東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2024年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
前半は「化学ポテンシャルの定義」だけでなく、 が示量量であることを使うのが核心である。二元溶体の接線法は、接線の切片が各成分の化学ポテンシャルを与える、という図示問題である。
検算
で となるので、純 Zn 基準に合っている。 では Zn は希薄側で となり、正則溶体的な正の偏倚として自然である。
典型ミス
Gibbs--Duhem 式を活量ではなく活量係数に適用するとき、理想項 の寄与は として相殺される。この点を書かないと、余計な 項を入れやすい。
試験で書くべきポイント
並発反応では容器内の全モル数が保存されるため、濃度比ではなくモル分率をそのまま速度式の積分結果として扱える。 は「A が減った量」「Q 経路の分岐比」で計算すると短い。
第2問 — 組織学
方針
状態図を暗記で説明するのではなく、自由エネルギー曲線の曲率で「安定・準安定・不安定」を分ける。 なら微小揺らぎが自由エネルギーを下げるため、核生成障壁なしに分解が進む。
検算
は対称組成 で最大になる。 ではスピノーダルの両端が と の内側に入り、今回の と は対称なので妥当である。
典型ミス
共晶のてこの規則では、求める相の反対側の長さを分子に置く。 量を求めるのに を分子にすると液相量になる。
試験で書くべきポイント
組織図は精密画ではなく、初晶の有無、共晶が直下で現れること、亜共晶・共晶・過共晶の違いが読めればよい。説明文には「直上」と「直下」の相変化を明記する。
第3問 — 材料物性学
方針
Lennard--Jones の調和近似は、極小点まわりの Taylor 展開で二次係数を読むだけである。有限井戸は左端が無限壁、右端が有限壁なので、右端で指数関数的にしみ出すのが特徴である。
検算
の次元は で、エネルギーを長さの二乗で割ったばね定数になっている。束縛条件は が大きいほど、また が大きいほど緩くなり、物理的にも正しい。
典型ミス
境界条件で だけを連続にして、 の連続を落とすと量子化条件が出ない。また は有限壁ではなく無限壁なので、左側にしみ出しはない。
試験で書くべきポイント
平面では円と の交点を考える、と明記する。基底状態の枝の始点 を示せば、しきい値の導出が採点者に伝わる。
第4問 — 材料力学
方針
前半は fcc のすべり系と Schmid 因子の問題である。座標軸の Miller 指数に上線が含まれるため、直交していることをまず確認する。後半は Peach--Koehler 力に、刃状転位のせん断応力場を代入する。
検算
分解応力は に比例する。すべり面間隔 が大きいほど双極子の結合は弱くなり、必要応力が小さくなるので物理的に妥当である。
典型ミス
式 では、 の符号が力の向きを決める。異符号転位であることを忘れると安定点と不安定点が入れ替わる。
試験で書くべきポイント
主すべり系は指数だけでなく、なぜその系が最大分解せん断応力を受けるかを一行添える。双極子分解では「最大相互作用力を外力が超える」という条件の形を明示する。