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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。熱・統計力学1問・物性物理1問・力学1問。テーマタグは1件(転位)。2021年度と共通のテーマは転位。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎(¥3,200・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

東大 マテリアル工学基礎 2022年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は熱・統計力学1問・物性物理1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問熱・統計力学熱力学・速度論—あり
第2問—組織学—あり
第3問物性物理材料物性学—あり
第4問力学材料力学—あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は1問に1テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
転位第4問7大学・42問

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 4問 → 2022年度 4問
両年度に出たテーマ
転位
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第1問 — 熱力学・速度論

方針

理想溶液の前半は,配置エントロピーから化学ポテンシャルを出し,気相の理想気体積分と等置するだけで Raoult 則に到達する。後半の連鎖重合は,ラジカル濃度の定常状態近似が要点である。

検算

ΔSmix>0\Delta S_{\mathrm{mix}}>0 でなければならない。0<Ni<10<N_i<1 では ln⁡Ni<0\ln N_i<0 なので,−k∑niln⁡Ni-k\sum n_i\ln N_i は正になる。重合速度は開始剤濃度の 1/21/2 乗に比例し,通常のラジカル重合の結果と一致する。

典型ミス

d[M∙]/dtd[M^\bullet]/dt の停止項は −2kt[M∙]2-2k_t[M^\bullet]^2 である。停止反応1回でラジカルが2つ失われるためで,ここを −kt[M∙]2-k_t[M^\bullet]^2 とすると定常濃度の係数がずれる。

試験で書くべきポイント

数平均重合度は「単量体消費速度」を「生成ポリマー分子数の速度」で割る。開始反応で消費される単量体を無視するという条件を使っていることも書くと答案が締まる。

解答

1. 溶媒分子数を n1n_1,溶質分子数を n2n_2 とする。格子上の配置数は Ω=(n1+n2)!n1! n2!. \Omega=\frac{(n_1+n_2)!}{n_1!\,n_2!}. 混合前を Ω=1\Omega=1 とし,Stirling 近似を用いれば ΔSmix=kln⁡Ω=−k{n1ln⁡N1+n2ln⁡N2}. \Delta S_{\mathrm{mix}} =k\ln\Omega =-k\{n_1\ln N_1+n_2\ln N_2\}. したがって ΔGmix=ΔHmix−TΔSmix=kT{n1ln⁡N1+n2ln⁡N2}. \Delta G_{\mathrm{mix}} =\Delta H_{\mathrm{mix}}-T\Delta S_{\mathrm{mix}} =kT\{n_1\ln N_1+n_2\ln N_2\}. 溶媒1分子あたりの化学ポテンシャル変化は Δμ1=(∂ΔGmix∂n1)T,p,n2=kTln⁡N1. \Delta\mu_1= \left(\frac{\partial \Delta G_{\mathrm{mix}}}{\partial n_1}\right)_{T,p,n_2} =kT\ln N_1. ここで N1=n1/(n1+n2)N_1=n_1/(n_1+n_2) の微分も含めると余分な項は相殺され,最終的に ln⁡N1\ln N_1 だけが残る。

化学熱力学の基本式は,単純圧縮系の内部エネルギー表示 dU=T dS−p dV dU=T\,dS-p\,dV と G=U−TS+pVG=U-TS+pV から dG=dU−TdS−SdT+p dV+V dp=−S dT+V dp dG=dU-TdS-SdT+p\,dV+V\,dp=-S\,dT+V\,dp と導ける。

理想気体の溶媒1分子について,等温で p1∘p_1^\circ から p1p_1 へ移ると ΔGmolecule=∫p1∘p1V dp=∫p1∘p1kTp dp=kTln⁡p1p1∘. \Delta G_{\mathrm{molecule}} =\int_{p_1^\circ}^{p_1} V\,dp =\int_{p_1^\circ}^{p_1}\frac{kT}{p}\,dp =kT\ln\frac{p_1}{p_1^\circ}. 平衡では液相側と気相側の化学ポテンシャル変化が等しいので kTln⁡N1=kTln⁡p1p1∘,p1p1∘=N1. kT\ln N_1=kT\ln\frac{p_1}{p_1^\circ}, \quad \frac{p_1}{p_1^\circ}=N_1.

