東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 精密工学専攻 専門学術(小論文) 2026年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 専門学術(小論文) 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全14問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A日程 計測工学
論述の採点軸
この形式では用語の辞書的説明だけでは弱い。計測工学なら、測定原理、誤差・不確かさ、校正、実装上の制約、精密工学への効用をそろえると答案が厚くなる。数式は多くなくてよいが、 やラマンシフトの関係式のように中心概念を表す式を一つ入れると、単なる用語説明から専門答案になる。
よくある不足
不確かさを「誤差」と同一視して、真値との差だけで論じると現代的な測定管理の答案にならない。ラマン分光では「物質を分析する」とだけ書かず、非弾性散乱、ストークス/反ストークス、非破壊性、空間分解能を具体化する。どちらも、最後に精密工学で何を保証する技術なのかを書くと締まりがよい。
第2問 — A日程 精密加工学
対比で書く
加工学の小論文では、除去原理の違いを対比すると強い。切削は機械的せん断、電解加工は電気化学的溶解である。前者は工具摩耗や切削力、後者は電流密度や電解液が支配因子になる。この対比を入れると、単語説明の羅列ではなく、加工プロセスを理解した答案になる。
精密工学への接続
「加工できる」で終えるのではなく、寸法精度、表面粗さ、残留応力、工具補正、インプロセス監視に接続する。精密加工では、除去量そのものより、加工後に機能面が要求公差内に入るかが評価軸である。
第3問 — A日程 マイクロシステム材料学
図を入れる意義
MEMSの答案は抽象化しやすいので、層構造、可動梁、空洞、封止の簡単な模式図を入れると読み手に伝わりやすい。公式図を写す必要はなく、自分の説明に必要な最小限の構造を描けばよい。
材料学としての視点
単に「小さい機械」と書くだけでは材料学の答案にならない。薄膜応力、結晶方位、エッチング選択比、界面接合、熱膨張差、疲労や信頼性を入れることで、マイクロシステム材料学としての深さが出る。
第4問 — A日程 メカトロニクス・ロボティクス
式の選び方
この答案では、特異姿勢に 、カルマンフィルタに状態空間モデルを置くと骨格が明確になる。詳細な導出よりも、式に現れる各量がロボット制御で何を意味するかを書くことが大切である。
精密工学との接続
精密位置決めや手術支援ロボットでは、機構の可操作性とセンサ融合の両方が性能を決める。特異姿勢を避けるだけでなく、推定誤差が加工点や手先操作の誤差へどう伝わるかまで触れると、メカトロニクスらしい答案になる。
第5問 — A日程 生産システム工学
経営用語に見せない
生産システムの用語は経営学的に説明しがちだが、精密工学の答案では、図面、部品表、公差、工程能力、検査、変更管理へ落とす必要がある。製品データがどの工程のどの失敗を防ぐのかを書くと専門答案になる。
時間軸を描く
答案に余裕があれば、横軸を開発時間、縦軸を変更自由度・変更コストにした概念図を書くとよい。初期ほど自由度が高く、後期ほど変更コストが高いという関係が、フロントローディングの理由を一目で示す。
第6問 — A日程 設計システム工学
二つの共通点
人間中心設計もライフサイクルデザインも、設計対象を部品形状だけに閉じない点が共通する。前者は利用者と利用場面、後者は時間軸と社会環境へ設計境界を広げる。この視点を入れると、設計システム工学としての答案になる。
精密設計での注意
精度や高機能を無条件に善とせず、誤操作、保守、消費電力、寿命、廃棄まで含めて評価する。博士課程向け小論文では、単語の意味だけでなく、設計判断のトレードオフを言語化することが重要である。
第7問 — A日程 バイオ・メディカル
医療用語を工学化する
