東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2026年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
前半は状態図・標準状態・活量の問題であり,後半は拡散流束と界面反応速度をつなぐ問題である。標準状態が液体Crで指定されているため,Crを合金中活量に変換してから酸化物平衡へ入れる。
検算
は強い還元性のH--HO比で決まるので atm 程度と極めて小さい。これにより酸化物活量も1未満となり,固溶体中の成分活量として自然である。拡散係数は 程度で,高温酸化物中の遅い陽イオン拡散として妥当である。
典型ミス
混合の計算で理想混合の を熱量に入れてはいけない。等温混合で外部熱として扱うのはエンタルピー項である。また,酸化物平衡では と の指数を落とす誤りが多い。
試験で書くべきポイント
状態図問題では相名だけでなく,どの境界を越えたかを一言添える。速度論では「定常状態」「拡散流束=界面反応消費速度」「CrO 1単位にCrが2個」の三点を書くと,式の係数に説得力が出る。
第2問 — 組織学
方針
核生成の問題は,体積項が負,界面項が正であることを最初に固定する。臨界半径は微分で求め,不均一核生成は均一核生成の障壁に球冠の形状因子を掛ける。
途中式の意味
は「固相から液相へ」の変化として定義されているため,凝固で使うと符号に注意する。過冷却液体から固体が生じるとGibbsエネルギーは下がるので,固相生成の体積項は負でなければならない。
検算
が大きいほど は小さくなる。これは深い過冷却ほど核生成しやすいという経験則と一致する。また では障壁が0へ, では均一核生成と同じ障壁へ近づく。
典型ミス
Youngの式の符号を逆にすると,接触角が小さいほど障壁が大きくなる不自然な結論になる。図示問題では曲線の正確な曲率より,端点 と単調増加を明示することが重要である。
第3問 — 材料物性学
方針
逆格子は公式暗記より, を連立方程式として解くのが確実である。格子振動は隣接する二本のばねから受ける復元力を,単位胞内と隣接単位胞に分けて書く。
検算
の音響分枝で になるのは,すべての原子が同じだけ並進すればばねが伸びないためである。 に近づけるとゾーン端のギャップは閉じ,単原子鎖を折り返した分散に近づく。
典型ミス
と の位置を逆にしても最終的な分散は同じだが,行列がエルミートになっていることを確認しないと符号ミスに気づきにくい。Brillouinゾーンは逆格子点を結んだ単位胞ではなく,Wigner--Seitz胞である。
第4問 — 材料力学
方針
四点曲げでは,中央区間のせん断力が0になり,曲げモーメントが一定になる。最大応力はこの純曲げ区間の最外縁で生じる。破壊の問題は,表面エネルギー増加と弾性エネルギー解放の競争として書けばよい。
検算
は高さの三乗に比例するので,応力は に比例する。き裂条件は が大きいほど臨界応力が下がる形であり,長いき裂ほど危険という物理と一致する。
典型ミス
四点曲げで荷重 を合計荷重と誤読すると反力が半分になり,応力も半分になる。ここでは図の各集中荷重を として扱う。Griffith条件では新生面が二面あるため,表面エネルギーを と書く。
試験で書くべきポイント
せん断力図・曲げモーメント図は,数式と一緒に区間を明示する。材料比較の記述問題では「転位」「塑性域」「エネルギー散逸」の語を入れると採点上の根拠が明確になる。