。
第6問 — 材料力学 第II問(ばね付きL字はり)
偶力への置き換え
剛体棒上の二つの集中荷重は,大きさが等しく向きが逆なので,はり全体へは合力ではなく 偶力として伝わる。したがって に入る外力は,点 の端モーメント と ばね力 である。
ばね適合条件
ばね力は で決まる。ここで には分布荷重 とばね反力の寄与, にはばね力と点 の偶力の寄与を入れる。 と のどちらが大きく動くかを 同じ正方向で書くことが,符号ミスを防ぐ要点である。
角度条件
剛体棒の角度は,接合点 の断面回転角そのものである。点 の変位ではなく回転角を 0にする条件を立てる。偶力による回転角は水平部 と鉛直部 の寄与を足して になる。
検算
とすると,ばねはほぼ剛になり,角度条件から必要な の主項は になる。一方, が小さいほど同じばね力を得るために大きな分布荷重が必要で, が増大する。この極限挙動は物理的に自然である。
第7問 — 材料力学 第III問(ナイフエッジ反力)
剛性の簡約
この問題の狙いは, と円形断面の条件から を作ることにある。これにより,部材軸まわりのねじりと,部材軸に垂直な曲げを 同じ係数でエネルギーに入れられる。断面ごとに曲げかねじりかを細かく分けてもよいが, 最終的には平面内の腕の長さの内積積分にまとまる。
反力の符号
は「ナイフエッジがはりを 方向に押す大きさ」と定義している。したがって が出る場合,実際にはナイフエッジが引っ張ることを意味してしまうため,接触仮定が破綻する。 変位条件を解いたあと,必ず を確認する。
条件の読み方
ある一つの だけで接触すればよいなら,分子 が非負であればよい。設問は の範囲で常に離れない条件を問うているので, この分子の最小値を調べ, を得る。
第8問 — 機械力学 第1問(剛体棒の回転運動)
重心運動と回転運動の分離
水平方向の2力は合力0だが,重心まわりには偶力を作る。一方,重力は合力として重心を落下させるが,一様重力なので重心まわりのモーメントは0である。この分離を使うと,並進と回転を独立に処理できる。
モーメントの符号
のとき,Aに働く 方向の力とBに働く 方向の力はいずれも を減らす向きのモーメントを生む。したがって右辺は である。ここを正にすると微小振動ではなく不安定化の式になってしまう。
角運動量保存の範囲
外力 をなくした後も重心は重力で加速するが,重心まわりの角運動量には影響しない。保存されるのは原点まわりではなく重心まわりの角運動量である点を明記すると,答案の根拠が明確になる。
第9問 — 機械力学 第2問(二自由度自由振動)
固有値の無次元化
とおくと,指定された固有角振動数 は単に になる。これにより,条件 は行列式へ代入するだけで得られる。
2次であることの示し方
もう一つの固有値は である。問題では とされているため,これは必ず1より大きい。したがって が1次,もう一つが2次であると説明できる。
初期条件の読み替え
初期変位 は第1モードそのもので,初期速度も0である。よって第2モードは励起されない。連立方程式を解き直すより,モード展開で初期ベクトルを見れば一行で結論に到達できる。
第10問 — 機械力学 第3問(回転剛体と軸受反力)
固定座標成分の微分
ベクトルを剛体固定座標系で成分表示しているため,成分が一定でも静止座標系での時間微分は0ではない。必ず を使う。これにより の 成分が 方向のモーメント要求を生む。
軸受反力の決定
力のつり合いだけでは2つの軸受反力は分からない。原点まわりのモーメント式を併用することで,AとBに分担される 方向反力が決まる。A側とB側の符号が逆になるのは,点Qの質点が軸の左側に偏心しているためである。
衝突で保存する量
軸受は衝突中に力積を及ぼし得るので,直線運動量全体は保存しない。一方,軸受力の作用点は 軸上にあり,その力積は 軸まわりの角運動量を変えない。したがって衝突では 成分だけを保存量として使うのが安全である。
第11問 — 熱工学 第I問(ヒートポンプサイクル)
線図の位置関係
可逆断熱線よりも、圧縮時に放熱するポリトロープ線は高圧側へ寄る。膨張時に放熱するポリトロープ線は、可逆断熱膨張より温度低下に対する体積変化が小さく、取り出せる仕事が減る。この位置関係が と対応している。
ポリトロープ熱量の符号