低侵襲手術は医療上の利点だけでなく、ロボット機構、計測、制御、安全設計で説明する。膜活動電位は生物学だけでなく、等価回路、信号計測、デバイス応用へ接続する。精密工学専攻の答案では、この工学化が重要である。
答案の締め方
バイオ・メディカル分野では倫理や安全にも一言触れるとよい。高精度な装置でも、滅菌、フェイルセーフ、患者個体差、データプライバシーを考えないと実用技術として成立しない。
第8問 — B日程 計測工学
原理と保証をつなぐ
計測工学では、測れることと信頼できることを分けて書く。ヘテロダイン干渉は物理原理、計量トレーサビリティは測定結果を社会的・技術的に通用させる仕組みである。この二層構造を示すと、答案に広がりが出る。
ミスしやすい点
トレーサビリティを「履歴管理」とだけ書くと不足である。不確かさ、校正、標準への連鎖を必ず含める。ヘテロダイン干渉では、単なる干渉縞観察でなく、周波数差と位相検出が特徴であることを明確にする。
第9問 — B日程 精密加工学
材料と加工の両面
加工学では、工具や装置だけでなく、材料側に何が残るかを書く必要がある。ポリッシングなら表面粗さと変質層、加工硬化なら転位・残留応力・後工程への影響を含めると、精密加工らしい答案になる。
式の扱い
Preston式や加工硬化則は厳密な導出よりも、何が増えると除去量や硬さが変わるかを示すために使う。式を書いたら、必ず圧力、速度、塑性ひずみなどの物理的意味を説明する。
第10問 — B日程 マイクロシステム材料学
比較で答案を作る
二つの用語を選んだときは、個別説明の後に比較を一文入れるとよい。リソグラフィーは光学・化学プロセス、ナノインプリントは機械的転写プロセスである。どちらも後続のエッチングや成膜と組み合わせて最終構造を作る。
微細加工の評価軸
解像度だけでなく、スループット、歩留まり、重ね合わせ、欠陥、材料適合性を書く。博士後期課程の答案では、原理を知っているだけでなく、実用プロセスとしてどの制約が支配的かを説明することが求められる。
第11問 — B日程 メカトロニクス・ロボティクス
幾何と制御を分ける
この設問では、ロボットを動かす前にどの状態が許されるかを考える幾何学的枠組みと、実際に目標へ追従させる制御設計を区別して書く。両方を「ロボットを動かす技術」とだけまとめると弱い。
精密性の要点
精密ロボティクスでは、目標に到達するだけでなく、振動せず、ぶつからず、再現性よく、微小誤差で動くことが重要である。コンフィギュレーション空間は衝突・制約を、位相補償は動的追従誤差を扱う。
第12問 — B日程 生産システム工学
生産システムの二つの質
インターロックは安全品質、タグチメソッドは製品・工程品質を扱う。どちらも「問題が起きたら対処する」ではなく、事前にシステムへ組み込む設計思想である。この共通点を入れると答案にまとまりが出る。
答案の具体性
インターロックでは必ず具体例を書く。タグチメソッドでは、直交表、SN比、損失関数のうち少なくとも二つを入れる。抽象的な「品質を高める方法」だけでは点が伸びにくい。
第13問 — B日程 設計システム工学
安全と精度は設計段階で決まる
FTAも公差も、後工程の検査ではなく設計段階で品質を作り込むための方法である。FTAは故障の論理、公差はばらつきの幾何を扱う。どちらも仕様の根拠を説明できることが重要である。
書き落としやすい観点
公差の答案では「寸法の許容範囲」だけでなく、基準、測定、機能、コストを入れる。FTAでは「故障を探す」とだけ書かず、頂上事象、論理ゲート、最小カットセット、対策への接続を書く。
第14問 — B日程 バイオ・メディカル
スケール効果を書く
マイクロフルイディクスでは、小さいから便利という説明では足りない。レイノルズ数が小さい、表面力が支配的、拡散距離が短い、微量サンプルで済むというスケール効果を書く。
医療応用の責任
手術支援ロボットでは、精度と同じくらい安全が重要である。誤動作、通信遅延、力覚欠如、術者教育、患者個体差を考慮し、工学的性能が臨床安全へどう結びつくかを述べると高い評価につながる。