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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。熱・統計力学1問・物性物理1問・力学1問。テーマタグは1件(固有値・固有ベクトル)。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東大 マテリアル工学基礎 2023年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は熱・統計力学1問・物性物理1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問熱・統計力学熱力学・速度論—あり
第2問—組織学—あり
第3問物性物理材料物性学—あり
第4問力学材料力学—あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は1問に1テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
固有値・固有ベクトル第4問25大学・544問

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 4問 → 2023年度 4問
2023年度で新しく出たテーマ
固有値・固有ベクトル
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第1問 — 熱力学・速度論

方針

電池問題は、反応 Gibbs エネルギーと電気仕事 −nFE-nFE を結び付ける。濃淡電池では標準生成自由エネルギーではなく、気体分圧の化学ポテンシャル差が起電力を生む。

検算

水生成の ΔG∘\Delta G^\circ は大きく負なので燃料電池の起電力は 1 V 程度になる。一方、100 倍の濃度差でも RT/FRT/F スケールなので 0.06 V 程度にしかならない。

典型ミス

濃淡電池で FF だけで割ると 2 倍ずれる。水素 1 分子あたり電子 2 個が移動するため、分母は 2F2F である。

試験で書くべきポイント

二次反応の擬一次化は、[B][B] がほぼ一定とみなせる条件を先に書く。半減期から求まるのは k′k' であり、最後に [B]0[B]_0 で割って kk に戻す。

解答

1. 電気化学

(1) 反応を H2(g)+12O2(g)→H2O(l) \mathrm{H_2(g)}+\frac12\mathrm{O_2(g)}\to\mathrm{H_2O(l)} とする。 ΔS∘=70−(130+12⋅200)=−160 J K−1 mol−1. \Delta S^\circ=70-\left(130+\frac12\cdot200\right) =-160\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}} . ΔG∘=ΔH∘−TΔS∘=−290 kJ mol−1−300(−0.160 kJ K−1 mol−1)=−242 kJ mol−1. \Delta G^\circ=\Delta H^\circ-T\Delta S^\circ =-290\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}-300(-0.160\ \mathrm{kJ\,K^{-1}\,mol^{-1}}) =-242\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} .

(2) 燃料電池では anode: H2→2H++2e−,cathode: 12O2+2H++2e−→H2O. \mathrm{anode}:\ \mathrm{H_2\to 2H^++2e^-},\qquad \mathrm{cathode}:\ \frac12\mathrm{O_2+2H^++2e^-\to H_2O}. 標準状態で n=2n=2 だから E=−ΔG∘2F=2.42×1052(9.6×104)=1.26 V≃1.3 V. E=-\frac{\Delta G^\circ}{2F} =\frac{2.42\times10^5}{2(9.6\times10^4)} =1.26\ \mathrm{V}\simeq \boxed{1.3\ \mathrm{V}} .

(3) 水素濃淡電池では低水素分圧側がアノード、高水素分圧側がカソードである。 anode: H2(P2)→2H++2e−,cathode: 2H++2e−→H2(P1). \mathrm{anode}:\ \mathrm{H_2(P_2)\to 2H^++2e^-},\qquad \mathrm{cathode}:\ \mathrm{2H^++2e^-\to H_2(P_1)} . 全体として H2(P2)→H2(P1)\mathrm{H_2(P_2)\to H_2(P_1)} なので E2=RT2Fln⁡P1P2. \boxed{E_2=\frac{RT}{2F}\ln\frac{P_1}{P_2}} .

(4) P1/P2=100P_1/P_2=100、ln⁡100=2ln⁡10=4.6\ln100=2\ln10=4.6 より E2=8.3⋅3002⋅96000⋅4.6=5.96×10−2 V≃0.060 V. E_2=\frac{8.3\cdot300}{2\cdot96000}\cdot4.6 =5.96\times10^{-2}\ \mathrm{V} \simeq \boxed{0.060\ \mathrm{V}} .

(5) 濃淡電池は濃度差が自由エネルギー源であり、放電すると濃度差自体が小さくなる。蓄えられるエネルギー密度が小さく、継続利用には濃度差を外部から維持する必要があるため、電力貯蔵には向きにくい。

2. 二次反応速度

(1) Arrhenius 式は k=Aexp⁡(−EaRT) \boxed{k=A\exp\left(-\frac{E_a}{RT}\right)} である。

(2) k(310)/k(300)=2k(310)/k(300)=2 より ln⁡2=EaR(1300−1310),Ea=8.3⋅0.691/300−1/310=5.3×104 J mol−1. \ln2=\frac{E_a}{R}\left(\frac1{300}-\frac1{310}\right), \qquad E_a=\frac{8.3\cdot0.69}{1/300-1/310} =5.3\times10^4\ \mathrm{J\,mol^{-1}} .

