東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2021年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
熱力学部分は,反応熱が温度によらないという条件から を先に確定するのが入口である。状態図の読み取りでは,正確な曲線形状ではなく「液相線で初晶が出る」「共晶温度で停止する」という相変化を示せばよい。
検算
Clapeyron 式では かつ である。融解エンタルピーは正にならなければならないため,符号の検算が有効である。 の断熱昇温は から約 上がるので, は桁として妥当である。
典型ミス
の融点計算で混合項を と一回だけ入れる誤りが多い。融液側には と の両方の化学ポテンシャルがあるため,理想混合項は である。
試験で書くべきポイント
速度論では反応式を置くだけでなく,定常状態近似の分母 を明示する。実験式との比較では,逆反応の項をなぜ落とせるかを書かないと, が消える理由が不明確になる。
第2問 — 組織学
方針
この問題の中心は,磁気秩序の自由エネルギー低下が結晶構造の安定性に効くことを,粗い数値で比較する点にある。絶対エネルギーの定数項は相転移条件に効かないため, 依存項だけをそろえて扱う。
検算
から は 程度になる。これに Avogadro 数を掛けると kJ/mol になるので,融解エンタルピーとの比較が意味を持つ。
典型ミス
異符号スピン対の数え方で定数項が変わっても, の係数が正しく出ていれば相平衡条件は同じである。答案では基準エネルギーを選んだことを一言添えると安全である。
試験で書くべきポイント
焼入れの説明では「急冷」「拡散抑制」「せん断型」「マルテンサイト」「炭素過飽和」のうち少なくとも三つを,単語だけでなく相互関係が分かる形で書く。
第3問 — 材料物性学
方針
前半は周期境界条件による の量子化,後半は拡張ゾーンの自由電子放物線を第一ゾーンへ折り返す操作である。バンド指標 は,異なる逆格子ベクトル に対応する枝だと考えればよい。
検算
第一 Brillouin ゾーン内の 点数は実空間の単位胞数 と等しい。スピンを入れると必ず2倍になる。この数が原子価1の電子数より大きいので,Fermi 円は第一ゾーンを満たし切らない。
典型ミス
点では なので, と が同じエネルギーを持つ。ここで を同じ縮重に入れると, 点の低エネルギー縮重を過大評価する。
試験で書くべきポイント
縮重度は「幾何学的に同じエネルギーをもつ の数」かける「スピン2」で答える。図示問題では,端点のエネルギーと縮重度が前問の答と一致するように描くことが重要である。
第4問 — 材料力学
方針
前半は Mohr 円または応力変換で解ける。単結晶すべりは Schmid 因子の最大化であり,面と方向を別々に最大にするのではなく,積を比較する。
検算
交差すべり系では同じ Burgers ベクトルを保つため,すべり方向は変えない。今回の交差すべり面 は引張軸 と面法線が直交し,法線応力成分の寄与がゼロになるので分解せん断応力もゼロである。
典型ミス
Peach--Koehler 力の外積順序を逆にすると力の向きが反転する。大きさだけを問われる場合でも,像転位が異符号であることと距離が であることを落とすと係数が2倍ずれる。
試験で書くべきポイント
自由表面の問題では「表面でトラクションがゼロになるように像転位を置く」と明記する。これは単なる暗記式ではなく,境界条件からの置き換えである。