東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2022年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 マテリアル工学専攻 マテリアル工学基礎 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学・速度論
方針
理想溶液の前半は,配置エントロピーから化学ポテンシャルを出し,気相の理想気体積分と等置するだけで Raoult 則に到達する。後半の連鎖重合は,ラジカル濃度の定常状態近似が要点である。
検算
でなければならない。 では なので, は正になる。重合速度は開始剤濃度の 乗に比例し,通常のラジカル重合の結果と一致する。
典型ミス
の停止項は である。停止反応1回でラジカルが2つ失われるためで,ここを とすると定常濃度の係数がずれる。
試験で書くべきポイント
数平均重合度は「単量体消費速度」を「生成ポリマー分子数の速度」で割る。開始反応で消費される単量体を無視するという条件を使っていることも書くと答案が締まる。
第2問 — 組織学
方針
核生成は「体積項は ,界面項は 」と整理する。粒界核生成では,界面を作るだけでなく既存粒界を消すため,その分だけ障壁が下がる。
検算
なら粒界エネルギー低下がなく,今回の幾何近似では均一核生成と同じ障壁になる。 が大きいほど消える粒界エネルギーが大きくなり, と が小さくなる。
典型ミス
JMA の は重なりを許した仮想体積率であり,実体積率ではない。実変態率は未変態領域の割合 を掛けて増えるため,指数関数形になる。
試験で書くべきポイント
3次元で指数が4,2次元で指数が3になる理由は,連続核生成の時間積分が1乗,成長体積または面積がそれぞれ3乗・2乗で増えるためである。
第3問 — 材料物性学
方針
格子振動は,離散ばねの運動方程式から分散関係を出し,長波長極限で音速を読む。半導体は,電荷中性条件と質量作用則を組み合わせるのが最短である。
検算
高温極限の1次元調和結晶では各振動モードが のエネルギーを持つため,, となる。これは Dulong--Petit 則の1次元版である。
典型ミス
有効状態密度は有効質量の 乗に比例する。 から となる点を, のまま扱わない。
試験で書くべきポイント
ドナー半導体の多数キャリアだけを と近似する答案では,小問の「 と を含む式」に答えきれない。二次方程式の正根まで書く。
第4問 — 材料力学
方針
前半は Mohr 円の式を成分表示で書く問題である。後半は,き裂先端の特異応力場の最大方向と,転位堆積をモードIIき裂に見立てる近似を結びつける。
検算
純モードIでき裂がまっすぐ進む は物理的直観と一致する。純モードIIで開口型の進展角が約 になることは,混合モード破壊の標準結果である。
典型ミス
最大主応力面と最大せん断面の角度差は 空間では だが,実空間の では である。Mohr 円の角度をそのまま答えない。
試験で書くべきポイント
Hall--Petch の導出では, が臨界値一定になるという破壊力学的条件を置くことが重要である。単に式を暗記して書くだけでは,前問の応力拡大係数との接続が見えない。