理想気体のポリトロープ過程では と書ける。圧縮では なので放熱には 、膨張では なので放熱には が必要である。
成績係数の比較
元のサイクルは二つの熱源間で動く可逆ヒートポンプなので、同じ熱源間では最大の成績係数をもつ。ポリトロープ化したサイクルは途中で大気へ熱を捨てる不可逆性を含むため、成績係数は低下する。
単位確認
は であり、温度比、指数、対数はいずれも無次元である。したがって と の式は気体全体に対するエネルギー になっている。
第12問 — 熱工学 第II問(被覆銅線の臨界半径)
臨界半径の意味
被覆を厚くすると伝導熱抵抗は増えるが、外表面積も増えるため対流熱抵抗は減る。円筒ではこの競合により に熱抵抗の極小が現れる。平板にはこの効果はない。
存在条件
なら、許される範囲 では熱抵抗は最初から増加側にあり、正の最小厚さは存在しない。問題文が「存在することを示せ」としている場合でも、この条件を添えると答案としてより正確である。
単位確認
は で半径の単位をもつ。また は温度差の単位 になる。
温度勾配の注意
界面で熱流束は連続するため、 である。 なら、同じ熱流束を運ぶためビニール側の温度勾配の絶対値が大きくなる。
第13問 — 熱工学 第III問(蒸発管内の加熱)
湿り蒸気の線形補間
湿り蒸気の比体積、比エンタルピー、比エントロピーは、乾き度 に対して飽和液値と乾き飽和蒸気値を線形補間する。今回の体積流量比は質量流量が同じなので、比体積比だけに帰着する。
温度変化の形
圧縮液域では顕熱なので温度が上がる。湿り蒸気域では加えた熱が相変化に使われるため、圧力一定なら温度は飽和温度のまま変わらない。過熱蒸気域では比熱が下がるほど、同じ熱量で大きく温度が上がる。
エントロピー式の単位
は であり、 と一致する。ここで の単位が の表なら、 も にそろえる必要がある。
答案上の注意
- 線図の傾きは暗記ではなく、 から一行で出せる。等圧なので が消え、傾きが温度そのものになる、という説明まで書けば十分に得点しやすい。
第14問 — 流体工学 第I問(浮子流量計)
浮子の釣合い
浮子の密度は水より大きいので,静水中なら沈む。流れがあると断面2の速度が断面1より大きくなり,静水圧分を除いた圧力差が浮子を押し上げる。この動圧差が見かけの重さ を支える。
断面積の確認
管の内径は なので半径は ,断面積は である。浮子底面の半径は なので,断面2の流路面積は になる。ここを直径と半径で取り違えると係数が大きく変わる。
損失の考え方
断面1から断面2までは損失を無視するが,断面2から断面3では環状流が管全体へ広がるため混合損失が生じる。急拡大損失 を使えば,圧力差を明示的に求めずに損失動力を出せる。
単位と極限
は浮子の見かけの質量であり,これが に近づくと必要流量も に近づく。損失動力は の形で,単位は である。
第15問 — 流体工学 第II問(揚水管とポンプ)
基準圧の扱い
圧力はゲージ圧なので,地上出口と噴流表面の圧力は と置ける。絶対圧を持ち込む必要はない。
限界圧力
自然に汲み上がるかどうかの限界では,流量を限りなく小さく考える。したがって摩擦損失も速度水頭も消え,必要なのは高さ の静水圧だけである。
ポンプ動力の符号
が高いほど水だまり自体が水を押し上げるので,必要ポンプ揚程は小さくなる。そのため の符号になる。ここを逆にすると,圧力が高いほど大きなポンプが必要という不自然な式になる。
単位確認
角括弧内はすべて長さである。これに を掛けると となり,ポンプ動力の単位に一致する。
第16問 — 流体工学 第III問(回転水面とマノメータ)
回転自由表面
剛体回転している液体では であり,自由表面は となる。中心高さは体積保存で決める。
マノメータ液の密度
静止時の圧力比較では,円筒容器側の水柱高さは ,マノメータ液の有効液位差は である。したがって となる。U字管全長ではなく,圧力差を生む鉛直液位差だけを見る。
液位差 の出し方
中心水面が底面に達した瞬間,接続部の圧力は大気圧である。ただしU字管内には水柱が残るため,水・マノメータ液界面は接続部より下にある。体積保存と圧力釣合いを同時に使うことが必要である。
同時回転時の注意
U字管も回転すると,マノメータ液には遠心圧力差が生じる。大気開放側は半径 ,接続側は中心軸上なので,圧力式に の項が入る。この項を落とすと が過大に出る。