東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2023年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
電池問題は、反応 Gibbs エネルギーと電気仕事 を結び付ける。濃淡電池では標準生成自由エネルギーではなく、気体分圧の化学ポテンシャル差が起電力を生む。
検算
水生成の は大きく負なので燃料電池の起電力は 1 V 程度になる。一方、100 倍の濃度差でも スケールなので 0.06 V 程度にしかならない。
典型ミス
濃淡電池で だけで割ると 2 倍ずれる。水素 1 分子あたり電子 2 個が移動するため、分母は である。
試験で書くべきポイント
二次反応の擬一次化は、 がほぼ一定とみなせる条件を先に書く。半減期から求まるのは であり、最後に で割って に戻す。
第2問 — 組織学
方針
最近接対の数え上げでは、AA と BB は二重数えを避けるため が付く。AB は A から見た B 近接数と B から見た A 近接数が同じ対を表すため、最終式では になる。
検算
または で になり、混合していない純物質では混合エンタルピーがない。 なら相分離しやすいので、異種対が不利という解釈と一致する。
典型ミス
スピノーダルとバイノーダルを混同しやすい。実線の内側全体が二相平衡に関係するが、微小揺らぎがそのまま成長するのは破線の内側だけである。
試験で書くべきポイント
相分離機構の説明では「核生成障壁の有無」と「組成変化が連続か、界面をもつ核から成長するか」を対にして書くと短くても十分な答案になる。
第3問 — 材料物性学
方針
bcc の逆格子が fcc になることを使うと、Brillouin ゾーンの形がすぐ決まる。自由電子部分は、周期境界条件で 空間の格子点間隔を決め、スピン 2 重縮退を入れて状態数を数える。
検算
Na は単価金属なので bcc 単位胞あたり伝導電子は 2 個である。第一 Brillouin ゾーン内の各 はスピンを含めて 2 電子を収容できるため、半分充填という結果は電子数からも確認できる。
典型ミス
の式でスピン縮退を落とすと が 倍になる。体積比も 1 になってしまい、単価金属の半分充填と矛盾する。
試験で書くべきポイント
有効質量の説明では「Fermi 面がゾーン境界から離れている」ことと「バンド曲率が自由電子放物線に近い」ことを結び付けて書くと、図と物理の対応が明確になる。
第4問 — 材料力学
方針
前半は等方線形弾性の基本式を、単軸応力の重ね合わせから組み立てる。せん断は 45 度回転すると引張・圧縮の主応力に変わるので、 と の関係が導ける。
検算
純せん断の主応力は で平均応力は 0 のままである。測定応力の主応力も平均が MPa で、元の対角成分平均と一致する。
典型ミス
工学せん断ひずみ とテンソル成分 を混同しやすい。ここで与えられているのはひずみテンソルなので、 である。
試験で書くべきポイント
破壊面は最大主応力方向そのものではなく、その方向を法線にもつ面である。答案では固有値だけでなく、対応する固有ベクトルを法線として示す。