2. 反応中間体を鎖長に依らず M∙M^\bullet と書く。各欄は d[M∙]dt=ki[R∙][M]−2kt[M∙]2, \frac{d[M^\bullet]}{dt}=k_i[R^\bullet][M]-2k_t[M^\bullet]^2, d[R∙]dt=2kd[I]−ki[R∙][M], \frac{d[R^\bullet]}{dt}=2k_d[I]-k_i[R^\bullet][M], r=−d[M]dt=kp[M∙][M]. r=-\frac{d[M]}{dt}=k_p[M^\bullet][M]. 定常状態近似より [R∙]=2kd[I]ki[M],2kt[M∙]2=ki[R∙][M]=2kd[I], [R^\bullet]=\frac{2k_d[I]}{k_i[M]}, \quad 2k_t[M^\bullet]^2=k_i[R^\bullet][M]=2k_d[I], したがって [M∙]=(kd[I]kt)1/2. [M^\bullet]=\left(\frac{k_d[I]}{k_t}\right)^{1/2}. 重合速度は r=kp[M](kd[I]kt)1/2. r=k_p[M]\left(\frac{k_d[I]}{k_t}\right)^{1/2}. 停止反応1回で1分子の結合停止ポリマーが生じるので,数平均重合度は DP=単量体消費速度ポリマー分子生成速度=kp[M∙][M]kt[M∙]2=kp[M]kdkt[I]. DP=\frac{\text{単量体消費速度}}{\text{ポリマー分子生成速度}} =\frac{k_p[M^\bullet][M]}{k_t[M^\bullet]^2} =\frac{k_p[M]}{\sqrt{k_dk_t[I]}}. ゆえに DPDP を大きくするには,単量体初期濃度を高くし,開始剤初期濃度を低くする。

最終答

Ω=(n1+n2)!/(n1!n2!)\Omega=(n_1+n_2)!/(n_1!n_2!),ΔSmix=−k(n1ln⁡N1+n2ln⁡N2)\Delta S_{\mathrm{mix}}=-k(n_1\ln N_1+n_2\ln N_2),ΔGmix=kT(n1ln⁡N1+n2ln⁡N2)\Delta G_{\mathrm{mix}}=kT(n_1\ln N_1+n_2\ln N_2),Δμ1=kTln⁡N1\Delta\mu_1=kT\ln N_1,ΔGmolecule=kTln⁡(p1/p1∘)\Delta G_{\mathrm{molecule}}=kT\ln(p_1/p_1^\circ)。重合では r=kp[M]kd[I]/ktr=k_p[M]\sqrt{k_d[I]/k_t},DP=kp[M]/kdkt[I]DP=k_p[M]/\sqrt{k_dk_t[I]}。

第2問 — 組織学

方針

核生成は「体積項は r3r^3,界面項は r2r^2」と整理する。粒界核生成では,界面を作るだけでなく既存粒界を消すため,その分だけ障壁が下がる。

検算

k=0k=0 なら粒界エネルギー低下がなく,今回の幾何近似では均一核生成と同じ障壁になる。kk が大きいほど消える粒界エネルギーが大きくなり,r∗r^\ast と ΔG∗\Delta G^\ast が小さくなる。

典型ミス

JMA の XexX_{\mathrm{ex}} は重なりを許した仮想体積率であり,実体積率ではない。実変態率は未変態領域の割合 (1−X)(1-X) を掛けて増えるため,指数関数形になる。

試験で書くべきポイント

3次元で指数が4,2次元で指数が3になる理由は,連続核生成の時間積分が1乗,成長体積または面積がそれぞれ3乗・2乗で増えるためである。

組織学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 材料物性学

方針

格子振動は,離散ばねの運動方程式から分散関係を出し,長波長極限で音速を読む。半導体は,電荷中性条件と質量作用則を組み合わせるのが最短である。

検算

高温極限の1次元調和結晶では各振動モードが kBTk_BT のエネルギーを持つため,U=NkBTU=Nk_BT,CV=NkBC_V=Nk_B となる。これは Dulong--Petit 則の1次元版である。

典型ミス

有効状態密度は有効質量の 3/23/2 乗に比例する。mp=emem_p=\sqrt{e}m_e から NV/NC=e3/4N_V/N_C=e^{3/4} となる点を,e1/2e^{1/2} のまま扱わない。

試験で書くべきポイント

ドナー半導体の多数キャリアだけを n0≃NDn_0\simeq N_D と近似する答案では,小問の「NDN_D と nin_i を含む式」に答えきれない。二次方程式の正根まで書く。

材料物性学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 材料力学

方針

前半は Mohr 円の式を成分表示で書く問題である。後半は,き裂先端の特異応力場の最大方向と,転位堆積をモードIIき裂に見立てる近似を結びつける。

検算

純モードIでき裂がまっすぐ進む θ=0\theta=0 は物理的直観と一致する。純モードIIで開口型の進展角が約 70∘70^\circ になることは,混合モード破壊の標準結果である。

典型ミス

最大主応力面と最大せん断面の角度差は 2θ2\theta 空間では 90∘90^\circ だが,実空間の θ\theta では 45∘45^\circ である。Mohr 円の角度をそのまま答えない。

試験で書くべきポイント

Hall--Petch の導出では,KIIK_{II} が臨界値一定になるという破壊力学的条件を置くことが重要である。単に式を暗記して書くだけでは,前問の応力拡大係数との接続が見えない。

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東大 マテリアル工学基礎 院試 過去問の収録6年度