(3) 逆反応を無視するので、生成した PP の分だけ A と B が減る。 [A]=[A]0−[P],[B]=[B]0−[P]. [A]=[A]_0-[P],\qquad [B]=[B]_0-[P]. 二次反応だから d[P]dt=k([A]0−[P])([B]0−[P]). \boxed{\frac{d[P]}{dt}=k([A]_0-[P])([B]_0-[P])}.

(4) [A]0≪[B]0[A]_0\ll[B]_0 では k′=k[B]0k'=k[B]_0、半減期は t1/2=ln⁡2/k′t_{1/2}=\ln2/k' である。 [B]0=1 mol m−3[B]_0=1\ \mathrm{mol\,m^{-3}} なので k=0.696930⋅1=9.96×10−5 m3 mol−1 s−1≃1.0×10−4 m3 mol−1 s−1. k=\frac{0.69}{6930\cdot1} =9.96\times10^{-5}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}\,s^{-1}} \simeq \boxed{1.0\times10^{-4}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}\,s^{-1}}}.

最終答

ΔS∘=−160 J K−1 mol−1\Delta S^\circ=-160\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}、ΔG∘=−242 kJ mol−1\Delta G^\circ=-242\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}、燃料電池 E≃1.3 VE\simeq1.3\ \mathrm{V}、濃淡電池 E2=(RT/2F)ln⁡(P1/P2)E_2=(RT/2F)\ln(P_1/P_2)、100 倍で 0.060 V0.060\ \mathrm{V}。反応速度は k=Ae−Ea/RTk=Ae^{-E_a/RT}、Ea=5.3×104 J mol−1E_a=5.3\times10^4\ \mathrm{J\,mol^{-1}}、d[P]/dt=k([A]0−[P])([B]0−[P])d[P]/dt=k([A]_0-[P])([B]_0-[P])、k=1.0×10−4 m3 mol−1 s−1k=1.0\times10^{-4}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}\,s^{-1}}。

第2問 — 組織学

方針

最近接対の数え上げでは、AA と BB は二重数えを避けるため 1/21/2 が付く。AB は A から見た B 近接数と B から見た A 近接数が同じ対を表すため、最終式では zNANB/NzN_A N_B/N になる。

検算

x=0x=0 または 11 で ΔHmix=0\Delta H_\mathrm{mix}=0 になり、混合していない純物質では混合エンタルピーがない。Ω>0\Omega>0 なら相分離しやすいので、異種対が不利という解釈と一致する。

典型ミス

スピノーダルとバイノーダルを混同しやすい。実線の内側全体が二相平衡に関係するが、微小揺らぎがそのまま成長するのは破線の内側だけである。

試験で書くべきポイント

相分離機構の説明では「核生成障壁の有無」と「組成変化が連続か、界面をもつ核から成長するか」を対にして書くと短くても十分な答案になる。

組織学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 材料物性学

方針

bcc の逆格子が fcc になることを使うと、Brillouin ゾーンの形がすぐ決まる。自由電子部分は、周期境界条件で kk 空間の格子点間隔を決め、スピン 2 重縮退を入れて状態数を数える。

検算

Na は単価金属なので bcc 単位胞あたり伝導電子は 2 個である。第一 Brillouin ゾーン内の各 kk はスピンを含めて 2 電子を収容できるため、半分充填という結果は電子数からも確認できる。

典型ミス

kFk_F の式でスピン縮退を落とすと kFk_F が 21/32^{1/3} 倍になる。体積比も 1 になってしまい、単価金属の半分充填と矛盾する。

試験で書くべきポイント

有効質量の説明では「Fermi 面がゾーン境界から離れている」ことと「バンド曲率が自由電子放物線に近い」ことを結び付けて書くと、図と物理の対応が明確になる。

材料物性学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 材料力学

方針

前半は等方線形弾性の基本式を、単軸応力の重ね合わせから組み立てる。せん断は 45 度回転すると引張・圧縮の主応力に変わるので、GG と E,νE,\nu の関係が導ける。

検算

純せん断の主応力は ±τ\pm\tau で平均応力は 0 のままである。測定応力の主応力も平均が (50+10)/2=30(50+10)/2=30 MPa で、元の対角成分平均と一致する。

典型ミス

工学せん断ひずみ γ12\gamma_{12} とテンソル成分 ε12\varepsilon_{12} を混同しやすい。ここで与えられているのはひずみテンソルなので、σ12=2Gε12\sigma_{12}=2G\varepsilon_{12} である。

試験で書くべきポイント

破壊面は最大主応力方向そのものではなく、その方向を法線にもつ面である。答案では固有値だけでなく、対応する固有ベクトルを法線として示す。

材料力学の途中式・最終答をPDFで見る

東大 マテリアル工学基礎 院試 過去問の収録6年度