東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2025年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
熱力学図では「線が低いほど塩化物または酸化物が安定」と読む。計算問題では,純物質の活量を1,気体の活量を分圧で置く。拡散反応は,Fickの法則と定常収支を組み合わせる典型問題である。
検算
Rの酸化物生成Gibbsエネルギーは非常に負なので,R/RO平衡の酸素分圧は 程度と小さい。M中酸素は標準状態1 mass\%より少し小さい mass\% であり, と が近いことと整合する。
典型ミス
塩化物還元で「生成線が上にある金属」を選ぶと反応方向が逆になる。拡散反応では の符号を曖昧にしやすいが,最終解が深さ方向に指数減衰し,液面流束が正になるかで確認できる。
試験で書くべきポイント
図示指定のある設問では,境界線の上側・下側のどちらかを言葉でも説明する。計算値は有効数字2桁指定なので,途中で自然対数と常用対数を混同しないよう を明示する。
第2問 — 組織学
方針
状態図の組織選択は, での平衡相と初晶の有無を読む。構造因子は格子点ごとの位相因子を足し,反射条件に落とす。XRDは超格子反射の有無が規則相判定の鍵である。
検算
, ではFCC基本反射の(111)が約44度に出る。規則相では(001)や(110)のような,無秩序FCCでは弱いまたは禁制の反射が現れるので,低角側に追加ピークを持つパターンが妥当である。
典型ミス
L1 の超格子反射を見落として, 相を単なるFCCとして扱うと(001),(110)を落とす。組織選択では,白黒の凡例だけでなく,斜線や粒内析出の描き方が「共晶」「初晶+共晶」「析出」を表すことに注意する。
試験で書くべきポイント
30字・50字・200字指定の記述は,字数を厳密に数えるよりも「駆動力」「拡散」「核生成」「成長」の語を入れて因果を短く示す。選択問題でも,選んだ記号だけでなく一文の根拠を添える。
第3問 — 材料物性学
方針
時間依存問題は,定常状態の指数因子を微分して時間非依存方程式へ落とす。タイトバインディングでは,ハミルトニアン行列の対角成分が原子軌道エネルギー,非対角成分が隣接原子間の結合を表す。
検算
, となり,電子が二原子間を周期的に移る。一次元状態密度が帯端で発散するのは, となって群速度が消えるためである。
典型ミス
問題では と指定されているため,結合性・反結合性の高低を符号で取り違えやすい。状態密度ではスピン2倍と,単位長さで割る因子 を忘れない。
試験で書くべきポイント
固有方程式の導出では,単に行列式を書くのではなく,左から を掛けて積分し,直交規格化を使ったことを示すと減点されにくい。
第4問 — 材料力学
方針
積層材の弾性率は,荷重方向が積層方向なら等応力のReuss平均,界面平行なら等ひずみのVoigt平均である。降伏も同じく,等応力か等ひずみかを先に決めると迷わない。
検算
直列平均 は低い方の GPa に近く,並列平均 は単純な荷重分担なので と の体積平均 GPa になる。 方向の一段目巨視応力16 MPaは,A相10 MPaとB相28.6 MPaの体積平均であり,両者の間にある。
典型ミス
方向と 方向の等応力・等ひずみ条件を逆にすると,弾性率も降伏応力も入れ替わる。二段階目ではA相を弾性に戻してはいけない。加工硬化なしなのでA相応力は10 MPaで保持される。
試験で書くべきポイント
応力--ひずみ線図は数値の点を明示し,二段階降伏の間の傾きが になる理由を書く。最後の記述問題ではHall--Petch型の界面障害効果を,転位の平均自由行程の短縮として説明する。